東方幻奏歌─東雲を告げる深紅の音─   作:名もなきスライムLv1

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  ズー
  ( ´・ω・`)  ←普段の作者
  (っ. 川 .o
 ̄ ̄`ー―′ ̄\
 


第2話 転生直後にこの仕打ちはあんまりじゃないでしょうか?

 ふわりと地面に着地し、新たな体がしっかりと動くかどうかを確認する。

 

─うん、前の体と比べて違和感があるが、必要最低限の動きは出来るようになっているな。

 

 

「えーと…そうだな、先ずは自己紹介しよう。俺は如月優介だ。訳あって鈴蘭畑で動けなかった所をメディスンに助けられたんだ。」

 

「あら、メディスンが?どういう風の吹き回しかしら?人間嫌いの貴女が…」

 

 

え、この子人間嫌いなの?ふとメディスンを見ると、先程まで可愛らしい人形に見えたその目が殺人人形のように見えてきた。ヒエッ…

 

「うーん、なんか人間の禍々しい気が無かったって言うか…」

 

 

「そうね、こいつ人間じゃ無いもの。」

 

 

…ん?今、何て言ったんだこの人は?

 

ま、まぁ転生で種族が変わるなんて想定内だ、しかし初対面の相手にこいつ呼ばわりか。

 

うん、きっとそういう習慣があるんだろうね。仕方ないよね。

 

…目の前のこの人からは殺気がプンプン漂ってくるが。

 

 

「…ねぇ貴方、『これ』に見覚えはないかしら?」

 

そういって彼女が放り出してきたものは黒く、そして艶やかに輝く人の形をしたものだった。特筆すべきは…

 

─頭部が、無い。

 

 

「ねえ、幽香…それ、何?」

 

青い顔をしながらその得たいの知れない者を凝視するメディスン。しかし、幽香は俺の動きから目を離すことはしなかった。

 

少しでも動いたら殺す。目がそう言っているような気がした。

 

 

「貴女の家で花の手入れをしていたらコイツが現れて襲いかかってきたのよ。…スペルカードルールを知らなかったわ。いや、それ以前に知能があるかどうか…」

 

「おい、そいつまさか…」

 

一切表情を変えないまま、幽香は静かにいい放った。

 

「ええ、生きてたわよ。ちゃんと頭もあった。…10分前までは、ね。」

 

その瞬間、背筋が凍る感触を初めて感じた。

心拍数が上がり、冷や汗が止まらない。

 

「…普通なら撃退して終わりだけど、死ぬ直前にこいつ、一本の鈴蘭を踏み潰して…笑ったのよ。」

 

「それってまさか、幻想郷の花を荒らし回ってたのって…」

 

 

イヤな予感がしてなら無い。本能が逃げろと警告している。しかし目の前の強力な存在がそれを許してはくれない。

 

幻想郷、それがこの世界の名前か?それともある一定の地域を差した言葉なのか?わからない。

 

いや、今考えるのはそこじゃない。どうやってこの状況を切り抜けるか──

 

 

「そういうこと。そして貴方からはこいつと同じ臭いがプンプン漂ってくるわ。…早い所、本当のことを言いなさい。」

 

 

「ま、まってくれ!本当に知らないんだ!本当に何も…」

 

 

必死の命乞いも叶わず、幽香は深いため息をつき、手に持った傘を目の前に突きだした。

 

 

「相手が悪かったわね。冥土の土産によーく頭にいれておきなさい。私はフラワーマスター、『風見幽香』よ。」

 

 

目の前の傘の先端に黄色の光が収束しだし、徐々に球体へと変化していき、それが常軌を逸した熱を帯び、空気が焼け始める。

 

「散りなさい。」

 

 

その球体から光が発射されると同時に、自分の体が強い衝撃と共に吹き飛ぶのを感じた。

 

状況が読めず、先程自分がいた場所を見ると、人一人包み込むほどのビームが放たれていた。

 

