汚染が更に広がってしまう…ヤバいヤバい……
アリシアの設計は、百数年停滞していたシルエットナイトに革新をもたらした。何しろ、動かしやすいようにと普通の人型をしているのに、それをガン無視して「関節逆に曲げました」、なんて言われたら研究機関が金切り声を上げて死にかける。しかも設計は一人でやったと聞いて研究機関は死んだ。
それを知ってか知らずか、噂程度に収まっていたアリシアをデオンは、堂々とお披露目した。
存在を確認した多くの研究機関は絶句し、一部の変態は狂喜乱舞した。
こうして、公の場に出されたアリシアは正式採用され、魔獣をちぎっては投げちぎっては投げ…無双し、フレメヴィーラ王国には平和がもたらせられた…とはいかなかった。量産には至らなかった。というか、アリシアには問題があった。
何が問題かというと、そのフォルムだ。複眼、騎士と言うよりは悪魔のような全体のシルエット、そして逆間接。明らかに魔獣です本当にありがとうございます。
貴族はガチ切れ、一部の研究機関はこれの利点を主張したが、他の大勢の研究機関に圧迫され、国王もこれはちょっと…と、若干引いていた。
そんなわけで、アリシアが日の目を見ることは無かったのである。
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「アリシアの良さを分からぬ鉄十字団(貴族)…許せる!!」
「いやあれは流石に…」
むむっ、むむむっ。カティちゃんがなんかまともなこと言ってるぞぅ。ノリノリでサロドレア魔改造したの何処の何奴だ。
「だってアレ、完全にあっちでしょ?」
「カティちゃんも…カティちゃんもアリシアは魔獣側だと!?」
裏切られた!完全に裏切られた!
「カティちゃん言うな。だって逆間接なんて…」
「でもまぁ、モデルにしたの最悪の反体制組織の旅団長の乗機だし仕方ないね。」
「待って今なんて?」
煽動家になるつもりは無いけどね。この王国好きだし。
「ん?」
「反体制組織どうとかって…」
「あぁ、なんかメンバー一人が暴走して一億とちょっと一般人殺したりしただけだよ?」
「なんてもんモデルにしてんのよあんたはァ!?!?」
む?見せたときにイワナ…書かなかった?
「はぁ、もう良いわ。もう作っちゃったしね。」
「追われたときには一緒に逃げようね。」
特にラトーナベースの軽量機とか首輪付きとか。
「…っ、付き合わないわよ。勝手に逃げて。」
「そんなー」
なんで?カティちゃんなんでそんなひどいこというん?
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「あれが…噂の…」
格納庫のステンドグラスの所…ステンドグラスと格納庫の地面とではかなりの距離があるので、注意深く見ないと覗かれていると分からない。まぁそこから小さい陰が、チラチラこっちを見ていた。
「ふぁぁ~、逆関節!しかもアレはレイレナード製逆関節ネクスト、アリシアじゃないですかぁ~。VIでは作りましたけどまさかここで本物を見るとは~!」
彼の顔はとても、とてもニヤけていた。
「なぁエル、あのシルエットナイトの何処が良いんだ?」
「何処がって…逆関節ですよ逆関節!あのフォルム、あの関節、あのジャンプ力!あぁ~堪りません~」
「お、おう。お前ほんっとシルエットナイト好きだよなぁ…。」
隣で見ていたドワーフの友達が若干引いていた。彼には何も分からなかったが、多分、エルと呼ばれた少年にはなにか違う感性があるのだろう。
「エルくーん、そろそろ行くわよー」
「アディ、じゃあバトソン、また後で!」
「おう、気をつけろよ!」
「はい!では!」
小柄な体が跳ねながら、馬車の方に向かっていった。
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「じゃあエドガー、ディー、ヘルヴィ。気を付けて。」
「お前こそ、学園を頼むぞ。」
「おう、任せとけ。」
「私が心配なのは、もし魔獣が王国に攻めてきたときにアリシアが魔獣と勘違いされないかどうか何だけど…」
「ヘルヴィまでそれ言うのか…」
悲しいかな、アリシアはもう魔獣らしい。なるほど、目が赤いのがいけなかったのか(勘違い)
「もっと根本的なモノだと思うが…まぁ良い、それは後で。ディー、ヘルヴィ。行くぞ。」
それぞれの搭乗機に乗り、馬車に続き門から外に出て行く。それを見えなくなるまで見送ると、隣にいつの間にかカティちゃんが居た。
「なんか…嫌な予感がする」
「…同感だ」
なんだろうか、この嫌な予感は。やべぇモンが来ている感じがする。
「念のためだ、アリシアの整備をしておこう。」
「わかったわ。」
ふたりはエドガー達とは逆に、格納庫の方へ歩き出した。
コージマーコージマーみどりーいコージマーさわーるとー体調ーにー異変きたしてー死ーぬよー
今日の学校で思わず歌っていた謎歌。やっぱコジマに侵されてんやなって……
それではまた。