プリキュアオールスターズ×仮面ライダー~bの復活とsの暴走 ~ 作:鈴木遥
・四ツ葉町商店街は今日、いつにも増して賑わっていた。
町の名物、町内ダンス大会の開催はいつもの事ながら、今回は町の名物ダンスチーム、
『フレッシュカルテット』と、
木々の町沢芽市の名物ダンスチーム、『teamガイム』との対決も催され、町の熱気は例年以上のモノになっていた。
「腕がなるなぁ!」
いつもの練習場所である噴水公園で、柔軟体操をしながら、『フレッシュカルテット』のリーダー、桃園ラブが意気込んだ。
「ラブ......ここ数日一段と気合い入ってるわね。」
メンバーの一人、
「私も楽しみだなぁ......!どんな人達だろう、teamガイムの皆さん......。」
「相手が誰だろうと、精一杯頑張るわ!」
同じくメンバーの、
講師ミユキの到着と同時に、本日も恒例のダンスレッスンが始まった。
......と、その時。
「大変やァァァァァァァァァァ!」
聞き慣れた流暢な関西弁。
メンバー四人が辺りを見回す。ラブが上を向いた瞬間、頭上に落ちたフェレットの様な生き物が、彼女の顔に張り付いた。
そう。彼女達が、『伝説の戦士プリキュア』として活動する際のパートナーである、スイーツ王国の王子、タルトだ。
背中には、無限のメモリーエネルギー、『インフィニティ』の変異態である妖精シフォンを背負っている。
「はっ!すんまへん!ダンスレッスン中やったんか!ほんならすまんけど、ワイの話を......。」
「タルトちゃん。まず落ち着いて、そこでドーナツでも食べたら?」
汗だくのタルトを見かねたミユキが短く叱った。
「せやけどミユキはん、今ごっつ大変なことに……。」
「汗まみれだし、息切れしてるじゃないの。少し落ち着かないと、上手く行くものも行かなくなるわよ?」
ミユキに促されラブの顔から離れるタルト。
すぐそばにあるドーナツ屋、カオルに目で合図し、客席を一つ開けさせた。
レッスン後ラブたちはタルトから驚愕の事実を聞かされることとなる。この世界の存亡を左右する、強大な敵についての情報を……。
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四ツ葉町から少し離れ、何度か電車を乗り換えてたどり着く最先端地方都市、『沢芽市』。
ダンスチーム、『ガイム』のチームハウスは、その街の寂れた商店街に有った。
前チームリーダー、
現在は、元メンバーの
「四ツ葉町ダンスコンテストまで1ヶ月を切りました。残り数日を無駄にしない様、有意義に練習しましょう。」
「押忍!!」
最近の若者たちは、自分の言うことを聞き、信じてついてくるいい子たちだ。が、光実の不安は別のところに有った。
数日前、チームハウスにかかってきた、素性の知れない男からの電話だ。
彼は名前すら名乗らず、コンテスト会場で戦闘ができるようにしておけと、それだけを光実に告げて電話を切った。
何も根拠はない、ただ伊達に長いこと仮面ライダーとして戦ってきたわけでもない。仮面ライダーとしての経験が、自分に何かを警告しているのだ。そう思うと、気が気ではなかった。
大丈夫だミッチー、何とかなるって!
仮にも俺のバロンチームを超える看板を背負う貴様が、そんな弱腰でどうする。
紘汰の明るい励ましと、ライバルチームの元リーダー、
二人とも世界のため、又自らの正義の為に戦い、姿を消した強く気高き『仮面ライダー』達だ。
(弱腰になっちゃ駄目だ。守るんだ、チーム『ガイム』とダンスコンテストを、紘汰さん達が守り抜いた、チームの誇りを......!)
