FAIRY TAIL 守る者   作:Zelf

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サブタイでネタバレはしないようにしたい。前書きとかでは適度にしていくかもですが。つまりはこういうことです。




今、冒険が進化する。





第59話  友の為に

 ナツがラクサスに一撃でノックアウトされた日の夕方。次にラクサスと対戦するはずだったガジルが逃走し、エルフマンたちが山狩りを行ったが結局見つからず。現在は祭りも終わり、ほとんどのメンバーがガジルを捜索している。その為、ギルドにはエクシード隊しかいなかった。

 

「…!ガジルの奴が帰ってきたか!?」

 

 誰かがギルドへと近づいてきている気配を感じ取ったリリーは駆け足で外へと出る。それに続きハッピーとシャルルも外へ向かった。

 

「お前たち、何者だ!」

 

 彼らが目にしたのはガジルではなく、三人の人影だった。その姿を見て、リリー達は驚く。

 

「な…お前は、ココ!?」

 

「何であんたがこっちの世界にいるわけ!?」

 

「えーっと…ココって確かエドラスにいた子だよね?そっか、オイラ達がいない間にアースランドに来てたんだ!」

 

「その割には年が…」

 

 目の前にいる少女はエドラスでナツ達に味方してくれた少女、ココにそっくりだった。しかし、エドラスで見た彼女よりも背が伸びていて、大人びた雰囲気も感じる。

 

「一体どうなってるんだ、ココ?」

 

「馴れ馴れしい口をきかないで下さい。あなた方とは初対面です」

 

「何だと!?」

 

「えいやーっ!酷い物忘れ!?」

 

「違うわよ!ひょっとして、コイツら…!」

 

 シャルルが何かに勘づいたその時、三人組の後ろから、ナツ達が戻ってきた。

 

「腹減った~」

 

「ガジルさん、どこ行ったんでしょうね?」

 

「敵前逃亡など、漢のすることじゃねぇ」

 

「お、誰だ?」

 

「お客様?」

 

「あれ?ナツさん、ゴーシュ、この人…」

 

「あ~……クイーン・シャゴット?」

 

「それはエクシードの女王様です。この子はエドラス王国で僕らを助けてくれた…」

 

「ココ!?久しぶり!っていうかどうやってアースランドに来たの?」

 

 エドラスでココと実際に会っているナツ達は再会したことを喜び始めるが、ゴーシュは素直に喜べずにいた。エドラスでは既に魔法は使えなくなった。有限だった魔力を全てこっち側の世界―――アースランドに解き放ったからだ。なのに空間魔法の一種であるアニマがまた使えたとは考えにくい。

 

「カハッ!どうやらウチらすっげぇ人違いされてるみてぇじゃん?」

 

「ン~……構うことないよ、マリー=ヒューズ」

 

「早く仕事にかかりましょう、シュガーボーイさん」

 

 他の二人の名前を聞いてゴーシュとシャルルはあることを確信した。シュガーボーイはほとんど変わっていないが、マリー=ヒューズの方はエドラスとは違う。エドラスにいたのは男性だったが、今目の前にいるのは女性だ。

 

「ってかお前男だったろ!なんで女装してんだよ!」

 

「…ウチこいつ嫌いじゃん」

 

 いきなり男扱いされたマリー=ヒューズは青筋を立てながらそう呟く。いきなり見ず知らずの人(・・・・・・・)に男性呼ばわりされれば、大抵の女性は怒るのは当然だった。

 

「ところで、あの…」

 

「あんたら何しに来たんだ?」

 

「ここは私達のギルドよ!」

 

「カハッ……!」

 

「ン~…噂通りショボい魔導士達だね」

 

「何!?」

 

「ウチらの要求はただ一つ。ルーシィ=ハートフィリアを渡してもらおうじゃん!」

 

「ええ!?」

 

「渡せ、だなんて…」

 

「うわぁ…初めて見たよ、生プロポーズ」

 

「違うわよ!」「違うじゃん!」

 

 ハッピーやミッシェルを含め他数人が顔を若干赤くしている。そんな中、ゴーシュは警戒を始め、すぐ傍にいたドルモンも同じように警戒する。因みにだが、プロットモンは昨夜と同じように祭りではしゃぎ回って一時迷子になり、その捜索の為にパタモンがかなり長い時間飛び回っていたので、この二体は既に活動限界の六時間を迎えている。

 

「隠しても無駄ですよ!」

 

「ルーシィ=ハートフィリアがこのギルドにいることは分かってんじゃん?」

 

「ン~…さっさと名乗り出る方が身のためだよ、ベイベ!」

 

