FAIRY TAIL 守る者   作:Zelf

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第25話  コードETD

 宮殿内でエルザ=ナイトウォーカーと王国兵に見つかり、僕はルーシィさんとウェンディを守る為に弾性結界(バウンド)で外へと自分ごと押し出した。ナイトウォーカーに勝つことはできないと思ったからだ。で、上空へと押し出されたナイトウォーカーや王国兵は落下していった。僕は弾性結界(バウンド)を使って落ちる方向を変えて離れた所に着地した。

 

「何とかなった…かな?」

 

 二人には後で落ち合うと約束した。多分宮殿内では厳戒態勢になっていると思う。ナイトウォーカーは無事だろうし、もう潜入班がいることを知られているはず。だったら、目立つところにいるのは危険だ。

 

「…どうしよっかな。構造よく分からないしなぁ。…!あれは、エクシード?」

 

 今までいた場所を探していると、上空にエクシードの軍隊がこの宮殿に向かって来ているのが見えた。なんかサイズがデカい奴とかもいるけどエクシードなんだろう。まあパンサーリリーに比べればまだ規格外とは言えないか。

 

 なんだろう、嫌な予感がする…。このまま彼らを放っておいたら行けないような気がするな。原作知識かな…?よし、まずは彼らの所へ向かってみよう!

 

弾性結界(バウンド)!」

 

前にクリスティーナからニルヴァーナに飛び降りたあの時の応用で、足元から弾性結界(バウンド)を作って大ジャンプ。それを空中でも繰り返していってエクシード達に接近していく。

 

 でも、なんでエクシードの軍団が…?思い出せ、思い出すんだ…。えっと、原作では確かナツさんたちは皆捕まってて、ルーシィさんとハッピーとシャルルが一緒にいたのは覚えてる。つまり、ハッピーとシャルルがもう近くにいる…?だったら、もうすでに第一目的は達成したも同然だ。後はアニマの使用方法だけか。でも王国の研究員を捕らえるにしろジェミニでコピーするにしろ、エクシード達は第三勢力として邪魔してくるだろうな…。だったら、僕は足止めをするのみ!ちょっと手荒になるけど勘弁してね!

 

防御結界(ディフェンド)(ウォール)!」

 

「いてメェーン!!」

 

 …え?なんか、聞き覚えがあるような…?それに他と服装の色が違う黄色いこのエクシード、見覚えが…?

 

「貴様、何者だ!」

 

「えっと…。僕はゴーシュ。あなたたちは何しに王都の宮殿まで?」

 

「我々は堕天を追って来た!貴様、青毛と白毛のエクシードに見覚えはないか?」

 

 堕天…?でもやっぱり、青毛と白毛のエクシードっていうのはハッピーとシャルルのことで間違いないはず。じゃあ二人は上手く逃げ出せたのか!

 

「…そのエクシード達は僕らの仲間です。彼らをどうするつもりですか?」

 

「何?貴様、まさかアースランドの魔導士か!?」

 

 いや、魔導士っていうのは塔の一番上の屋根にいるんだから察してほしい。ここ、普通の人は登ってこれないと思うんだけど…。

 

「彼らに危害を加えるのなら、僕が相手になりますよ」

 

「ニチヤ様、どうしますか?」

 

「我々エクシードに逆らう者は誰であろうと容赦はせん!皆の者、かかれ!」

 

『はっ!!』

 

 ニチヤ…?そうだ、この猫一夜さんにそっくりなんだ!そうか、この世界の一夜さんってエクシードなのか…。ちょっとやりづらいけど、彼は別人だ。割り切らないと!

