明日奈side
「ほら、あちらが結城さんよ。」
「まさかこの学校であんなゲームをしている方がいるなんてね。」
「でも推薦枠がひとつ空いたからラッキー ハハッ」
「クスクス」
「聞いてくださいよ!あの人、ゲームなんて人生の浪費!とかカッコつけてたんですよ。それなのに自分で手を出してぬけられなくなるなんて。」
「なにそれけっさく。」
「嫌だ。こっちみたわよ。」
「クスクス」
「ッ!!(もうこんな場所イヤ!女子校は華やかだって言われてるけどこういう時は陰湿なのよね。ツナはやく迎えに来て。)」
明日奈は学校に復帰してからどこにいても聞こえるように陰口を囁かれていた。いまも明日奈の教室にはわざわざ他クラスの生徒や後輩までもが顔を出して囁きあっている。
「きゃー!!」「こっち向いて!!」「かっこいい!」「綺麗。」「あのっ!良かったらご案内いたしますわ!」「いえ!私が!!」
うんざりしていた明日奈だが廊下が騒がしくなり、その声が徐々に近づいて来ていた。
「なんの騒ぎかしら?」
「全く迷惑な方々ね。」
「品位が乱れたのもあんな方がいるからよ。」
明日奈の陰口を囁きあっていた生徒達は廊下の状況を確認しようとドアを開けると
「貴方は!!」
「もしかして・・・」
「尊い・・」バタン
「私に何かご用ですの?」
目の前に先日記者会見をしていたチェーロカンパニー総帥の沢田綱吉が立っていた。
「ごめんね。ちょっと通して。」
ツナはニコリと笑い、教室の中に入り誰かを探すような仕草をしていた。
「誰かをお探しですか?」
リーダー格の生徒がツナに声をかけるが
「あ!明日奈!!」
「え?・・・あ!ツナ!!」
ツナは明日奈の姿を見つけて名前を呼ぶ。今まで我関せずという姿勢で本を読んでいた明日奈は、聞き覚えのある声で名前を呼ばれ、勢いよく顔を上げると。椅子をひっくり返して勢いよくツナの胸の中に飛び込んだ。
「ツナ!ツナ!」
「遅くなってごめんね。迎えに来たよ。」
ツナは明日奈の背中に手を回しながら頭を撫でる。今まで陰口を囁きあっていた生徒達はその光景を唖然とした感じで見ていた。
「明日奈。荷物をまとめてもらっていい?今からチェーロカンパニーと風紀財団が管理している学校に通ってもらう。」
「わかったわ!」
明日奈は席に戻り荷物をまとめると、ツナの腕に抱きついた。ツナは嫌がる素振りを見せずにされるがままになっている。
「荷物は持つよ。」
「え?悪いからいいよ。」
ツナは気にしないでと明日奈の荷物を受け取り外へと向かう。明日奈はツナからは見えないように教室内を見渡すと、勝ち誇った顔をして教室から出て行った。
「なによあの顔!!」
「むかつく。」
「でもチェーロカンパニーと風紀財団の学校って新しくできたばかりだけど、最先端技術が配備されて世界一有名で行きたい学校になるって話ですよね。」
「ええ将来的に優秀と判断された人や一芸に秀でてる人を優先的に入学させるらしいわ。」
「そういえば総帥の綱吉様もあのゲームの被害者なのよね。」
「じゃああのゲーム内で知り合って結城さんが選ばれたと?」
ツナと明日奈が去った教室では色々な憶測が飛び交っていたが、大多数の生徒達は明日奈に対して羨ましいという想いを抱いていた。
木綿季side
「貴方!なんであの子を引き取ったの?いつまで置いておくの?」
「私あの子が使った物に触りたくない。だって感染するかもしれないんでしょ?絶対イヤ!はやく追い出してよ!」
「しょうがないじゃないか!!お前もあの家を売るのには賛成しただろ!!誰が治るなんて考えるか!!あのままでいてくれれば良かったものを。」
木綿季はあのままツナの元に居たかったが、未成年であることから親戚の家に引き取られていた。しかし、引き取られた先の親戚の家ではAIDSに対するきちんとした知識がなく木綿季と関わりを持ちたくないからと軟禁状態になっていた。
「これなら病院にいた時の方が良かった。ツナ、アスナ。みんなに会いたいよ。」
先ほどの会話は木綿季がいる部屋まで聞こえており、木綿季は泣きながらみんなに会いたいよと呟く。
「ちょっと貴方達!勝手に入ってなに!?」
「警察を呼ぶぞ!!」
「呼びたいなら勝手に呼べ。」
「警察と児童養護施設の職員はすでに一緒にきているよ。現場は抑えたよね?ならあいつらをさっさと連れて行きなよ。」
「恭弥さんありがとうございます。」.
