FAIRY TAIL 守る者   作:Zelf

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本当は昨日投稿するつもりだったのですが、睡魔に勝てず。

コメント頂いた結果、アニメオリジナルもありでやっていこうと思います。ご協力ありがとうございました!


第7話  少女と亡霊

 ワース樹海の奥――――ここはかつて古代人の都があった場所。周りを岩壁と滝に囲まれており、その岩壁を削ってつくられた洞窟は村の神事の際に巫女が籠り、神の言葉を聞いたという。

 

 現在、その洞窟の中には悪しき者たちがいた。そう、連合軍が相対したバラム同盟の一角を担う、たった6人しかいない闇ギルド・六魔将軍(オラシオンセイス)である。彼らはこの場所を仮拠点としていた。彼らの傍には、連合軍に参加していたウェンディとハッピーの姿もある。

 

「きゃあっ!」「うわぁ!」

 

 六魔将軍(オラシオンセイス)に捕まり、洞窟の奥で地面へと投げられる2人。

 

「乱暴するな!女の子なんだぞ!」

 

「ハッピー…」

 

「…」

 

「っ!やめて!!」

 

 ブレインはハッピーの頭を掴み、力を入れようとする。ウェンディがそれを止めると、ハッピーは再度地面へと放られた。ハッピーは目を回している。

 

「ハッピー、大丈夫?」

 

「あ、安心してウェンディ。オイラが絶対逃がしてあげるからね」

 

「ハッピー…!」

 

 ウェンディにとってハッピーのその言葉は、少なからず心の支えとなった。1人だけで攫われていたら、すぐに心が折れてしまっていたかもしれない。ウェンディはハッピーを優しく抱きしめた。

 

「ブレイン、この娘はなんなんだ?」

 

「ニルヴァーナに関係してんのか」

 

「そんな風には見えないゾ」

 

「そうか!売ってお金にするつもり、デスネ!!」

 

「おめぇは他のこと考えらんねぇのかよ」

 

「金さえあれば愛でも手に入りますネ!!」「ああ、そうかい…」

 

 六魔将軍(オラシオンセイス)のブレイン以外のメンバーは、彼女が何者であるか分かっていないようだ。連合軍を全滅させた時にブレインが独断で捕縛したのだから当然ではあるが。

 

「こやつは天空魔法…治癒魔法の使い手だ」

 

「治癒魔法だと!」

 

失われた魔法(ロスト・マジック)…」

 

「忘れ去られた古代の魔法か」

 

「これは…金の匂いがしますネ」

 

「ふん、こんな小娘が…!まさか…」

 

「その通り…奴を、復活させる!!」

 

『!!』

 

 ブレインがウェンディを連れ去った理由。……それは、ある男を復活させることだった。それが、六魔将軍(オラシオンセイス)の目的達成の為に最善だと考えたからだ。

 

「奴って誰だ!」

 

「よ、よく分かりませんけど…私、悪い人達に手は貸しません!!」

 

「貸すさ、必ず。うぬは必ず奴を復活させる」

 

 ハッピーとウェンディが警戒する。が、その警戒も無駄だと言わんばかりにブレインがそう言い放った。ブレインは、ウェンディとその男との関係を知っていた。完全に把握していたわけではなかったようだが、それはウェンディも同じだった。

 

「レーサー。奴をここに連れてこい」

 

「遠いな…いくら俺でも1時間はかかるぜ」

 

「構わん」

 

「なるほど…あいつが復活すれば、ニルヴァーナは見つかったも同然。そういうことかブレイン」

 

「コブラ、ホットアイ、エンジェル。貴様らは引き続きニルヴァーナを探せ」

 

「でも、あの人が復活すればそんな必要はないと思うゾ」

 

「だから、誰を復活させようとしてるんだよ!!」

 

 ハッピーが叫ぶが、誰も聞く耳を持とうとしていない。彼らに必要なのはウェンディであって、ついてきてしまっただけの猫はどうでもいいということなのだろう。

 