 

防御結界(ディフェンド)立方(スクエア)!」

 

 ドラゴノイドとの戦闘時にエルザさんのサポートをした時のように結界を振り回し、エクシードたちを蹴散らしていく。でもやっぱりエクシードたちは空中を自在に飛べるので、空中戦では不利だ。

 

「コードETD!!発動せよ!!」

 

「何事だ!?」

 

「あれは、国王…?」

 

 一度地上に降りようかと考えていた矢先、宮殿の方からそんな声が聞こえてきた。見ると国王や背の低い老人、あと小さな女の子と、少し背の高めな青緑色の髪の青年がいた。他にも王国兵が塀の上などに配置されている。国王の号令でなのか、大砲がいくつもこちらに照準を向けている。…嫌な予感が強くなる。

 

防御結界(ディフェンド)(ウォール)!」

 

「コードETD!!発動!!」

 

 直後、大砲から光線が放たれる。狙いはどうやら僕ではなく、エクシード達…?僕は結界の位置をずらしてエクシード達の前に移動させる。光線が結界に直撃した瞬間、結界が消えた。いや、消えたというか、結界のあった場所に小さな物体が現れた。あれは、魔水晶(ラクリマ)…?

 

「え!?」

 

「ぐあぁっ!?」

 

「何のつもりであるか、人間ども!!」

 

 エクシード達は苦しみだし、次々と姿が消えていく。これは、まずい!

 

弾性結界(バウンド)!!」

 

「メェーン!?」「「「ぐはっ!?」」」

 

 弾性結界(バウンド)でニチヤと呼ばれたエクシードとその近くにいたエクシード達を吹っ飛ばす。僕もその方向に弾性結界(バウンド)で跳んでいき、彼らの元へと向かった。やがて光線の光が弱くなっていき、後ろを振り向いてみる。そこには、巨大な猫型の魔水晶(ラクリマ)があった。弾性結界(バウンド)も無くなっている…。さっきと同じだ。

 

「な、何を「ちょっと黙ってて」むぐっ…!?」

 

「他の三人も一度ついてきて。…隠れた方がいい」

 

 運がいいのか、宮殿の廊下にたどり着いたのですぐに近くの部屋に隠れる。入ってすぐに僕はニチヤを離し、ドアに近づいて聞き耳を立てる。

 

「この世に神などいない!!我ら人間のみが有限の魔力の中で苦しみ、エクシード共は無限の魔力を謳歌している…。なぜ!なぜこんな近くにある無限を、我々は手にできないのか!支配され続ける時代は終わりを告げた!全ては人間の未来の為、豊かな魔法社会を構築する為!我が兵士たちよ、共に立ち上がるのだ!!コードETD―天使全滅作戦(エクシードトータルデストラクション)を発動する!!」

 

 王の演説の後、兵士たちからは歓声が聞こえてきた。これは、人間とエクシードの戦争だ。

 

「人間共め…!!女王様に早く報告せねば!!」

 

「えっと、ニチヤさんだっけ。今は出て行かない方がいいですよ。捕まってしまうのがオチだ」

 

「貴様、ニチヤ様に対して無礼だぞ!」

 

「構わん。人間よ、名を教えて頂けるか」

 

「ゴーシュ=ガードナー。分かっていると思うけど、アースランドの妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士です」

 

「私も改めて自己紹介しよう。エクスタリア王国近衛騎士隊隊長のニチヤだ。この度は命を救っていただいたこと、感謝する」

 

 ニチヤさんが僕に向かって深々と一礼する。やっぱりアースランドではお世話になった一夜さんに見た目も中身もそっくりだからなのか、なんだかこそばゆい気持ちになる。ニルヴァーナの時は一緒に戦った仲間だったし。なんか勝手に敬語が出てしまう。

 

「ゴーシュ殿、何故我々を助けたのだ?貴殿に無礼を働いた我々を」

 

「だって、目の前で危険な人…。今回はエクシードだけど、助けないわけには行かないですよ。助けられる人が目の前にいるなら僕は助けます」

 

 前世の記憶の名残かもしれないけど、人を殺すことなんてやりたくない。元々自分や仲間が傷つけられないように結界魔法を習得したようなものだ。助けられる命ならできる限り助けたいと思う。

