FAIRY TAIL 守る者   作:Zelf

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本当は昨日投稿するつもりでいたのですが、夜勤明けで午後過ぎに寝たら今日の早朝になっていてビックリ。疲れが溜まっていたのかな。皆さんも体調には気をつけて下さいね。





第49話  デジモンの謎

「ゴーシュ~!どこにいるの~!」

 

「あ、ウェンディ…とりあえず、皆はそのままデジヴァイスに入って大人しくしてて」

 

『え~』

 

『ゴーシュ、ここで隠しても結局出ちゃうと思う…』

 

『プロットモンがね~』

 

 ウェンディの声が聞こえてきて、後で紹介すればいいかなとか思っていたんだけど…まだ会って一時間も経っていないが、プロットモンが好奇心旺盛なのはよく分かった。最初とかいきなり僕に頭突きしてきたし…ウェンディとか、他の皆に会った時にテンションが頂点に達するのが想像出来る。

 

 変に隠そうとして、結局後から勝手に出てきちゃって混乱が起こるよりも、最初から出ていてもらった方が混乱しにくい…か?いや、そんなこともないような…

 

「っていうか、もう出てきても大丈夫なの?」

 

「うん、ほら!」

 

「…聞く必要、なかったか」

 

 既にプロットモンが出てきてました。続くように、ドルモンとパタモンも近くに現れる。本当に便利だな、デジヴァイスって…回復も出来るみたいだし。難点があるとすればデジモン達が長時間出ていられないってことかな?

 

「あ、いた!」

 

「随分賑やかね」

 

「ウェンディ、シャルル」

 

 まあ、そりゃ賑やかにもなるよね…プロットモンとドルモンがまた追いかけっこしてるし、パタモンはなぜか僕の頭の上に乗っかってるし…バランス感覚が養われている気がする。

 

「この子、誰~?」

 

「人間の方がウェンディで、白い猫がシャルル。僕のギルドの仲間だよ…で、紺色のがドルモンで、白い犬っぽいのがプロットモン。僕の頭の上にいるのがパタモンね」

 

 パタモンの問いへの返答も兼ねて、互いの名前を紹介する。デジモン達が何者なのかということを聞きたいだろうけど、説明すると長くなってしまう。そんな長ったらしい説明、今の僕はしたくなかった…ハデスとの戦いの後っていうのが、一番億劫に思わせているのかもしれない。

 

「ゴーシュ、この子達って…」

 

「敵じゃないよ。というか、新しい仲間って言えばいいのかな」

 

「俺たち、ゴーシュのパートナーになったんだ」

 

「よろしくね、ウェンディ!シャルル!」

 

「よろしく~」

 

「「パートナー?」」

 

「とりあえず説明は後でするよ…それより、何かあったの?」

 

「あ、いや…何かあったってわけじゃないんだけど」

 

 わざわざ探しに来るってことは向こうで進展があったのかと思ったが…ただ気になっただけらしい。まあ呼び出してきた相手が謎だったから、気になるのは仕方がない。

 

「他の皆にも紹介したいから、一旦戻りたいんだけど…道分かる?」

 

「うん、大丈夫だよ」

 

「迷子だったのね」

 

「まあ…ほら、三人は戻って」

 

「「「はーい」」」

 

 良かった、ちゃんと言うことを聞いてくれたようだ。特にプロットモンがまた好奇心のままに行動してしまったらどうしようかと……?ウェンディとシャルルの様子がなんかおかしい。

 

「ね、ねぇ…今の」

 

「消えた…わよね?」

 

「ああ、そういうことか…あの子達はデジタルモンスターっていう生物で、このゴーグル、デジヴァイスの中に入り込むことが出来るんだ。多分、機械なら何でも入り込めると思う」

 

 この世界の機械ってすごく原始的というか…まだエドラスの方がそういう面では発達していたかもしれない。パソコンとかないし、古文書(アーカイブ)のような魔法で代用していることが多い。デジモンはこの世界では生きにくいだろうな…

 

「デジタルモンスター…?」

 

「そんな生物がいるなんて…」

 

「ちなみに会話も出来るよ」

 

『聞こえてるしね~』

 

「ちょ、ちょっと怖いね…」

 

「幽霊とは違うし…そこまで怖がらなくても」

 

 戦っている時はあんなに勇ましいのに、普段の臆病さは変わっていないんだな…その内この環境にも慣れるだろう。そう考え、僕らはナツさん達のいるベースキャンプへと向かった。

