fate / archer in IS   作:タマテントン

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速攻で直します!


第8話

授業が終わり、弓道部の活動に顔を出す。初めは男子の珍しさからか周りのみんなの視線が集中していたが、それも数日で収まり、今では普通に部活動をしている。

 

部活動を終え、ロッカールームでシャワーを済ませて自室に戻る。部屋が暗いことから本音が帰っていないことがわかり、士郎はパソコンの前に座ると、パソコンの電源を付け、ネット検索欄に“正義の味方”と打つ。するとある動画がいくつか出てくる。

 

「………。」

 

士郎は食い入るようにその動画を見る。その動画は中東辺りで現れた人間で、全身を薄汚れたマントで覆っていて、名前、年齢、国籍、すべてが不明だった。ただわかることは女性にしては身長が高いことより性別は男でないかと目星が付いている。

 

動画の内容はこうだ。その男であろう人物がISのテロが起こった現場で人々を救済する。瓦礫をどかして下敷きになった人を救う。銃撃戦の起こった場所で果敢に戦場を走り回り敵を殺さずに無力化する。今ネットで少し話題になっている動画だ。誰がどうやって撮っているかは不明だが、画質が荒かったり、綺麗だったり、手ブレが酷かったり、全く動かなかったり、同じ場面でもアングルが違ったり、撮り方が一定ではないため、一人が取り続けているのではなく、何人もの人が撮っているのではないかと思われている。人々はこの動画をヤラセや、CGだと言っているが、一部の人は正義の味方だと称賛している。数多くある正義の味方の動画で士郎が見ているのは一つだけ。正義の味方と呼ばれる男が唯一武器を使って戦った動画だった。どういう理由でそうなったのかは定かではないが、正義の味方に向かって銃を放つ男を、正義の味方は黒と白の短剣で銃弾を弾き、銃を切り裂いて男を無力化した。この動画が正義の味方の存在をヤラセだと言われる原因の動画でもある。当然。銃を放つ人間に近づき、銃を切り裂くなどありえないと言われても仕方がない。しかし、士郎はその男の太刀筋を素晴らしいと思ってしまった。理由はわからない。ただ今までにも気まぐれで、派手な剣技を何度も見たことがあったが、この正義の味方の剣技はそれを上回るほどに惹かれた。

 

「この黒と白の短剣…いいな。」

 

今まで士郎が欲しいと思ったものはあったが、それは全部自分の為だけではなく他人のためというのも含まれていた。しかし、その剣に関してだけは唯一自分自身だけのために欲しいと思った。

 

「——————投影、開始。」

 

士郎は自分の手の中に二振りの短剣を投影する。黒と白。対になる二つの剣が両手に握られた。

 

「…駄目だな。構造がわからない以上、贋作にすらなっていない。せめて生で一目見られればいいんだけど…。」

 

士郎は投影物を消して再び動画に目を向ける。

 

「目的の像は見えた。後は、俺次第だ。」

 

士郎はパソコンの電源を落とし、魔術の鍛錬の為に外へと出て行った。

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

クラス代表当日、士郎は一夏の対戦相手を見る為に掲示板の前に向かうとそこに一夏が居た。

 

「おい、一夏。クラス代表の相手、鈴じゃないか。あいつ中国の代表候補生って聞いたぞ?大丈夫か?」

 

「あぁ、大丈夫だ。練習はしてきたからな。やってやる。」

 

「そうか、それなら頑張れよ。」

 

士郎は一夏を応援すると、観客席へと向かった。

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

試合が始まり、一夏と鈴音がそれぞれの武器で切り結ぶ。一夏は鈴音の攻撃に翻弄されながらもなんとか攻撃を防ぐ。一夏が自身の不利を悟ると、一度仕切りなおすために距離を取った。

 

「甘い!」

 

鈴音がそう言うと一夏が突然その場から吹き飛んだ。

 

「なんだ?今のは。一夏が急に吹っ飛んだように見えたけど。多分鈴が何かしたんだな。鈴はセシリアと違って遠近両方強いみたいだし、結構不利だぞ。さてどうするんだ一夏。」

 

士郎が一夏の動きを見ていると、突然一夏の動きが目で追えない程に速くなるが、士郎の持ち前の目の良さから見逃さずに済む。

 

一夏が鈴音に向かって攻撃を仕掛けようとした瞬間、爆発音が鳴り響き、グラウンドの中央に何かが落下してきた。

 

「なんだ!?一体何が起こったんだ!?」

 

士郎は席を立ち前の方へと足を運ぶ。煙が晴れると、そこには黒いISが佇んでいた。

 

「IS!?乱入してきたのか!一夏と鈴が危ない!」

 

士郎はどうにかして中に入ろうとするが遮断シールドが張られているため中に入ることができない。

 

(どうすればいい…。魔術を使うか?いや、投影品なんか使っても意味がない…。誰かのISを強化魔術で強化すればこのシールドを壊せるか?それをやるとしたら…セシリアのISが適任か。でも、一体どこにいるんだ!?この観客の中に居るなら探してるだけで手遅れになる。くそ!どうすれば…!!)

