エドラスのガジルさんに聞いた道を進んで、王都から少し離れた廃坑の入り口までやって来た。ここから宮殿内部に入ることができるらしい。何となくだけど僕もここのことは覚えていたので間違いないはず。グレイさんたちを元に戻してからほとんど時間は経っていない。まだ日も高い内に行動するとは相手も思っていないだろうということで、すぐに行動を起こすことになった。
「ここがこっちのガジルが言ってた坑道ね」
「早く行きましょう。囮班の皆が待ちきれなさそうだし」
エドラスのガジルさんに明かり用の
囮班の皆は宮殿の付近に潜伏している。宮殿は一つしかない城門以外に外部から侵入する術はない。エクシードみたいに飛んで入ることができるならともかく、壊して入ろうとしても
なので、少し離れた場所だけどこの坑道を使うことになった。確か原作だとここを進んだ先で王国軍の待ち伏せにあって捕まってしまったはず。でも今回はハッピーとシャルルがすでにエクスタリアに連れて行かれてしまったので、シャゴットの未来予知による先読みもされていないはず。まあされていても魔法が使えるからどうとでもなるだろう。
「ここ、行き止まり?しかも魔法で塞がれてるわね…」
「賊が侵入しないように塞いだのかもしれないですね」
「壊せそうですか?」
「やってみる!開け、金牛宮の扉!タウロス!」
「モォ~~~!!」
「頼んだわよ、タウロス!」
「お任せあれ、ルーシィさん!!」
タウロスが塞がれた岩壁を素手で殴って崩していく。何回か殴ると道が開通した。さすが黄道十二門、素手でかなりの厚さの岩壁を破壊してしまうとは。でも、その背負っている斧を使った方が早いんじゃないだろうかと思うのは、僕だけ?
「ありがとね、タウロス」
「モォ~!?それだけですか!?」
「え?それだけって?」
「もっとご褒美を…」
「そのエロい目は止めてったら…。行きましょう、二人とも」
「「はい!」」
さらに先に進んでいくと、少し開けた場所に着いた。光るキノコのような物がそこら中にあって光源には困らない。離れた場所だけど、螺旋状の階段のような物が見える。きっとあれが宮殿の内部に続く道だ。
「上手くいったわね!」
「それじゃあ、囮班の皆に知らせますね」
僕の
それを利用して、小石サイズの結界を二つ作り、エルザさんに渡しておいた。たった数cmのサイズであれば、王都の端から端まで位なら展開し続けることが可能だ。多分戦闘で使えるサイズだと良くて100m位だろうか?今度実践してみよう。
とにかく、エルザさんに渡しておいた結界の片方を消す。一つは丸型でもう一つは四角。成功の場合は丸型を、失敗の場合は四角を消すことにしている。今回は成功なので丸型を消した。あとは外が騒がしくなってから潜入するだけだ。
☆
ゴーシュからの合図を受け取った囮班は、潜入班が無事に宮殿内へたどり着いたことを知る。エルザに合図が来たと同時に、ナツが城門へと飛び出して行った。
「おい、ナツ!」
「あのバカ…!」
「止まれ、何者だ!」
「ハッピーとシャルルを返しやがれ!!火竜の咆哮!!」
「て、敵襲だー!!」
ナツの炎が城門を守っていた兵士達を飲み込んでいく。ナツはわざと炎を狭めており、魔法の直撃を逃れた兵士が敵襲の合図を出す。それによって兵士が次々と現れた。
「仕方ない。私達も行くぞ!」
「おう!
「鉄竜棍!」
「換装!