 

「…なんと寛大な!このニチヤ、この御恩忘れませぬ!」

 

「いや、気にしないで下さい。それより周囲に人の気配が無くなったら、エクスタリアへ行ってこの事を伝えて下さい」

 

「良いのか?我々は人間共を見下してきた。たとえ別世界のことだとしても、ゴーシュ殿にとっても不敬な話だろう」

 

「さっき言った通りですって。助けられるなら助ける、それだけです」

 

「…重ねて感謝する、ゴーシュ殿」

 

 ニチヤさんって、すごいな。今まで人間を見下して生きていたのはエクスタリアではそれが当たり前だったから。もはや文化の一つだと言っても過言じゃない。近衛騎士団の隊長ともなれば文化を守ることは手本として当然だ。部下が見ている前でこうやって人間の目の前で頭を下げるだけでも恥さらしと思われても仕方ないだろうに…。

 

「あ、そうだ。エクスタリアに向かう時は隠れながら行って下さいよ?見つかったら魔水晶(ラクリマ)にされてしまうでしょうから」

 

「ゴーシュ殿はこれからどうするのだ?」

 

「僕は、仲間を助けに行きます。そのためにここに乗り込んだんで…。そろそろ、良さそうですね」

 

「では、我々はエクスタリアに帰還する。お前たち、行くぞ!ゴーシュ殿も武運を祈る!」

 

 扉を開けてみると近くには兵士の姿がなく、それを確認したニチヤさんたちは通路を低空飛行で隠れるようにして飛んでいった。一刻を争うことだからすごい急いでいたのは分かったけど…。多分、一旦城の外まで隠れながら行くのかな?兵士達は上を警戒しているだろうし。

 

「さて、と…。僕はどこ行けばいいんだろう…?」

 

 レギオン探しはもう意味がない。ハッピーとシャルルはもうこの宮殿にいる可能性の方が高い。だったら後は王を探せばいいんだけど、玉座ってどこだ?ゲームとかだとこういう城の玉座は大体上の方にある印象だけど…。高い建物が多すぎて、どこから探せばいいのやら…。仕方ない、手当たり次第に探すしかないか。

 

「!今のは…?」

 

 その時、遠くで爆発音のような音が聞こえてきた。どこかで、戦闘が始まっているのか…?よし、とりあえずそっちに行ってみよう。誰かは必ずいるはず。できるだけ隠れながら行かなきゃ…!

 

 

 

 爆発音が近づいてきた。さっき聞いた音だ。それに金属がぶつかり合うような音も聞こえてくる。間違いない、誰かが戦っている。

 

「あれは…エルザさん?もう一人は、ナイトウォーカー…!」

 

 戦闘しているであろう部屋を覗くと、二人のエルザさんが戦闘を繰り広げていた。やっぱりあれくらいじゃ倒すことなど無理か…。でも、正門の方で囮をしているはずのこっちの世界のエルザさんがなんでここに?しかもこれは…。

 

「ゴーシュ、こっちよ!」

 

「ルーシィさん!と…。グレイさん!なんでここに…?」

 

後ろを振り返ると、ルーシィさんとグレイさんがいた。あれ、作戦は…?ガジルさんとナツさんはいないけど、たった一人じゃ囮なんて意味がない。それにウェンディやハッピー、シャルルもいない。どうなってるんだろうか…?