 

 

 

「「「「な、何だとーーーーっ!!!?」」」」

 

「今の声…ナツさん達?」

 

「何かあったのかな?」

 

「急ぎましょう」

 

 ベースキャンプに大分近づいてきたのか、何人かの声がハモって聞こえてきた。何かあったのかと思い、少し急ぎ足で向かう。見えてきたのは、マスターに迫っているナツさん、グレイさん、ガジルさん、エルフマンさんの姿とそれを見守る皆の姿だった。

 

「皆さん、何かあったんですか?」

 

「あ、ゴーシュとウェンディ」

 

「戻ったのね!S級魔導士昇格試験は、中止にするってマスターがね」

 

ああ、それであの四人が駄々をこねているのか。僕はもう一次試験で落ちたから関係ないけど…二次試験に参加していた人からすればああなるのも無理はない。

 

「俺は諦めねぇぞ!絶対S級になるんだ!グレイもエルフマンもレビィも諦めるんだな?だったら俺がS級になる!S級になるんだーーーっ!」

 

「落ち着こうよナツ…」

 

 他の皆は諦めたけど…ナツさんは言っても聞かないよな。

 

「しょうがないのう…特別じゃ!今から最終試験を始めよう!儂に勝てたらナツをS級にしてやる」

 

「本当かじっちゃん!!よーっし、燃えてきたーーっ!!」

 

 マスターが手で挑発するようにして、ナツさんは真っ正面から飛びかかる。それに対しマスターは、右腕を巨大化させてナツさんを殴り、ナツさんは近くにあった木と巨大な拳にサンドイッチにされた…うん、分かってた。ナツさんはまだダメージ残ってるっぽいし。

 

「ま、参りました…」

 

「ホント、もういつも通りな感じだなぁ…あれ、ウェンディ?」

 

 さっきまで隣にいたウェンディがいつの間にかいなくなっている。辺りを見渡すと、二人は一本の木に隠れるようにして何かを見ていた。僕も近づき、その方向を確認する。そこには、ラクサスさんをポカポカしているリサーナさんと、そのすぐ傍に雷神衆。やっぱりラクサスさんが戻ってきたことで、雷神衆の皆さんはすごく喜んでいるようだ。特に、フリードさんが凄まじい。崇拝しているのかと思うほどだ。

 

「二人とも、どうしたの?」

 

「ラクサスって人に挨拶しようと思ってね。でも、ウェンディがビビってるのよ」

 

「だ、だってぇ…」

 

「…なんで涙目なの」

 

 確かに、ハデスと戦っている時はちょっと怖いと思ったけど…今は、頼れるお兄さんって感じがする。そういえば、ラクサスさんって何歳なんだ?

 

「色々噂を聞いているだろうが、根は悪い奴じゃない」

 

「エルザさん!」

 

「ただ少し、不器用なだけなんだ」

 

 不器用…確か、あのバトル・オブ・フェアリーテイルの一件。あれも、元々ギルドがなめられているのが我慢ならなくなって起こしたことだって聞いた。その言葉は、ピッタリかもしれない。

 

「はい!私、ちょっと挨拶に行ってきます!」

 

「あ、僕も行く」

 

「あんたは、先にマスターの所にそいつらのこと説明しなさい」

 

「あ、そっか…」

 

 忘れてたわけじゃないけど、やっぱりマスターには一番に説明するべきか。ギルドの仲間が増えるわけだし。

 

「何の話だ?」

 

「エルザさんも、一緒に来て下さい。ちょっと紹介したい奴らがいるんで」

 

「ふむ、分かった」

 

「…」

 

「どうした?」

 

「いや、聞かないのかなって」

 

「お前のことだ。変な嘘は言うまい」

 

 エルザさんって本当に懐が深いよなぁ…。マスターとかに向いているんじゃないかって、最近思うようになった。なんでこんな人がナツさん達と一緒に町を破壊してしまうのか、ちょっと疑問に感じる。

 

 とにかくエルザさんと一緒に、マスター達の元へと向かった。

 

「マスター、ちょっと話が」

 

「ん?どうしたんじゃ、いきなり」

 

「さっき、ちょっとある奴らと出会ったんですけど…そいつらを紹介しようと思いまして」

 

「ほう…この天狼島でか?」

 

「はい」

 

「ふむ…そういえば、その頭の上の物はどうしたんじゃ?」

 

「これは、そいつらからの贈り物…って言えば良いんでしょうか。とにかく、もらったんです」

 

「ちょっと見せてくれ」

 

「分かりました」

 

 マスターにデジヴァイスを手渡す。マスターは、デジヴァイスをじっくりと観察し、突いたり軽く叩いたりした後、僕にデジヴァイスを返してくれた。何だったんだろう?