「万が一ということもある。私とミッドナイトはここに残ろう」

 

「ミッドは動く気がないみたいですガ」

 

「しゃあねぇ、行ってくるか」

 

「ねぇ、競争しない?先にニルヴァーナを見つけた人が「賞金100万J(ジュエル)!!乗った!!…デスネ!」…100万は高いゾ」

 

 レーサーはその男の元に、コブラたちはニルヴァーナ捜索にそれぞれ出て行く。この場にはウェンディとハッピー、ブレインと、ずっと眠り続けているミッドナイトのみとなった。

 

「ねぇウェンディ…こいつらさっきから何の話をしてるの?」

 

「わ、分かんない、私にも。……一体どんな魔法なの、ニルヴァーナって?」

 

「光と闇を、入れ替える魔法だ…」

 

「…?光と闇が…」

 

「全然意味わかんないよ…」

 

 ウェンディとハッピーの疑問にブレインは答えることもなく、ただ静寂が場を包んでいった…

 

 

 

 皆がウェンディとハッピーの救出に行った。本当なら僕も助けに行きたかったけど、エルザさんの毒を治すことはできなくても遅延させることはできるようなので、ヒビキさん、ルーシィさんと一緒に残ることにした。

 

「ゴーシュ、どう?」

 

「やっぱり僕には遅らせることしかできないみたいです。…2、3時間は大丈夫だとは思いますが」

 

「そっか…ウェンディとハッピー、大丈夫かな…皆、急いで…」

 

「焦っても仕方がない。ゴーシュ君が遅延させてくれているおかげで少しだけ猶予がある。僕らは、僕らにできることをするしかない」

 

「できることって?」

 

「向かう者、留まる者。僕達は即席の連合軍だけど、チームとして機能しなければ奴らには勝てない」

 

 その通りだ。各個撃破するにしても、2人以上でなければ相手にならないと思う。奴らは魔力も高いし、正規ギルドよりも戦闘慣れしているだろう。そんな相手に1人で挑むなんて無茶だ…まあ、エルザさんとかジュラさんなら大丈夫だと思うけど。

 

 ヒビキさんが古文書(アーカイブ)で何かを始める。ヒビキさんは留まり、皆に情報を与えてサポートする方が向いている…あれ、なんで最初飛び出していったんだ?六魔の奇襲を知らなかったとはいえ、いきなり前線上げに行った気がするんだけど…

 

「ジュラさんがその魔法…古文書(アーカイブ)って言ってたけど」

 

「そう、これで皆の動きを確認できるんだ。君は行かないの、ルーシィ?」

 

「エルザを置いては行けないでしょ?それに、どう考えてもあたしが一番戦力にならないし…」

 

 そっか…この頃のルーシィは魔力切れっていう決定的な弱点があるんだっけ。7年後は第二魔力(セカンド・オリジン)の解放でそんなことはほぼなくなったけど。星霊魔法って魔力消費が激しいのかもしれない。

 

「またまた謙遜を…噂は聞いてるよ?3mのゴリラを19匹も倒したとか、ファントムとの戦いでは素手であのマスター・ジョゼを再起不能にしたとか…アカリファじゃあ闇ギルドを相手に1人で1000人と戦ったとか!」

 

「尾ひれつきすぎ…」

 

 えっと、ゴリラの話はマカオさんのことだし、幽鬼の支配者(ファントムロード)との戦いでマスター・ジョゼを倒したのはマスター・マカロフだし…アカリファの件はどうだったかな?あれも最強チームでやってたことだった気がするから、雑魚1000人くらいなら余裕かもしれない。

 

「でも、ルーシィさんはここに居てくれないと困ります」

 

「え?なんで?」

 

「僕の魔法は攻撃よりも防御寄りだし、ヒビキさんの古文書(アーカイブ)もサポート寄りだし…もし今この場で敵に襲われたら、こっちの攻撃手段はルーシィさんしかいないと思うんですよ」

 