「わざわざ僕まで動いて助けた子がこのままなのは気に食わないからね。」
木綿季は家が騒がしくなり、会話をしている声に聞き覚えがあり急いで部屋から出ようとするが、ドアには外から鍵がかかっていて出ることはできなかった。
「ツナ!ボクはここだよ!ツナ!」
ドアノブをガチャガチャと動かし、ドンドンと叩いたりと音を出して居場所を知らせる木綿季。
「ユウキ。遅くなってごめん。離れてて。」
「ツナ!うん!」
ツナがドアを蹴破り中に入る。
「ツナ!会いたかった!会いたかったよ!うわーん!!」
「ユウキ。ごめんね。あの時に帰すべきじゃなかった。もう大丈夫だから。これからみんなと一緒に沢山のことを経験しよう。」
中に入ると木綿季が泣きながら抱きついてきた。ツナは木綿季が泣き疲れて寝るまで強く抱き締めていた。
沙知side
「中矢さんってけいたくん達を犠牲にして生き延びたんでしょ?」
「一人だけ生き延びるなんておかしな話よね。」
「中矢ってあの4人とできてたってまじ?」
「頼んだらやらしてくれんのかね。お前ちょっとやってこいよ。ギャハハ。」
「中矢さん気にしないで大丈夫だよ。」
「ありがとう。私は大丈夫。」
沙知の学校では同じ部活の5人がSAOに参加し、唯一生き残った沙知に対してのバッシング、不名誉な噂も流れていた。救いなのが全員がそれをしているわけではなくごく一部の人間に収まっていることだろう。
「○○、○○、○○、○○〜〜〜〜は至急職員室に来なさい。繰り返す至急職員室に来なさい!」
そのごく一部の人間達が一斉に職員室に呼び出される。当人達は不思議そうな顔で職員室へと向かって行った。
翌日、沙知が登校すると
「おはよう。」
「あ!沙知聞いた!?昨日職員室に呼び出された人達が揃って転校したらしいよ!」
「え!?なんで急に?」
「なんでも親がアフリカに転勤になったから一緒に行ったらしいよ。」
「でも電気も水も通ってない辺境って話だよ?」
「うわー大変。」
昨日職員室に呼び出されていたメンバーが揃って転校するというあり得ない状況に教室では様々な噂が飛び交っていた。
「沙知も明日から転校しちゃうんだよね?」
「うん。昨日ツナさんから連絡があって放課後に迎えに来てくれるって。」
「そっかー寂しくなるな〜〜。連絡するからね!」
「私も!!」
珪子side
「けいちゃん!明日には行っちゃうんだよね?」
「すぐちゃん!うん。明日からは特別学校に登校なんだ。」
珪子の周りでは特に酷いことはなく平穏に過ごすことができていた。仲の良い桐ヶ谷直葉と下駄箱で待ち合わせをし一緒に下校をする。
「そういえば、お兄さんからは連絡あったの?」
「連絡はあるんだけどエアメールだけ。去年の4月にアメリカに留学したきり帰って来ないから心配で。」
珪子は直葉に兄がいるのは知っていたがあったことはないく、直葉と話しているとちょくちょく話題に上がるという程度の認識しかない。
「あのお兄ちゃんならなんとかなるでしょ!けいちゃん困ったことがあったら連絡してね!」
「アハハ、ありがとう!困ったことがなくても連絡はするよ。」
2人はクレープ屋に寄ったり、カラオケに寄ったりと一緒に帰宅できる最後の思い出を作り笑いながら家へと帰って行った。