着弾点からは黒煙が立ち上り、

 

あれに当たっていたらと思うと…

少し落ち着いたところで自分が棒状のものに引っ掛かって空中を飛んでいることに気づいた。

 

「ふーっ、ヒヤッとしたぜ。お前、怪我はないか?」

 

そこには箒にまたがり、ウェーブのかかった金髪を片側だけおさげにして前に垂らした少女がニッコリと微笑んでいた。

 

 

 

~~~

 

 

さてさて、場面は変わり高度数十m。箒にまたがって空を飛ぶという幼き夢が15年間の時を経て成就した。わーい、やったね。

 

…後ろから鬼が二人来てるんだが。

 

 

「幽香!お前何やってんだよ!何か揉め事があったんなら弾幕ごっこで決着つけりゃいいだろ!…うわっ!」

 

後ろから大小様々な光弾が迫り、少女が箒を急降下させる。

 

「ぐぅっ……しっかり掴まってろよ!」

 

「幽香!メディスン!頼む、話を聞いてくれ!」

 

 

激しく顔を打つ風の中で必死に叫ぶが、後方から雨のように降り注ぐ光弾は鳴り止む気配が無い。

 

「魔理沙、貴女まで巻き込みたくないの。…さっさとその男を渡しなさい!」

 

「…スーさんを傷つけた奴は許さない!」

 

 

あの二人の剣幕、このままじゃこの魔理沙って人も巻き込んでしまう…

 

 

「あんた、魔理沙って言うらしいな。…助けてくれてありがとう…この恩は絶対に忘れない。」

 

「っ!?あんた何を…」

 

 

今まで必死でしがみついていた箒から手を離し、下に広がる広大な草原へと落下していく。

 

いくら高度が低かったとしても相当加速していたため、

落ちたときには物凄い衝撃が身体中を走り、そのまま

草の上を転がり回っていった。

 

容赦なく打ちつける痛みに耐えきれず、声にならない叫びをあげながらその場に倒れ込む。

 

霞だした目をゆっくりと開くと、目の前にはいつの間にか幽香が立ちはだかっていた。

 

 

「…何を考えているの?」

 

「…逃げてても何も変わらねぇよ…メディスンにだって…助けられた…」

 

「…貴方は本当に『アレ』とは無関係なの?」

 

 

背中からの痛みに口が開かず、ただ頷くことしか出来なかったが、それでも幽香は構えたパラソルを静かに下ろしてくれた。

 

そこに魔理沙が息を切らしながら走ってくる。箒で旋回するよりも着地して走ってくる方を選んだようだ。

 

「ぜぇ、ぜぇ、幽香!少し待てって!」

 

「もう落ち着いたわ。ごめんなさいね。…さて、貴方、花は好きかしら?」

 

 

「…急に何を?まあ、花は好きだが…」

 

 

そう、と呟き、上空にいるメディスンに何かを言っている…が、今まで耐えてきた疲れと痛みがどっと押し寄せ、

俺の意識はそこで途絶えた。

 

 

 

~~~

 

 

薄目を開けると、暖かな木目調の天井が見える。

 

…というか、この展開もいい加減見飽きた。転生初日で何て酷い目に会うんだか…

 

 

「まだ起きちゃダメよ。…背骨を骨折しているわ。」

 

 

とりあえず起き上がろうとすると、聞き慣れない優しい声に制止され、自分が上半身裸であること、そして添え木と包帯が胴体に巻かれていることに気づいた。

 

 

頭だけを動かしてみると、幽香が椅子に座ってこちらを見ていた。

 

…え?今の声は幽香?こんな優しい声僕知りません。

 

 

つーことはなんだ。初めて喋ったときからマジギレしてたのかこの人。

 

っ!?そういえば、俺を助けてくれた白黒の魔女(魔理沙)はどうなった?

