FAIRY TAIL 守る者   作:Zelf

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半分タイトル詐欺です。箸休めのような回です。




第55話  真の悪、ケツプリ団

 朝飯を済ませ、ゴーグル型のデジヴァイスを操作し始めて数時間。ようやくだけど、ちゃんと操作できるようになってきた。このデジヴァイスを受け取った人の為に、デジモンの生態が記録されていた。その中には進化や退化、図鑑なんかもあった。

 

 

 

 デジモンは成長の節目で強力な形態(場合によっては弱くなってしまうこともあるみたいだけど)へと進化する。生活の仕方や戦闘経験、住んでいる環境によっても進化先が変化するらしい。進化段階は幼年期ⅠとⅡ、成長期、成熟期、完全体、究極体…例外な進化によってアーマー体やハイブリッド体、超究極体に分類されることもあるらしい…これは、特殊な道具が必要だったりするみたいだ。他にもモードチェンジなんてものもあるみたいだけど今は無視。

 

 

 

 デジモン同士の戦闘で重要なのがその進化段階と、属性。ワクチン、データ、ウイルスの三すくみと、無属性(フリー)というのもあるようだ。ワクチンはウイルスに強くデータに弱い、ウイルスはデータに強くワクチンに弱い、データはワクチンに強くデータに弱い、というようになっている。

 

 

 

 で、以前話していたメモリ…デジヴァイスの容量についても記録があった。これは、パートナーとなったデジモンが進化、もしくは新たにデジモンがパートナーとなった時に拡張される、らしい。

 

 

 

「メタルキャノン!!」

 

鉄造形(アイアンメイク)(シールド)!からの、(スピア)!」

 

 今、このデジヴァイスの中にはドルモンの姿はない。これらの記述を発見した僕たちは、早速イーロンやロメオ、ウェンディと模擬戦をしてもらっている。プロットモンとパタモンはいるけど。さて、そろそろ僕も合流しよう。

 

「三人とも、調子はどう?」

 

 観戦していたウェンディ、シャルル、ハッピーに声をかける。シャルルがいるからなのか、最近ウチにハッピーが遊びに来るようになった。シャルルも心なしか嬉しそうに見えなくもない。僕がジックリとデジヴァイスを操作している間、三人にイーロンとドルモンの戦闘を見ていてもらうようお願いしたのだ。

 

「今のところ、イーロンの方がちゃんと戦えているわね」

 

「ドルモンも段々動きが良くなってるよ!」

 

 やっぱりまだイーロンの方が上か。如何せんこの世界での暮らしが長いせいか、デジモンの成長期の強さの基準がいまいち分からない。きっと慣れない世界で、しかも魔法なんてものがある世界だから苦戦しているのかもしれない。

 

「そっちはもういいの?」

 

「うん、大体分かったよ」

 

 余計な混乱を避けるために進化条件に関する説明だけして、進化段階や属性の話は後回しにすることにした。

 

「じゃあこの模擬戦もまんざら無意味ってわけじゃないのね」

 

「うん。きっと、少しずつ成長してるはずだよ」

 

 デジモン図鑑に関しては僕もあんまり見ていないんだけど、彼らがどんなデジモンに進化するのかが楽しみだ。グレイモンとかの姿を見たときに既視感のようなものを感じたから、多分前世のアニメか何かで見たんだろうな…本当に、前世の記憶が全くないんじゃないかと思うほど薄れている。どうしてこんなに忘れてしまったんだろう…?

 

 まあ、忘れてしまったものは仕方ない。重要なのは、デジモン達の進化条件の一つに、環境というものがあることだ。この世界はデジタルワールドには存在しない魔力というものが存在している。これがドルモン達にどう影響していくのか…それは分からない。魔力と言っても炎だったり氷だったり、様々な魔法が存在しているし。

 

「二人とも、そろそろ休憩しよう!」

 

「了解ッス!」

 

「あ、ああ」

 

やっぱりドルモンの方が消耗が激しいか。今後僕やウェンディ、ロメオ君にも手伝ってもらおうと思っていたんだけど…この特訓をする時は短い時間でローテーションでやろうかな。それなら消耗しすぎて時間切れ、なんてことにはならないだろう。

 

「ドルモン、調子はどう?」

 

「魔法って凄いね…戦ってみると本当にそう思うよ」

 

「すみません姉御、ご飯まで作ってもらっちゃって」

 