「火竜の翼撃!!」
次々と群がってきた王国兵を蹴散らしていくが、それでも物量の差は埋まらない。ほぼ全世界を統一したこのエドラス国に所属する王国兵の数は計り知れない。もはや、全世界を敵に回しているようなものだ。
「
「ン~、冷たいね…」
「何!?」
ピンク色の鎧に全身を包み込んだリーゼントと顎割れが特徴的な男、魔戦部隊隊長の一人――――シュガーボーイ。彼はグレイが造形した氷の巨大なハンマーを、一本の剣で防いだ。氷のハンマーはその剣に触れた途端に融けた様に液状になってしまう。
「鉄竜剣!」
「ふっ!」
「…!中々やるじゃねぇか」
「ようやく現れたか。アースランドの魔導士」
鉄の剣に変化したガジルの右腕の一撃を容易く受け止める。先の戦闘でも現れた、人間の成人男性並の体躯を持つ、左目に傷のある黒いエクシード――――パンサーリリー。彼の持つ両刃剣・バスターマァムは大きさを変化させることができ、全長が彼自身の数倍になることもある。それを軽々と使いこなす彼の腕は、エルザと比較しても後れを取らない。
「お~怖ぇ!アースランドの魔導士って皆こんな狂暴なのかよ!」
「あぁ!?やんのかコラ!!」
「効かねぇよっ!」
ナツの前には、白いメッシュの入った髪に矢印のような眉毛が特徴的な、見るからにテンションが高そうな喋り方をする青年――――ヒューズが立ち塞がっていた。彼はナツの火竜の鉄拳を、地面を操り壁を作り出して防御する。そして彼も接近戦に持ち込まれることがないように距離をとる。
「…やはり自分の顔を見るのは妙な物だな」
「それに関しては同感だな」
そしてエルザの前にはこちらの世界のエルザ、エルザ=ナイトウォーカーがいた。だが戦闘に入ろうとはせず、怪しむようにエルザやナツたちの様子を窺っている。
「確か、まだ仲間がいたはずだ」
「さすがに覚えられていたか」
「全力ではないとはいえ、私の攻撃を全て防いだんだ。印象にも残るさ。あの青緑色の髪の少年はどこだ?」
「お前に話す必要はない」
「…まあいい。残念だが見当はついている。他の仲間は城内へと潜入しているんだろう。あのエクシード達のことを仲間だと思っているようだからな。ここは他の三人に任せるとしよう。
「待て!お前たち、ここは任せるぞ!換装、飛翔の鎧!」
「おい、エルザ!?」
魔戦部隊隊長三人と
☆
およそ十分後、宮殿の方から走るような音が聞こえてきた。ナツさんたちが暴れ始めたんだ。
「そろそろかしら?」
「…はい、大丈夫です。今は近くに人はいません」
ウェンディ、というか
「ここからどうしますか?」
「僕達の第一目的はレギオンの捜索。レギオンはかなり大きいらしいから、いる場所も限られるんじゃないかな」
「それじゃあそのレギオンって魔獣がいそうな場所を探しましょ!高い所から見た方がいいわね」
それにしても無駄に広い。いくら宮殿だからってここまで大きくしなくて良くない?王都の城下町も大きかったけど、ここはさらに大きい。城壁を偵察するだけでも時間がかかるってエドラスのガジルさんに言われたけど納得。これはちょっと大きすぎる。
とにかく上の方を進み、現在は高さ的には大体半分くらいといったところか。もうここですでに高い。それにここより上は建物が狭まった構造なので探す意味はなさそうだ。ということは、ここより下のフロアにレギオンがいるはず。
「でも、そのレギオンって生き物がどれくらいの大きさなのかしらね?」
「家くらいはあるって言ってましたよ?」
「ちょっと想像出来ないですよね…」
魔獣と言っても姿かたちは様々だからね。僕は何となく覚えているからいいけど、二人は明確にイメージ出来ないみたいだ。
「まあ人が複数乗れるのは間違いないみたいですし、後でナツさんたちをそのレギオンで回収しに行けば…!ウェンディ、伏せて!」
「え?きゃっ!」
ウェンディの頭を押さえて飛んできた粘着弾を回避する。飛んできた方向を見ると進行方向と反対側、つまり後ろの方に王国兵が何人も待ち構えていた。このままでは一番後方を歩いていたルーシィさんが危ない。さらに粘着弾がいくつもこちらに向けて飛んできたので
「残念だったな」
「ぐっ…!」
「ゴーシュ!」
「こいつを殺されたくなければそのまま動くな」
「エルザ!」
ナイトウォーカーに背後をとられ鎗を突き付けられる。最初のウェンディを狙った粘着弾は囮だったらしい。結界を使おうとした瞬間に背後から急に殺気が近づいてきたから、間に合わないと判断して二人だけ囲むことしかできなかった。挟み撃ちか…。これはまずい。ここは廊下とは言っても片側は外が見えるようになっている。幅もそこまで広くはない。
「お前の魔法は厄介だ。一対一ならともかく乱闘ならば尚更。先に始末させてもらう」
「止めてエルザ!エルザは無抵抗の人にそんなことしないでしょ!?」
「私はお前たちの知るエルザじゃない」
「あなたは確かに違う人かもしれない!でも、根の部分は同じ気がするんだ!」
「ルーシィさん…」
この世界でもし同じ名前、同じ顔の人に出会ってもそれは別の人。でも、パラレルワールドの自分ということでもある。多分、この世界で自分に会ったことのあるルーシィさんは、根の部分は同じなんじゃないかと感じたことがあるのかもしれない。僕だって、エドラスのナツさんやガジルさんを見て詳しくどこがとは言えないけれど、やっぱりこの人達もアースランドのナツさんとガジルさんと話している時と同じだと感じることがあった。それでも、このナイトウォーカーには説得とかは通じないと思う。だって、あの強い意志を持つエルザさんと同じ人なんだから。
「あなたは、人の不幸を笑える人間じゃない!」
「黙れ。…私は人の不幸など大好物だ。妖精狩りの異名通り、
「…!エルザの顔で、エルザの声で、そんなこと言うな………!」
ルーシィさんの瞳から涙が流れる。…もし、根の部分が同じなんだとしたら、あのエルザさんがここまで変わってしまうほど、魔力が無くなることは恐怖なのだろうか。
「二人とも、後で落ち合いましょう!…ウェンディ、ごめんね」
「ゴーシュ?」
「…っ!ゴーシュ、止めて!」
「…貴様、今の状況が分かって…」
ナイトウォーカーがそこまで言ったところで、僕は
☆
「ゴーシュ!!」
ゴーシュがオレンジ色の結界で外へと押し出された。私達じゃあのエドラスのエルザさんには敵わないと思ったんだと思う。だから自分を犠牲にして私とルーシィさんを守ったんだ。しかも、私たちの反対側にいた王国兵達も押し出してる。
「結界が…」
私達を守っていた青緑色の結界が解除された。敵がいなくなったから意図的に解除したんだと思う。急いで落下した先を見ようとしたけれど、いるのは王国兵だけ。こっちのエルザさんは…?それに、ゴーシュも見当たらない。うまく逃げたのかな…?あれだけ、無茶はしないでって言ったのに…!
