織斑一夏(有里湊)   作:たぬたぬたぬき

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第12話

「このっ、くっ……!」

 

 

何故か近接武器である剣しか装備していない白式でオルコットさんの攻撃を切り払い、避ける。きっちりと守り切れていないせいでシールドエネルギーが少しずつ減っていく。

 

今の調子だと、恐らくと頭に付くが、最適化と初期化は間に合うだろう。乗り手である僕に合わせた設定を終えて、初めて専用機という機体になるのだ。

 

勝負を仕掛けるのはそこから。それまでは守りに徹してISの動かし方を逐一記憶して慣れ、オルコットさんの情報を収集する。普段の言動や表情から試合を開始時、そこからどういう状況でどんな態度を見せるか。

 

手段がなくて追い詰められているのか、まだ隠し球を持っているのか、などと言った所まで予想する手段になりうる。

 

 

「避けるばかりで……攻撃も出来ませんの? 臆病者!」

 

「………」

 

「これだから男は…!」

 

 

挑発の言葉に努めて表情を変えず、何の情報も相手に与えない様に心掛ける。激してしまえば動きに荒さが出て現状只でさえ減らすしか選択肢がないシールドエネルギーが加速して減少してしまう。

 

逆にオルコットさんは随分と分かりやすい。試合開始時は常と同じ自信がたっぷりと乗った嘲笑。数瞬は感心した風な表情をするも時間の経過と共に焦りが出て来た。内容としては此方が逃げ回っていて向こうは手傷を全く負っていない完全にオルコットさんの有利の筈なのにだ。

 

恐らくはもっと余裕を持っていたぶる様に有利になっている予想をしていたのだろう。だが実際は、少なくとも相手が気持ちよくなるような一撃は一発も受けていない。必ず雪片で受けるか、少しでもダメージが減るようにしている。

 

その辺りのギャップのせいで焦りが挑発の言葉となって滲み出ているのだろう。個人的に相手の調子を崩す為に舌戦を仕掛けるのはいいが、せめて余裕を持たなければ逆効果だと思う。

 

 

「………そろそろ、か」

 

「えっ」

 

 

事前に調べておいた専用機の最適化と初期化の終了時間が近付いてきた。そろそろ距離を詰めていく心構えをしていた所で、機体が変化した。

 

予想よりも結構早い。……試合中だから情報が早めに集まったとかだろうか、初期化と最適化をわざわざ試合で済ませるような人が自分より以前にいたとは思えない。単純に偶々の場合もあるが。

 

初期設定だけで戦っていた事実に呆然としているオルコットさんからの攻撃が止んでいる。

 

折角なので白式の変化を確認してみる。鋼の色が剥き出しだった初期設定から、濃い青を基調とした青と白の装甲。スラスターも性能が大きくアップしていてより接近戦重視の仕様へとなっている。攻撃を掻い潜り……何故か発現している単一仕様能力、零落白夜で切って落とすといった所だろう。

 

まるで、というか世界を制した千冬姉さんの戦い方そのままを求める機体だ。

 

だがしかし僕は姉さんではないしあそこまで神憑った動きは出来ない。

 

 

「オルコットさん?」

 

「………はっ、な、何ですの?」

 

「行くよ」

 

「何を……!」

 

 

まだ意識が戦闘に戻っていないオルコットさんに声を掛けてから加速する。

 

先程よりも早い速度もなんとかコントロールして動きを制御、レーザービットをまずは落とすことにする。幾つか此方を狙い撃つパターンを読み接近、意図を悟られる前に数度の試みでレーザービットを破壊する。

 

動揺しているのを見逃さず更に一機、残ったレーザービットも距離を取ろうとしている。ならばと敢えて無視、レーザービットへの指示で動きが疎かになっているオルコットさん本体へと風を切って接近する。

 

オルコットさん自身かレーザービットでの攻撃。既に二機しか残っていないレーザービットの攻撃は諦めたようだ。レーザーライフルを構えて正面から迎え撃ってきた。

 

刹那の攻防。

 

もはやダメージも最低限しか弾かず零落白夜を叩き込むために一秒でも早く懐に潜り込もうとする。

 

そしてあと少しといった所で。

 

 

「掛かりましたわね!」

 

 

ミサイルでの中距離攻撃。

 

既に加速して一直線にオルコットさんの元に向っている現状では避けようがない。逆にミサイルへと突っ込んでしまっている。けれど。

 

分かっている。

 

遠距離型の機体なのだから、近付かれた際の対処として中距離、もしくは近距離での攻撃手段はあるだろうと考えていた。だから常に警戒し処理できる程度には余裕を持たせていた。

 

慌てず、二機のミサイルも機体を捻るようにしてすれ違い一閃。背後に爆発を感じつつ爆風に乗り更に加速してオルコットさんの懐へと潜り込んだ。

 

レーザーライフルで攻防に出るでもなく近距離用の武器を呼び出すでもなく、恐らく判断に気を取られ生まれた硬直の隙に零落白夜を発動。

 

実態剣からエネルギー刃へと変わる雪片でシールドバリアーを切り裂き絶対防御を強制的に発動させる。すると一気にシールドエネルギーは底を尽き、終わりだ。

 

 

「勝者、織斑一夏」

 

 

性能は分かっていたつもりだったものの、あまりに凄まじい攻撃能力を持つ雪片に舌を巻きつつ今後はもっと気を付けて使おうと心に決めた。





どうしても戦闘になると行動とかに意識がいってしまって疎かになってしまう部分ががが。
精進したい。

白式は原作よりも濃い青に白色添え。
まさかのセッシーとのイメージカラー被りとは駄目ですね湊くん。


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