FAIRY TAIL 守る者   作:Zelf

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書きたい衝動に駆られて書きました。




序章(原作開始前)
第1話  守る者、始まり


それはある日、もう丑三つ時といえる時間のことだ。仕事帰りにコンビニに立ち寄り、週刊少年マガジンに連載されているフェアリーテイルを立ち読みした後に買い物をして、自宅へと帰ろうというところだった。こんな夜中なのに、中学生くらいの子供が道路のど真ん中にいた。俺が住んでいる所は田舎でこんな時間に車が通ることなどほとんどない。だからといって、こんな夜中に車に轢いてくれという行為をしていいというわけではないので、車をその辺に路上駐車して降りその子供に注意しに行くことにした。

 

「おーい、君!大丈夫か?そんなところにいると危ないぞ」

 

 近づくとその子供は少年で、フラフラしているのがよく分かる。誰かが酒でも飲ませたのかもしれない。とりあえずこのままここにいるのは危ないので、歩道まで連れて行こうと思い声をかけた。が、その子供は何の反応もせずまた道路のど真ん中をフラフラと歩き出していく。誰だこんな状態になるまで飲ませた奴は。そう思いながら少年を追いかける。

 

道路の曲がり角に差し掛かったところでその姿が光に照らされる。それを理解した時、少年を助けようと動く。少年はきづいていないのか未だにフラフラと進んでいた為、少年を前に突き飛ばす。少年は転んでしまったようだがこれで轢かれる心配はない。問題は俺の方だった。別方向から来た車、というかトラックはブレーキをかけていないのが分かった。こんな夜中に飛び出してくる奴はいないだろうと思っていたのか、それとも電話か居眠りかしていたのかもしれない。

 

その後俺がどうなったかは…まあ、察して頂けただろう。俺の心残りは、まあ色々あった。まだ25年しか生きていない。結婚どころか恋愛という感情も抱いたことがなかったし、最後までゲームやアニメばっかりの人生だったから他の趣味とかも新しくつくってみたかった。友達も全然つくれなかったな。小さい頃はそんなことなかったと思うが、親が所謂転勤族だったから引っ越しばっかりで幼馴染と言える友達なんてできなかった。他人と話を合わせたり愛想笑いしたり…同窓会とかに顔は出すけど別に誰かと遊ぶこととかほとんど無かった。

 

 このまま、俺は死ぬのか……?

 

 家族は…怒るかな?それとも悲しむか。色々と迷惑ばっかりかけて、結局親孝行と言えるものができた気がしない。最後に良いことをしたということで、許してほしいな…子供が先に死ぬんだから良いことではないか。後の心残りは…そういや、さっき読んだフェアリーテイルを最後まで読めなかったな…続き、読みたかった。

 

 あ、そうだ。少年は無事か?転ばせちゃったけど、怪我はしてないかな…駄目だ。もう目が霞んでてほとんど見えない。トラックの運転手も無事かな?人を轢いてしまったことになるから、逮捕されてしまうのだろうな…なんか、申し訳ない気がするな。これから一生この事実が運転手を苦しめるかもしれないと思うと。俺だったらもう一生が終わった気分になるだろう…まあ、実際もうすぐ終わるところだけど。

 

 長々と考えてたけど、走馬灯は見なかった。そして、段々思考することも億劫になっていく。死後って人はどうなるんだろう…天国とか地獄とかあるのかな。どうせだったら異世界いったりとか転生したりとか…ないかな?ないか。ってか割とフェアリーテイルの件がショックだ…なんでかな?やっぱり最後に読んだ漫画だから一番気になるのだろうか?

 

 途中から目を閉じていたけど、光が見えてきた気がする。これは…救急車とか来たのか?だが不思議なことに助かるとは全く思わない。自分の体のことは自分が一番分かっているってこういうことか。でも、手を伸ばそうとしている自分がいる。

 

 やっぱり、生きたいんだ…………。

 

 

 

 X777年、フィオーレ王国。そこは魔法の世界。魔法は普通に売り買いされ人々の生活に根付いていた。この国には雪山や樹海などといった自然の驚異も少なからず存在している。季節関係なく様々な自然の驚異が存在しているこの国には、絶景と言える景色が数多く存在している。その国を旅する少年と少女がある草原を進んでいた。

 

「待ってよ、ジェラール~!急にどうしたの?」

 

「あそこ、誰か倒れてる!」

 

「え!?」

 

 杖や荷物を持った青い髪に顔に特徴的な模様を持つ少年―ジェラールはうめき声のような音を聞きつけ駆け出し、後から追ってきたジェラールよりも幼い藍色の髪を持つ少女―ウェンディが倒れていた誰かを見て驚く。

 

そこには一人の少年がいた。いや、倒れていた。青緑色の短髪で、顔は少し中性的な顔立ちをしているが整っていると言えるだろう。まだウェンディと同い年ぐらいの少年ではあったが筋肉質な肉体を持っている。服装は…ほぼ全裸だった。パンツは履いているがそれ以外は何も身につけていない。荷物のようなものも付近には無かった。