「ゴーシュ…」
「ウェンディ、大丈夫?」
「はい…。でも、ゴーシュが」
「ゴーシュは大丈夫よ!後で落ち合うって言ってたじゃない!」
「…そうですよね。今は、レギオンを探さないと!」
確かに外に押し出される前にゴーシュはそう言ってた。つまり自分が犠牲になったわけじゃなく、一旦別行動をするつもり。だったら、私たちはゴーシュが落ちた場所と違う場所を探すべきだ。
「ルーシィさん、私達はあっちを探しましょう!」
「ええ!」
「ルーシィ~!!」
「ハッピー!?」
「シャルル!!」
動き出そうとした時、ハッピーとシャルルが空から飛んできた。
「二人とも、無事だったのね!そういえばあんたたち、魔法が…!」
「…心の問題だったみたい」
「良かった、二人とも無事で…!」
「…怒ってないの?私達のせいで捕まりそうになったのよ?」
「どういうこと、シャルル?」
「…オイラから話すよ。あのね…」
ハッピーが、自分達に与えられていた任務について話してくれた。エドラスからアースランドに送られたのは、
「今ハッピーが話してくれた通りよ…。だから、私達のせいでこっちの世界に来ちゃったのかもしれないのよ」
「でも、二人は知らなかったんでしょ?だったら二人は悪くないよ!」
「それに、こうしてあたしたちの所に戻って来てくれたじゃない!」
「ごめんね、ルーシィ、ウェンディ…」
「だからいいって!ね、ウェンディ!」
「はい!それに…」
私はシャルルを抱きしめる。安心していいんだって精一杯伝えられるように。不安だったはずのシャルルの心が少しでも癒されるように。
「私は、シャルルが任務より私を選んでくれたことの方が、ずっと嬉しいよ」
「ウェンディ…」
そういえば、さっきハッピーのことちゃんと名前で呼んでたような?…そっか。ようやく、シャルルも
「そういえばさっき、ここら辺から声が聞こえた気がしたんだけど」
「そうだ、ゴーシュが落ちたのよ!こっちの世界のエルザと王国兵と一緒に!」
「え!?それじゃ助けに…「待って!」…え?」
「ルーシィさん、私達はこのまま王様の所を目指しましょう」
「…いいのね?」
「…ゴーシュなら、きっと大丈夫です!」
「分かったわ。それじゃ行きましょう!」
次の目的、アニマの発動方法を探ることを優先しよう。元々ハッピーとシャルルを助ける為にレギオンを探していたわけで、こうして二人と合流できたんだからもう必要ない。あとは皆でアースランドに帰ればいいだけなんだから。ゴーシュも、きっとそうするはずだもん。
「!シャルル、あれ!」
「まだ追って来てたのね…!」
「何あれ、猫がいっぱいいる!?」
「エクスタリアの近衛騎士団だよ!オイラたちを追ってきたんだ!」
ハッピーとシャルルが見てる方向に、鎧とかを着たエクシードの軍団が見えた。あれだけの数で襲われたら大変…!
「とりあえず、逃げるわよ!」
「はい!」
昨日、スイッチ版のドラクエ10を買いました。やっぱりドラクエって楽しいですね。物語も早く進めたいです。
と、こんな風に他にやりたいことが多々あるので、こっちの小説はのんびり今まで通りに更新するかもです。この前急がなきゃみたいなこと書いてたのに、スミマセン…