プリキュアオールスターズ×仮面ライダー~bの復活とsの暴走 ~ 作:鈴木遥
・心の大樹での戦闘が始まって数分経った頃、ゆりは初めて膝をついた。
彼女の背後には、シャドームーンのサーベルに競り負け手首から吹き飛んだムーンタクトが突き刺さっている。
「......くっ!」
シャドームーンのロボットの様な無機質な緑眼が、苦痛に呻くムーンライトを見下ろす。
蔑みとも、侮辱ともとれる冷たい目で。
「ここまでか。キュアムーンライト。だが、恥じる事はない。元より、人間の身空で『創世王』たるこのオレに勝とうなど、無理な話......。」
そう呟きシャドームーンは腰のサーベルを振り上げた。
「......『心の大樹』を、どうするつもり......!?」
「貴様に答える必要はない......安心しろ、仲間には『ムーンライトはよく戦った』とよく伝えておくよ......。」
サーベルはムーンライト目掛けて振り下ろされる。
それは、走馬灯とでも言うべきか、ゆりの脳裏に大切な人々の顔が浮かんだ。
父、母、師の薫子、親友の来海ももか、ハートキャッチの仲間たち。
そして......そして......そして......!
(ごめんなさい、ハヤト君......!!)
ガキン!!
何かと何かがぶつかる金属音。
異変を感じたゆりが目を開けると、そこには薄紅の鎧を纏った戦士がいた。
「何してんだテメェ......オレの
小柄ながら屈強な肉体を持ち、桃色の澄んだ目をした戦士。その手には、薄紅の宝石が付いたタクトが握られていた。
ゆりは、それが誰だかすぐにわかった。
「ハヤト君......!!」
「ごめんねーちゃん、遅くなって......。」
「......!?プリキュアか、貴様!!」
「少し違うな。ま、アンタの敵なのは確か......。」
「......何でもいい。私の邪魔立てするなら、誰であろうと“敵”だ。」
「上等!」
シャドームーンはサーベルを、ハヤト/チェリーはタクトを構え直し、前に数歩進むと同時に、壮大な剣舞が幕を開けた。
ガキン!ガキン!ドゴォン!
鈍い音を立てながら交差する刃。だがその形勢は、やや
ハヤトに傾いている様だ。
やがて両者息が上がり出すと、ハヤトはゆりの元へ駆け込み、耳打ちした。
(ごめんねーちゃん、今のオレには、
(......?)
(最悪の場合、大樹を見捨ててでも、ここから二人で逃げること!)
「な......!ダメよそんなの!ハヤト君、あなたは良いとして、私は『心の大樹』によって『プリキュア』に選ばれた。大樹を見捨てて生き延びるなんて出来ないわ!」
「ゆり姉ちゃん、よく考えて!ここで命を投げ打っても、ヤツは俺達を倒して大樹を奪って行く。そうなったら、俺達に大樹奪還のチャンスはないんだよ?
......何より皆が、俺が悲しいじゃないか!」
「......!!」
「ゆり姉ちゃんが、プリキュアの使命を大切に考えてるのは良いことだと思う。でも、その為に命を落とす事なんて、月影博士も、お母さんも、誰も望んでない!