正体の分からない“驚異”と戦うことを決意した光実は、メンバーの見えない所で、そっと『戦極ドライバー』を握り締めた。
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数日後、チーム『ガイム』や『フレッシュカルテット』始め、各地方の予選に勝ち残ったダンスチームが勢揃いしていた。
ダンサー達を連れ、会場に入ろうとしたとき、光実は一人の男に呼び止められた。
彼の兄、貴虎《たかとら》だった。
作業着に身を包み、目立たないが腰に『ゲネシスドライバー』を巻いている。
「兄さん!どうしてここに?それにそのベルト......!」
「ああ。数日前、大会主催者に『闇の同盟』を名乗る連中が大会襲撃予告を送り付けてな......今のところ、
取引相手と話す様に淡々と説明する貴虎。
その完璧さと隙のなさに、光実はただただ頷くしかなかった。
「......大会の安全はオレ達に任せて、チーム『ガイム』はダンスに最善を尽くす様に。そうメンバーに伝えておけ。」
去り際にボソッと呟いた兄の一言。光実は、そういう所に兄なりの人間味を感じるのだった。
「......ありがとう。兄さん。」
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最後のリハーサル中、せつなは辺りを見回していた。
タルトの報告とは、かつてプリキュアオールスターズに倒された『邪悪の神ブラックホール』の復活と、彼の尖兵達が既に暗躍し始めている事だった。
彼によれば、『仮面ライダー』とやらの力を借りるらしいが、その『仮面ライダー』とやらが現れる前に賊が襲ってくる可能性もある。
『プリキュア』として心の準備をしておく必要は、充分にある様に思える。
考え込んでいたせつなに、ラブが話しかけた。
「......ねぇせつな。今日は、
「え?......多分来ると思うわよ?」
「だってさ。良かったねーミキタン。」
何故かラブが怪しげに笑った。
瞬と隼人は、せつなが『管理国家ラビリンス』の幹部『イース』だった頃の同僚、『サウラー』と『ウエスター』だ。
せつながプリキュアに転生し、元凶であるスーパーコンピュータ『メビウス』が破壊されると共に、『ラビリンス』は崩壊。
管理国家立て直しの為、元幹部の三人は一度帰郷。
最近では祖国改正の傍ら、南瞬と西隼人としてラブ達に会いに来ている。
それだけに留まらず、瞬は美希、隼人はせつなと何やら香ばしい雰囲気が......おっと、今は野暮であった。
やがて、四人4人の楽屋にスタッフが入り、大会のスタートを告げた。
「いよっしゃ!いくよ、ミキタン、ブッキー、せつな!!」
「「「うん!!」」」
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『ケーキ屋シャルモン店主、凰蓮·ピエール·アルフォンゾ』
『チームインヴィットダンスコーチ、城乃内秀保』
『フルーツパーラードルーパーズ店主、阪東清治郎』
会場のロビーに飾られた祝花の数々を見て、無意識に微笑む光実。
(これだけ多くの人とつながっていたのか......チームガイムは。)
アナウンスが聞こえる。開戦が迫っている様だ。
後ろに控えたダンサー達と目を合わせ、胸を張って宣言した。
「よし!チーム『ガイム』、絶対優勝するぞ!」
「押忍!」
意気揚々とステージに上がるチーム『ガイム』。
その気力とは裏腹に、ステージ上は光実が目を疑う様な惨状に成り果てていた......。
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数分前、舞台裏:フレッシュサイド
チームガイムに先立ち、ステージに立つ事となった『フレッシュカルテット』。
スタッフに促され、四人が体をダンサーモードに切り替えたその時、無粋にも、横の階段からステージに上がる者がある。
当然スタッフに止められるが、そいつはまるで止まろうとしない。
長身で、黒いヒールを履いているが、フードのついた灰色のローブが足から上を覆っており、その表情はまったく読み取れない。
ズカズカとステージに上がり、四人と対峙する侵入者。
観客たちが首をかしげるが、四人だけは、そいつが誰なのか気付き、青ざめている。
「お待ち下さい!ステージへの立ち入りは、ご遠慮いただいており......。」
「あ~ら、良いじゃないの。これから、もっと面白い
「はぁ......?」
呆然とするスタッフを他所に、そいつは、ローブを脱ぎ捨てた。
宙を舞うローブ。だが、四人の視界には、ローブを脱いだ『その女』の姿しか入らなかった。
黒いワイシャツに黄色の木の枝を絡めた様な、特異な衣装。おとぎ話の雪女を思わせる、真白い肌と髪。ヘビの様に冷酷で威圧的な、吊り上がった紫の目。
見間違うハズもない。