 

「この子、どうしたの!?」

 

「…どうやら気絶しているだけみたいだ。おい、しっかりするんだ!」

 

「ううっ…」

 

「気がついた!」

 

 少年が目を覚まし、辺りを見渡す。少年と少女を見て腕で目をこすった後、再度見て驚いた様子を見せている。

 

「君、大丈夫か?」

 

「え?…ああ、大丈夫です」

 

「どうしてこんな所に倒れてたの?」

 

「倒れてた…ごめん、何も分からないんだ」

 

「…記憶喪失か」

 

「何もって…君、名前は?名前も分からないの?」

 

「ごめん…」

 

「そんな…」

 

 少年は、実際は記憶喪失などではなかった。だが、話した所で信じてもらえるとは思えない内容だったから話さないことにした。名前もきっとこの世界には合わないと思った。だから何も覚えていないことにしたのだが…ウェンディの泣きそうな顔を見て申し訳なさそうな顔をしている。

 

「君は…これからどうする?」

 

「どうするって…?」

 

「ジェラール、この子も連れて行ってあげようよ!このままここに置いて行っちゃうの、可哀そうだよ…」

 

「そうだね…君が記憶を取り戻すまで、俺達と一緒に来ないか?」

 

 それは少年からすれば願ってもないことだった。なぜなら、この世界に少年の居場所なんてあるかどうか分からないからだ。いや、どちらかというと無い可能性の方が高い。それならば、旅をしているこの2人についていった方がマシというものだ。それ以外の理由もあったが。

 

「それじゃ…お願いします」

 

「良かったね!私、ウェンディ!よろしくね!」

 

「俺はジェラールだ。よろしく」

 

 ジェラールが差し伸べた手をとる。もう夕暮れが近かったので3人は野宿できる場所を探すことにした。その夜、ウェンディが少年を質問攻めにして「名前も思い出せないなら、何かあだ名でも考えようよ!うーん…髪が青緑色だから、ブルーとかグリーンとかはどうかな?」とポケ○ンでありそうなあだ名を名づけられそうになったがジェラールがそれを止めていた。

 

 

 ウェンディが眠ったのを確認し、こっそり抜け出す。どうやらよく眠っているようだ。さっきは変なあだ名つけられそうになって大変だったけど…ジェラールが止めてくれて助かった。

 

 近くの湖のほとりへと進んでいく。湖面にキレイな月が反射していて、こんなの元の世界で見る機会なんてほとんど無かっただろうな。でもまさか…本当に異世界転生するとは思わなかった。トラックに轢かれて死んだと思ったが、目が覚めたらこんな草原で、しかもフェアリーテイルの世界で、小さい頃のウェンディとジェラール(ミストガン)がいるとは驚きが連続だった。何より…

 

湖面を覗き映った自分の姿を見る。エメラルドみたいな青緑色の髪、見た所今のウェンディと同い年ぐらいなのに筋肉質なのが分かる肉体、そして中性的に見えるけど整った顔…これは誰だ。同じ動きをするから僕、なんだろうな…なんで?まあこの世界では元の体だと即死する気がするしいいか。魔法が使えない可能性もあるし、それにこっちの方がカッコいいしね。

 

「眠れないのかい?」

 

「まあ、そんなとこ」

 

「…単刀直入に聞く。君は、本当は記憶喪失じゃないんだろ?」

 

「分かっててああ言ってくれたのか…正直言って助かったよ。ウェンディに説明できる気がしなかったし」

 

 まあウェンディなら信じてくれるかもしれないけど、いきなり「異世界から来ました」とか言ったら変な奴だと思われるだろうし。

 

「それで、君は一体何者なんだ?俺たちを知っているのか?」

 

「…僕、異世界から来たんだ」

 

「…なんだって?」

 

 …変な奴だと思われるかもしれないけど、このジェラールだけには話しておいた方がいいかも。このジェラール、つまりエドラスという異世界からこのアースランドに来たジェラールなら信じてくれるかもしれない。それに原作同様に進むなら、彼とはいずれ会えなくなる。それならある程度事情を話してもいいんじゃないだろうか?