 

「よし、分かった。其奴らを呼び出してくれ」

 

「え…?」

 

「もう近くにいるのか?」

 

「いや、その…マスター、彼らのこと知って…?」

 

「うむ。と言っても、ギルドの文献でじゃがな。とにかく、先に紹介してくれ。話はそれからじゃ…一応、場所を移そう」

 

「分かりました…」

 

 なぜマスターがデジモンのことを知っているのか。ギルドの文献に彼らのことが載っているのか。彼らのことを何処まで知っているのか…疑問はあったけど、それらを押し込めて先に紹介することにした。

 

 

 

「ゴーグルから出てきた…だと!?」

 

「やっと出れた~!ねぇ、遊んできてもいい?」

 

「あ、駄目だって!プロットモン!」

 

「よいしょっと~」

 

「パタモン…はい、プロットモンも大人しくしてて」

 

「あ…ちょ、離してよ…!」

 

 走り回るプロットモンを捕まえ、抱っこする形になる。プロットモンはなんでか分からないけど抱っこすると大人しくなるようだ。今はそっちの方がいいので、しばらくこのままでいよう。パタモンはすでに頭の上を陣取ってるし、ドルモンも僕の横に戻ってくる。エルザさんは驚き、マスターはまだ何かを考えているようだ。

 

「やはりそうか…デジモン、と言ったかな?」

 

「マスター…彼らのこと、何処まで知っているんですか?」

 

「儂も詳しくは知らん。ただ、初代が遺した文献で見たことがある。彼らデジモンは共に戦を乗り越えた戦友だとな」

 

 初代…メイビス=ヴァーミリオンが、デジモンと出会っていた…?そんな昔からデジモンはこの世界に存在していたのか…?

 

「確か、デジモンはこことは別の世界から来たと聞いていたんじゃが…」

 

「それは、僕も彼らから聞きました。どうやって来たのかは、まだ聞いてませんが」

 

「…お伽話のようですね。こことは別の世界とは」

 

「儂もその部分は信じておらんかったよ」

 

 まあ、そうだろう。僕も転生してこの世界が本物だとようやく実感したし。漫画の世界があったら、なんて妄想は幾度もしたけど、実際に体験してみたらもちろん驚く。そしてそれらのことを経験しているなら、他の漫画の世界もあるかもしれないと考えるべきだったか…いや、そんな余裕はないな、うん。場所を移したのは、他の皆が知ったときに混乱するかもしれなかったからか。

 

「ねぇ、ドルモン達はどうやってこっちの世界に来たの?」

 

「あるデジモンとそのパートナーに送ってもらったんだ」

 

「デジヴァイスもその人からもらったの!」

 

「あるデジモンって?」

 

「マスティモンと、御神楽ミレイって人~」

 

 マスティモン、御神楽ミレイ…どっちも聞いたことがある、気がする。ゲームの方の登場人物だったかな…?

 

「そのデジモンと人間は、世界を越える力があると?」

 

「そう。マスティモンの能力さ」

 

「マスター、その初代が会ったっていうデジモンのことは知りませんか?」

 

「さすがに覚えとらんのぅ…ギルドになら、その書物があったはずじゃが」

 

 これは帰ったら探す必要があるな…今のところデジモンに関する情報が少ない。確か、デジモンは進化という現象を起こす。姿形が全く別物と言っても良いほど変化し、力なんかも比べものにならないほど強くなるはずだ。彼らと共に戦うのであれば、せめて進化の条件くらいは分かっておきたい。僕が覚えていたら話が早くて良かったんだけど。

 

 あとは…彼らが目的を達成した時、どうやってデジタルワールドに帰るのか。これも調べておきたい。初代がいた頃は一緒に戦っていたのに、それ以降デジモンのことを知る人が今のギルドにいないのなら、きっとそのデジモン達は元の世界に帰ったということ。そうじゃなければ……そういうことだろう。とにかく、その辺も確認したい。

 

 

「ゴーシュ?」

 

「あ…ごめん、大丈夫。それでマスター…」

 

「うむ。ギルドの仲間にする件は問題なかろう。ちゃんと世話するんじゃぞ」

 

