FAIRY TAIL 守る者   作:Zelf

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序章、というべきでしょうか…この原作開始前の話は4話程度で終わります。

アニメ見ながら書いてるので、漫画を読んでいる方からしたら少し違和感があるかもしれないです。




第2話  魔法のキッカケ

「ジェラール、朝だよ!ほら、ゴーシュも起きて!」

 

「ふぁあっ…おはよう、ウェンディ」

 

「ん…あと5分だけ…」

 

「ゴーシュ、起きてってば!」

 

「わ、分かった!起きる、起きるから揺らすなっ!」

 

 僕ことゴーシュがこの世界に来て1週間が経った。あれからこの世界についてとか、心配していた文字の読み書きに魔法と、様々なことをジェラールから教わっている。やっぱりこの世界でも言語が共通言語のようで、日本人だった僕は最初かなり苦戦していた。でも文法とかも全部一緒だったから、中学生・高校生の頃の知識を思い出すことで何とかなっている。

 

 魔法は…正直言って全然うまくいってない。ジェラールが言うには魔法とは、内なる気と自然界の気の波長が合わさることで具現化されるもの、らしい。気、というのは恐らくエーテルナノのことだと思うのだが…僕はそれを何となく程度にしか感じることができない。やはり元々そんなもの無かった世界から来たから、だと思う。こればっかりは時間をかけていくしかないか。

 

「もう、2人ともお寝坊さんなんだからっ!早く朝ごはん取りに行こうよ!」

 

「ああ、分かった。すぐに行くよ」

 

 まだ朝の5時半だというのになんであんな元気なんだろう?それだけ空腹ってことかな…ウェンディってそんな大食いってイメージなかったんだけど。いや、まだ幼いとは言え彼女も立派な滅竜魔導士だってことだろうな。

 

 朝食はその辺の果物や魚なんかを採ってきて、それを焼いたり生で食べている。僕は料理なんかできないし、ウェンディも将来に期待。ジェラールもエドラスでは王子だったのでしたことがないんだとか。もちろんエドラスとか王子とかは僕の想像。料理はしたことないってことしか彼は話していません。

 

 顔を洗ったりなどの準備が終わり次第、皆で昨日見つけた果物の実っていた木がある所へと向かう。数個だけ採って、今回は生で食べた。この世界の果物は基本生で食べても美味しい。っていうか、下手に焼いたりとかしない方が美味しいと思う。少なくともまともな料理が作れる奴がいないこの状況ではそう思う。だって焼き加減とか分かんないし。

 

 僕はとりあえず2個だけ頂いた。元の世界でも朝は食パン1枚と牛乳だけで過ごしていたので、やっぱり朝はそこまで食べれる気がしない。小さい体ってことも関係してるかもだけど、やっぱり別の体でも前世の習慣というのは関係するんだなぁ。ちなみにジェラールは3個、ウェンディはよほど減っていたのか4個も食べていた。滅竜魔導士は伊達ではない。まさか5歳のウェンディがそこまで食べるとか最初は思っていなかったよ。

 

「今日はどこまで行くの?ジェラール」

 

「そうだね…あそこの草原を超えるのを目標にしようか」

 

 ジェラールが指差すのは数十kmほど先だろう草原。昨日は2つ山を越えた所で野宿した。最初は結構ハードな道のりだなと思っていたけど、それは2日目で全く無理のない道のりだったということが分かった。この体のスペックがすごい高い。

 

ジェラールやウェンディでも普通に楽々進んでいるからこれはこの世界では普通の人のレベル、もしくは少しウェンディや俺を気遣ってるくらいのレベルだと予想できる。この世界の人ヤバいね。あー、確か魔導士じゃない人でも武器だけで魔導士と互角ぐらいに戦ってる人達いたっけ。確か…トレジャーハンター?だったかな?