 ルーシィやレビィ、ミッシェルは小声で話し始める。しかしルーシィ本人も彼らとこの世界で会うのは初めてであり、狙われている理由なども分からずにいた。

 

「いきなり出てきて大層な口叩いてくれるじゃねぇか」

 

「俺はここのマスターだ。理由も聞かずに仲間を渡せと言われて、はいそうですかってわけにはいかねぇな」

 

「何処の誰だか知らねぇが、さっさと帰りやがれ!」

 

「おやおや、怖い怖い」

 

「あちこちで教会が襲われている事件って…もしかして貴方達が!?」

 

「ハァ?」

 

「なるほど」

 

「確証は無くとも、タイミングが良すぎるというわけだな」

 

 キナナの発言から何故か彼らが教会破壊事件の犯人にされているが、彼らは否定する。

 

「ン~…スパイシー!なこと言ってくれるね」

 

「心外ですね」

 

「テメェらの与太話に付き合う義理は無いじゃん。ほら、さっさとルーシィ=ハートフィリアを差し出しな!」

 

「逆らうと言うなら…力ずくで貰っていくまで!」

 

 シュガーボーイは魔法で取り出した杖をマイク代わりに歌い始める。

 

「…?」

 

「何だ?歌か、これ?」

 

(ガジルさんと良い勝負かな…!?)

 

 次の瞬間、その歌声に反応して、シュガーボーイが着ていた服の内側が盛り上がり、襟元や裾から緑色のスライムが溢れ出した。

 

「うわ…」

 

「色々キモいんですけど!?」

 

「美味しそう…」

 

防御結界(ディフェンド)(ウォール)!」

 

「!へぇ…」

 

 スライムがナツ達に飛びかかる直前、ゴーシュは目の前に結界の壁を張る。

 

「ゴーシュ、ありがとう!」

 

「なんだコレ!」

 

「粘液?」

 

「…!ヤバッ!?皆さん、一旦離れて下さい!」

 

「え?」

 

 防いだのは一瞬。スライムはどんどん大きくなっていき、結界を丸ごと飲み込んでしまう。それを察知し全員が回避に専念する最中、スライムへと突っ込んでいく人物がいた。

 

「うおおおおっ、漢ーーーっ!!!」

 

「エルフマンさん、それに触ったら…!」

 

「何じゃこりゃ!何処を掴んだら良いのか分かんねぇ!」

 

 エルフマンがスライムに掴みかかるが、反対に取り込まれ始める。リサーナとミラはエルフマンを助けようと動く。

 

「エルフマン!」

 

「エルフ兄ちゃん!」

 

「駄目だ、来るな!コイツは何かある…うおっ!?」

 

 スライムが一気に膨張し、エルフマンだけでなく近づいていたミラとリサーナも取り込んでしまった。

 

「う、動けない…」

 

「思い出すなぁ、昔は三人でこんな風に仲良く一つの布団で…」

 

「喜んでる場合じゃねぇ!」

 

「何なのあれ…」

 

「粘液が意思を持っているのか?」

 

「この感じ…皆、触っちゃ駄目よ!」

 

「結界が消された…魔力を吸い取ってます!」

 

 ゴーシュはそう言い、皆がスライム攻撃を何とか回避しているのを確認した。次に、囚われた三人を助け出す方法を考える。

 

(魔法を吸収する魔法…僕の結界とは相性が悪い)

 

「ゴーシュ!」

 

「ドルモン…そうか!任せた!」

 

「了解!メタルキャノン!!」

 

 ドルモンが連続で必殺技のメタルキャノンを放つ。魔法以外での攻撃ならば、恐らくスライムに取り込まれることはないはずだ。

 

「ホワッツ!?何だその生き物は!」

 

 ゴーシュ達のその予測は正しく、ドルモンの鉄球によって三人が囚われているスライムに次々と穴を空けていく。まるで銃弾で壁をぶち破るように。そして穴だらけになったことで三人はまだ捕まったままではあるものの、大元のスライムから切り離すことには成功した、のだが。

 

「あ、また…!」

 

「ゴーシュ、ドルモン!俺達のことはいい!」

 

「早く逃げて!」

 

「ゴーシュ!」

 

「くそっ…!」

 

 スライムがすぐに膨張し、またしても三人を取り込んでしまった。

 

「「「「うわーっ!」」」」

 

「イーロン!ロメオ君!」

 

「マスター達が…!」

 

「くっ…防ぐだけで手一杯だ!」

 