ゆり姉ちゃんは、もう一人じゃないんだから!」
とうに分かっていた事だ。自分は一人じゃない。仲間がいるということ位......。
分かっていながらなぜまた、自分を顧みようとしなかったのか......。無知な自分を恨み、涙が出てきた。
「泣くのは後だ、ゆり姉ちゃん。合図したら、飛び降りて!」
「何のつもりか知らんが、させんぞ!」
シャドームーンは刃に緑のエネルギーを貯め、思いきり振りかぶった。
ハヤトはタクトを振りかぶり、さくらんぼ形の光線を放つ。
『ツインチェリー・フォルテウェーブ』
斬撃とフォルテウェーブの衝突。まばゆい閃光と共に、ハヤトは叫んだ。
「今だ!飛んで!」
ゆりは紫のマントを出現させ、大地から飛び降りた。
「ぬぅ......。」
歯痒そうにこちらを睨むシャドームーンを残し、ハヤトはゆりを追った。
飛び降りると同時に、ハヤトの首元には薄紅のマントが出現。
空中で、ゆりの体をしっかりと掴んだ。
「ごめんなさい、迷惑かけて。」
「謝んのはオレの方だよ......彼氏のクセに、姉ちゃんの事何も分かって無かった。コロンさん......だっけ?その人の事は、またゆっくり話してくれれば良いよ。
でも、辛かったら包み隠さずオレにぶつけてくれよ。」
「......ありがとう。」
涙を流し、ハヤトの小さな背中に顔を埋めるゆり。
ハヤトは頬を紅潮させながら、咳ばらいして言った。
「安心すんのは早ぇ。地上に今、ヤバい奴等が来てる。そいつらと、つぼみ姉ちゃん達が戦ってるんだ。」
「......そうね。行きましょう、皆の所へ......!!」
シャドームーンを振り切り、ゆりを救ったハヤト。
彼の心は、きっとその場の誰よりも、成長した事だろう。
自分の事ながら、彼はそれを実感していた。
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一方、地上では、プリキュア側の戦況がさらに悪化していた。
つぼみとえりか、いつきの全員が、プリキュアの衣装を劣化させ、粗末なワンピースの様に変形している。
よほど圧倒されたのか、足下はふらつき、顔に疲れが滲み出ている。
「......くっ!強い!」
「こんなに強いって、聞いてないっしゅ!」
「それでも、諦めません!」
疲れきった三人を見下ろし、ビッグバンが不敵に笑う。
「ムダだよムダァ!四人揃わねぇテメェらなんざ、虫ケラ以下、俺らが
「くっそ!アイツ許せねぇ!」
三人を嘲笑うビッグバンに怒りを露にし、飛び出そうとする弦太朗。
流星は、すんでの所で彼を止めた。
「落ち着け弦太朗!今の俺達に何が出来る?足手纏いになるだけだ!」
「けどアイツ、オレのダチを......あぁくそ!ベルトがあれば!」
そうこう考える内、敵はプリキュアに止めを刺しにかかった。
「あばよ、プリキュア。ブラックホール様に楯突いた事を後悔しながら......死ね!」
ビッグバンの目が怪しく光り、まもなく紫の光線に変わる。それはまるで、宇宙に あまねく星たちを消し飛ばす、闇の力の象徴に思えた。
(こんな所で終わるんですか!?人類の......
つぼみが目を閉じ、死を覚悟した時、彼女たちの前に大きな鉄の塊が立ち塞がった。
それは、黄色のボディを持つ四輪の大型車だった。
「パワーダイザー!?誰が乗ってる?」
驚いた流星がパワーダイザーに駆け寄ると、コックピットからハーフの青年が降りてきた。ラグビーのユニフォームを着た、図体の良い大男だ。
「
「遅くなって済まない、賢吾からの届け物だ。」
隼は、弦太朗と流星に、一つずつベルトを渡した。
「フォーゼドライバーに、オレのメテオドライバーまで......これを二つとも賢吾が?」
「ついさっき、ユウキの居る人工衛星から、怪しい連中の報告を受けてな。賢吾が必死で完成させたんだ。で、オレにパワーダイザーで届ける様に言われた訳。」
「何はともあれ、助かったぜ!サンキュー隼!」
「おう、死ぬなよ。」
二人はそれぞれのベルトを腰に巻き付け、スイッチをセット。
『メテオ ready?』
『3・2・1』
「「変身!!」」
ベルトのレバーを引くと同時に、弦太朗はフォーゼ、流星はメテオに変身した。
「ようやく宇宙、キターーーー!」
「お前らの定めは、オレがきめる!」