 

「ゴーシュ?大丈夫かい?」

 

「あ、ごめん。何でもない。それじゃ…あの木まで競争だ!」

 

「あ、ずるい!待ってよー!」

 

「やれやれ、仕方ないな」

 

 50mくらい先にある木をゴールとして駆け出す。僕とウェンディはほぼ同じスピードだ。それに余裕を持って追いつき、そして追い抜いていくジェラール。それほどの荷物を持っているのに、そしてその中には走りずらいであろう長い杖が何本かあるのにめっちゃ速い!

 

「ふぅ…俺の勝ちだね、2人とも」

 

「はっ、はっ、くっそ~…また負けか~」

 

「はぁ、はぁ、2人とも速いよ~…でもジェラール、すごいね!ゴーシュを追い抜いて行っちゃうなんて!」

 

 あれ、ウェンディさん元気だね?体力回復早くね?僕はまだ少し息切れしてるんだけど。大分本気で走ったんだけどな。ウェンディもやっぱすごいな…よし、もう落ち着いてきた。うん、数秒ですぐに呼吸が整うとか前の体じゃ無理だな。この体もやっぱりハイスペックだ。この世界の人間は改造人間ぐらいかもしれない。

 

「それじゃ、いつも通り進んでいこう」

 

「「はーい」」

 

 …今更かもしれないんだけど、僕完璧に5歳児の精神になってないかな?おかしくはないのかもしれないけど…精神的には25歳だから少し、いやかなり恥ずかしいような言動をしてる気が…うん、今更だ。こんな感じのノリでもう1週間も過ごしてるんだ、割り切ることにしよう。

 

 

 

 何時間か進み続けて目標にしていた草原に入った。昼下がりだが特に疲れてないし昼食も火を起こして(ジェラールが魔法で着火)キノコやそこら辺をうろついていた豚を焼いて食べたから問題ない。このまま進めば1、2時間で草原を超えるかな。そんな時だった。

 

「…っ!アニマっ…!?」

 

「な、何?どうしたの、ジェラール…?」

 

 突然ジェラールが後ろの方を見てそう叫んだ。僕とウェンディは一瞬驚いてジェラールの方を見た。ジェラールはそのまま深刻そうな顔をしながら俯く。少しすると「ごめん、何でもないんだ。さあ、行こう」とまた進み始める。

 

(ねぇ、ジェラールどうしたのかな…?)

 

(さあ…)

 

 ウェンディが小声で僕に聞いてきたけど、それは未来に影響することだし僕が知ってるのも不自然だったから教えてあげられない。

 

 そして、いよいよこの時が来てしまったと思った。僕がこの世界に来た日に2人にいつから一緒に旅をしているのかを1度尋ねたことがある。2人は3週間ほど前に出会ったと言っていた。つまり、もうウェンディとジェラールが出会って4週間…もうすぐ丁度1カ月だ。つまり…ジェラールとの、別れだ。

 

 

 

「イヤ!!一緒に行く!!」

 

「駄目だ。危険なんだよ」

 

 数日後、ジェラールが突然これ以上は連れて行くことはできないと言われた。もちろん僕とウェンディに向けて言われた。もちろんウェンディは納得できずジェラールを説得している。

 

「ジェラール、どうしても駄目なの?これからどこに行くつもりなんだよ?」

 

「…すまない。話すことは、できないんだ…」

 

「ジェラール…」

 

「なんでなの!?ジェラール!」

 

「この先に行くと魔導士のギルドに着く。そこに君たちを預けていくからね」

 

「イヤぁ!!」

 

「ウェンディ…」

 

 ウェンディがジェラールに抱きつく。…僕はまだいい。ジェラールと出会ってたった1週間だけだから。でも、ウェンディはグランディーネがいなくなった後にジェラールと出会って1カ月近くも旅していたんだ。本当のお兄ちゃんのように思っていただろう。

 

 結局、僕とジェラールはウェンディにどう声をかけたらいいのか分からず…今日はもう休むことになった。

 

 

 

「やっと寝たか…」

 