 ロメオ、イーロン、ワカバ、マカオの四人の方にはココが襲いかかり、ギルドの壁を走ってイーロンとロメオの攻撃を躱す。マカオとワカバはこれ以上ギルドを壊すまいと二人を止めた所でスライムの膨張に巻き込まれてしまったようだ。

 

「何これ、どんどん大きくなってる!?」

 

「ナツ~!どうにかして~!!」

 

 一番離れた場所にいたルーシィ、ミッシェル、レビィの三人。彼女らの場所から見ると、もう既にギルドがほとんど見えない程にスライムが膨張していた。ルーシィが半泣きになりながらナツへ助けを請うが、肝心のナツは―――燃え尽きていた。

 

「何か真っ白なんですけど~!?」

 

「ナツさん!」

 

「まさか、今頃ラクサスとの決闘のダメージ!?」

 

「凄い時間差…」

 

 ウェンディはエクシード隊と共に櫓の上へと避難していたので、巻き込まれずに済んだようだ。

 

「すっげぇコイツら面白すぎ~!アッハッハッハッハ!」

 

「スパイシーなスクリームだね~」

 

「ギルドの魔導士なんて大したこと無いですね!」

 

「戻っといで、ハウ~ンズ」

 

 シュガーボーイがスライムを服の中へと戻す。囚われていたエルフマン達やマカオ達はスライムから解放されはしたものの、全く動く事が出来ない。

 

「はい終了~!もう降参ですか?」

 

「ハァ、ハァ…くそっ!」

 

「魔力の消耗が…」

 

スライムから逃れるため魔法で防いでいたマックスやラキも消耗がかなり激しく、肩で息をしている。

 

「どうなってんのさ~?」

 

「コイツら、我々が知っているココ達ではない」

 

「アースランドに元からいた、ココ、ヒューズ、シュガーボーイってことね」

 

「そうか、エドラスにはエドラスの私達がいたように…」

 

「こっちの世界にも、ココ達がいたってことね」

 

 エドラスとアースランドは瓜二つ、そこに住んでいる人々も似通っていた。それこそ、見分けがつかないほどに。ナツ達が知っている三人は、あくまでエドラスの世界の三人だ。アースランドにいる三人とは全く無関係の、赤の他人同士ということになる。

 

「ルーシィ=ハートフィリア、いい加減に名乗り出ないと仲間がもっと傷つくじゃん?それとももっとウチらに暴れてほしい?カハッ!」

 

「…駄目だよ、ルーちゃん」

 

「ここは堪えないと…」

 

 と、ここでようやく真っ白になっていたナツがよろめきながらも立ち上がった。

 

「まだ、誰がルーシィかはバレてねぇ…お前ら一旦ここから離れて、じっちゃんを探してくれ。後は俺が何とかする」

 

「でも…!」

 

「フラフラだよ、ナツ…!」

 

「そこの三人!すっげぇ怪しいじゃん!」

 

「僕らもナツさんをサポートします…ウェンディだっていますし」

 

「ナツ兄…これを!」

 

 スライムに取り込まれていたせいでほとんど力が入らない中、ロメオは最後の力でナツに炎を投げ渡す。

 

「サンキュー、ロメオ…あぐっ………!くっせぇ~!!」

 

「ごめん、間違えた…」

 

「いや、色で分かったでしょうに…」

 

 悪臭を発する黄色い炎を食べ悶絶するナツ。やや呆れ気味にゴーシュが言うも、これで魔力が一時的に回復した。

 

「とりあえずご馳走様……走れ、ルーシィ!!」

 

 ナツが両手から炎を放ち、それを目眩ましにしてルーシィ達は走り始める。しかし、炎が眼前に迫ってきているにも関わらず余裕そうな三人を見て、ゴーシュは何か嫌な予感がした。

 

「ホット!」

 

「火の魔法ですか」

 

「カハッ…くだらないじゃん。指揮術!」

 

 マリー=ヒューズがどこからか右手の形をした指揮棒を取り出し、それを一振り。すると彼女らの眼前まで迫っていた炎が急に逸れ、マックスとラキの方へと牙を剥いた。

 

「ちょ…!防御結界(ディフェンド)(ウォール)!」

 

「危ねぇだろナツ!」

 

「おろ!?」

 

 ギリギリで結界が炎を阻み、マックスがナツへとそう言い放つ。ナツ自身は何が起こったのか分かっていないようだ。

 

「仲間割れ!?」

 

「なんで?」

 

「ひょっとして、あれ…!」

 

「にゃろーっ!!」

 

「ほい」

 

「あが、が…うわ!」

 