メテオはポラリス、フォーゼはプレアデスに攻撃する。
「長いこと加勢出来ず、済まなかった!」
「あとはオレ達に任せろ!」
二人が加勢し、三人の顔に気力が戻った。いや、それは全盛期以上の物かも知れない。
さすがはゾディアーツ慣れしている二人は、ハートキャッチの三人があれだけ苦戦した二体のゾディアーツを、あっという間に追い込んだ。
弱りきった二体を見て、ビッグバンは手の平を返す様に言った。
「おいおい何てザマだ......もう良いよ、テメェら
「......!?」
ビッグバンが掃き捨てると同時に、彼の両目の下に“穴”
が空いた。それは、よく見れば、彼の“口”だった。
口は、まるでブラックホールの様な強大な引力を発し、二体のゾディアーツをあっという間に吸い込んだ。
光さえ逃れられない、『宇宙の墓場』へと誘うかの様に......。
「何て事を。」
「酷すぎます......!!」
戦士たちの批判を、ビッグバンは聞いていなかった。
そして何かを誇り、達成したかの様に、遠い目をして“誰か”に話しかけた。
「役者は揃った、出番だぜ!さぁ来な『プレゼンター』よォ......!!」
ビッグバンの咆哮と共に、空に暗雲が立ち込め、雲の切れ目から人影が現れた。
「あれが、『プレゼンター』?」
「我望のヤツが、探し求めた存在......。」
それは、『仮面ライダー』や『ゾディアーツ』とも、ましてや『プリキュア』とも違う存在。
それは、よく見ると、淡い光の珠だった。
「ハハ......ようやく遭えたなプレゼンター。デューンのヤツを利用して、長いこと待ってたが、今日となっちゃ昔の話よ。」
「一体、何なんですか!?」
「花咲さん、あれは普通じゃない。生物の常識は何ら通じないんだ!」
予想外の事態に、焦りを隠せないメテオ。
地上に降りてまもなく、プレゼンターもまた、ビッグバンに吸収された。
但し今回の場合は抵抗する事なく 、流れに身を任せるかよ様に吸収されたのだ。
「あの野郎、プレゼンターまで......!」
あきれ返るフォーゼの言葉も、ビッグバンの耳には届かない。
「クク......ハハ......アーッハッハッハァ!膝まずけ
気味の悪いビッグバンの咆哮と共に、辺りは真っ黒い霧に包まれた。
「プレゼンターが、《宇宙の根元》だと......!?」
訳の分からないメテオ。彼が考えを張り巡らす暇もなく霧は晴れ、そこには異形の怪物がいた。
シルエットは人間に近いが、頭部は紫に右半身は赤、左半身は青といった異様な風貌で、顔だけではなく全身に、ビッグバンから受け継いだであろう黄眼がびっしり付いている。
その姿は、“怪物”と呼ぶに相応しかった。
赤銅と群青色の両手を広げ、空中に紫の巨大な光弾を作り上げた。
光弾は、やがてビッグバンの手に抱えきれなくなり、彼の頭上に浮き上がった。
「まずいですぅ!」
「どうしたんですか!?シプレ!」
つぼみの疑問に、コフレが答えた。
「あの光弾から、とんでもない闇のエネルギーを感じるですぅ!」
「つまり、どうなるの!?」
「このままだと、周囲のモノ全てを破壊しつくす大爆発が起こるでしゅ!」
「ポプリ、本当なの!?......くっ!どうすれば......!」
絶句するハートキャッチ一同と、仮面ライダーの二人。
やがて光弾はブクブクと膨れ上がり、徐々に地面へ下降し始めた。
全員が目を閉じ、死を覚悟した時、目が潰れそうになる程のまばゆい閃光が迸り、視界はあっという間に光に包まれた。
「ああもー、死んじゃったよ!もも姉の原宿土産のパンケーキ、食べ損なったじゃ~ん!」
死に際に程遠い文句を垂れるえりか/キュアマリン。
「残念ながら......まだここはあの世じゃないぜ?」
前方から聞きおぼえのある声がした。
目を開けると、そこには『ナイトオブ・チェリー』と化したハヤトと、彼に抱えられたキュアムーンライトがいた。
彼の『チェリータクト』から発せられた光がドーム型の結界と化し、光弾を包み込んで消化していた。
「お待たせ、姉ちゃん達。」
「遅くなってごめんなさいね。」
「ゆりさん!それにハヤト君も!」
安堵し、声を上げるサンシャイン/いつき。
「良かった~!お互い生きてたっしゅ!」
「無事だったんですね!」
