プリキュアオールスターズ×仮面ライダー~bの復活とsの暴走 ~ 作:鈴木遥
・いちご坂の外れ、邪悪の神ブラックホールのひざ元に当たる平原で、クロノスと仮面ライダー・プリキュア組の攻防戦は激化の一途をたどっていた。
桐生戦兎は、遠方からその様子を見ていた。そこは、いちご坂商店街に通じる一本道だった。
「おやおや、お仲間たちが悪戦苦闘してるってのに、お前さんは高みの見物かィ?」
背後からなじられても、戦兎はまるで動じない。
「よく言うよ。クロノスとアイツらの戦いに乗じて、いちご坂を襲う腹づもりだろ?なァ……ブラッドスターク!」
戦兎に指摘され、ワインレッドのコブラの怪人、ブラッドスタークは深くため息をついた。
「なぁんだ、こっちの作戦筒抜けじゃねーか。」
「 キラパティが衛生省の検査に引っかからなかった理由は 、ウイルスがなかったからじゃない。
バグスターウイルスではなく、お前らのスマッシュ製造ウイルスが蔓延してたからだ。宇佐美さんの体から出てきたあの化け物は、バグスターじゃなくスマッシュだったんだろ?」
「ご明察、しかしあれだ。そこまでバレてるなら……お前さん、ここで始末しなくちゃなァ……。」
銃を構えるブラッドスタークに応答するように、戦兎は 背広のポケットから二本のボトルを出した。
『ラビット・タンク! Are you rady?』
効果音と同時にベルトのハンドルを2、3周回す。
「変身!」
『Best match!鋼のムーンサルト!』
仮面ライダービルドに変身完了し、準備を整える戦兎。
「そいじゃあ、実験を始めようか!」
「あ!それオレの!」
「堅ェ事言いなさんな!」
ビルドとブラッドスタークが激突してるところ 仮面ライダーおよびプリキュア組は、 クロノスを相手に苦戦を強いられていた。
いや、彼らの実力は充分過ぎるほどだった。
日曜朝の平和を守ってきた11人を相手に、たった一人で圧倒するクロノスの実力は、化け物という他にない。
ロッドから放たれるショコラのアロマーゼとマカロンのジュリエンヌを盾であっさりと受け切り、背後から蹴りかかるレーザーとゲンムに軌道を変えて当てる。
カスタードの
ジェラートの
「無駄無駄無駄ァ!」
「化け物め……さっさとキメろ、研修医!」
上空からパルフェとホイップのロッド援護を受け、ライダーキックを当てようとするエグゼイド(ハイパームテキ)。
その時、クロノスは全身に力を込め、凄まじい咆哮を挙げた。 スイッチのプッシュなしでポーズが発動し、全員の動きは止まった。
闇の力でランクアップしたポーズは、唯一の対抗策であるハイパームテキエグゼイドの動きさえも止めた。
「図に乗り過ぎだァ!ガキ共ォォォォォォ!」
ベルトの『ノワールジェノサイド』ガシャットを刃に移し、エネルギーを込める。
『ガッチャーン!混沌の、一撃!』
効果音と共に、妖しく光る紫のエネルギーを帯びた刃を、クロノスは周囲360°と真上に振りかぶった。
ポーズが解けたとき、一同はわけの分からないまま、後ろへ吹き飛ばされた。
過度なダメージにより、一同の変身は強制解除された。
「ゆかり……!大丈夫かい……!?」
「何とかね……キラパティの時と同じ、時間を止めたんだわ……よくやるわよ」
「おのれ檀政宗ェ……私のクロニクルに、悪趣味な改悪を……。」
「言ってる場合か!あの男を何とかせねば、世界は……。」
「手立てはあんのかよ。今やレベル
「「まだです……!」」
立ち上がったのはいちかと永夢だった。
ここでも、主人公二名の驚異的なポテンシャルが、一同の戦意を支える柱となる。
「永夢……!自信は良いがどうする気だ!あの男は、もはや我々の手には……!」
「そいつはまだ分からんぞ?」
遠方で戦っていたはずのビルドがこちらへ吹き飛び、後ろからブラッドスタークが現れた。
「貴様……!」
「刃を向ける相手が違うな、仮面ライダーブレイブ。オレはコイツを渡しに来たのさ。」
彼は、ガシャットを5つと虹のフルボトルを2つ、各仮面ライダーに手渡した。
「これは……!?」
「まずはお前さんらが変身しな。力が出るハズさ。」
「ブラッドスターク貴様ァ!闇の同盟を裏切る気かァ!」
「クロノスよぉ……お前さんとこのボスは金払いが悪すぎだ。ありゃナイトローグが手ェ切りたがるのも分かる。
つーわけで、オレらはオレらのやり方で、日本を獲るんでよろしく。」