 ナツが今度は火竜の咆哮で攻撃するが、マリー=ヒューズが指揮棒を振った途端体の向きを180度回転し、ルーシィ達を襲いかかった。しかしこれもゴーシュが結界で防いでいた為、無傷で済んだのだった。

 

「…やっぱし。便利な魔法使うじゃん?」

 

「人を操る魔法…エドラスのヒューズとは反対ですね」

 

「わりぃ、助かった」

 

「どういたしまして」

 

 エドラスのヒューズは乗り物や人形といった物体を操る魔法を使っていたが、このアースランドのマリー=ヒューズは人間を操る魔法を扱う。人間…つまり、魔導士を操ればその魔導士の魔法すらも操ることが出来るのだ。

 

「さぁ、罰当たりな魔導士ども!もっと楽しく踊るが良いじゃん?…かっ!?」

 

 マリー=ヒューズが魔法を使おうとしたその時、どこからか飛んできた小石が彼女の側頭部に直撃した。魔導士といえど、小石を頭にぶつけられれば怯むし痛い。彼女は顔を引きつらせながら小石が飛んできた方向を見る。

 

「キナナさん!?逃げて下さい!」

 

「ン~…あの娘、魔導士ではないみたいだね」

 

「石…ウチに石を……すっげぇ殺意湧くじゃん…!!」

 

 このままではキナナが攻撃されてしまう。ウェンディは咄嗟に櫓から飛び降り、リリーは高速で彼らに特攻する。

 

「もう止めろ!!」

 

「猫は引っ込んでなさい!」

 

「ぐっ…!」

 

「天竜の…翼撃!!」

 

「バーカ!」

 

 リリーは上空に飛び上がったココによって蹴り落とされ、ウェンディが放った一撃は―――結界によって、防がれた。

 

「え…?」

 

「く、そっ……!!」

 

「しばらく操らせて貰うじゃん?」

 

 マリー=ヒューズの魔法の弱点は、一度に一人だけしか操れないこと。故に、多対一の場合は不利になってしまう。そこで、彼女は防御魔法の使い手であるゴーシュに目をつけた。今の戦闘で、彼の魔法であればナツの攻撃も防ぐことができ、同時に複数防ぐことが出来ることも確認されてしまった。

 

エドラスでもやったように、結界で指揮棒を弾き飛ばそうとした直前に操られてしまったゴーシュは悔しそうに唇を噛みしめる。彼が徐々にマリー=ヒューズの方へと歩いて行くのを見て、ドルモンは困惑していた。

 

(どうしよう…!このままじゃ、ゴーシュが)

 

 共に戦う訓練だってこれまで何度もしてきた。自由気ままなプロットモンやマイペースなパタモンと違って常に冷静でいられるドルモンは、自分で考えながら戦ってみろと毎回言われていた。ドルモンがどう戦うのかを見て、慣れて、それに合わせて戦う訓練をゴーシュはしてくれていた。自分の最大限の力を引き出す為に。

 

 彼が敵に回るという初めての状況。彼と戦ったことのあるデジモンはまだいない。ロメオとイーロンとしか戦ったことがない。ゴーシュがいる時は連携の訓練ばかりだったのだ。結界魔法の種類とその特徴については全部把握しているのだが、それ故に敵に回るということがどういうことかがよく分かる。

 

「ゴーシュ!!」

 

「ウェンディ、来ちゃ駄目だ!皆……避けて!」

 

 辺り一面に水晶結界(クリスタル)が大量に生み出される。(アロー)(レイ)を併用した攻撃が繰り出された。

 

「ウェンディ!!」

 

「はい!天竜の…咆哮!!」

 

「火竜の咆哮!!」

 

 ナツとウェンディが同時に咆哮を放ち、混ざり合う。爆発的に威力が上がった攻撃で周囲を一気に吹き飛ばそうとしたその攻撃だったが、それを見てマリー=ヒューズが指揮棒を振るう。

 

「…!ドルモン、逃げて!!」

 

「なっ…!ぐああっ!?」

 

「そんな!?」

 

 ゴーシュを操ったマリー=ヒューズは水晶結界(クリスタル)を囮として使ったのだ。ナツとウェンディの合体魔法(ユニゾンレイド)を見た瞬間に水晶結界(クリスタル)を消し、防御結界(ディフェンド)(トーテム)をドリルのように回転させて威力を分散させる。さらにその分散させた先に反射結界(リフレクション)を展開させ、反射。それはナツとウェンディの攻撃を目眩ましにして接近していたドルモンへと注がれた。

 

「ドルモン!!」

 

「カハッ!アンタらの作戦なんかお見通しじゃん?」

 

