ウルトラマンアグニス〜正義の闇となれ〜   作:ゼットフォース
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第4話 巨人

俺は 噴水の近くにあるベンチに座り、竜によって蹂躙された町を見下ろした。ここの病院は高台にある為、町全体を見渡す事が可能なのだが────町は今までの姿とは程遠い姿となっている。町の一部は廃墟同然となり、人が住める環境ではなくなっている。しかし今もあそこには救助が間に合わなかった人や突然の事に気付かないまま死んでしまった人が多く残されている。

「…………」

この得た力に人を生き返らせる事が出来ればどれだけいいか。ポケットから取り出したアグニスブレードを握り締め、どこかにそれを可能とする機能がないか探すが、それらしき物は1つも見当たらない。

「翼君、お待たせー」
「っ!お、おう、早かったな」

走ってきた凜に気付き、慌ててアグニスブレードをポケットの中に隠した。この手に入れた力は誰にも明かしてはならないと俺は考えたのだ。あんな大きな力を俺みたいな普通の一般人が持っているなんて事がバレれば……一体どうなるかなんて想像もしたくない。

「それで話って何だよ?」
「うん。実は、この前現れた巨人の事について話がしたかったんだ」

俺の隣に座る凜はそう言ってきた。予想はしていたが、巨人の話だったか。……まさかとは思うが、正体が俺だと気付いてるって事はないよな?

「翼君はあの巨人の事、どう思う?」
「どう思って……まぁ、普通に人類の味方だな。新聞やニュースでも誰もがそう言ってるみたいだし」
「そうだよね。でもあたし……あの巨人が少し怖いんだ」
「怖い?」

それはまたどうして……と聞こうと思ったが、その言葉を飲み込んだ。そういえばほとんどの人が人類の味方だと言っているみたいだが、中にはその見た目から怖いっていう印象を持つ人もいるとか……。

「あたし、直接は見てないけどテレビでその姿を初めて見て……なんだか怖かったの。見た目もそうだけど、戦い方か酷くて……」
「きっと巨人も怪獣が憎いんだろ」

何故なら俺があの巨人だから。怪獣をあんな風に殺しても、それに罪悪感など俺には一切ない。あるのは怪獣をこの手でようやく殺す事が出来た優越感だけだ。

「そんな、翼君じゃないんだから……」
「そうでないという根拠でもあるのか?」

俺の考えを否定する凜にそう問いかける。その言葉に凜は「え、えっと……」と答えを出そうと必死になり、考え込んでしまう。しまった、俺をまるで悪者のように例えてくるもんだから口調が強くなってしまった。

「悪い。そんな事分からないのに」
「う、ううん……あたしもごめんね。翼君をまるであの巨人と被せるような言い方して」

被せるどころか、正体は俺なんだけどな。

「あっ。ねぇ、翼君。明日から行く事になる学校の行き方分かってる?」
「ん?あー……」

俺達が通っていた高校は校庭を含んだ約70%がもはや使い物にならないらしい。修理は既に開始していふが、それが終わるのが一体いつになるのか分からない。その為、俺達は各高校の空き教室を使って授業を受ける事になったのだ。

「確か天之光(あまのひかり)高校だっけか。まぁ、大体は分かるぞ」
「あたしね、地図を見たんだけどよく分からなくて……だから明日案内してもらえないかなーって」
「いや、案内するも何もどうせ一緒に行くだろ」

当然の事を言ったのに、何故か凜に驚かれた。もしかして別の高校だから、もう一緒に行かないとでも思ったのか?小さい頃からずっと一緒に通ってるんだからそんなわけないだろうに。

「そ、そうだよね!うん、なら明日も迎えにそっちに行くから」
「ああ」

つか、そうでないと俺は高校とは反対方向に行かないといけなくなるからな。






夜22時────平和の園、台所にて茂さんはたった1人で今日の事を記録に残していた。俺が台所に入ると茂さんが気付き、手の動きを止めて俺に顔を向けてきた。

「翼君。そろそろ君も寝る時間だよ?部屋に早く戻りなさい」
「茂さんと2人で話したい事があるんです。話すなら今だと思って」
「うーん……分かった、いいよ。なら座って話そうか」

茂さんに了承してもらい、俺は向かい側の椅子に座る。今の時間ならば正人や他の子ども達も寝ている為、邪魔が入る事は無い。

「それで話っていうのは?」
「数日前に現れた巨人の事です」

俺が『巨人』と口にした途端、茂さんは眉をピクッと動かした。俺が茂さんに相談する事にしたのは、俺と同じ境遇を持ち、凜とは別の意味で近い人だからである。

「茂さんは、あの巨人をどう思いますか?」
「どうしてそんな事を聞くんだい?」
「凜に言われたんです。あの巨人が怖いって……人々を守ってくれたのに」
「なるほど」

理由を聞くと、茂さんは顎に手を当てて、棚に飾ってある写真に目を向けた。そこに写っているのは茂さんと綺麗な女性、そして真ん中には2人と手を繋いで笑顔を見せている少女。

「確かにあの巨人は僕達を助けてくれた。それで仮に僕達の味方だとしても、僕は巨人()を信じない。怪獣を倒してくれたとしても、あの力が僕達に牙を向けないとは限らないからだ。実際、巨人が戦った事で被害が何倍にも大きくなったという事件すらある」
「そうですか……ん?」

巨人……達?

