別世界線から来たワンサマ 作:マフミュラン
何となく思いついた物語を書き綴っていくので、大して練られていない物語と遅い更新になりますが、よければ読んでってください。
誤字修正しました! 報告ありがとうございます!
誤字多すぎクソわろえない…
西暦、2035年。
宇宙空間での活動を前提に開発されたマルチフォームスーツ、ISの登場により人類の戦争は大幅に飛躍した。
多くの国がISの進化に力を注ぎ、そして戦いに投入する。
「スクランブル! スクランブルだ! ISパイロットは全員俺の指揮下につけ! 直ちに出るぞ!」
警報が鳴り響く軍基地の中、一人の青年が廊下を走り軍人達に招集をかける。
青年は名を織斑一夏。 多国籍の軍人によって形成されるIS操縦者の部隊『トルーパーズ』を纏める最強のISパイロットであり、連合軍の英雄である。
「よし、全員揃ったな? では… 飛ぶぞ!」
彼は自らの指揮するトルーパーズと、自分の指揮下に入ったパイロット達に声をかけ、ISを展開して空中へ飛び出す。
灰色の機体に数本の溶岩のように赤いラインの走った機体。 それこそが味方には英雄と讃えられ、敵には
彼の後ろにつき、他のパイロット達もISを展開、飛行する。
眼前に見える20を下らない大量の敵ISに対し、こちらはわずかベテランが4機に新人が5機。
普通ではとても敵わない戦力差だ。 普通では、だが。
『うっひょぉ! 地獄絵図ですね、こりゃあ! 俺らはあれに突っ込むんですか?』
「ああ、そうだな。 まあ、いつもと同じだ。」
『鳥肌が立ちますぜこりゃあ。』
「俺も、これから俺たちがあれを超える地獄を作ると思うと鳥肌が立つ。」
彼らは早速、飛んでくるISの内1機を右手で頭を鷲掴みにして止めた。
すると、灰燼の腕部装甲が展開し、一層強く赤の光が走り…
-ズガァン!-
灰燼の手の中で爆発した。
これこそが灰燼の特殊兵装『燻』だ。
まるで炎のような(実際には炎など比較にならないほど高温だが)エネルギーを自在に扱うという兵装。
「一機撃墜! トルーパーズ1、ブレイク! 以後は散開して遊撃せよ! 新人の守備につく余裕はあるか!?」
『ネガティヴ!』
『ネガティヴ。』
『ならば私が着く。 安心しろ、子守は得意だ。』
と、通信と共にIS達が散開し、敵の中に突っ込んでいく。
そして全員が敵を撃墜していく中、一夏は奥に1機だけ他の機体と兵装が違うISを見つけた。
「ネームドを発見! 俺はヘッドオンで仕掛ける! 3機で挟撃するぞ! トルーパーズ4は引き続き新人を守れ!」
『トルーパーズ2了解!』
『トルーパーズ3了解!』
『トルーパーズ4了解!』
そして3機が1機の敵ネームドを取り囲み、一斉に射撃。
三方向からの
次の機体への攻撃に取り掛かる一夏の視界の端に、劣勢の我が軍の航空機が映った。 それと同時に通信が入る。
『すまない、トルーパーズ。 支援をよこしてくれないか?』
「OK! トルーパーズ4、新人を連れて航空機の支援に行けるか?」
『ウィルコ』
トルーパーズ4が新人に通信で指示を出し、航空機の支援に向かった。
そして程なくして、すべての敵ISの反応が消え去った。
敵の航空機も見当たらない。
「作戦空域内に敵の反応は?」
『ありません、クリアです。』
『こっちも同じだぜ。 1匹も飛んでねえ。』
『…タリホー! 輸送船が大気圏外から来てるぞ! あいつら無茶しやがる! 』
最も高高度にいたトルーパーズ2の通信に、全員が視界を上に向けると。
そこにあったのは巨大な敵国の輸送艦であった。
そして底部のハッチが開き、大量のISが落下してくる。
「畜生! 全戦力投入ってか!?」
明らかに異常なほどに大量のIS。 恐らくこれほどの数のISを一度に作戦に投入するのは歴史上でも初めてだ。
そして投下されたISと輸送船から、途轍もない弾幕が張られる。
実体弾、荷電粒子砲、より取り見取りの弾丸が壁のように迫ってくる。
「クソが! 高度を上げろ! あの数に頭を抑えられたら面倒だ!」
『ウィルコ!』
一夏の指示により、彼を除いたすべてのISが上空へ飛び立つ。
反対に、彼は高度を下げ自らに飛んでくる攻撃の一つ一つを避け、弾く。
この状況、彼は囮としては最良だろう。 ネームドである彼は敵からのヘイトが非常に高い。
「特殊兵装の使用を許可する! 存分にぶっ放せ!」
『おおぉぉぉし! ナァァイスタイミング!』
隊長からの使用許可を得て、隊員たちが巨大なキャノン砲を
列車砲すら超える威力の弾丸が輸送艦を、敵ISを貫く。
轟音と火線が戦闘領域中に響き、しかしそれでも大量のISは勢いを止めない。
そして一夏は、トルーパーズ1は両腕の装甲を展開、『燻』を発動させて敵ISの中に突っ込んでいく。
「死にてえのはてめえからだなァァァァァァ!!」
灰燼の両手が熱を高め、爆発を打ち出す。
爆発に巻き込まれた敵兵がISから投げ出され、パラシュートを開く前にもう一度爆発に巻き込む。
絶望的な表情を浮かべた敵兵が炎に巻き込まれ、火だるまになって落下していく。
IS同士の戦闘において、撃破され、パラシュートを開いて降下する敵兵を殺害することは禁じられている… パラシュートを開いた後の殺害は、だが。
『ひっ、ひぃぃ!』
