第3層
ツナとアスナは第3層の主街区にて休憩をとっていた。今回は転移門のアクティベートはしていない。
「あと少ししたらさっきの分かれ道から森に向かうよ。」
「わかったわ。もう大丈夫よ。」
ツナとアスナは宿屋のベッドで手を繋ぎながら一緒に横になっていた。ボス戦の疲労を取る為に一時間に満たない時間ではあるが仮眠をとっていたのだ。転移門をアクティベートしていない理由は、自分達の存在を知られたくないことが大きい。
「また迷宮区に向かうのよね?」
アスナは部屋着から戦闘服に着替えながらツナに今後の確認をする。
「いや、あるイベントを受けに行きたいんだ。第9層まで続く大型イベントを。」
ツナは後ろを向きながら自身も戦闘服に着替える。ツナは第1層LAのコート・オブ・ミッドナイトも装備する。アスナは後ろを向いているツナに ''別に見てもいいのに” と思うが口に出すことはなかった。
「ツナにはオレンジが一番似合うとは思うけど、意外と黒も似合うのね。」
「ありがと。じゃあ迷い霧の森に出発!」
ツナはアスナに褒められて照れ笑いを浮かべると、それを隠すために宿屋を飛び出す。
「大型イベントってどんなイベントなの?」
「ネタバレはつまらなくなるから教えません。」
ツナとアスナは森に出てくるモンスター《トレント・サプリング》を倒しながら奥へと進んで行く。前回みたいに走り抜けることはせずにきちんと戦闘はしていたが、ツナのレベルは50で、アスナのレベルは45になっているためモンスターは一撃で倒れてしまっていた。
キンッキン
という音が森の奥から聞こえてきた。
「見つけた!アスナ着いてきて!」
「え?」
ツナはアスナの手を握り音のする方に進んでいき、すぐ近くまでくると太い木の幹に隠れてそっと向こう側にある空き地を覗き込む。
空き地に激しく戦う二つのシルエットがあった。
「あれは!エルフ?」
「男の方が森エルフで、女の方が黒エルフだよ。」
戦っている二人は、一人が金髪の長身の男。もう一人は紫色の髪をしたら綺麗な女性だった。
「頭の上に注目して見てみて。」
「あ!二人ともクエマーク付きで戦っているってことは・・どちらかに助太刀するの?」
「当たり!」
「なら女の人に味方をしましょう!」
「ちょっと待って!あのエルフ達は本来であれば第7層に出てくるモンスターなんだ。二人のレベルなら大丈夫だとは思うけど油断は禁物だよ。」
決断をし、立ち上がろうとするアスナをツナが静止させ注意をする。
ツナとアスナはタイミングを合わせて空き地に飛び込んだ。するとエルフ二人が同時にこちらを見て、
「人族が何の用だ!」
「邪魔立て無用!はやく立ち去れ!」
と二人のクエマークが?マークへと変更した、それを確認したツナとアスナは剣を抜いて森エルフへと向ける。
「愚かな・・ダークエルフ如きに加勢するか人族よ。我が剣の露と消えろ!」
森エルフのクエマークが敵対カーソルに変更し、戦闘体勢に移行した。
5分後。
森エルフの剣士はHPゲージを空にして地面に倒れ伏していた。
「対人戦闘はツナともしてるけど、盾持ちは初めてだったから良い経験になったわ。」
「まぁレベル的に勝てるよね。」
ツナは本来のクエストの流れを知っていたが、流れ通りにはいかないだろうなと確信していた。今回の目的はアスナに戦闘の経験を積ませることなためクエストの結果に拘ってはいなかったのだ。
問題は役目が奪われ、黙りしている黒エルフのお姉さんの対処であった。
その頃第2層では
「ディアベルはん!きい取り直してレベル上げでもしましょう!」
「ディアベルさん。そうですよ!俺たち攻略組のトップは貴方しかいないんです!」
「「だから・・・宿屋に引きこもらないで出できてくださーーい!!!」」
宿屋に閉じ籠ったきり出てこないディアベルを必死に励ましている取り巻き二人の姿が目撃されていた。
「フムフム 第1層に引き続き、立て続けに第2層も攻略カ。目撃者はなし。明らかに最強のプレイヤーになるヨ。探したいけど第3層に行くにはレベルが足りないから無理カ。誰かに護衛を頼むカ?イヤ、攻略スピードが速すぎるから不可能カ。ん?」
「うわーー!凄いなー!もう第2層までクリアしちゃうなんて!ボクも負けてられないや!どんな人かも気になるなー。え?」
第2層某所にて同じ目的を持った二人のプレイヤーが出会っていた。