「茂さん。巨人ってお……1体だけじゃないんですか?」
「えっ、まさか知らないのかい?……ああ、君は怪獣に関するニュースなどは一切見ないから当然か」

茂さんはそう言うと、ポケットから携帯を取り出して何かを検索し始める。俺が何を、と言う前に画面をこちらに向けてきた。その画面には、

「ウルトラマン……メビウス?」
「うん。世界各地で一番多く目撃されている巨人だよ」

画面には巨人の姿が映っており、そのメビウスという巨人は

「この他にもダイナ、ギンガ、ゼロという名の巨人が目撃されているんだ。どの巨人も未知の超人……『ウルトラマン』という名称がつけられているんだよ」
「……ウルトラマン」

ウルトラマン……アグニスブレード……なら俺の名前はウルトラマンアグニスになるのか?

「話を戻すよ。とにかく僕は巨人達が必ずしも味方だとは思っていない。あの強大すぎる力は怪獣と同じくらいに危険なんだよ」
「っ……巨人が怪獣と同じだって言うんですか?」
「そうは言ってないだろ。……翼君、もしかし僕に何か隠し事をしていないかい?」
「っ!?」

まずいっ!?まだ正体がバレたわけじゃないけど、このままだといずれ茂さんにバレる!

「か、隠し事なんてしてないですよ……それじゃ俺、もう部屋に行きますね。時間をとらせてすみませんでした」
「そうか……うん、分かったよ」

俺は立ち上がり、椅子を机の中へとしまって台所を出ようとした。その時、背後から茂さんに声をかけられた。

「翼君。何か悩みがあったら何でも相談してくれていいからね」
「……はい。ありがとうございます」

俺は茂さんに軽く礼をし、台所から立ち去った。すると再び台所からはペンを動かす音が聞こえてきた。








『──さん。先日出現したあの巨人は防衛軍によってウルトラマンと認めたらしいですが、どう思いますか?』
『今まで確認されたウルトラマンと比べると、戦い方が荒々しいのが目立ちますが……それを除けば、あの巨人はウルトラマンと認めていいでしょう』

朝、俺はバターを塗った食パンを頬張りつつ、テレビを見ていた。解説者の隣には俺とあの竜──クルガロンというらしい──が戦っている映像が流れている。別に見たいわけではないが、あまりにも知識不足だから仕方なくだ。

「あれ?お、お兄ちゃんが怪獣のニュースを見てる!?」
「えっ!?あーっ、本当だ!」
「めずらしー!」
「正人、それにお前ら黙って食べろって。遅刻するぞ」

口の周りにジャムやチョコを付けている子ども達にそう言い、俺はコーヒーを飲み干す。そして食器を片付け、俺はソファーに置いてある鞄を持つ。

「それじゃ茂さん、行ってきます」
「うん、気を付けてね」
「お兄ちゃん、いってらっしゃーい!」
「「いってらっしゃーい!」」

茂さんと子ども達に手を振り、俺は玄関へと向かう。靴を履き、外に出るとそこには既に凜がいた。

「よっ」
「おはよっ、翼君。それじゃ行こっ!」
「ああ」








『こちら、スペース号。本部に連絡、異常なし』

その頃────宇宙空間を調査・パトロール中の宇宙船が日本にあるウルティメイト・U本部と連絡をしていた。宇宙空間をゆっくりと飛び、小惑星の間を抜けていく────すると、前方から何かが飛んでくる事に気付いた。

『前方から青く発光する物体が接近。高エネルギー反応を確認。軌道上に地球を確認』
『その物体の正体を確かめろ。もしも敵対する素振りを見せたら攻撃を開始せよ』
『了解』

スペース号は発光体へと近付いていく。すると、突然その発光体は速度を上げてスペース号に向かってきた。

『っ!?まずいっ、緊急回避!』

かわすスペース号の真横を通り抜け、発光体はスペース号の真上へと移動した。

『速度を上げろ!あの発光体に死角を作るな!』
『りょ、了か────』

速度を上げようと隊員がレバーに触れた瞬間、発光体から無数の青い光弾が放たれた。光弾はスペース号のあらゆる場所に直撃し、爆発を起こしていく。

『う、うわあああああっ!!』
『ここまでかっ……なっ!?』

発光体から光が消え、それは段々と怪獣へと姿を変えていった。その怪獣の姿に、目撃した隊員は目を見開く。

『ベム、ラー……!?』

次の瞬間、スペース号は大爆発を起こして砕け散った。ベムラーと呼ばれた怪獣は再び発光体となって飛んでいく────地球へと。






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