 ウェンディが眠ったことを確認する。夕方、森に入ってあんな話があってから微妙な空気になってしまい、ウェンディも眠る体勢になってはいたけど寝つけないでいるようだった。丁度あの話を始めた時から雨が降り始めており、焚き火もすぐに消えてしまうので辺りはもう真っ暗だ。雨も小雨だが降り続いている。

 

「ジェラールがいきなりあんな話をしたからだぞ…」

 

「…すまない」

 

「…はぁ。理由は聞かないよ。どうせ話してくれないんでしょ?」

 

「…ああ」

 

 ウェンディが起きないよう少しだけ離れて会話する。もしも起こしちゃったら悪い。

 

「どうしても…行かなきゃ駄目なんだよな」

 

「ああ。このまま放置しておくことはできない。だが君たちには危険すぎるんだ」

 

「…だったら、僕が「ウッホォッ!」っ!?」

 

 突然真横から動物、というか猿の鳴き声が聞こえた。森の中だからあり得ないこともないが、鳴き声がした方を見ると3mくらいはある巨大な猿がすぐ近くまでいた。確か、こいつは…バルカン?いや、バルカンは雪山にいる奴だったはずだから…森バルカンって名前だったっけ?

 

「ここ、俺のナワバリ!お前ら、ぶっ倒す!!」

 

「ゴーシュ、躱すんだ!」

 

「ぐっ!?うあぁっ!!」

 

「ゴーシュ!」

 

 ジェラールの叫びで逃げようとしたが間に合わず森バルカンの攻撃をくらう。お、重い…!飛び退いた上に防御もしっかりしてたのに…!しかも、なんでこんな奴がいきなり出てくるんだ!?しかも、さっきいた場所からいなくなっている。どうやら、木々を飛び移っているようだ…これはまずい!

 

「ゴーシュ、無事か!?」

 

「だ、大丈夫!それより逃げないと!」

 

「ウェンディ!起きるんだ、ウェンディ!」

 

「ん…ジェラール?どうしたの?」

 

「説明は後だ!早くここから…」

 

「ジェラール、危ない!!」

 

 僕よりもジェラールの方が強いと判断したんだろう。ジェラールがウェンディを起こしている隙にさっきよりも素早い一撃を放ってきた。しかもジェラールの死角からだ。それはつまり、僕からは反応できる方向からだった。

 

「ぐあっ!」

 

「ゴーシュ!!」

 

「ウェンディ、ゴーシュの傍にいるんだ!俺が守る!」

 

 さ、さすがに2発目は厳しい…!気づいたらジェラールたちを庇ってた。魔法さえ使えれば、こんな奴…!ウェンディが治療してくれているけど、やっぱりまだ幼いからかかなり治療が遅い。5歳で天空魔法を不完全ながらに使えるだけすごいと思うけど。

 

 倒れた僕と治療するウェンディを守るようにジェラールが森バルカンを警戒する。また死角からジェラール…ではなく、今度はウェンディを狙って飛び掛かって来る。その瞬間ジェラールが杖を3本取り出し魔法陣を複数展開した。

 

「3重魔法陣・鏡水!!」

 

「ウホァッ!?」

 

 攻撃が3つの魔法陣によって跳ね返され逆にダメージを負った森バルカン。勢いのまま後方へと数mは吹っ飛んだ。これがジェラール、ミストガンの魔法か…!さすが、7年後にフェアリーテイルで数人しかいないS級魔導士になるだけのことはある。でも、まだ森バルカンは行動不能になっていない。まだ攻撃を仕掛けてくるはず…。

 

「ゴーシュ、動けるか?」

 

「…何とか、ぐっ…!」

 

「無理しちゃダメだよ、ゴーシュ!」

 

「動くのは無理そうだな…よし、このままここであいつを迎え撃つ。ウェンディはゴーシュを治療してやってくれ」

 

「う、うん!」

 

「ごめん、2人とも…」

 

