何日もかけて少しずつ書き上げたので、最初の方と最後の方で何か文章の雰囲気が違う気がしますが…まあ気にしないで下さい。
僕は痛みに耐えながら少しずつ、すぐ傍に転がってきたミッシェルさんだった人形を拾う為に這うようにして動いていた。ロメオやエルフマンさんもナツさんに加勢しようとしていたが、クロドアによってそれは阻まれてしまう。でも、それで良いんだ…ナツさんなら、あんな奴に負けるはずがない。
僕も最初は加勢するつもりでいたけれど、ふとミッシェルさんが目に入ったら…戦うよりも、彼女を守る為に動いていたんだ。
ようやく人形を回収したその時…後ろから、凄まじい魔力を感じた。振り向くと、ブレイン二世の異様な魔力が急激に高まり、彼の両手に集まり続けていた。その魔力はまるで、人の怨念が具現化されているかのような…そんな異様さを帯びていた。
「ジェネシス・ゼロ!!開け、被告の門!!」
「な…!?」
「無の旅人よ、その者の魂を、記憶を!存在を食い尽くせ!!消えろ…ゼロの名の元に!」
「ぐああぁぁっ!!?」
「ナツさん!!」
ブレイン二世の魔法が発動され、ナツさんがその魔法に飲み込まれていく。やがて姿が見えなくなってしまい…その魔力がどんどん収縮していく。
このままじゃ、ナツさんが消えてしまう…?
「仲の良いことだ。貴様は闇の中に囚われ、小娘は出口のない時間の中に…か」
「ナツさんを…返せ!!」
僕は、
「無駄だ」
「…!」
まだジェネシス・ゼロとやらの魔法が発動しているのに、僕の攻撃は
「まだ……まだだ!!」
一度攻撃に利用した
「諦めろ。貴様の攻撃が当たることなどあり得ない」
そんなの…!そんなこと、お前に決められてたまるか…っ!!
「絶対…諦めたりするもんか…はぁっ!!」
「!」
もっと、数を増やすんだ。細くても、小さくても良い…攻撃の手数を、もっと増やし続けるんだ…!
今まで使っていた大量の
「どれだけねじ曲げられようと、構わない…お前のその魔力がなくなるまで、攻撃し続けてやる!」
「チッ……ゴミ如きが」
出来るだけ全方位から攻撃するように操作し続ける。ブレイン二世も僕のいる方向へとねじ曲げたりするけれど、それらは他の
しかし、この攻撃が長時間続かないことも理解していた。実はまだ魔力には余裕があるのだけれど、これだけの数を全てコントロールし続けられるだけの集中力が持たない。本当にギリギリな状態。もし今他の敵に攻撃されでもすれば、僕は防ぐことも出来ずに食らってしまうだろう。
そして、その瞬間は訪れた。
『ミッシェルに謝りなさいよ……ナツを返してよーーっ!!!』
あまりの眩しさに、目を細める。この光は…ルーシィさんが捕らえられていた場所から?
「今のは…!」
「ルーシィの声…?」
「なんだ、これは…!?」
…ブレイン二世の様子がおかしい。急に狼狽え始め、その瞳には恐怖のようなものが宿っているようにも見える。
「まさか、ルーシィさんが…?」
「…!兄貴、離れるッス!!」
イーロンの声に反応し、僕は咄嗟にブレイン二世から距離をとる。その時…ナツさんが飲み込まれた魔力の塊の中から、何かが噴き出しているのが見えた。
「うおおおおっ!!聞こえたぞ、ルーシィ!!」
やがてその空間に罅が入り、炎と共にナツさんが現れる。その勢いのまま、リアルナイトメアに囚われているブレイン二世へと渾身の一撃を叩き込んだ。
「大丈夫ッスか、兄貴!」
「うん…声かけてくれて助かったよ、イーロン」
「…!はいッス!」
イーロンが声をかけてくれなかったら、ナツさんの攻撃に巻き込まれていたかもしれない…あの光で一瞬集中が切れたから聞こえたんだろうけど。っていうかナツさん、あの魔法からどうやって抜け出したんだ…?魔法自体を焼いたようにも見えた気がするけど…
「くっ…」
「兄貴、本当に大丈夫ッスか!?」
「だ、大丈夫…少しフラついただけ」
なんか、頭が重い。少し無茶し過ぎたのかな…?戦っている最中は何ともなかったんだけど。
「そうだ、ナツさん…!」
「今は休んどけ、ゴーシュ。後は任せろ!」
「…分かりました。頼みましたよ!」
「おう!」
…どうやらあの魔法に飲み込まれた影響とかはなさそうだ。こんなフラフラな状態じゃ足手まといになるのは確実だし、ナツさんに任せよう。というか、何かナツさんから一対一で戦いたいって感じのオーラ?が見える気がする。
「で?何の話だったっけなぁ…そうそう、犠牲を払って魔力を高めただのどうのって話だ。魔力を高めてもあれかよ?」
「……魔法は心だと言う。捨てる想いが大きければ大きいほど、得る力は強大だ」
「あん?」
「…人はいつか会えると思うからこそ、その者を想う!その想い、可能性を自ら断ち切り!犠牲にする程辛いものはない!!」
ブレイン二世は急に何の話をしているんだ…?ブレイン二世には、会いたいと想っていた人がいて…それを犠牲にして魔力を高めたってこと?会いたい想いを犠牲にするって…どういうことだ?