怒り狂うクロノスを気にも留めず、世界を駆ける橋(ディケイドが並行世界移動に用いるオーラ)を渡って何処かへ消えた。
「こうなったら……!この町の全てを消し去ってくれるゥゥゥゥゥゥゥ!」
『ガシャット!キラキラプリキュア・アラモード!』
『ペガサス・パフェ!best much!』
仮面ライダーたちは、それぞれがショートケーキ(ビルドはパフェ)を模したスーツに変化し、体力と気力は完全に回復。
さらにプリキュア達は翼
「形勢逆転……とでも言いたいのか?その程度の強化変身で私に勝てるとでも……?」
「そうやって余裕ぶっこいてやがれ。」
「貴様のターンは、二度と来ないぞ。」
「わりィけど自分、今から
「見るがいい……お前と我々、どちらが格上か!」
「クロノス、今からお前を攻略する!」
「皆、皆で……!」
『レッツラ・クッキング!』
キラキラルクリーマーによって召喚されたスイーツアニマルに乗り、必殺技を放つ。
その間、ライダーたちは泡立て器型に変化したガシャコンブレイカーでクロノスの動きを封じ、スポンジとサングリアの中に閉じ込める。
その上にプリキュア組がパフェの素材を盛りつけ、出来上がったのは、聖なるキラキラるを生み出す究極のスイーツそのものだった。
必殺技は今、彼らが高められうる究極点に達したのだ。
『キュアライダーズ・ハイスコアゴーランド!!!』
パフェの中で闇の力を浄化されながら、クロノスは苦悶していた。
(おのれ……おのれ若造ども!なぜだ、なぜ私からすべてを奪う!?なぜ私の前には何も残らない!?私は……私はただ、独りになりたくなかっただけなのに……!!)
浄化され、消えゆく身体を見つめながら、正宗は久々に、本当に久々に涙を流した。
(どうすれば良かった?どうすれば幸せになれた?私は一体、どこで間違えてしまった……?なぁ、黎斗、櫻子……勝手を承知で、願わくばもう一度、お前たちと……。)
身体が完全に消えかかったその時、どこからともなく声がした。
あなた……。
櫻子……来てくれたのか。君に合わせる顔など、無いというのに……。
そんな事ないわ。あなたは、私にも黎斗にも会えないまま、たった一人で戦っていたもの。
だが、そのせいで私は……黎斗を……!
父さん、もう泣かないで。
黎斗……!?聞こえるのか、私の声が……!
もう恨んでいませんよ。あなたも、あなたが犯した罪も、全ては『始まり』。ここまで色々あったから、私は永夢や皆と出会い、たくさんの事を教わった。
あなたが結んだのよ、黎斗と、仮面ライダー達を……。
二人とも、ありがとう……。
「ここまで来て、ようやく3人揃ったか……。」
「黎斗さん、何か言ったかしら?」
マカロンが問うと、黎斗は皮肉る様に笑った。
「感謝する、キュアパルフェ。君のおかげで、彼に声が届いた。」
「ノンノン、私は『繋げた』だけ。思いが届いたのは、あなたがクロノスに、思いを届かせようと言葉を紡いだからよ……。」
「クロノス……そんな父親はいないな。」
「……?」
「父の名は壇正宗。世界一の経営者だ。」
「とにかく、闇の同盟との攻防戦、ひとまずは、僕達の勝ちだ!」
「いえーい!」
「果たしてそうかな……!?」
地の底から響く様な声が、上空から聞こえた。
見れば、 黒いマントをまとった男白髪の老人が、空から一同を見下ろしていた。
「貴様は……!」
「我が名は死神博士! 闇の同盟最高幹部にして、ブラックホール様が忠実なるしもべ!」
「チッ……!ようやく本領発揮ッスか。」
「そうね桐矢さん。でも参ったわ……!あの博士、ものすごい気配……。今、あんなのと戦う力はもう……。」
「ヘトヘトですぅ〜!」
「クロノスめ、ハナから期待はしとらんが、やられおって……。既に命を終えたやつを、 闇の眷属として 肉体を複製して下さったブラックホール様のご恩がありながら、 あっさり敗北を期すとは……まぁいい、その為に シャドームーンのやつは 儂をここに遣わしたのだから。」
一同をあざ笑う様に、 死神博士は手に持つ杖を空中に掲げた。
瞬間 大地が割れるような地響きがなり、瞬間、地面に亀裂が入った。
大地がえぐれると同時に、そこに真っ黒な巨人が現れた。頭には双角が生え、目は鈍く赤色に光り、無機質な黒のボディは、ヤツの残酷さを演出するのに一役買っていた。
勝利を確信した死神博士は 傲慢な笑みを浮かべて巨人に命じた。
「さぁ行けキングダークよ!闇の同盟の行く手を阻む者共を、還付なきまでに叩き潰せェ!」