 ジェラールはバルカンが吹っ飛んでいった方向を警戒し、ウェンディは治療を再開する。ジェラールはともかく、ウェンディはまだ魔力が高くないから治療1つでも消耗が激しいはずだ…すごく、情けないな、僕。

 

 数分経ったけど、未だに森バルカンは襲ってこない。痛い目をみて逃げたかな?だけどジェラールは警戒を怠らない。もしかしたらまた辺りの木々を飛び回っているのかもしれない。ウェンディはまだ治療中…でも、そろそろ限界だと思う。

 

「ウェンディ、もう大丈夫。動けるくらいには回復したよ。ありがとう」

 

「う、うん…どう、いたしまして」

 

「ジェラール、あの猿は?」

 

「近くにはいると思うが…どうやらこっちの様子を伺っているみたいだ」

 

「ど、どうするの…?」

 

「もう少し様子を見よう。下手に動くのは危険だ」

 

 そっか、ここはあいつが縄張りにしている土地だ。夜目が効かなくてもあいつは土地勘で動けるだろうけど、僕達はそんなことはないから下手に動いて奇襲をかけられたら大変だもんね。

 

「ウッホホォッ!!」

 

「きゃあっ!!」

 

「しまった!ウェンディ!!」

 

 ウェンディが森バルカンに捕まる。こいつ、すごいスピードでしかもジェラールには見えない方向からウェンディを捕らえにきた…!さすがのジェラールも一歩及ばずだったみたいだ。

 

「ウッホホォッ!オンナだ、オンナっ!」

 

「ジェラールっ!!ゴーシュっ!!」

 

「ウェンディ…っ!!」

 

「ウェンディを離せ!」

 

「お前、ウルサイッ!」

 

「ぐあっ!?」

 

「ジェラール!!」

 

 あのエロ猿…!!ウェンディを連れて行く気か!しかもジェラールに攻撃されないようにジェラールの死角、尻尾で攻撃していった。

 

 僕は…足手まといだ。このままではウェンディは攫われてしまうしジェラールも怪我を負ってしまった…。

 

 

嫌だ。もう誰かを…仲間を守れないなんて、絶対に嫌だ!!

 

 

「やめろぉぉぉっっ!!!」

 

「ウッホ…!?」

 

「ゴーシュ…?」

 

「ウェンディを…離せぇっ!!」

 

「ウッホァッ!?」

 

 一瞬だけど、バルカンの頭上に何かが出現した。その四角い何かがバルカンの後頭部に直撃し、すぐに消えてしまった。今のは、一体…?

 

「…眠れ!」

 

「ウッホ…?」

 

 ジェラールが杖を一振りするとバルカンが突然眠ってしまった。そうか、ジェラールは対象を眠らせる魔法も使えるんだった。

 

「ジェラール!ゴーシュ!」

 

「ウェンディ、怪我はなかったかい?」

 

「うん、うん…!」

 

「良かった…ゴーシュは、大丈夫か?」

 

「ああ…僕も、大丈夫」

 

「よし…それなら、ここをすぐに離れよう。こいつも少ししたら起きてしまう」

 

「うん…」「了解」

 

 夜中だし雨もまだ降り続いているけれど僕達は移動することにした。早くここから離れてしまいたい。もうこんな奴には会いたくないよ…。ウェンディも泣いちゃっている…きっと、とても怖かったんだと思う。確かに、こんな変態猿に襲われたら怖いよね…。

 

 そういえばあれは結局何だったんだろう…あの四角い物体は。魔法だと思うけれど…ジェラールかな?ジェラールなら色々な魔法を使えても不思議はないし。まだ小さいのに複数魔法を使えるなんてすごいな…僕も頑張らないと。もう、足手まといは嫌だから。

 

 




後々タグも増えていくと思います。

あとオラシオンセイス編ぐらいから会話が多くなります(当然ですが)

会話文が見づらくなってしまったらごめんなさい!

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