「ルーシィ=ハートフィリアを早く渡さないと、その子が死んじゃいますよ?」

 

「ぐっ………かはっ!」

 

「ドルモン…!」

 

 大ダメージを受けても尚立ち上がろうとするドルモンだったが、すぐに崩れ落ちてしまう。所々に焼け焦げたような跡が出来ている。これ以上戦おうとすれば…いや、攻撃を受けてしまったらどうなるかは、ココが今言った通りだろう。

 

「ルーシィをどうする気だ!」

 

「答える義務はありません」

 

「あと五秒だけ待ってやるじゃん」

 

「…分かったから、もう止めて!あたしが…」

 

「私が、ルーシィ=ハートフィリアです」

 

 ルーシィが名乗り出ようとしたその時、彼女の後ろにいた人物――ミッシェルがそう言った。

 

「え…!?」

 

「ン~…君が」

 

「大人しくこっちに来るじゃん」

 

「ちょっと…!」

 

「貴方達が探しているのは私です。一体どういうご用件でしょう?」

 

 ルーシィがミッシェルを止めようとするが、彼女はルーシィの前に出てそう彼らに言った。元々ハートフィリア家は有名なハートフィリア鉄道を運営していた。つまり、大金持ち。上品に振る舞う方が信用させやすい。

 

「なるほど…ギルドの魔導士とはいえ、さすが元ハートフィリア・コンツェルンの令嬢」

 

「品がありますねぇ…」

 

「もっとガチャガチャした奴かと思ってたじゃん?」

 

マリー=ヒューズがミッシェルをルーシィと思い込み、こっちへ近づかせるよう言おうとしたその時、視界の隅でドルモンが動いたのを捉えた。

 

 

 

「駄目…だ!」

 

 

 

〔!?〕

 

 

 

 ドルモンが執念で立ち上がる。痛々しいほどにボロボロになっているドルモンのその姿を見て、誰もが仲間を守ろうとするその覚悟を感じ取る。ゴーシュはその姿を見て――笑った。

 

 

 

「ルーシィ、を……連れて、行くな!」

 

 

 

「はぁ?そんなボロボロで、何が出来るって話じゃん」

 

 

 

「ン~…弱い君では、何も出来ないさ」

 

 

 

「そんなことない!!」

 

 

 

 ゴーシュが声を荒げ、それに驚いたのかココは肩をビクンと震わせる。ウェンディもまた、彼の顔を見て察した。あれは、仲間を侮辱されて怒っているんだと。

 

 

 

「ドルモンを…舐めるな!彼は、彼らは!妖精の尻尾(フェアリーテイル)の仲間…そして、僕のパートナー達だ!!彼らのことを何も知らないお前たちが、馬鹿にするな!!」

 

 

 

「動けないままじゃ、格好もつかないじゃん?」

 

 

 

「そ、そうですよ。それに弱いから弱いって言って何が…?」

 

 

 

 ココはそこまで言って、首を傾げる。ふとドルモンの方に視線を戻すと、心なしかドルモンの体が光っているように見えた。

 

 

 

 ゴーシュは怒りの形相から、普段の彼からは想像も出来ないような、イタズラ小僧がするようなしたり顔になる。口角をつり上げながら、彼はドルモンに語りかける。

 

 

 

「ドルモン…まだ、いけるね?」

 

 

 

「当然……!まだ、戦える!!」

 

 

 

 ドルモンから放たれる光が一気に強くなり、ゴーシュの額にあるゴーグル型のデジヴァイスも同じく光を放つ。

 

 

 

「行け…自分を信じるんだ、ドルモン!!」

 

 

 

「ハァァァァァッ!!!ドルモン、進化ーーーーーっ!!!」

 

 

 

 全身が光り輝き、その姿が急激に変化していく。次第に光が収まっていき、ようやくその姿を視認するゴーシュ。彼の体は一回り以上大きく、逞しく。背中にあった小さな羽は大きな翼となり、元々持っていた手足の爪はより鋭くなった。獣と竜が合わさった、獣竜型のデジモン。成熟期となった彼の新しい名は。

 

 

 

「――――ドルガモン!!」

 

 

 

 ついに、ドルモンがドルガモンへと進化した。

 

 

 




長くなりそうなので区切りました。

パートナー三体で進化ルートが予測できるのは多分ドルモンだけ。パタモンとプロットモンは皆さんが思っている進化はしません。

それにしても、アースシュガーボーイの魔法、主人公からすれば天敵だと思う。一対一だと勝てないんじゃないだろうか…何やっても吸収される気しかしない。制限結界で封じるくらいか。



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