 

「途中までは上手くいってたんだがな…。魔戦部隊の隊長って奴等が全員こっちに行っちまってよ、俺らも追って来たんだ」

 

「じゃあナツさんとガジルさんも?」

 

「ガジルは今ハッピーと上空の魔水晶(ラクリマ)を破壊しに行ったわ。ウェンディとシャルルはエクスタリアに危険を知らせに向かったの。ナツは…」

 

「おーい、皆!こっちに面白そうなモンがあったぞ!」

 

 僕が来た方と反対側の通路からナツさんが走ってやって来た。魔戦部隊隊長が宮殿に逃げ込んでしまうとは思わなかったな…。多分コードETDが発動されたからか?それとも僕ら潜入班のことがバレたからか…。どちらにしろ、これじゃ作戦どころじゃないな。

 

「ハッピーはなんでガジルさんと?」

 

「ああ~…。ルーシィ達と合流した時、ナツは一緒にいなくてな。皆の魔水晶(ラクリマ)を探すってどっか行っちまってたんだ」

 

 それで今どこかから帰って来たのか。ウェンディは危険を知らせに行ったってことは、コードETDが発動されていることは知っているはず。でも、具体的にどう攻撃するのか分からないのにそこまで急ぐことかな…?

 

「ゴーシュは何してたんだ?」

 

「僕はエクシード達を助けてました。一夜さん似のエクシードが魔水晶(ラクリマ)にされそうだったのでつい…」

 

「ついって…。まあゴーシュらしいわね」

 

「そういや、こっちのお前に会ったぞ」

 

「エドラスの僕?」

 

「ルーシィと合流する前にな。俺達を見た瞬間ビビりまくって勝手に計画をペラペラ喋っていきやがった。捕まえようとしたんだが、こっちのエルザに邪魔されちまって逃げられた」

 

 計画というのは、エクスタリアに妖精の尻尾(フェアリーテイル)の皆の魔水晶(ラクリマ)をぶつけて永遠の魔力を生み出すこと。それを聞いたウェンディがシャルルと一緒にエクスタリアに飛んで行ってしまったということ。具体的にどうするのかというと、竜鎖砲という兵器を使うつもりなんだとか。聞いた感じ原作通りな気がするけど、竜鎖砲って確か滅竜魔法が必要じゃなかったっけ…?

 

「とりあえずナツの方に行ってみましょう!ここは危険だわ…」

 

「だな!」

 

「そういやゴーシュ、お前いつからいたんだ?」

 

「さっき合流しました」

 

 ナツさんが先導し僕らはそれを追いかけていく。エルザさんにはそのままナイトウォーカーを抑えておいてもらうしかない。正直言ってナイトウォーカーと戦うのは苦手だ…。嫌な攻撃を的確に狙ってくる感じが特に。

 

「ほら、これだこれ!」

 

「え…?ええ~!?」

 

 ナツさんが入った部屋に着くと、そこは遊園地だった。確かに城にしては広すぎるような気はしてたけど、まさか中に遊園地を作っているとは…。これ、需要あるのかな?そういえば原作でもここを見たことがあるような…。

 

「ン~、実に楽しいね~!ハ~ッハッハッハ!」

 

「…何ですかね、あの人」

 

 急にメリーゴーランドが回り始めたと思ったら、顎割れのピンク色の鎧を着たオジサンが一人で乗って楽しんでいる。明らかに変人だ、絶対そうだ。っていうかメリーゴーランドに一人で乗っていて楽しいのかな…。

 

「気をつけろ。そいつは隊長格の一人だ」

 

「こいつが!?」

 

「って皆さん、後ろ!」

 

 後ろから巨大な船が迫って来て、ぶつかりそうになった所で下がっていった。このアトラクション、なんて名前なのかな?前世で見たことある気がするんだけど…。よく見ると、船の先端には青年が立っていた。この人も見覚えがある…。ということは、同じく隊長格の一人…!

 

「このスッゲー楽しい魔力がさ、この世界からもうすぐ無くなっちゃうんだ…。あんたらにその気持ち、分かる?」

 

「ン~、俺達は永遠の魔力を手に入れる。…たとえ、どんな手を使ってもね」

 

「こっちは必死なんだよ。…誰にも邪魔はさせねぇ!」

 

 

 




そろそろストックが無くなって来ました。ドラクエでパラディンクエストを進めていたらいつの間にか日にちが変わっていたということが何度もありました。やっぱり何かに夢中になっていると時間が本当にあっという間ですね。

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