 

士郎は迷いながらも観客席を走り回りセシリアの姿を探す。しかし、探せど探せどセシリアの姿は見えない。それもそのはず、セシリアは観客席からではなく、千冬や真耶、箒と共にモニターで試合を見ていたためであった

 

士郎は再びグラウンドに目を向けると、一夏と鈴は空中に静止してなにやら話していた。すると視界の上側に人影が写る。

 

「あれは…。」

 

士郎がその人影を見ると、長身の肌の浅黒い白髪の男が遮断シールドの上から落ちてくるのを発見する。

 

「なんであんなところに人が!?」

 

士郎が焦ってその男を見ていると、男はどこからか白と黒の短剣を取り出しシールドを切り裂いた。

 

「あれは……。」

 

(間違いない、あれは正義の味方が使っていた短剣!ということは、あれはまさか…。)

 

士郎が引き続き男を見ていると、男の体が白く光りはじめる。光が収まると、その男の体には赤と黒のISが纏われていた。

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

[side:archer]

 

一夏と鈴音の試合開始15分前。

 

「アーチャー。後少しで行ってもらうけど平気?」

 

束はパソコンの前に座り、手元で何やら操作をしながらアーチャーにそう尋ねた。

 

「あぁ、無論だ。とにかく私は私の自由に動けばいいのだろう?心配ごとと言えば、君がくれたISだけだ。」

 

アーチャーは実体化し、左の人差し指にはめた指輪を見る。

 

「なんでよ~。私の技術が信頼できないの~!?」

 

束は操作をやめ、椅子を回転させてアーチャーの方を見る

 

「そういうわけではない。君の技術力が見事なのは初めから理解している。心配なのは私がしっかりと扱えるかどうかだ。それに、第三人目の男性IS操縦者として世界に注目されるのが怖くてね。」

 

「なにが怖いだ。その気になれば世界を破滅させられる力を持ってるくせに。」

 

「さぁ、それはどうかな。普通に考えて世界破滅よりも私の魔力切れが先だ。それに、世界にある450機以上のISを相手に無事で済むとも考えづらいな。」

 

「別に本当にするなんて思ってないよ。ただ、アーチャーの魔術にISが反応する理由は知りたかったんだけどなぁ。」

 

「流石に解剖は勘弁してもらいたい。それなら二人目の男性IS操縦者を解剖でもすればいいだろう。あの子供がISに乗れる理由もわからないのだろう?」

 

「まぁ、それもそうなんだけどさ。本当にあの衛宮士郎って奴の事知らないの?」

 

束は胡散臭そうなか顔でアーチャーを見る。

 

「あぁ、知らないな。第一、私がその少年を見た時に私の雰囲気が変わったなど、抽象的の事を言って関係があると決めつけるのは横暴にも程があるだろう。全くの無関係だ。」

 

「ふ~ん。まぁ、いいけど。あの衛宮士郎って奴がIS学園を卒業したら捕まえて解剖しよっと。それまでは結構忙しいし。その時はアーチャーも手伝ってよね。」

 

「そんなことに私を巻き込むな、と言いたいが。それよりも、今日の一体いつに行けばいい?降ろす場所によっては早く出なければなるまい。」

 

「んー、あと少し待って。」

 

束はパソコンに表示されている時計をジッと見て、そのまま数分が経つ。

 

「……………うん、いってらっしゃい!」

 

束は手元にあった紅いスイッチを押すとアーチャーの立っていた場所が突然開き、上空に放り出された。

 

「なっ!!」

 

アーチャーは驚きつつも空中で何とか態勢を立て直す。

 

(ふぅ、束に怒るのは後にして今どこだ?)

 

アーチャーが雲を抜け地上が見えると、大きな敷地に大きな建物が見えてくる。

 

(ここは…?なるほど、ここがIS学園というわけか。だがなぜこのような形で来ることになった?束は手を打っておくと言っていたが、上空に放り出されたのと一体何の関係がある?)