「あー、そうかい…それでお前は何を犠牲にしたっつうんだよ?」
「未来…私が父上と再会する未来」
「これから起きるかもしれないことを起きないことにして力を得る…ってこと?」
「前倒しな後ろ向き思考…器用だね」
「なんだそりゃ…意味分かんねぇし。父ちゃんに会いてぇなら会えばいいじゃねぇかよ」
「私と父上を引き裂いたのは貴様らだ…忘れたとは言わさんぞ」
「逆恨みかよ…だからってルーシィを泣かすことねぇだろ、まどろっこしいことしやがる。未来を犠牲だぁ?まだ起きてねぇことダシに大層なこと語りやがる…気にくわねぇんだよ!!」
ナツさんとブレイン二世が、拳に魔力を溜めぶつけ合う。
しばらく拮抗していた二人だが…やがてブレイン二世の体に罅のような傷が腕から全身へと広がっていった。
「…あり得ん……私が、押されている!?」
「お前が父ちゃんを想うってこと、そこだけは俺にも分かる。でもよ、想いの力ってのは捨てて得るもんじゃねぇだろうが!自分のどこかに刻んで得るモンだ!!」
「違う…!捨ててこそ、失ってこそその大きさが輝くのだ!」
「この…!オラァっ!!」
ナツさんがブレイン二世へと掴みかかるが、ブレイン二世はナツさんを横に投げることで何とか躱す。しかし、明らかにブレイン二世の魔力が衰え始めていた。見たところ、あの体の罅からドス黒い魔力が流れている。多分、“力”を失い始めているんだと思う。
「ブレイン二世…貴方は、どうしてブレインに会いたいんですか?」
「何…?」
「あんな、仲間や家族すらも平気で切り捨てるような男だ…もし僕だったら、そんな奴に会いたいなんて思いません。それに、貴方だって脱獄した時にブレインを解放していないじゃないですか…本当は、貴方も――」
「黙れ!!傀儡如きが、分かったような口を利くな!!私は、未来を捨てた…父上と出会う未来を犠牲にしてこの力を得たのだ!!」
そう言いながらも、ブレイン二世は狼狽えている…駄目だ、こっちの言うことに耳を貸してくれない。まるで、本当のことに気づきたくないような…目を背けているようにも思える。
「何でもかんでも曲げやがって…ものの見方も感じ方も、ひん曲がってんだよお前は!そんなだから、過去にも未来にも…自分の心にも!真っ直ぐ向き合えねぇんだぁ!!」
ナツさんの言葉にも、ブレイン二世は大きく動揺している。そのせいか攻撃を連続でまともに食らってしまい、壁へと叩きつけられてしまう。
「くっ…私が、父上と向き合っていないだと…!?」
「ルーシィは父ちゃんに、ミッシェルはルーシィに、真っ向からぶつかっていったんだ…お前にそれを笑う資格なんかねぇ!想いの力で、端っから負けてんだお前はっ!!」
ナツさんがブレイン二世を殴り飛ばし…それによって壁に出来た穴から、ブレイン二世は勢いのまま落下していった。
ブレイン二世…いや、六魔達は皆エルザさんと同じように楽園の塔に奴隷として働かされていたんだっけ。きっとその過去のせいで歪んでしまったんだ。言ってしまえば、彼らも被害者のようなもの、か。ブレイン二世はそれが顕著だったということだろう。今までの悪行が消えることはないけれど…いつか、罪を償い終わったその時に、ちゃんと面と向かって話し合えると良いな。
「最後の一人を倒した!」
「ルーシィは!?」
そうだ…これで新生
「そんな…!?」
「どうしよう…遅かったんだ。ルーシィがいなくなっちゃった……!」
「何でだよ!俺達は刻印を解除したぞ!!ルーシィを返せ!!誰か答えろーっ!!」
ナツさんの叫びが無限城に響き渡る。さっきまで戦闘が繰り広げていたのに、今は閑散としていて…虚しさだけがこの場に残っていた。
『え…?何それ…あたしがいなくなっちゃったって何?ちょっとちょっと!まさかこれって…イヤ~な予感が…!?』
