FAIRY TAIL 守る者   作:Zelf

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第86話  ミラジェーンVS.ジェニー

「ウェンディ、大丈夫かしら…」

 

 今僕は、観客席へとシャルルと一緒に向かっていた。ウェンディはナツさん達とAチーム用の観客席へ、ガジルさんもBチーム用の観客席へと向かっていった。

 

「大丈夫だよ。流石にそう何度も人攫いなんて目立つことしないって」

 

「…気づいてなかったアンタとウェンディには言われたくないでしょうね」

 

「うっ…」

 

 いや、それは反省してます。これからはちゃんと警戒するから許して。

 

「それに、やっぱり気になるわよ」

 

「さっき言ってたこと?」

 

途中まで一緒だったナツさん達と、なぜ実行犯が魔力をゼロにする魔導士ではなかったのかということをシャルルが気にしていたんだけど、グレイさん達は選手が会場にいなければいけないからではないかと、シャルルの気にしすぎではないかという話になった。しかし、問題はそこでは無い。きっとシャルルは、予知の件が気になっているのだ。ウェンディが関係していることで余計に。

 

「…正直、僕はシャルルが思っている通りだと思う」

 

「それって…」

 

「うん。犯人が、大鴉の尻尾(レイヴンテイル)じゃないかも知れない。一度、さっきの憲兵さんに聞きに行くべきかもと思ったけど…あの人もグルかも知れない。正直、今出来ることは無いよ」

 

「…そもそも、何でルーシィが狙われているのかしら」

 

「そこは分からないけど…まあ、後で報告(・・)してくれるよ。今は試合の応援に集中しよう」

 

「…そうね」

 

「おーい!もう始まってるみたいだぞーっ!」

 

 先行していたロメオとイーロンが、手を振りながら知らせてくれた。確か第三試合はミラさんと青い天馬(ブルーペガサス)のリザーブ枠のジェニーって人だったはず。二人とも週ソラでモデルをやっていて、ジェニーさんはミラさんを目標にしていたそうだ。

 

 これ、対戦表決めてる人がファンだったのかな。明らかに狙った組み合わせなような…いや、ジェニーさんは競技パートでダウンした一夜さんのリザーブ枠だから、流石に無いか。下手をしたらミラさんと一夜さんが戦うことになっていたのかもしれないな。

 

 

 

「何、これ…?」

 

「…さぁ?」

 

 

 

 何か、二人とも水着なんだが…どういうことだ?

 

「ハッピー、これどういうこと?」

 

「あい…なんか、元グラビアモデル同士ってことで…」

 

「変則ルールでグラビア対決ということになったらしい」

 

「最低ね」

 

 あれ、リリーここにいたんだ。ガジルさんが医務室に行ったのにいなかったからおかしいなと思っていたけど…まあ、そこまで心配しないか。ただの乗り物酔いだもんね。

 

『元グラビアモデル同士!そして共に変身系の魔法を使うからこそ実現した夢のバトル!ジャッジは私チャパティ=ローラとヤジマさん!そして週間ソーサラーのジェイソン記者が行います!』

 

『責任重大だねぇ』

 

『どっちもクールビューティー!!』

 

『さぁ、続いてのお題は…「お待ち!!」なっ!?』

 

 大いに盛り上がっている実況を遮りフィールドに乱入してきたのは、人魚の踵(マーメイドヒール)の選手達。ちゃっかり水着に着替えて各々セクシーポーズをとっている。ちゃんとリズリーさんは痩せた状態で参加してるし。

 

 これが引き金となったのか、別方向からは蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のシェリーさんと、彼女の従姉妹であるシェリアが乱入してきた。不味い、この流れだと…

 

「うわ、皆凄いなぁ…」

 

「感心している場合じゃありませんよ!」

 

「え…まさか!」

 

「私達にも参加しろって!?」

 

「大丈夫!こんなこともあろうかと、全員分の水着を用意して来ちゃいました~!!」

 

 初代が凄いノリノリで、どこから出したか大量の水着が宙を舞った。そのまま初代はAチームとBチームの方へフワフワと飛んでいってしまった。これ、誰が片付けるんだ?

 

「兄貴、良かったッスね!」

 

「またウェンディ姉の水着姿が見れるぜ」

 

「…それは不味いな。止めないと」

 

「ちょ、兄貴!目がヤバいッスよ!?」

 

 ウェンディの参加を阻止するか、もしくは競技自体を中止…否、大会自体を中断させるか。デジモン達の力も借りれば何とかなるだろう。急がなければ、ウェンディが恥ずか死するぞ。

 

「落ち着きなさい!アンタが暴走してどうするのよ!?」

 

「ハッ…!?ご、ごめん。自分を見失っていたようだ」

 

 かなり危ない方向に思考が持って行かれていたな…僕が暴走している間に、女性陣は殆どフィールドへと降りていったらしい。勿論、AチームとBチームの面々もいる。

 

 でもウェンディ、大丈夫かな…最近は年相応の明るい女の子って感じになったけど、元々は引っ込み思案な所もあったし…やっぱり心配だ。

 

『次のお題は…スク水!』

 

「何でいきなりマニアックな格好になるの?」

 

「ウェンディはあまり違和感ないね?」

 

「嬉しくないです!!」

 

 確かに…っていうか、年齢を考えれば違和感が無いのは当然なのでは?ってか、スク水って概念があったことに驚きなんですが。学校とか見たこと無いけど…

 

 その後も次々とお題が出されていった。

 

 

 