 このままだったら、恐らく僕が原作に介入するのはエンジェル戦。僕が介入することで防御面はカバーできるはずだから、ルーシィさんに攻撃に専念してもらえば原作より楽に勝てるかもしれない。

 

「確かに、あれだけの実績を持つルーシィが一緒だと心強いね!」

 

「あんたねぇ…でも、そういうことなら任せておいて!これでも妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士なんだから!」

 

 出た、名言!いいな…そんなこと言う機会なんてほとんどないし。僕も言える時が来るといいなぁ。

 

 まあヒビキさんのは冗談で言ってると思うけどね。

 

「そういうあんたは行かないの?」

 

「傷付いている女性を置いては行けないよ」

 

「へぇ、意外と優しいんだ~…週ソラの記事で読んだのとは印象違うなぁ」

 

 週ソラっていうのは週刊ソーサラーっていう雑誌のことで、彼氏にしたい魔導士ランキングとか彼女にしたい魔導士ランキングとかそんなものが掲載されている。このヒビキさんはその週刊ソーサラーで彼氏にしたいランキングの上位ランカーらしい。

 

「というより、攻撃系の魔法がないか、あっても弱いからじゃないですか?」

 

「す、鋭いねゴーシュ君…」

 

「なぁんだ、台無し~」

 

「僕の魔法は、皆にここの位置を知らせることができる。ウェンディとハッピーを救出しても、この場所に帰れなかったら意味ないからね」

 

「…結構色々考えてるんだ」

 

「一夜様の教えを、守っているだけさ」

 

 僕ってもしかしてお邪魔?なんだかいい雰囲気になっている気がする。

 

「ナツ君たちは…ここか」

 

 そういえばシャルル、大丈夫かな?ナツさんとグレイさんと一緒に行っちゃったけど…まあ彼女はしっかりしてるから問題ないか。ウェンディと一緒に、帰って来てくれよ…

 

 

 

「ふぅ…参ったぜ。思ったより時間がかかっちまった。こんなに重けりゃスピードだって出ねぇってもんだ」

 

「何を言うか。ぬしより速い男など存在せぬわ」

 

「あれは…」

 

「棺桶…?」

 

 約1時間半が経過し、レーサーが大きな十字架のような形をした棺桶を持って仮拠点へと戻ってきた。棺桶には鎖が巻かれている。

 

「ウェンディ。お前にはこの男を治してもらう」

 

「わ、私、そんなの絶対やりません!!」「そうだそうだ!」

 

「いや、お前は治す。治さねばならんのだ」

 

 ブレインがそう言い放った途端、鎖についていた錠が外れ、棺桶の中身が姿を現した。中には、所々が結晶のようになってしまった青髪の青年がいた。顔には特徴的な模様があり、ウェンディはその顔を知っていた。

 

「…!!」

 

「この男はジェラール…かつて評議員に潜入していた」

 

「そんな…そんな…!」

 

 ハッピーもジェラールのことを知っていた。ナツたちは以前楽園の塔という場所で、ジェラールと対峙したことがあるのだ。彼は黒魔導士ゼレフを復活させるべく、R(リバイブ)システムという蘇生装置を8年かけて建築し、評議員に潜入してエーテリオン――――超絶時空破壊魔法と言われる兵器を利用した。しかし、ナツたちの活躍で彼は倒され、生死不明の状態だった。

 

「評議員に潜入していたということは即ち、ニルヴァーナの場所を知る者」

 

「ジェラールって、どうしてここに!?なんで生きているの!?」

 

「ジェラール…」「知り合いなの!?」

 

「エーテルナノを浴びてこのような姿になってしまったのだ。……だが、死んでしまったわけではない。元に戻せるのはうぬだけだ。この男は、お前の恩人なのだろう?」

 

「ええ!?」「…」

 

 ハッピーが知るジェラールと、ウェンディの恩人であるジェラールは別人である。が、そんなことを知る者はこの場にはいない。ウェンディとハッピーは、ただ混乱していた。

 

 




今回少し短めにしました。三人称視点を練習した回でした。

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