 

 

 

「なあ幽香!あの時の魔理沙って女の子はどうした?一度キッチリ礼を言わなければ…」

 

 

「ああ、あの子なら貴方が気絶した後直ぐに飛んで行ったわよ。…それと伝言。『怪我が治ったら、博麗神社にくるといいぜ。待ってるからな!』だそうよ。」

 

 

 

回復に専念しろ、ってことか。その博麗神社って所に行く時は手土産持っていかなくちゃな。

 

この世界に来てはじめて訪れた安息に深く溜息をつき、軽く目を瞑った。 …今頃、大吾(あいつ)はどこで何やってるんだろうな。

 

 

 

「ごめんなさい。勝手に貴方のこと決めつけてたわ。

…あの後、花達に聞いたら、『悪い人じゃない』って。」

 

 

「いや、気にしてないよ。…ん?幽香って花と会話が出来るのか!?」

 

 

「…もしかして貴方、外の世界からきたの?…それならなおさら悪いことをしたわね。…ようこそ、幻想郷へ。」

 

 

 

~説明中(幻想郷の主となる概要は全て割愛します。だってそれで「文字数稼ぎ乙ww」とか言われたくないですしおすし。そもそも(以下略)~

 

 

 

「それを含めて改めて自己紹介させてもらうわ。私は風見幽香。『花を操る程度の能力』を持ってるわ。」

 

 

 

そう言いながら先程から持っていた、何も入っていない植木鉢を顔の前まで持ち上げる。

 

何が起こるのかと思っていると、テレビで見るような、花の成長記録を早送りにした映像のような速さで発芽、成長を遂げて美しいチューリップが咲いた。

 

 

「おおっ、凄いな!女の子らしいくていいじゃないか。」

 

 

「ふふっ、そんな事言われたのは貴方が初めてよ。…言われてみると、なかなか嬉しいものね、ありがとう。」

 

 

ニッコリと微笑みながら植木鉢をテーブルの上にそっと置き、丁度俺が向いていた方向(座っていた幽香の真後ろ)のドアを開ける。

 

その先には何度見た光景か、壮大な鈴蘭畑が広がっており、その中にふわふわと浮遊するメディスンの姿があった。

 

…謎の動きをしながら。

 

 

 

「コンパロ コンパロ 毒よ集まれー」

 

 

「…あれは何してるの?」

 

「外来人に良くあることよ。幻想郷はメルヘンの世界なんかじゃない…発展に伴って居場所を失くした妖怪の溜まり場。

 

…メディスン・メランコリー、あの顔で『毒を操る程度の能力』使いよ。」

 

「ちょ…それマジ?」

 

 

「マジよマジ。鈴蘭の毒は勿論、神経毒、麻痺毒まで何でも使えるわ。

あの子、活動エネルギー源が毒だから、ああやって鈴蘭から毒を分けてもらうのよ。

…ところで、貴方お腹減っていないかしら?」

 

 

言われてみれば、起きた時から続いている気だるさが空腹感であることに気づいた。

 

窓の外を見ると、現在の幻想郷が鈴蘭の季節──つまり、5月ならば丁度7時程だろう。

 

 

「そういえば朝から何も食べていないことになるのか。…どこか近場にお店とかあるかな?」

 

「貴方、背骨が折れてるのよ?メディスンも言っていたし、暫くここに泊まるといいわ。」

 

 

それは有難いな。取り敢えずこの数ヶ月は療養に専念しよう。

 

 

「すまん、そうさせてもらおう。」

 

「いいのよ、元々私のせいでこうなった訳だし…」

 

 

キッチンで何かを刻む音と共に、少し寂しげな幽香の声が聞こえてきた。

 

まだ知り合って数時間、重苦しい空気に返答を見つけることが出来ず、目を閉じて今までの状況整理を…

 

 

 

「きゃあああっ!」

 

「グウォォォオオッ!!」

 

 

……その時、外からメディスンらしき叫び声と共に、猛獣のような雄叫びが風を震わせた。

 

 

 

 

─to be contenued─

 





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