四人は、かつて倒したハズの“その名”を呼んだ。
「「「「ノーザ!!!」」」」
「フフフ......覚えてたの。嬉しいわ、お嬢さん達......。」
「どうして......あんたが。」
「知りたいの......だったら無理矢理にでも......。」
そこで言葉を切り、ノーザは腕に巻かれたミキサーの様な機械を露にした。
ミキサーに、果実の形をした錠前をセットする。
その瞬間、ノーザの体はツタで覆われ、緑の光を放つ。
『set up ヘルヘイム』
低い効果音と共に、ノーザは植物を象る鎧を纏った怪物に変貌した。
黒い上着は真紅に変わり、顔や腕には葉脈の様な模様が出来、頭には悪魔の様な角まで生えている。
それは、四人の知るノーザではなく、殺戮と悪意の固まりの様な存在だった。
「だったら無理矢理にでも、聞いてみる?」
余裕が滲み出た態度で四人と睨み合うノーザ。
すぐ側で警備に当たっていた貴虎が、見逃すハズもない。
ゲネシスドライバーを巻いた状態でノーザの前に立ちはだかる。
「貴様だな......主催者に予告を送り付けた『闇の同盟』とやらは......!」
「なら......どうするおつもり?」
「警備員として言わせて貰うが、彼女達は今日の大会の為、ダンスに精を出してきた......済まないが、ステージを降りて貰おう。」
異形の怪物を前に、貴虎の目は全く臆していなかった。
「嫌だ......と言ったら?」
貴虎は顔色を変え、ノーザを本気で威圧した。それは、己の宝を護るため外敵に牙をむく獅子の様だった。
「こうするまでだ......!」
懐から、メロンエナジーの
貴虎の頭上に、ファスナーの様な穴が開いた。
『lock on メロンエナジーアームズ!天下御免!』
効果音と共に、穴からメロンを模した鎧が降下し、貴虎は、『仮面ライダー斬月・真』に変身した。
「スタッフに観客の避難をさせている。君達も今のうちに......。」
「有難いけど、それは出来ないわね。」
美希が皮肉る様に言った。
「何を言ってる!コイツは危険な......」
「危険だからこそ、ここは私たちの出番でもあるんです。」
「......どういう意味だ?」
「言うより見せるが早いかもね。ミキタン、ブッキー、せつな!行くよ!」
「うん!」
怪訝そうな貴虎を前に、四人は懐から、携帯型変身アイテム、『リンクルン』を取り出し、開いた。
『チェンジ・プリキュア・ビートアップ!』
四人揃った掛け声と共に、桃色、青、黄、赤のドレスを纏ったプリキュアに変身した。
「ピンクのハートは愛ある印!
もぎたてフレッシュ、キュアピーチ!」
「ブルーのハートは希望の印!
つみたてフレッシュ、キュアベリー!」
「イエローハートは祈りの印!
とれたてフレッシュ、キュアパイン!」
「真っ赤なハートは幸せの証!
うれたてフレッシュ、キュアパッション!」
「フレッシュ!」
「プリキュア!」
突然の変貌に驚く貴虎。当の『プリキュア』のリーダー
キュアピーチ/ラブは、よほど決めポーズに飢えていたのか、満足げににやけている。
「プリキュア......か。ウワサは聞いていたが、まさか君達が......ともかくも、ノーザと言ったか?これで5対1だが、どうする?」
「5対1......本当かしら?」
不適に笑うノーザ。彼女は腕のミキサーのレバーを引くと、無数の紫の粒子を発生させた。
それはみるみる内に、白いサナギ型の《初級インベス》に変化した。
「こすいマネを......プリキュアさん方、あの女を頼めるか?周りの化け物は私が何とかする......!」
「合点です!あとは、避難を......!」
ラブの心配は、杞憂だった様だ。
「慌てないで!大丈夫ですから!」
「プリキュア達を信じろ、きっと大会は元に戻る!」
この二人とスタッフの機転の甲斐有ってか、続々と避難する観客達。
しかし......観客達の行く手を阻む、巨大な陰。
巨大なツル形植物の怪物が、逃げ惑う人々の道を塞いでいた。
ノーザの使役した『ソレワターセ』だ。
「ソレワターセェェ!」
不気味な雄叫びを上げ、人々の行く手を阻むソレワターセ。
「ちっ......ノーザめ!流石に用意周到だな......!」
憎々しげにソレワターセを睨むウエスター。
攻撃を仕掛けようとしたその瞬間、無数の緑の弾丸が、ソレワターセを攻撃した。
野太い悲鳴を上げ、後ろに倒れ込むソレワターセ。
「今のうちに......逃げるんだ!」
ウエスターに促され、ようやくその場から脱する人々。
全員が弾丸の飛んだ舞台裏に目をやると、
「皆さん、今です!」
「でかした光実!これで形勢は五分五分......後は、『どちらが強いか』、ただそれだけだ!」
各々が腕を振るい、大切なモノを賭けて戦う中、アリーナに近づく、4つの存在に、その場の誰もがまだ気付いていなかった......。
・え?クライン?誰そいつ?