「ううん、大丈夫だよ!簡素でごめんね?」

 

「ウェンディのご飯、美味しいから大好き!」

 

「本当だよね~」

 

「また勝手に出てきてる…」

 

 ウェンディの作った大量のサンドイッチを、デジモン達は凄い勢いで食べている。どこにそんな量が入っているんだろうか。そしてイーロン、君はなんで張り合っているんだ。

 

「そういえば、ウェンディは明日ナツさん達と仕事だっけ?」

 

「うん、貨物列車の警護の仕事でね」

 

「兄貴も明日俺たちと仕事ッスからね!」

 

「分かってるって。多分僕らの方が早く終わるだろうから、先に帰って夕飯準備しとくよ…気をつけてね」

 

「うん!」

 

「それにしてもナツさん…乗り物関係の依頼受けなきゃいいのに」

 

「それに関しては同感です」

 

 だったらハッピーも止めてあげてよ…

 

 

 

 マグノリアから出て西に位置する場所に、鳳仙花村という村がある。小さくもの静かな村で、旅館や居酒屋などの東洋建築が立ち並ぶ温泉観光地だ。ナツ達は以前この村にある旅館に泊まったことがあり、ルーシィはロキとの契約の際に、この村で星霊王と謁見したことがある。

 

 その鳳仙花村に到着したゴーシュ達。今回の依頼は最近村を荒らすようになった盗賊達の捕縛だ。この盗賊団も、以前ナツやルーシィがこの村に立ち寄る切欠となった依頼で捕らえられたが、七年の間に釈放され、以前と同じようなことを繰り返していた。依頼人のとある旅館の女将の話では、盗賊団のアジトはこの村の近くにある小さな洞穴らしい。早速ゴーシュ達はその洞穴へと向かった。

 

「あの洞穴がそうかな?」

 

「多分そうだね」

 

「プロットモン、勝手に行ったら駄目ッスよ!」

 

「分かってるって!さ、行こーっ!」

 

 洞穴を発見し、そこに近づいていく。中はかなり荒れ果てているようだが、見張りを確認したゴーシュは予め決めていた作戦を実行することにした。

 

「プロットモン、頼んだよ」

 

「任せて!すぅ~…パピーハウリング!」

 

「な、何だぁ!?」

 

「み、耳が~!」

 

「今だ!」

 

「「了解!」」

 

 プロットモンの必殺技を受けた盗賊達が耳を塞ごうとした所を、ゴーシュ達は片っ端に攻撃し、一撃で倒していく。実力自体も七年前と同じか、年を重ねたことによって肉体的に衰えた者が多かったようだ。こうして、あっという間に盗賊達は壊滅した。

 

「これで依頼完了ッスね!」

 

「大したことなかったな、コイツら」

 

「ねー、これ持って行っていい?」

 

「それ盗品なんだけど…」

 

 それから約1時間後、盗品や盗賊団を評議員に引き渡し、依頼人から報酬の宿泊年間無料券をもらった三人はギルドへ戻ることにした。プロットモンは温泉に入ってみたいと駄々をこねていたので、また遊びに来ると約束して連れ帰る。

 

(夕飯用意するって約束しちゃったし…今度ウェンディ達も一緒に来よう)

 

「兄貴、帰りの運転は俺がするッス!」

 

「大丈夫だって、これも修行のうちなんだから」

 

「確かに修行になるだろうけど、やりすぎじゃね?」

 

「前はもっと長い距離移動したこともあったけど…」

 

「マジか!」

 

 ゴーシュの自前の魔道二輪にイーロンが魔法で作ったサイドカーを取りつけ、数時間かけてここまで来ていたのだ。ゴーシュからすれば魔力を高める修行の一つだし、乗せる人数も増やせば修行の質も上がるというものだ。ロメオとイーロンが説得するも、結局は無駄に終わった。

 

「そういえば、ウェンディ達も仕事終わる頃じゃない?」

 

「どうせなら線路沿いに走ろうぜ!ナツ兄達に会えるかも!」

 

「姉御を迎えに行くッス!」

 

「これ以上乗れないって…まあいいか」

 

 

同時刻、ウェンディ達が護衛している金塊を乗せた貨物車両では問題が発生していた。ケツプリ団と名乗る三人組が金塊を盗もうと襲ってきたのだ。彼らはその独特な方法でルーシィ、ハッピー、シャルルを車両から吹っ飛ばすと、連結部を爆弾で破壊した。そして独特な方法――ガス欠トリプルエクスタシーによって進行していた方向と逆方向に進んでいた。

