プリキュアオールスターズ×仮面ライダー~bの復活とsの暴走 ~ 作:鈴木遥
・夕凪町最大のパワースポット、『精霊の樹』。
その樹の下で、本来起こるはずのない戦いが巻き起こっていた。
闇の権化、ブラックホールとシャドームーンが使わした眼魔の一団。
そこに交わる1匹のウザイナー。
戦いの中、咲は自問自答していた。
なぜ、出会ったばかりの素性も知らない戦士たちと、こうも息を合わせて戦えるのか。
実際、彼らの連携プレーは素晴らしいものだった。
戦闘員、眼魔コマンドを満、薫、アランの三名で塞ぎ、舞とマコトでスライム型ウザイナーを抑え、タケル、咲でウルティマ眼魔を倒しに掛かる。
背中合わせ、精霊の光によるバリアからの狙撃、突撃。
(この三人、ちょっと会って協同作業しただけで、
「これ以上、我ら眼魔の戦歴に泥を塗ってくれるな……!」
『ダイテンガン!』
アランの動きを《キメの一撃》と察知した満、薫はアランと再び背中を合わせ、手をつなぐ。
『精霊の光よ!命の輝きよ!』
『希望へ導け、二つの心!』
『ネクロムフルバースト!!』
『プリキュア・スパイラルスター・スプラッシュ!!』
ネクロムの周囲に無数の目玉が浮かび、弾丸となって眼魔コマンドに降り注ぐ。
背後では、満と薫の間から出現した水柱が星形を描き、もう一方の眼魔コマンド達に衝突。
「グッジョブ。」
ぼそりと囁くアランに、満と薫は微笑み返した。
「くそ!コイツ斬っても斬っても……。」
舞とマコトは再生機能を持つスライム型ウザイナーに手を焼いていた。
ディープスラッシャーによる遠隔電撃も、斬撃も通じない。
「こんなウザイナーはじめて......。」
「それは、違うかもな......。」
「え......?」
「美翔さん、だったか?恐らくいつもと違うのは、オレたちの方だ。『
マコトの言いたい事が何となくわかった。
そう。splash☆starのみでなければ、恐らくウザイナーの撃退は不可能だろう。
ならばどうする?
マコトは、すでに検討を付けていた。
ディープスラッシャーにアイコンをセット。瞬間、刃に紫の炎が灯る。背後では、タケルと咲がウルティマに応戦している。
「タケル!と、日向さんだったか?よく聞け!今からこのデカブツに一発お見舞いする。そのあとコイツが再生するまでの間に、オレと日向さんの立ち位置を交代する。構わないか?」
「いいけど、それでどーするの?」
ウルティマの刃を必死に止める咲。
「詳しく説明してる時間はない!今は一刻も早く、敵の数を減らさねば!」
『バカが!それを知っててやらせる訳がないだろうがァ!』
得意げにブルームを抑えるウルティマ。マコトは構わず剣を振りかぶった。
紫の炎は斬撃の波と化し、ウザイナーを八つ切りにした。
塊一つ一つが蠢き始めた。もうまもなく再生するだろう。
『ハッ!ウザイナー一体消したところで、形勢は変わら......。』
「隙あり!」
突然ウルティマは、横にぶっ飛んだ。見ると、いつの間にか『グレイトフル魂』に変身したタケルがタックルをかましていた。
立ち位置の入れ替えに成功したsplash☆starは、すでに必殺技を発動していた。
『精霊の光よ!命の輝きよ!』
『希望へ導け、二つの心!』
『プリキュア・スパイラルハート・スプラッシュ!』
二人の間から吹き出した二つの水柱は、空中でハート型を描き、そのままウザイナーを貫いた。
ウザイナー 専売特許の再生機能と言えど、精霊の力を前には、成す術なし。
『ウザイナー!!』
野太い悲鳴をあげながら、ウザイナーは跡形もなく消え失せた。
と同時に、ようやく立ち直ったウルティマは、ウザイナーの消滅を悟り、顔を青ざめた。
『何て事しやがる!
「『ゴーヤの旦那』ですって......?」
薫が驚きに目を見開いた。その名前に、かつての宿敵を連想したからだ。
(まさか......いえ、そんな事あるはずが......。)
「いいえ?私ですよ、薫さん......。」
樹の上から、嗄れ声がした。見上げると、小柄な男が枝に乗っている。
下品な緑色の肌。つり上がったオレンジの目。神父を連想するローブに、苦瓜の様な楕円形の顔。
咲と舞も樹の上を見上げると、そいつの名を呼んだ。
「「「「ゴーヤーン!!」」」」
「お久しぶりですねぇ、プリキュア殿。加え、初めましてですかな?仮面ライダー殿。」
「貴様!何者だ!」
ディープスラッシャーの刃を向け威嚇するマコトと対象的に、ゴーヤーンは随分と余裕な態度だ。
「慌てなさんな、スペクター殿。私は今日、プリキュア殿達と取引しに来たのです。どうですか?プリキュア殿、その道を空け、“あるモノ”を渡せば、今日はおいとましましょう。」
「何よ!?あるモノって。」
「『フェアリーキャラフェ』......おっと、今は『妖精キャラフェちゃん』でしたかな?