 

「僕はこことは別の世界から来た。どうやってきたとか分からないけど…でも、ジェラールみたいに魔法を使える人間なんて…いや、魔法という力なんて存在してない世界から来た」

 

「…そんな世界があるのか」

 

「あ、別に2人を見たことがあるわけじゃないよ。僕がいた世界じゃあ、こんな草原みたいな場所がなかったから驚いただけ」

 

 …嘘は言ってない。さすがにFAIRYTAILって漫画があるって話は避けた方がいいだろうと思った。これはこの世界では未来と言っていい知識だから。未来予知ができるとか誤魔化してもジェラールには通用しないと思う。

 

「…すまない。話したくないことを話させてしまったな」

 

「大丈夫。ちょっと、気が楽になった」

 

「…そうか」

 

 これも本当。この世界でやっていけるかどうか不安だったし、今ジェラールに話せたことで多少の事情を把握してくれている人ができた。少しは安心できた。

 

「だが、名前がないというのは少し厳しい嘘だったな」

 

「ああ…そこだけは後悔したよ」

 

「なぜ自分の名前を明かさなかったんだ?」

 

「うーん…僕の名前、この世界と全然違う感じなんだよ。外国人って言えるかもしれないけど、他の国なんて行ったことないし」

 

「なるほど…では、今考えてみたらどうだ?」

 

 確かに、今考えてしまえば朝にウェンディに名前だけ思い出せたって誤魔化せるしジェラールも考えてくれるかもしれない。僕はゲームとかで名前を付ける時長い時間考えて付けるタイプだから非常に助かる。このままだと下手したらウェンディに変な名前にされてしまう。少し鳥肌が立った。身震いした僕を見てジェラールが少し笑っていたので僕もつられて苦笑する。

 

 しかし、名前か…こういう時って元々の名前をいじるべきなんだろうか?でも、いじるのもなぁ…大体、僕は元の世界で死んだんだ。まだ生きているのかもしれないが僕は死んだと思う。この世界に来て別の体で転生している以上、もう別の人間になったも同然だ。ただ前世の記憶がある人間に過ぎない。だからあんまり元の名前とか考えないようにしたい。っていうか日本人の名前だし外人にも居そうにないんだよな、僕の名前。

 

 …とはいえ、どうしよう。名は体を表すと言うし、適当なのはまずいよなぁ…。

 

「うーん…」

 

「…最悪、ウェンディに決めてもらった方「それは絶対ヤダ!!」…そ、そうか」

 

 ジェラールが若干面倒臭がっているように見えるんだけど。気のせいか?まあ置いておこう。それよりどうしようかな。このままでは、ウェンディに変な名前を…!早く、考えなければ!

 

 

 

…………。

 

 

 

…………。

 

 

 

…………よし、決めた。

 

「ゴーシュ…はどうかな?」

 

「…うん、良い名だと思う。由来は?」

 

「俺の世界で【守る】って意味の言葉2つを合わせたんだ」

 

 漢字で書くと護守。僕は、元の世界であの少年を守れたのか分からなかった。だから、今度は誰かをちゃんと守れるようになりたいと思った。即席にしては頑張った。うん、僕にはもうこれ以上のものは思いつかない。ジェラールも良いって言ってくれたし。

 

「守る、か…合わせるならファミリーネームはガードナーでどうだ?これも守る者という意味がある」

 

「ゴーシュ=ガードナーか…よし、それにしよっと!ありがとう、ジェラール!」

 

「役に立てたなら嬉しいよ」

 

 良かった、ちゃんとジェラールも考えてくれていたようだ。おかげでそれらしい名前になった。そういえばこの世界、言語は日本語だけど基本読み書きは英語だったっけ…。これはジェラールに教わらないとな。あと、魔法も教えてほしい。きっと原作には出てきていない魔法も少なからずあるだろうから、ぜひ教わりたい所だ。

 

「ジェラール、僕このまま一緒に旅しててもいい?行く当てもないし」

 

「もちろん。いなくなったりしたらウェンディが悲しむよ」

 

「…そっか。それもそうだね。それで、明日から字の読み書きとか魔法について、教えてもらえないかな?この世界のこと全然知らないから」

 

「ああ、分かった」

 

「あ、ありがとう!良かった~」

 

「…もう夜も遅い。ウェンディの所に戻ろう」

 

 …ホントだ。話に夢中になってて気づかなかったけど、空の月の位置が結構動いてた。あれ、もしかして僕が名前考えるのに相当時間かかっちゃったかな…?ジェラールに悪いことをしたかもな。

 

「そうだね。それじゃ、おやすみ!ジェラール!」

 

「ああ、おやすみ、ゴーシュ」

 

 本当に、この世界で最初に会えたのがこの2人で良かった。しかも今はきっと、原作が始まる(ナツとルーシィが出会う)数年前…多分、X777年。根拠はウェンディがまだジェラールと一緒にいるから。確かグランディーネがいなくなってジェラールと出会っていて、1ヶ月ぐらい旅してたんだっけ…?じゃあまだその1ヶ月の所だから、まだ原作開始まで7年弱はある。今は魔法のまの字も知らないが、それだけあれば魔法を覚えて戦えるようになってみせる!

 

 決意を新たに、僕は眠りにつくことにした。ジェラールと話す前は不安が多くて寝つけなかったが、今度はすぐに眠れた。ここから始めるんだ。アニメ違うけど、0から始める異世界生活、スタートだ!

 




変なところがあったら随時直していこうと思います。

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