FAIRY TAIL 守る者   作:Zelf

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大魔闘演武見返していて思ったこと。

カナがBチームの観客席とギルド用の観客席を移動しているんだが、コレ如何に。


第87話  カグラVS.ユキノ

 残る第四試合、剣咬の虎(セイバートゥース)のユキノ=アグリアさんと人魚の踵(マーメイドヒール)のカグラ=ミカヅチさんの試合が始まった。が、初っ端からユキノさんの発言で辺りはざわめき始めた。

 

 ユキノさんがこれまでの流れに沿って賭けをしようと提案したが、賭けとは成立した以上必ず行使されるものであり、それ故軽はずみな余興は控えたいと言う理由で賭けに乗り気で無いカグラさんに対して、

 

 

 

「では、重たく致しましょう。命を…賭けましょう」

 

 

 

 どうしてそんなことをする必要があるのか分からない。ふと剣咬の虎(セイバートゥース)の面々の様子を見れば、特に慌てた様子も無く…寧ろ、笑みを浮かべている者もいる。家族…ギルドの仲間とは思えないような、見下すような笑み。

 

 相手は人魚の踵(マーメイドヒール)最強の魔導士…いくらフィオーレ最強のギルドに所属しているとはいえ驕りが過ぎるのではと思ったけど。ユキノさんの顔は、後が無いという必死さを感じさせるものだった。

 

 

 

「その覚悟が真のものなれば、受けて立つのが礼というもの。良かろう、参られよ」

 

 カグラも賭けに乗ってしまった…これで、負けた者の命は勝者のもの。やろうとすれば、試合後に死ねと言われたら死ななくてはいけなくなった。

 

剣咬の虎(セイバートゥース)の前に立ったのが、貴女の不運」

 

 ユキノさんが懐から取り出したのは、金色の鍵。あれは、ルーシィさんと同じ黄道十二門の鍵…数多の星霊の中でトップクラスの能力を持つ星霊を持つ証だ。

 

「この七年で星霊魔導士はかなりの数を減らしてしまったって聞いてたけど…」

 

「ええ。それに残りの星霊魔導士も姉さんを除けば…星空の鍵の件で新生六魔将軍(オラシオンセイス)に狙われたウィル=ネビルの子孫が殆どだったはずよ」

 

 ミッシェルさんが少し暗い顔になりながらそう補足してくれた。まだやっぱり気にしているのかな…もう終わったことだし、気にしなくて良いのに。

 

「ほう…金の鍵、黄道十二門というやつか」

 

「開け、双魚宮の扉――」

 

「双魚宮、ってことはお魚さんだよね…」

 

「…ハッピー、まさか食べようとしてない?」

 

 ヨダレが口から溢れ出ている。魚とはいえ星霊なんだから、食べるなんてそんな残酷なことを…でもどんな星霊なんだろうか。魚を大量に呼び出すとか、後は…

 

「――ピスケス!」

 

 ユキノさんが鍵を上に掲げると、巨大なウナギみたいな魚が現れた。しかも、黒いのと白いのの二匹。ジェミニと同じように、二匹で一対の星霊だったらしい。

 

 ルーシィさんのアクエリアスは水が無いと呼び出せないのにあのピスケスとかいう星霊は関係無いんだな…まあ、あれだけ巨大だと呼び出せる水っていうのも海とか湖とかじゃないと無理だよね。

 

「やっぱり魚だ!!」

 

 …あれを見てまだヨダレを垂らして喜んでいるハッピーが凄いと思った。

 

「でもあんな星霊、あの時はいなかったはずだけど…」

 

「そうか、ミッシェルもナツ兄達と一緒に行ったんだっけ、星霊界」

 

 まあ…星霊界に行ったからって全ての星霊に会ったわけじゃないだろうけど。確か、星霊界の一日がこっちで三ヶ月って話だったっけ…まさか、三ヶ月間ずっと召喚していたとか…無いよね?だとしたらあのユキノさんって魔力量がルーシィさんの何倍もあることになるんだけど…

 

 

 

 ピスケスは連携してカグラさんへと襲いかかる…が、華麗に避ける。二体の背中を飛び移ったりして、ピスケスは上手く攻撃出来ない。その様子を見たユキノさんは、もう一本の金色の鍵を取り出した。

 

「身軽に躱すのであれば、その足を止めてしまえば良いだけの事」

 

「ルーシィ姉さんと同じ、二体同時開門…」

 

 確かルーシィさんが黄道十二門の鍵を十個持っているから、ユキノさんが持つ物を合わせてこの場に全ての黄道十二門の鍵が揃ったことになる。世界に十二個しかないのに…そんなことあるんだな。

 

 

 

「開け、天秤宮の扉――ライブラ!」

 

 今度は人型…しかも、中々露出が高い女性のような星霊だ。さっきのグラビアバトルの熱が再燃したのか、実況や観客の男連中から野太い歓声が聞こえた。

 

「ライブラ、標的の重力を変化」

 

「了解!」

 

「ぐっ…!」

 

