「ISについては、今更説明しなくていいな」
「うん」
目の前にあるのが、僕の為に用意されたIS。名前を白式というらしい。主な色は鋼と紺、しかし一次移行を済ませたら多少は変化するのだろう。乗り始めて一時間も経たない内に済ませるのだから、外見や武装に劇的な変化は起こらない筈だが。
「アリーナの使用時間のこともある、最適化と初期化は試合中にやれ」
「………」
「文句は聞かんぞ」
「はぁ…」
「では……私の弟らしく、勝って来い」
格好のいい表情に格好のいいセリフで激励を送ってくる千冬姉さん。白式を身に付けつつも掛けられた言葉に苦笑が漏れる。勝ってくる様に姉に言われたのだから、弟としては絶対に勝たなければならない。
「うん……勝てたらお祝い、してね」
「ああ、美味い店を予約しておいてやる」
「……居酒屋?」
「お前は私を……もっとちゃんとした所だ未成年」
「ならよかった」
「お二人の食事……わ、私m」
最後に山田先生が意気込んで声を上げた途端に音声と映像が切れた。何かあったのだろうか、特に放送が続く訳でもない。単純な通信トラブルか何かだろう。
途切れる直前に千冬姉さんが恐ろしい顔になっていたような気もするが。
「相変わらず仲が良いのだな…」
「まぁね」
途切れたきり回復しない通信にどうしたものかと首を捻るも、映像でREADYの文字が送られてくる。行っていいのなら行こう、人をあまり待たせるのも良くない。
「じゃあ…行ってくる」
「………勝ったら!」
「?」
「わ、私とも!食事にだな…」
「うん」
「い、かない……か?」
どれだけ気合を入れたのだろうか。いっそ恐ろしいとも取れる表情で話し始めた箒だったが段々と消沈していき最後には眉尻が下がり八の字になってしまった。顔の色は最初から今まで真っ赤だというのに。
千冬姉さんに加えて箒。負けられない理由が二つも増えてしまった。肯定の意味も含め、ISを纏った状態では気軽に握手もしにくいので、頷き了承する。
さて、行こう。
「箒も、千冬姉さんみたいにお店宜しくね」
「なっ」
「箒のエスコート期待してるから」
カタパルトに乗って青空の元に飛び出していく。驚いて追い縋ろうと手を伸ばすも当然届かず途方に暮れているであろう箒を想像して小さく笑う。
後でさっきのはなしだと怒るだろうか。それとも自分に任せておけと見栄を張るだろうか。小さく笑みを零しつつ宙へと身を投げ出す。浮遊感はありながらも跳躍とは違う、意思による空中機動を確かめる。
上下左右に広がる視界、ISによる360°移動が可能な機動。相手は眼上に佇む国家代表。初めてだらけの此方に比べて、ISによる恩恵を全てをあって当然の行動として昇華しているだろう。
だけど、負ける気はしない。
何か言われているが気にもしない。
ISによる習熟度が負けているとしても、手足は動く。身体も動かせる。頭は回る。だったら不利は覆して打倒してみせる。何も千冬姉さんを相手にしろと言われている訳じゃないんだから。相手にない経験だって、こちらにもある。
「――さぁ、始めよう」
一切返答せず戦意を高め言葉を発してからISの掌に雪平を呼び出した。相手が喋るのを止めアラートが鳴り響く。
どうやって相手を打倒しようかと道筋を考え、同時に発射されたエネルギー弾を雪片で迎撃した。
やけに湊くんが好戦的になった気がする。
何だがんだでISバトルに乗り気で、久し振りに血が騒ぎよるってことにしておいて下さい。
山田先生が段々とネタになっていくのはなんでだろう。
あんなにエロいおっぱい先生なのに…。