今回はちょっとリハビリ的な感覚なので、短めです。
僕らがギルドに戻ると、既に最強チームの面々がハートフィリア家から戻ってきていた。しかし、一つだけ気になることが。
「ナツさん…?」
「ナツ兄、小さっ!?」
「小さい言うなっての!」
「どうしたんですか?」
ナツさんがグレイさんの親指と人差し指で摘ままれるほど小さくなっていた。話を聞くと、ハートフィリア家にレギオン隊のダンという男とサミュエルというエクシードの二人組と交戦し、ナツさんはダンの持つ魔槍の効果によって小さくなったらしい。七年前にあったフィギュアに見えるくらい小さいので、抵抗しようと火を噴いていても可愛らしく思える。
「そろそろ話に戻って良いかしら…」
「あ、すみません。何か分かったんですか?」
「色々とね。あたしのお父さん、この本の内容をなぞっていたの」
「どういうことだ?」
ルーシィさんが手に持っている絵本、“星空の鍵”の内容を語り始める。小さな女の子が全部集めると幸せになるという六つの鍵を探して旅をする。その子が幸せになる代わり、周りの人達が不幸になるというオチらしい。
絵本ってことは、子供に読み聞かせる物なんだよね。こういうバッドエンドな物語って読まれることはあるんだろうか…?僕が親の立場だったら内容知った時点で買わないと思う。子供が泣いちゃうかもしれないし。
内容をなぞっていた、というのはもちろんあの遺品の針のこと。あれが絵本に出てくる一つ目の鍵と同じように“旅”をした、ということらしい。確かにミッシェルさんが鍵を持って、ここに運ばれてきたのを“旅”と解釈出来る。
「あの、ちょっと良いッスか?」
「どうしたの?」
「そもそも、なんでその絵本になぞらえてたんスかね?」
「そっか、そこら辺はゴーシュ達に話してなかったね」
「ルーシィの親父さんが遺していた暗号を解読したら、ウィル=ネビルって作家の出していた本に繋がったんだ」
「そのウィル=ネビルが出していた本の一つが、今ルーシィが持っている絵本というわけだ」
「なるほど…すみません、話続けてください」
旅に出た少女は、様々な場所で“鍵”を見つけ集めていく。最後に聖堂にたどり着いたという話を聞き、エルザさんはこの町のカルディア大聖堂かと疑うが、ルーシィさんがそれを否定。小さい頃にこの絵本のモデルになった場所を探したことがあるらしい。
小さい頃って何歳くらいなんだろう?調べて場所を突き止めるとか、資料の多さもビックリだけどルーシィさんの行動も凄いと思う。なんていうか…小さい頃だったら、普通絵本の内容をそのまま信じちゃうんじゃないのかな?サンタさんとかそんな感じで。少なくとも前世の僕はそうだったけど…絵本の内容を創作っていうことを理解していることが凄い。
「お父さんは残り五つの部品を、その場所に分散して隠したんだと思う。そんな話、してなかった?」
「いいえ、特には……亡くなる頃、とても無口だったから…」
「…とにかく、星空の鍵のモデルになった場所に行けば、残りの部品は手に入れられるわ!間違いない!レギオン隊がどうして時計の部品を集めているのか分からない。でも、混沌が訪れるなんて言われたら、放っておくわけにはいかない!あたし、探しに行ってくる!」
「お前一人でか?」
「うん。マスターには止めておけって言われたけど、なんか気になるし…」
「そうですね…」
「ナツはこのままじゃ役に立たないしね!」
ハッピーの頭から飛び降りたナツさんに向かって煽るような一言を言っていたけど…解除された時が怖そう。まぁその辺は気にしないでおくとしようかな。
「どうするよ?レギオン隊もこのネタに勘づいているんじゃねぇか?だとしたら時間との勝負になるぜ」