 

 貨物車両に残ったウェンディは、自分が何とかしなければと自身に言い聞かせる。ナツも残っていたが、彼は四時間近く列車に揺られていた為グロッキー状態である。何故かルーシィが出していた子犬座の星霊のプルーもいたが、戦闘力は皆無である。

 

 一時的に仲間になったフリをすることにしたウェンディは、彼らと金塊を依頼主に分けてもらえるよう交渉すると言いくるめ、天竜の咆哮を推進力に車両を目的地へと向かわせている。その車両をゴーシュ達は目撃した。

 

「あれ、車両が一つしかないッスね…」

 

「あの魔力…ウェンディ?」

 

「何かあったんだ!ゴーシュ兄、早く行かないと!」

 

 まさか本当に合流するとは思わなかったが、何かあったのなら向かわなければ。ゴーシュはそう考え魔道二輪を発進させる。

 

「ちょ、ゴーシュ兄!?」

 

「速すぎるッス…!」

 

「ごめん、我慢しててくれ!」

 

 付属のSEプラグのチューブが膨張するほど魔力を込めたゴーシュ達の乗る魔道二輪は、徐々に車両へと近づいていく…が、まだ距離がある。車両が推進力を失って停止したその時、誰かが車両へと着地した。

 

「今の、ルーシィ姉だ!」

 

「イーロン、後は任せる!」

 

「ちょ、兄貴!?」

 

 弾性結界(バウンド)を展開し、ゴーシュはSEプラグを外し運転席から飛び降りた。イーロンは慌てて運転席へと移る。イーロンはサイドカーではなくゴーシュの後ろに乗っていた為、すぐに移ることが出来た。

 

「あれ、楽しそう!」

 

「無茶するなぁ…」

 

「さすが兄貴ッス!」

 

 弾性結界(バウンド)を伝って空中を走るように進むゴーシュを眺める三人。そしてようやく、ゴーシュは車両の屋根の上へと着地した。

 

「ゴ、ゴーシュ!?」

 

「な、なんでここに!?」

 

「依頼の帰りに、この車両が見えたので急いで来ました。ルーシィさん達は……え?」

 

 後ろを振り返ったゴーシュは目を疑った。何故なら、ウェンディが普段絶対に目にしない格好をしていたからだ。所謂、全身真っ黒のタイツ。猫耳のようなものが頭の上についている。一回目を擦り、もう一度確認する。見間違いではなかった。

 

「ウェンディ……だよね?」

 

「こ、こっち見ないで~…」

 

 ウェンディは座り込み、恥ずかしさのあまり泣き始めてしまった。ゴーシュは視線を前へと戻し、全身真っ黒のタイツをした三人組を視界に捕らえる。

 

「……………」

 

「お、おい!なんだこの坊主!?」

 

「な、なんか、怖いっす~!!」

 

「おっかないでやんす~!!」

 

 その凄まじい怒気を魔力に変え、ゴーシュは特大の青緑色の結界を生み出した。それを見た三人は恐怖のあまりガタガタと震え始める。間接的にではあったが、ウェンディを泣かせたということでゴーシュの怒りのボルテージは急上昇していた。

 

「全員……」

 

「ちょ、まっ――――」

 

「吹っ飛べーーーーっ!!!」

 

「「「ぎゃあーーーーっ!!」」」

 

 大黒柱拳(マックストーティスト)が野球のバットの要領でフルスイングされ、ケツプリ団の三人は星となった。

 

 

 

ロメオやイーロンも合流し、結局車両が目的地に着いたのは夜。報酬は半分となり、ルーシィは肩を落とすのだった。ウェンディは今回のことで恥ずかしさのあまり、また以前のようにしばらくゴーシュと顔を合わせることが出来なくなった。今回はどうして避けられているのか分かっていたので、ウェンディが落ち着くまで待つことにしたのだった。

 

(思いっきり我を忘れて攻撃しちゃったけど………あんな格好、人前でさせてたまるか!)

 

 ゴーシュは若干顔を赤くしながら、二度とケツプリ団をウェンディと接触させないことを誓うのだった。

 

 

 





次はもう少し早く更新する予定です!ゴールデンウィーク中に書き溜めしておきます。





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