『怯むな! 敵機はたったの1機だぞ!?』
『"たったの"じゃねえよ! 1機"も"いるんだよ!』
だんだんと数を減らされていく敵兵の中に、戦意を失うものも現れた。
敵兵の血と、そして断末魔の中一夏はただひたすらに拳を振るった。
♦︎
先の大戦から月日が経ち、織斑一夏… かつてのトルーパーズ1は墓地にいた。
一夏はふらふらと歩き、部下たちの墓標の前に座り込んだ。
「この戦争でよ、お前らは全員死んじまった。 俺だって左手を失っちまった。 そんで得られたのは、英雄の称号と、昇進と、お前らには2階級特進だ。」
静かに語りかけて、一夏は手に持っていたビールの缶を開け、小麦色のビールを呷る。
「お前らは満足か? 俺は…」
そこまで言ったところで、彼は言葉に詰まる。
"満足だ"と、そう言えない。
言わなければ部下の死を否定したことになるというのに、誰か聞いている人物がいるわけでもないのに、その先の言葉が出なかった。
一夏は次に、ゆっくりとビールの缶を傾け、チビチビとビールを飲んだ。 そして缶が空になった頃、ため息とともに声を上げた。
「満足、なわけねえよなぁ… 俺の目的はお前らを無事に家族の元へ送り届けることだったってのに。」
そしてもう一本ビールの缶を開け、再び飲み始める。
そこから先、彼は一切言葉を発することなく3本のビールを飲み終えた。
「悪い、お前らへの供物のつもりだったんだが… 飲んじまった。」
彼は自嘲気味に笑い、缶を潰した。
「帰るか…」
立ち上がり振り向いた彼の視界に、一人の女性が映った。
エプロンドレスに、豊満な胸、整った顔と紫色の髪と、そして謎の機械的なうさ耳。
「篠ノ之束博士、あなたも墓参りに?」
軍人という立場上、かしこまった態度で対応する一夏を女性は手で制す。
「プライベートの感じでいいよ? 束さんもいっくんにあんまりかしこまった敬語使われるのは、ね?」
微笑みながらいう束に、一夏は姿勢を崩した。
「んじゃ、何のご用で? 束さんが墓参りするようなやつなんて、ここの墓地にはいねえはずだぞ?」
「ふっふー、よく聞いてくれました! 束さんはいっくんに会いに来たのさ!」
こりゃまた唐突に、と返そうとしてやめる一夏。
束が唐突なのはいつものことで、それに感想を言うのは創作作品にいちいち疑問をぶつけるようなものだ。
「ねえ、いっくんはさ。 束さんは正解できたと思う?」
「正解、ってーと?」
「私がISを作ったこと。」
束の発言に一夏は思案する。
目の前にいる女性こそがISの発明者であり、言ってしまえば戦争を起こした原因。
「多分、正解だ。 ISに対して正解できなかったのはこの世界の方だ。」
実に忌まわしそうに言い切る一夏。
彼にとって忌避すべきものである大戦が起こってしまったのは、まさしくISの運用方法を間違った世界であった。
「平和に宇宙飛ばしときゃ良いもんを、なんで戦争に使うかねぇ?」
「多分、人の性じゃない?」
「違いないな。」
暫し見つめ合う一夏と束。
先に口を開き静寂を破ったのは一夏だ。
「何で俺は、腐った上層部のために戦ったんだろうな?」
「軍人がお上を"腐った"なんて言って良いのかい?」
「プライベート、といったのはあなたの方だ。 今の俺はトルーパーズ1でもイフリートでも織斑一夏大佐でもない。 織斑一夏だ。」
真っ直ぐに一夏を見つめる束が、口を開いた。
「それでさ、いっくん。 ここに来たのはある相談のためなんだ。」
「相談?」
「そうだよ。 …ねえいっくん、私と一緒に…」
-世界をやり直さない?
まるで創造神を気取っているかのようなことを言い出した束を、一夏は"何言ってんだこいつ"的な目で見る。
「私はね、ISが軍事利用されてからずっとある装置を開発してた。」
「ある装置っつーと?」
勿体振るように、焦らすように時間を開けた後、束が静かに言う。
「時代逆行装置。 それで、私と一緒にISができる前まで戻って、ISによる戦争の存在しない世界を作ろう。」
決意の表情で告げる束。
一夏はいつものおちゃらけている束が真面目な表情をしていることに驚きながらも、目を見開いた。
「新手のプロポーズ?」
「曲解しすぎだよ、もう。」
プクー、っと頬を膨らませる束を見て一夏は吹き出した。
「相変わらず子供っぽいな。 もう年だとい…」
もう年だというのに、そう言おうとした一夏の首元に束の指が突きつけられる。
「女性に年齢の話はダメだよ? それに私は外見が若くて可愛いから良いのさ。 そういういっくんだってもうアラサーじゃん。」
「ぐっ!」
きつい言葉のカウンターを食らった一夏であった。
「年齢の話は、なしで。」
「うんうん、それが良い。」
満足気に頷く束が一夏の手をとる。
「それで、私と一緒に世界を変えてくれない? これはもう、プロポーズと取ってもらっても構わない。」
ふざけているような口ぶりで、されど顔は大真面目に言い切った束に、一夏は頷く。
「束さんからのプロポーズとなっては、断るわけにはいかない。 いいぜ、共に世界を変えよう。」
「やったー! 結婚だー! いっくんと夫婦だー!」
はあ、とため息をつく一夏。
今度の世界でも同じことをしなきゃならないと考えると… 意外と、嫌な気分でもなかった。