「…残りの部品が全て集まった時、何が起こるのかは定かではない。じゃが、世界の混沌は避けねばならぬ」
「…チームを編成しよう」
☆
さすがにギルドメンバー全員でというわけにはいかないので、話し合いの場にいたメンバーを中心に五つのチームに分かれて部品を回収しに行くことになった。部品を回収しておけばレギオン隊と出会す可能性も高まるし、奴らの目的が分からない以上時計の部品集めを止めるしかない。
「こういう所で食べると、きっと美味しいわよ~」
「僕達が混ざって良かったんですかね…折角の三人で水入らずなのに」
「漢なら気にするな!何も問題ねぇさ!な、姉ちゃん、リサーナ!」
「ええ、勿論!弟達が出来たみたいで楽しいし!」
「ハハハ…ありがとうございます」
ご飯の時くらいはと思ってデジモン達を出しているから騒がしいかもと思ったけれど、ミラさんにとっては弟妹の感覚らしい。エルフマンさんも気にせずシチューを煮込んでいる。しかしリサーナさんは顔が少し引きつっていた…これはデジモン達を出す前からだし、思っていることも何となく分かる。
「あの…ミラ姉?ちょっと、場所のチョイスが…」
「あら、そう?」
「漢だ!」
目的地に向かう途中で一度休憩をしようということで昼食をとることになったんだけど、わざわざ崖の先端でやらなくても…とは確かに思った。でもリサーナさん以外気にしていないから僕も気にしないことにした。このメンバーなら崩れたとしても問題ないだろうってことで。
「よし、出来たぜ!」
「ありがとうございます、エルフマンさん」
「皆、ご飯出来たわよ~」
さすがミラさん、何か子供の扱いに慣れている気がする。デジモン達もちゃんと言うこと聞いてご飯を食べ始めたので、僕も早速頂くことにする。
「美味しい…!」
「エルフ兄ちゃんの料理、美味しいでしょ?」
「ちょっと意外だね。料理とかしない人だと思った」
「本当だね~」
「漢たる者、料理を磨くべし!」
「漢は関係無いんじゃ…?」
デジモン達の失礼な感想にも文句一つ言わず、寧ろ誇らしげにしているエルフマンさん。でも、本当にこのシチュー美味しい。何か、優しい味って感じがする。
「そうだ、ゴーシュ!デジモン達の話の続き、教えてよ!」
「良いですよ、どこまで話しましたっけ?」
「進化の話だったわね」
リサーナさんが特に熱心にデジモンの話を聞いてくるので、道中はその会話ばっかりだ。やっぱり動物の
「ゴーシュ、早く見せてよ!」
「はい、えっと…デジモン図鑑を見る限り、パタモンとプロットモンの進化先は…この辺りですかね」
デジヴァイスを操作して、ゴーグルのレンズから映像が照射されホログラムとして現れる。そこにはデジモン図鑑から引っ張り出された画像が何枚か映し出された。これは僕がこの前一人でデジヴァイスを操作していた時に気づいた機能の一つ。こうすれば周りの人にも見せやすくて良い。
「なんだこりゃ?」
「天使…?」
「そうなんです。この二体は体内に聖なる力を秘めているらしくって、だったら天使型とか聖獣型のデジモンになるんじゃないかなって」
「へぇ~…なんかカッコイイね!」
「パタモン達はどんな姿になりたいとかあるの?」
ミラさんがパタモンとプロットモンにそう尋ねた。二体は考え始め、パタモンは何故か上を見た。
「パタモン?」
「僕は、もっと気持ちよく空を飛びたいかな~」
「なんか、パタモンっぽいね」
「そうかな~?」
のんきというか、マイペースっぽい感じがパタモンらしい。でも空を自由に飛びたいっていうのは、もしかしたら鳥みたいなデジモンになりたいってことなのかな?