 ピスケスが周囲を取り囲むように動く事で動きを止めたカグラさんの重力が変化、重くなって動けなくなった所をピスケスが襲いかかった。その巨体に相応しいパワーも持っているらしく、地面を砕いた破片が辺りに飛び散っている。

 

「あんなの食らったら一溜まりも無いッス…!」

 

「…食らえば、だけどね」

 

「え?」

 

「上を見て」

 

 そう、直撃していないのだ。今の一瞬で遥か上空に、しかもまだ上昇している。今のでカグラさんの魔法が何なのかは大体見当がついた。今の所二択だけど…

 

 ユキノさんはライブラに重力変化を再度使用させ、会場に聳え立つ石像にカグラさんをめり込ませる。そして、またしてもピスケスが襲いかかり――

 

 

 

「止まった!」

 

「それだけじゃないわ、あっちも!」

 

 ピスケスが直前で動きが止まり、そのまま地面に倒れ込んだ。同じく、ユキノさんの傍にいたライブラという星霊も上からの圧力に抑え込まれている。

 

 やっぱりカグラさんもまた重力変化の魔法を使えるんだ。しかも同じく重力変化の魔法を使うリズリーさんよりレベルが高い。あれだけの広範囲、しかもピスケスのパワーを持ってしても抗うことが出来ないでいる。

 

 

 

「ピスケス、ライブラ。戻って……私に開かせますか。十三番目の門」

 

 

 

「十三番目…?」

 

「…姉さんから聞いたことがあるわ。黄道十二門を凌ぐ、未知の星霊。存在すら噂程度のものだったけれど、実在したなんて」

 

 そんな鍵が存在していたなんて…しかも、強力な力を持つ黄道十二門を凌ぐなんて、信じられない…しかし、ユキノさんの周囲に溢れ出ている異様な魔力。あれはハッタリなんかじゃないのは分かった。

 

 

 

「十三番目を開く…それはとても不運なことです」

 

「不運か…運など生まれた瞬間より当てにしておらん。全ては己が選択した事象」

 

「開け、蛇遣(へびつかい)座の扉――」

 

「それが私を未来へと導いている」

 

「――オフィウクス!!」

 

 

 

 星霊を召喚する前に攻撃しようとしていたのか、カグラさんは真っ直ぐにユキノさんへと突っ込む。しかし、それよりもユキノさんが召喚する方が一歩早かった。カグラさんの目の前に突如出現した、超巨大な蛇。確かに、黄道十二門を凌ぐというのは本当かもしれないと思わせるだけの魔力を秘めている。

 

 しかし、カグラさんはその巨大な蛇が突っ込んでくるのに合わせて自身も突っ込んでいった。

 

 

 

「怨刀、不倶戴天…抜かぬ太刀の型」

 

 

 

 腰に携えていた刀を、鞘に収めたまま振るう。次の瞬間、オフィウクスが縦に真っ二つになってしまった。周囲を漂っていた魔力が消え、ユキノさんは無防備になり、カグラさんは――

 

「安い賭けをしたな…人魚は時に、虎を喰う」

 

 

 

 

 

 

――こうして、ユキノさんはカグラさんに敗北した。その場で倒れたユキノさんの命を奪うようなことはせず、命は預かったと言い残しカグラさんは去って行った。

 

 

 

「例の魔力を感知出来ていない?」

 

「ああ」

 

 二日目の夜、僕は宴会から抜け出してアズマさんと会っていた。四つ首の番犬(クアトロケルベロス)…じゃなかった、四つ首の仔犬(クアトロパピー)のバッカスさんが来て飲み比べをし始めたから簡単に抜け出せた。

 

 アズマさんの話によれば、ジェラールさん達が毎年感じていたゼレフに似た魔力。ナツさん達の第二魔力源(セカンドオリジン)を解放する代わりにその魔力を探るよう頼まれたらしいんだけど…今回はそれがまだ感じ取れないらしい。

 

「そもそも、人物なのか物なのかも分からないんじゃ、探るって言っても難しすぎますね」

 

「まだ参加していない出場者、観客…物体なら、まだ持ち込まれていないか、起動されていないか」

 

「お~い」

 

「パタモン、お疲れ」

 

 のんきな声が聞こえた方向を見ると、パタモンが飛んできていた。僕の頭に着地したパタモンを撫でながら労いの言葉をかけた。

 

「どうだった?」

 

「うん。やっぱり、大鴉の尻尾(レイヴンテイル)じゃなかったよ~…本当の犯人は、王国に仕えている騎士さんみたい~」

 

「犯人…先程言っていた誘拐未遂の事件かね」

 

「ええ。連行されていく実行犯の後を、パタモンについていって貰っていたんです」

 

 

 

 パタモンからの報告で、僕らは驚愕することになった。

 

 

 

 エクリプス計画、それがどういった計画なのかは分からないが…ルーシィさんが狙われている確率が高くなった。ウェンディのことも注意しないとだけど…ルーシィさんのことも守らなくては。後で、マスターにも報告しないと。

 

 ……マスター、バッカスさんとの飲み比べで酔い潰れてしまっていたけど、大丈夫かな。

 

 


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