「良かった~…」

 

「これで安心だね~」

 

「ふぅ…」

 

「何?どういうこと?」

 

「ギルドとかでも出てきて良いってことだよ」

 

「じゃあ、もっと遊べるってこと?やった~!!」

 

「あまりやんちゃしすぎると、そこのエルザさんに怒られるからね?」

 

「覚悟しておけ…ふふ」

 

「え~!!」

 

 本当に良かった。もしかしたらデジモンは異世界の生物だから駄目とか、あり得るかなと思っていたけど…よく考えたら、このギルドがそんな差別的なことをするはずが無かった。このギルドで、本当に良かった。

 

「それじゃ、僕たちは早速皆に紹介してきます。行くよ、皆」

 

「は~い」

 

「それじゃ、競走ね!よーい、どんっ!」

 

「あ、待ってよ!」

 

「…あの二人、場所覚えてるのかな」

 

「多分、覚えてないと思うよ~」

 

「やっぱり…おーい!」

 

「ゴーシュ!」

 

「はい?」

 

「紹介は良いが、異世界云々の話は今はせんで良い。儂がギルドに戻った時に、初代の文献のことと一緒に話そう」

 

「分かりました!」

 

 僕は、走って行くドルモンとプロットモンを追いかけることになった…意外とパタモン、ずっと乗っけていると重いな。もしかして定位置になっているのだろうか。ちょっと走りづらい。

 

 

 

 ベースキャンプに戻る途中で、何か…音が聞こえた。何の音なのかは分からないけど、地響きのような音。気のせいかと一瞬思ったけど、三人も聞こえたようで、前を走っている二人が立ち止まった。

 

「何、今の音?」

 

「さあ…」

 

「プロットモン、ドルモン!」

 

「ゴーシュ、遅ーいっ!」

 

「遅いじゃなくって…ベースキャンプの方向、分かってるの?」

 

「え…?あ、うん!だ、大丈夫、だよ?」

 

「ごめん、方向分からずに飛び出しちゃったよ」

 

 やっぱりこの二人、分かってなかったのか。まあ、元気が有り余っているようで何よりだけど。

 

「三人とも、皆に紹介するときは僕が紹介するから、デジタルワールドのことだけまだ話さないで」

 

「何で?」

 

「ほら、ミレイさんも言ってたでしょ~。余計に混乱しちゃうから、あまり話さないようにって~」

 

「あ~…って、ゴーシュに最初に話したの、パタモンじゃなかった!?」

 

「そういえば~…アハハ~」

 

「と・に・か・く!後でマスターがギルドに戻ってから話してくれるから、今だけ内緒にしてて!」

 

 もし話しそうになったら、上手く誤魔化そう。いつまでも隠すわけじゃないんだから、それで大丈夫だろう。

 

「あれ…今更だけど、皆体は大丈夫なの?」

 

「うん、ちょっとは休めたから」

 

「多分、戦うのは無理だけどね~」

 

 …じゃあ、まだ大丈夫とは言えないんじゃないのかな。後はギルドに帰るだけ……じゃ、ないんだった。

 

 

 

まずい…まずい、まずい、まずい。もしも今、アイツがこの島に来てしまったら…!

 

 

 

「三人とも、ごめん!予定変更、しばらくデジヴァイスの中に!!」

 

 

 

「え?ど、どうしたの?」

 

 

 

「説明は後!皆に紹介するのも後にする!今は急いで戻るよ!」

 

 

 

「よく分からないけど…」

 

 

 

「ただ事じゃないのは、分かった!」

 

 

 

「早く入るよ~」

 

 

 

 完璧に忘れていた…もしアイツがやって来るタイミングも違っているんだったら、皆が危ない。そして今やって来ていたら、そしてそのまま戦いになってしまったら…ドルモン達は消滅してしまうのは間違いなかった。

 

 

 

三人がデジヴァイスに入った直後。

 

 

 

 辺り全体に、凄まじい轟音が。

 

 

 

 アイツの、叫び声が聞こえてきた。

 

 

 

『な、何!?』

 

 

 

「三人は、そのまま…僕が良いって言うまで、出たら駄目だよ」

 

 

 

 三人を今、出してはならない。

 

 

 

 仲間を、失うわけにはいかない。

 

 





というわけで、デジモン達の紹介も後で(七年後)になりました。ちょっと、後回しが多くなっている気がする。

まあ、次の次の回くらいでそれらを全部話す回にします(^^;)





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