「プロットモンは?」
「う~ん……なんか、しっくり来ないの」
「漠然とでもイメージないの?」
「聖なる力とかそんなこと言われても分かんないし」
「まあ、僕が予想しただけだしね。これが正解ってわけじゃないか」
その後もデジモンの画像を映し出して、リサーナさんやミラさんが動物のようなデジモンを見て可愛いと盛り上がったり、エルフマンさんが筋肉モリモリの漢というか、親父みたいなデジモンを見て反応したり。デジモンって沢山いるんだな…確か、デジタルワールドからこっちに来たのはドルモン達とウェンディモン、そしてウェンディモンに抱えられていたデジタマ達。サンゾモンの力とやらがいつまで持つのか分からないけれど、早く探し出してあげないとな。
このデジヴァイスに備わっていた機能の一つに、転送というものがあった。詳しく見てみた所、デジヴァイスの中に入ったデジモンを転送するわけじゃなくて、デジモンに宿っているサンゾモンの力をデジタルワールドに転送することが出来るらしい。どういう原理なのかはよく分からないんだけど。
要するに、デジタマもしくはデジタマから孵ったデジモン達を回収しろっていうことだろう。そうして転送をしていけばサンゾモンは何体回収出来ているのか分かるだろうし、全てのデジモンを回収しきったその時に、きっとデジタルワールドから迎えが来るんだろうと僕は思っている。きっと、その時が……――
「ゴーシュ…?」
「あ、ごめん…何でも無いよ」
今は気にしても仕方ない。とにかく、時計の部品集めに専念しよう。僕らは食事を終えた後に目的地へと進むことにした。
☆
「ちょっとリリー、全然方角が違うんだけど…」
「どこに向かっているんスか?」
「…………」
時間は少し遡る。チーム・シャドウギアの三人と一緒に行動していたイーロンは、リリーの案内で険しい山道を登っていた。
「アイツ、何考えてんだかよく分かんねぇよな」
「うん…頼りにはなるんだけどね」
「ハァァ~~…」
序盤から既に体力を切らし始めていたドロイが、地面に倒れ込んだ。
「大丈夫?」
「大丈夫じゃない……この体型でこの坂は…無理、デス」
「だから鍛えた方がいいって何度も言ったじゃないッスか」
「おいリリー、目的地にそのまま行った方が…ドロイその内死ぬぞ?」
「ドロイは戦力外だ。もう一人強力な者が必要だ」
「ひどい~……」
「強力な者って誰?」
「妙な笑い方をする男だ…ギヒッ、とな」
「それって…」
そのまま進み続けること数十分、リリーが大きな滝の前で歩みを止めた。
「すげぇ滝だなぁ…」
「水だ!喉渇いた~!!」
ドロイが真っ先に駆け寄り、水を飲み始める。リリーが目的の人物を探し始め辺りを見渡すので、イーロン達も探し始めた。すると、レビィが何かに気づいた。
「あ、あそこ!」
「ガジル…?」
「何してんだ?」
「修行じゃないッスかね?」
「その通りだ」
「ガジル~!」
「うるせぇ…今修行中だ」
滝行をしているガジルに向かって、レビィは手を振りながら声をかける。するとガジルは鬱陶しいとでも言うように片目だけを開いてそう言った。
丁度その時、空の暗雲が光を放った。その光は滝行中のガジルへと降り注ぐ。リリーは思わず両目を瞑り、耳を塞いだ。
「ぐ…!うぅっ…」
「こ、怖くないぞ…!」
「だから、何してんだアイツ」
「あれで修行なのか?」
「ラクサス兄さんと戦う為ッスよ、きっと…」
「滝と雷!両方に打たれても大丈夫なように訓練してんだ!喧しい!」
「ど、どっちかにしなよ…」
ラクサスとの決闘から逃げ出したガジルは、本格的に対ラクサスの特訓を始めた。鉄は電気をよく通す。どんなに強力な雷を受けても平気な体づくりから始めたのだ。
「お、俺も修行だ…!恐れてなどいないぞ!」
「来い、リリー!」
「ああ!」
「ただ迎えに来ただけなんだろ!?」
「世の中には、克服せねばならぬものがある!」
「主旨が違ってきてるよ、リリー…」
「…俺もやるッス!」
「え?ちょ、おい!」
イーロンもまた鉄の造形魔法を使う。電気の魔法を使用する敵と遭遇した時の為にと今考えた結果が修行に付き合うことだった。こうして、彼らはしばらくこの場所に留まることになったのだった。
今回ほど感覚を空けることはないと思いたいですが、正直言って分かりません。温かい目で、気長に待っていただけると嬉しいです。