「何だ!?」
「ルーシィ姉の声だ…」
「そこら中ルーシィの匂いがすんぞ!」
いや、ナツさん。その発言は色々まずい。今は普段ツッコむ本人が大変なことになってるしそれどころじゃないし、ナツさんも変な意味で言ったわけではないだろうけど。
多分これは念話とかじゃない…マイクか何かで声が響いているような感じ。きっと、さっきの戦闘でルーシィさんが無限時計を利用してリアルナイトメアをブレイン二世にかけたから、それで取り込まれるのが早くなったんだ。っていうかルーシィさん、ショックすぎるのかハッピーの餌になるとか言ってるし…さすがに不憫すぎる。
「ウォーレンさん、聞こえますか」
『ゴーシュか!?お前、いつの間に…』
あ、そっか…念話では話さないようにしていたから、僕はギルドにいるものだと思われているんだっけ。
『ゴーシュがいるんですか!?』
『ちょっとアンタ!何やってるのよ!』
『結構無茶するよな、お前…』
『ゴーシュ、もう大丈夫なのか?』
無限城にいるメンバー全員から心配されてしまった…グレイさんの一言にはあまり納得出来ないけどね。別に無茶はしてない…ただ最善を尽くそうとしているだけで。
「え、えっと…今まで喋ってなかったのはすみません。念話自体は聞こえていたんですけど、余計な混乱は避けようと思って参加していなかったんです。で、ギルドに連絡とってもらえませんか?無限時計について何か分かったこととか聞けるかもしれません」
『そうなんだよ!さっきギルドから連絡あったんだ!皆も聞いてくれ!ジャンリュック達がルーシィを助ける別の方法を見つけたんだ!』
「ジャンリュック?」
「実は実はの人だよ」
説明によると、刻印の解除が間に合わなくて融合してしまった場合、ルーシィさんが無限時計で生態リンクとなっていたウィル=ネビルの弟子の子孫である星霊魔導士達にリアルナイトメアをかけ、蛹のようになっている彼らの呪いを解けばいいらしい。無限時計は星霊魔導士達から吸収した魔力で、無限城として顕現しているらしく、彼らが解放されれば無限時計はまた部品となってバラバラに何処かへと飛んでいくらしい。
『それって…』
『おい、ちょっと待てよ!』
『ルーシィはどうなるのだ?』
『融合から解放されることは判明しているのですが…』
「下手したら、部品ごとどっかに飛んで行っちまうのか…」
「そんな…」
「他になんかねぇのかよ!」
…僕が無限城全体を結界で覆うことが出来れば……いや、無限城は天狼島よりも遥かに広い。こんな馬鹿デカい物を囲むなんて、皆の魔力を借りたとしても無理か…
『…やってみる!』
…え?いや、もうちょっと考えてからでも…さすがに即決過ぎません?
「正気ッスか!?」
『それで大勢の人達が、百年分の眠りから解放されるんだよね?何処かに飛んで行っちゃうかも、なんて…その程度のリスク!あたしは
ルーシィさんが意識を集中させ始め、無限城全体が先程のように光を放ち始める。あそこまで言われたら、反対なんて出来ないよね。
…あれ、ルーシィさんがリアルナイトメアを成功させたら、無限時計がバラバラに飛んでいくんだから…ここにいたら不味い?
『総員、撤退するぞ!ルーシィ捜索の準備を急げ!』
「やっぱり…」
「けど、脱出っつってもどうすんだ!?クリスティーナは堕とされたんだぞ!」
「とりあえず早く出るぞ!急がねぇとルーシィがっ…!?」
「ナツ兄!?」
ナツさんの頭上から降ってきた瓦礫がヒットし、ナツさんは目を回して気絶してしまった。こんなタイミングで落ちてこなくても良いのに…
『
『その声は、一夜か!』
『無事だったんですね!』
『カナロア君と友情の
ここから一直線に脱出すれば、そう時間はかからないはずだ。そうと決まれば、急がないと!