彼女が必要なんですよ。我らがブラックホール様の崇高なる思想の為に!!」
「......つまり貴様らの薄気味悪い思想の為に、
「そういう事です。さすがはネクロム殿。ご理解が早い。」
「「「「「「「断る!!!」」
『決裂したぜ?旦那、はじめから全員殺しゃ良いんだろ?』
「前言撤回です。ウザイナーをもう一匹預けますから、後の事は頼みますよ。」
すると、地面から先程のと同じウザイナーが這い出てきた。
ウザイナーは裂けた大口を空け、ウルティマを丸呑みにした。全員が思わず顔を背けると、ウルティマを呑み込んだウザイナーは咆哮を上げた。
だが、先程のものとは明らかに異なる、苦悶に満ちた咆哮だ。
瞬間、辺りを覆い尽くす闇のエネルギー。 真昼だと言うのに、一寸先も見えない暗闇。
さらには、前からの衝撃波が、splash☆starとタケル達を吹き飛ばした。
成す術なく、解除される変身。
視界が開けた時、ゴーヤーンは消え失せ、目の前には異様な何かがいた。それはウザイナーともウルティマとも言い難い、見たこともない怪物だ。
確かに姿こそウルティマだが、とてつもない大きさと、垂れ下がった眼、耳まで裂けた口。
それは、明らかにウザイナーから受け継いだモノだろう。
ウルティマイナー。誰かがそいつをそう呼んでいた。
『ヴァァァァァ!力が、力が湧ク!何だこれハ!こんな世界が有ったのカ!』
「狂いやがった......!!」
アランが驚愕と侮蔑に満ちた目で、ウルティマイナーを睨む。
splash☆starの面々は、すでにその表情から戦意が消えていた。
たった二人、タケルと咲だけは、異形の怪物を前に少しも怯まない。
「咲......!?」
「逃げよう咲!そいつには勝てない!」
「無茶だタケル!分かってるだろ!変身もせずに勝てる訳がない!」
「「やってみなきゃ分かんないでしょ!」」
咲は、ずっと疑問だった。なぜ、これほどまでに彼らと息が合うのか?
簡単だ。プリキュアと仮面ライダー、立場は違えど、彼らも自分たちと同じ、誰かのために闘う戦士だからだろう。
この怒りは、大切な誰かをキズつけようとする、キャラフェを奪おうとする敵への怒りだ。
仮面ライダー達は、今日知り合ったばかりの自分たちの為に、本気で戦ってくれている。
負けられない、負けるわけにはいかないのだ。
「舞、皆。未だいける?」
咲とタケルはどこか似ている。
やると決めたら絶対に曲げない。
そこまで行くと、もはや理窟じゃない。
マコトも、アランもすでに立っていた。
「もっかい行くよ!」
「七人で、第二ラウンド、命、燃やすぜ!」
『デュアル・スピリチュアル・パワー!!』
『バッチリミナー!ムゲンカイガン!』
『ヨックミロー!ディープスペクター!』
『テンガン!ネクロム!』
再度変身する七人。
『何度やってモ、無駄ダァ!』
体の大きさに比例して巨大化した刃を受け止める。
満身創痍と言えど、四人分の精霊の光は伊達ではない。
タケル/ムゲンゴーストはその機動力を存分に発揮し、敵の頭部に斬りかかる。アラン、マコト/ディープスペクターは威力を補う援護射撃をかますが、ウザイナーから受け継いだ再生能力は健在な様で、大したダメージにはならない。
『ウラァァァァ!』
「ハァァァァァ!」
つば競り合いになるタケル/ムゲンゴーストとウルティマイナー。
だが、さすがの「サングラスラッシャー」も悲鳴をあげ、ついにへし折れた。
「......ぐぁっ!」
競り合いに負けた勢いで、後ろに吹き飛ぶタケル。
「タケルさん!」
舞の呼び声に、タケルは「大丈夫」と返した。
『無駄ダ無駄ダァ!何度やっても、テメェらじゃオレにゃ勝てネェ!』
タケルは聞いていなかった。
「splash☆starの皆!一気に決めよう。」
タケルの提案に乗り、splash☆starは必殺技を発動。
『精霊の光よ!』
『命の輝きよ!』
『希望へ導け!』
『全ての心!』
四人の掛け声に合わせ、タケルはバックルのガンガンセイバーにアイコンをセット。
『チョーダイカイガン!ムゲン!splash☆star!』
タケルの体は粒子化し、四人の上に現れた水柱に交わる。
『プリキュア!スパイラルムゲン・スプラッシュスター!!』
それは、空中で∞を描き、敵に激突する。