 

アーチャーは辺りを鷹の目で見渡すと、アーチャーの真下にある闘技場のような場所で黒いISと白と赤のIS三機が戦っているのが見える。

 

(あれは…白いISに乗っているのは衛宮士郎ではないということは、あの時の少年か。赤い方のISに乗っているのは知らないがIS学園の女生徒だろう。そして黒いのは…ふむ、様子がおかしいな。黒いISが放っているレーザーは明らかに威力が競技用のものよりもオーバーしている。そして観客席で光っている赤色のランプ…緊急事態か。仕方ない)

 

アーチャーはそのまま闘技場に向けて落下していく。闘技場の周りを囲っている遮断シールドを干将莫耶で切り裂き、ISを纏う。姿のモデルはアーチャーが戦闘時に使う赤原礼装。装備は近接武器ばかりで、一つだけ遠距離用として弓を搭載している。アーチャーは弓を取り出し、下に居る黒いISに向けて剣を射った。音速で飛ぶ剣は黒いISの右腕を吹き飛ばす。

 

「なに!?」

 

「なんだありゃ!?」

 

鈴と一夏は突然の出来事に目を白黒させて硬直した。

 

「戦いの場で気を抜くな。」

 

アーチャーは一夏と鈴の前に降り立つと、黒いISと相対する。

 

「なに…アンタ誰よ?」

 

鈴が疑わしそうにアーチャーを見る。

 

「なに、自己紹介は後でするとしよう。今は目の前の敵を排除するのが先決だ。」

 

「あ、アンタ!もしかして…。」

 

「自己紹介は後だと言ったはずだ織斑一夏。まぁ、もう終わるがね。」

 

アーチャーは干将莫耶をモデルとしたIS用武器を取り出すと黒いISの元に突っ込み、左腕を切り落とすと、アーチャーはあることに気が付いた。

 

「なるほど、手を打つとはこのことか。」

 

アーチャーはそのまま黒いISの首をはねると黒いISはその場で停止した。

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

戦闘後アーチャーは教員たちに囲まれ部屋へと連れていかれた。

 

「それで、貴様は何者だ?何故ISに乗れる?」

 

アーチャーの目の前には千冬と真耶がいた

 

「まるで取り調べのようだな。まぁ、君たちに話が行っていなかったのは仕方がないか。まさか早々に頼ることになるとはな。ブリュンヒルデ、束に連絡をしてくれ。君は彼女の連絡先を知っているのだろう?」

 

「何故貴様から束の名前が出る?」

 

「私の口から説明するよりも彼女から説明を受けたほうが信じるだろう。故に事実が知りたいのであれば彼女から聞き給え。」

 

千冬は舌打ちをすると部屋と出て束に連絡をかけた。

 

「ふぅ…。難儀なものだ。」

 

「あの、貴方は一体…?」

 

千冬が部屋を出た後、真耶は恐る恐るアーチャーに尋ねた。

 

「結局は訊かれるわけか…。まぁいい。私は束の助手のような立場でね。男なのにISに乗れるとわかり、理由調べるために束に拾われたのだ。そして色々ことが済んだ後に今回新しい助手が束の元に来たので、私は暇を出させて貰った。そしたら偶々IS学園が料理人の募集をしていたの発見してね。料理が得意な私はISに乗れるということをプッシュしてここに試験を受けに来たというわけだ。」

 

アーチャーが真耶の質問に嘘の答えを教えると、丁度部屋の扉が開き、千冬が入ってくる。

 

「山田君、何か聞き出せたか?」

 

千冬が真耶にそう訪ねると、真耶はアーチャーから聞き出したことを千冬に報告する。

 

「ふむ、束といっていることは同じだな。いいだろう。疑いは晴れた。」

 

「それは重畳。あのようなことがあった直後だ。怪しまれるのは当然か。」

 

「急で悪いが、早速案内をする。ISが乗れることは私たちや生徒たちが見ているから問題はないだろう。私たちがISに関しては報告しておく。だが、今貴様のISはどこの国家にも所属していない状況だ。使用する際はIS学園に使用許可を申請し、許可が下りた時のみ使用を許可する。それ以外では何があっても使うな。」

 

「了解した。」

 

「学園長にも連絡を取ったところ、面接、料理の採点は私に一任された。面接はともかく、味に関しては私は素人だ。調理師免許はあるようだから、今日の夕食を生徒の希望者に食べてもらい、アンケートを取る形で試験を行う。異論はあるか?」

 

「いや、分かり易くて実に良い。別に皆の舌を唸らせても構わんのだろう?」

 

「フッ。できるのならな。」

 

アーチャーは当然だと言わんばかりに微笑み、厨房へと向かっていった


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