『次は…ビキニにニーソ!!』

 

「何か、水着だけより恥ずかしい気が…!」

 

 

 

『メガネっ娘!!』

 

「私はいつもと同じなんだけど」

 

 

 

『猫耳!!』

 

「私がしても意味なくない?」

 

 

 

「ボンテージ!!」

 

「これも一つの愛…」

 

「ハマりすぎ!」

 

「どう、エルザ?そろそろ負けを認める気になった?」

 

「あぁん?何か言ったか」

 

「参りました」

 

 エヴァグリーンさん、いたのか。今気がついたよ。

 

 

 

『次のお題は、ウェディングドレス!!パートナーも用意して、花嫁衣装に着替えて下さい!』

 

「突然ごめんなさいね、マスター」

 

「これもマスターとしての務めじゃ」

 

「まぁ、手頃な相手で」

 

「その方がハマったりしてね」

 

 ミラさんはマスター、ジェニーさんはヒビキさんをパートナーに選んだようだ。しかしマスターは通常モードだと背が低いので、角度によってはミラさん一人でいるようにしか見えないかも…

 

 レビィさんはガジルさん、ジュビアさんはグレイさん(リオンさんが誘っていたのを奪い取った)、ルーシィさんは何故か突然見計らったかのように現れたロキさん、リサーナさんはナツさんと一緒にいる。エルザさんは…ジェラール、さんと一緒に来たかっただろうな。

 

 

 

「ほら、早く行きなさい」

 

「え?…どうやったの、これ」

 

「良いから良いから!お待ちかねッスよ!」

 

 イーロンに押されてフィールドに出てみたが…何故か緊張してしまう。いつの間にかこんなタキシード姿に着替えさせられているし…良く見ればシェリーさんとレンさんとか、結婚式の予行演習みたいな感じになっているし。

 

 と、辺りを見渡す僕の肩を後ろからトントンと叩かれた。振り返ると、そこには…ウェディングドレスを身に纏ったウェンディがいた。

 

「ゴーシュ…あの」

 

「…綺麗だよ、すっごく」

 

「エヘヘ…ありがとう。ゴーシュもカッコイイよ!」

 

 何というか、可憐で…可愛らしくて、でも美しさもあって。見惚れてしまっていた僕にはそれしか言えなかった。

 

「でも、ちょっと大きいというか…何か違和感がある、気がする」

 

「あ、それは私も思ったよ。サイズは合わせてるけど、何て言うのかな…」

 

 何か、馬子にも衣装って感じかな。やっぱりこういう服は着慣れていないからかもしれない。

 

 

 

「…あのさ」

 

「何?」

 

「その……いつかまた、お互いこの服を着ようね」

 

「それって…!」

 

「詮索は無し、だよ」

 

 僕はそそくさとその場を後にした。気づいたら周囲の空気が凍り付いていて、どうやら原因は蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のマスターだったことに少し遅れて気づいたのだった。ウェンディは僕に追求したかっただろうけど、皆が帰っていくのに遅れてついていった。

 

 今思ったけど、これ僕らが隅の方にいたから良かったものの、下手したら滅茶苦茶からかわれていたかも知れない。マジで、周囲には常に気を張るようにしなくては。

 

『予定を大幅にオーバーしたので、次で最後のお題にしたいと思います!』

 

「ミラ、これが最後よ!」

 

「うん、負けないわよ!」

 

「今までの試合の流れに沿って、私達も賭けをしない?」

 

「良いわね、何を賭けるの?」

 

「負けた方は週間ソーサラーで、ヌード掲載ってのはどうかしら?」

 

 何かヤバいこと言い始めたなあの人。ヌードって…あ、マカオさん達おじさん組が鼻血出してる。

 

 でも、流石にそれは了承するわけが――

 

「良いわよ?」

 

 …良いんだ。これ、負ける気がしないという自信の表れ?

 

 

 

『な、な、なんと!とんでもない賭けが成立してしまったーっ!!』

 

 どうもあの人、何か小賢しいこと考えてそうな顔が時々出てるんだよね…隠し切れていない。あれじゃ何か企んでますよって言ってるようなものだ。ミラさんも、その事には気づいているはずだけど…?

 

『さ、最後のお題は、戦闘形態です!!』

 

 そういえば、ジェニーさんも|接収《テイクオーバーを使うみたいだ。鎧というか機械っぽいと言うか…そういう機械系を接収(テイクオーバー)しているらしい。

 

「これが私の戦闘形態!」

 

「じゃあ、私も行くわね。今までの流れに沿って賭けが成立したんだから、今までの流れに沿って最後は力のぶつかり合いってことで良いのかしら?」

 

「…は?」

 

 そしてミラさんは、これまで見たことも無いような姿へと変貌した。明らかに、今まで使っていた接収(テイクオーバー)とは格が違う…!これ、最初から普通に戦っていたら一瞬で決着ついていたのでは?

 

 案の定というか、やはりジェニーさんは何か企んでいたようだ。大方、自分より注目性があるミラさんなら負ける確率が高いと踏んだのだろう。そして、その企みは音を立てて崩壊し始めている。

 

 

 

「私は賭けを承諾した…今度は貴女が力を承諾して欲しいかな?」

 

 

 

結局、ミラさんが勝利した。これでAチームが12P、Bチームは17Pだ。

 

「ごめんね!生まれたままの姿のジェニー、楽しみにしてるわね!」

 

「いやぁぁん!!」

 

 

 

 …暫く週間ソーサラーは読めないなと、僕は思った。

 


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