『くそォ!こんナ、こんなちっぽけな人間ニ、このオレガァ!』
『よく聞け、ウルティマイナー!これが人間の、絆の力だ!』
合体技が敵の体を貫いた時、水柱の一部は分離し、やがてタケル/ムゲンゴーストを形作った。
ガンガンセイバーによる、居合抜きの体勢だ。
『ギャァァァァ!』
この世のものとは思えないおぞましい悲鳴をあげ、ついにウルティマイナーは爆発四散した。
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『精霊の祠内部:泉の里』
「本当にありがとうございました、仮面ライダーの皆さん。」
「何を言ってる。君たちsplash☆starがいなければ、オレたちはあのデカブツ一匹倒せなかった。お礼をするのはオレたちさ。」
舞の激励に、マコトが照れくさそうに返した。
一方、タケルは昼に食べようと持参した御成のおにぎりを、咲は実家のパン屋から持参したチョココロネを、互いに交換していた。
「おいしい~!何このおにぎり!」
「咲さん家のチョココロネも中々だよ!どうやったらこんな美味しく作れるの?」
「かなりの乱闘の後だってのに、すっかり皆馴染んでるわね......。」
「そういう薫お姉さんも......。」
と、みのりが薫の手元をゆびさすと、アランが自分で焼いたパック入りのたこ焼きが有った。
「みのりちゃんも食べる?」
「うん、食べるー!」
「どうだ?中々だろう。今回の礼だ。」
「うん、おいしいわ。ありがとう、アランさん......。」
満とアランはほのぼのと、たこ焼きについて語り合っていた。
「何せ、日本一のたこ焼き屋直伝の味だからな。」
「本当に。前になぎささん達に連れてって貰った『タコカフェ』と良い勝負。」
「そいつは耳寄りな情報だな。その“たこかふぇ”とやらの主人といつか勝負してみたいものだ。」
「ちょっとあなた達!いつまでほのぼのグルメトークしてるんですか!?」
フィーリアは泉の中心から全員に聞こえる様に喚いた。
「だって~!スッゴい疲れたんですよ私達......。」
「黙らっしゃい咲!そうやって油断してると、さっきのsplash☆starの出番が最初で最後になりますよ!でもって、仮面ライダーのお三方。さっきの『アレ』は何なんですか!?」
フィーリアに詰め寄られたマコトはアランに目をやり、アランはタケルに目をやった。
「フィーリア様、でしたっけ?すみません、オレたちにも、『アレ』が何なのかは、よく......。」
「じゃあ、今日はどうしてここへ来たんですか?」
咲の問いに、タケルは成り行きを説明した。
「じゃあ、そのお客さんに言われて、こんな所まで?」
「プリキュアの手助けを、って言ってたけど、まさかああなるとは......。」
タケルは苦笑いしながら頷いた。
「それにしても、息ぴったりでしたね、私達!」
「本当だよね!オレたちもびっくりした。」
「タケルさん。そのお客さんがどんな方か、御成さんとやらから伺ってませんか?」
「それが、よく覚えてないって......あ、でも名前を言わなかったけど、夕凪町の偉い人に、『通りすがりの仮面ライダー』と言えば分かると......。」
フィーリアに、まるでイナズマの様な衝撃が走る。
「キャラフェちゃん。今から私が言う番号に、急いでかけてください。」
泉の端に移動し、何やらこそこそとキャラフェ通話を始めるフィーリア。
「もしもし、門矢さん。フィーリアです。あのですね、今朝『クイーンズスクエア』の誰かに何か言われました?え?ブラックホール?はいはい、分かりました。ご安心を、クイーンにはバレない様にしますから。それじゃ、ぶち。」
「今、『ぶち』って口で言ったよね?」
咲のツッコミを無視し、フィーリアは咳払いした。
「良いですか、皆。今年の現役プリキュアが、復活したDX3のラスボスに狙われてるんで、協力が必要なんだそうです。行きますよ。」
「いや行きますよったって、状況が読みませんよ。」
「詳細は、『いちご坂』の町で、門矢さんが説明するということです。
......ご同行願えますか?仮面ライダーのお三方。」
その反応が否応なしの雰囲気だったからか、タケル達三人は、首を縦に降った。