「エルフマンさん、ナツさんを!」
「おう、任せとけ!」
「皆は先に脱出して下さい!僕は――」
「おーい!」
どうやらデジモン達が良いタイミングで帰ってきてくれたようだ。ルーシィさんが何処に飛んでいくのが分からない以上、空で待機していた方が見つけやすい。
「兄貴!」
「イーロン、ドルガモンに乗って!空から探せば早く見つけられるはずだ!」
「了解ッス!」
「ゴーシュ兄、俺も!」
「ロメオとココはエルフマンさんと行って。可能性は低いけど、手負いでも六魔が襲ってくるかもしれない」
「わ、分かりました!」
「…分かった。イーロン、しっかりやれよ!」
「任せるッス!」
僕とイーロンはユニモンとドルガモンの背中に乗り、ブラックテイルモンは念のためロメオ達について行かせることにした。皆が入り口へと駆け出したのを確認した後、僕らは上の勝手口から一足先に脱出する。
「イーロン達は向こう側へ!」
「了解ッス!」
「ユニモン、僕らはもう少し上へ行こう!」
「分かった!」
こうして改めて見ると、この無限城は異常なほどデカい。さっきまで戦っていた場所から既にかなり高度を上げていると思うんだけど、それでも無限城全体を見渡すことは出来ない。まあ、イーロン達もいるんだから半分ずつくらいを見渡せれば良い。
「ゴーシュ、無限城が…!」
「始まった…!」
そしてついに星霊魔導士達の呪いを全て解除することが出来たのか、無限城全体が光り始める。次の瞬間、光が弾け…まるで流星群のように夜空を光が駆ける。
想像はしていたけど、やっぱり空を覆い尽くす程の範囲だ…この中からルーシィさんを見つけ出すのは至難だぞ…。っていうか、ちょっと高度上げすぎたかな…たまに横を光の塊が通り過ぎるんだけど、当たっても大丈夫…だよね?
「ウォーレンさん!皆は脱出出来ましたか?」
『こっちは問題ねぇ!全員無事だ!ロメオ達から話は聞いた、空から探索頼むぞ!』
「はい!」
☆
かれこれ十分くらいになるだろうか…全然見つけることは出来ない。流星群のような光は消えないし、あちこち飛び回っているのに…光の塊にぶつかってしまうかもしれないから高度を下げてしまったが、これほど見つからないとなると危険を承知で探す必要があるかもしれない。
「ゴーシュ!」
「見つけた!?」
「いや、そうじゃなくて…」
「なんだ…しっかり探してよ、早く見つけないとルーシィさんが――」
「下でタコみたいなのが飛び跳ねたんだけど」
「…え?」
ユニモンの一言に理解が一瞬追いつかず、つい下を確認する。確かに赤い巨大なタコが空中にいるのを発見した。あれって確かレギオン隊のタコ…さっきの念話の通りなら、あれの上にナツさん達がいるはずだ。
「何処に向かってるんだろう…」
タコの背中には、数人の人影がいる。そしてあのタコはある方向へと一直線に向かっていた。その先に、他の光とは少し違う光が見えた。
「ユニモン、あのタコの行き先に!」
「了解!」
それをルーシィさんだと確信し、その光へと突撃するように飛行する。それはつまり、無限城があったのと反対側へと進むということ。そのせいか、僕らは気づくことが出来なかった。背後から光の塊が高速で迫ってきているのを。
「っ!ユニ――」
最後まで言い切ることは出来ず、次の瞬間僕は空へと放り出された。光の塊が僕に直撃しそうになり、何とか躱すことには成功した。しかし、癖で結界を使って防ごうとしたからしっかりユニモンに掴まっていなかったのでバランスを崩し、そのまま落下した…ヤバい。やらかした。
「しまった…!?ゴーシュっ!」
ユニモンも自分のすぐ上を光の塊が通ったこと、そして僕が乗っていた感覚がなくなったことでこちらへ向かおうとするが、ユニモンはさっきまで高速で飛行していた。そして急ブレーキをかけて止まってしまったから、今からでは僕の元まで辿り着くにはギリギリ間に合わない。下を確認したけど、僕の落下先が標高のある岩山の上だし。
でも、今から
しかし、ここで予想外の事態が起こった。
「…っ!?」
落下中の僕に、またしても光の塊が迫ってきていたのか…僕の視界は光で埋め尽くされた。
次回で星空の鍵編は終了です。ってこれ、前も言いましたね。
自分が住んでいる地域では既に地震の影響は殆ど無くなりました。でもやっぱりまだ震源地の方々は大変なので、少しでも節電するように心がけてます。具体的にはゲームしないようにしたりとか、テレビをつけないようにしたりとか…本当に少し意識する程度ですが。
暗い話は置いといて、あと二週間程度でフェアリーテイルの第三期スタートしますね!他にも個人的に気になっているのはSAOとか、とあるシリーズとか…他にも気になる作品もいくつか。とても待ち遠しいですね!
余計な話も混ざってしまったような気がしますが、改めて。まだまだ期間が空いてしまうことが多いかもしれませんが、頑張って投稿し続けるつもりなので今後ともよろしくお願いします!