舞い上がるハートキャッチ一同に、ゆりはピシャリと言った。
「安心するのはまだ早いわ。次の一撃で決着しないと、恐らく私達に勝ち目はない......!」
「でも、どうすれば......!」
「“合体技”だ......!」
フラフラと立ち上りながら、メテオが言った。
「朔田さん......!」
「そりゃあ良い!俺達の大技と掛け合わせるか!楽しそうじゃんか!」
そう言うと、フォーゼ、メテオはそれぞれのベルトに、強化スイッチをセット。
フォーゼはコズミック、メテオはメテオストームに変身した。
「皆のきずなで、宇宙を掴む!」
「オレの定めは、嵐を呼ぶぜ!」
「人間風情がァァァ!」
二人の変身を見たビッグバンは理不尽な怒りに咆哮をあげ、頭部から無数の触手を排出し、地面に突き立てる。
すかさず、ベルトのスイッチをメテオストームシャフト
に移動。
シャフトの先端がコマの様に高速で旋回し、周囲の触手をあっという間に粉砕した。
『メテオストーム・パニッシャー!!』
「くっ!小癪なマネを!」
さらに、フォーゼも専用武器『バリズンソード』にコズミックスイッチをセット。刀身は二つに分かれ、そこから青色の光線が出現した。
それはさながら、宇宙に輝く
それは、真っ直ぐ前に伸びると、布の様にビッグバンの体を包んだ。
ビッグバンは逃れようともがくが、もう遅い。
四人揃った『ハートキャッチプリキュア』は、『スーパーシルエット』に強化変身。
既に必殺技を開始していた。
『花よ、咲き誇れ!
プリキュア・ハートキャッチオーケストラ !』
どこからともなく現れた、桃髪の巨大な女神。
彼女はフォーゼの作った『
それが何を意味しているか、ビッグバンが気付いた時、女神は既に、その巨大な拳を彼に叩き込んでいた。
(ここまでか......コロンの真相については......そうだな、ブラックホールにでも聞きな。ヤツは全てを知ってる。お前らがせいぜい奴に負けないこと、先に逝って地獄から祈ってるよ。)
ビッグバンは、苦悶する事も、抵抗する事なく、爆発四散した。
死の間際、自分に呟いた彼の遺言を、ハヤトは聞き逃さなかった。
後に残ったのは、ビッグバンの吸収という呪縛からとかれた二人のゾディアーツ
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それから5日が経ち、弦太朗と流星は二度ハートキャッチ一同の前に現れた。
「ブラックホール......!?」
その名を聴いたつぼみは、顔色を変えた。
「プリズムフラワーの時に、襲ってきた奴だ......!」
えりかは、悪い夢でも見る様な目で言った。
「人工衛星が宇宙からの電波を受信してな。周辺を調べたら、真っ暗な星雲の様なモノが、地球を覆う様に近づいていたんだ。そう。まるでブラックホール見たいにね......!」
「何でまた、アイツが......!?」
「よし!迎え撃つか!」
弦太朗は、無理に大声張り上げた。
「迎え撃つって......一体どうやってです?」
ゆりが冷静に反論した。その言葉には、若干軽蔑の響きがある。
「詳しいことは分かんね。けど、この前の戦いに勝っても皆どこか納得してなかったろ?
「他の、連中......あ!そうだ、シプレ、ブラックホールの件、
「他の?ですか?」
「『プリキュアオールスターズ』はご存じなんですか!?」
「はいです!『仮面ライダーディケイド』の誘導で、いちご坂って町に集合がかかっているですぅ!」
「では、もしや......?」
「その町に行きゃあ、ディケイドや仮面ライダーのダチと、プリキュアオールスターズと合流出来るって訳か!」
「よっしゃ!いちご坂に急行って事で、けって~い!」
「え、えりか......!それは先輩の先輩の先輩の......。」
ようやくスタートラインに立てたプリキュア 達。
いちご坂へ出発の準備にハヤトも加わり、着々と事が進む中、人知れず戦士たちを見守る存在に、彼らはまだ気が付かなかった......。
またまた三部作構成を使ってしまいました。
大変申し訳ありません、これにてフォーゼ&ハートキャッチ編、終わります!
コラボエピソード、まだ大量にあるんですよね~!
どうしよう。カットしようか、しっかり書こうか......。
あああああああ‼️