『TDD-1建造』相良宗介、軍曹から提督へ   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

やっとです。やっとテッサ登場(偽)ですが……




第八話 建造完了 TDD-1顕現

宗介たちがレーバテインで重巡棲姫を轟沈させた翌日の朝

 

神通は朝食の前に会議室となっている部屋に駆逐艦たちを呼び、話し始めた。

 

「みんなに聞いてほしい事があります」

神通は会議室の壇上正面に立ち、すぐ前の席に朝霜、早霜、秋月、そして今は宗介の麾下となった清霜が横一列に席に座る。

川内はその後ろで座っていた。

 

「私と川内姉さんは相良提督の麾下に加わろうと考えております。……皆には無理強いはしません」

 

「それが出来るんなら、あたい達も相良提督の麾下に移るぜ、なっ早霜っ!」

朝霜は即答でそう答えた。

 

「これでまた姉妹3人一緒に居られる」

早霜も朝霜に同意する。

 

「……お姉ちゃん」

清霜は嬉しそうに朝霜、早霜の二人の姉を見る。

 

「あんた達、そんな簡単に決めて大丈夫?……理由は?」

川内は後ろから朝霜達に呆れた様に聞く。

 

「はぁ?たぶん神通姉とか川内姉と一緒だぜ、相良提督気に入ってるしさ!それよりも、3姉妹一緒に居られるんだぜ!!」

朝霜は何言ってんだこの人みたいな目で、後ろを振り返り川内を見る。

 

「アル、かっこいいし」

早霜はレーバテインの事も気に入っている様だ。

 

「秋月ちゃんはどう?」

神通はまだ意見を言っていない秋月に話を振る。

 

「その、所属を変える事が簡単に出来るのでしょうか?私たちは日本の艦娘です」

秋月は率直な疑問を口にする。

 

「その事は、多分大丈夫なはずです。トラック泊地鎮守府が壊滅したと同時に、私たちは鎮守府とのリンクが切れてしまいました。相良提督さえ、認証していただければ、私たちはそのまま相良提督麾下の艦娘になる事が出来るでしょう。どちらにしろ私たちはこのまま、横須賀に戻れなければ、鎮守府の恩恵を受けられず、徐々に力を失っていきます。また、横須賀に戻れる保証は全くありません。ならば、心機一転し、相良提督の元で働く事で、志半ばで散って行った同胞に報いる事ができます。

秋月ちゃんが言った通り、私たちは日本の艦娘です。日本人の思いにより誕生したと言っても過言ではありません。しかしどうやら相良提督は日本国の人間ではないですが、彼は日本人の様です。これで日本人の思いも継ぐことが出来ます。しかも、深海棲艦と戦う強い意思を持っております。私たち艦娘の存在意義である深海棲艦から人々を守る事、そして深海棲艦の壊滅です。相良提督の元で、十分に私たちの役割を果たすことが出来るでしょう」

神通は皆の顔を見ながら、先日、川内と話し合っていた内容をそのまま伝えたのだ。

 

「そうですか……そう言う事なら私も相良提督の麾下に入ります。相良提督は今まで出会った人たちの中で最も私たちを理解してくれる人だと思いました。……それだけじゃなく、いい人だし、お菓子おいしいですしね」

秋月は神通の話を聞いて意を決した様に宗介の麾下に入る事を了承した。

 

「秋月、難しく考えすぎなんだよ。相良提督はいい奴で、しかも強い。それでいいんじゃね?」

朝霜は相変わらず大雑把である。

 

「満場一致のようね。神通、早速朝食後、相良提督に伝えないとね」

川内はそう言って席を立つ。

 

「今までの様に甘えているわけにはいかないわ、皆気を引き締めて行きましょう」

神通はそう言って締めくくる。

 

早霜はそんな中ボソっと言う。

「そうなると、私たちは宿泊施設つかえなくなるのかな?」

 

「うげっ、それは嫌だな!」

朝霜は間髪入れずほんと嫌そうな顔をして言ったが……それは全員思っている事でもあった。

この宿泊施設は各部屋が広く清潔感もあり、シャンプーやらコスメも揃っているのだ。

 

 

 

 

 

宿泊施設の食堂、宗介は此方の宿泊施設に顔を出し、一緒に朝食をとる。

 

神通は宗介の顔を見て顔を真っ赤にしながらも、深々と頭を下げている。

昨日ちゃんとお礼が言えなかったためだ。

「先日は、助けて頂きありがとうございました。おかげで命拾いをいたしました。また勝手な行動を起こし、ご迷惑おかけしたことお詫びいたします。……どのような罰も受ける所存です」

 

「うむ、今後はあのような先走った行動は控えてくれ、それよりも大事なさそうでよかった……艤装を捨ててしまい済まなかった。こちらで新調するように手配はさせてもらう」

宗介はそう言うにとどめ、艤装を捨ててしまった事を詫びる。

 

神通は今何時もの戦闘服ではなく、部屋に会った純白のドレスを着ている。その為もあって、その姿を宗介に見られるのが恥ずかしいようだったが、当の本人はそんなところはとことん鈍いため、意に返していない様だ。

宗介が神通の艤装をすべて剥ぎ取って、あの戦闘海域で捨ててしまったため、清霜同様に戦闘服が使い物にならなくなったようなのだ。

 

「そんな……命を助けて頂いただけでも………」

神通はそれ以上言葉にならなかった。宗介に救ってもらい、レーバテインの中で体を密着していた事を思い出し、気恥ずかしさで一杯一杯になっていた。

 

 

そして、いつも通り朝食を済ませた後、神通は宗介に会議室に来てもらう様に言う。

 

宗介に会議室の正面に立ってもらい。

神通以下艦娘はその正面に直立不動の体制で立ち頭を下げ、艦娘を代表して神通は宗介にお願いという名の交渉をする。

 

「相良提督、私たちの部隊全員、相良提督の麾下に転属させていただきたくお願い申し上げます」

 

「ん?どういうことだ、横須賀に戻らなくていいのか?」

 

「現状では横須賀に戻る事は叶わない可能性が高いと判断いたしました。また、私たち艦娘は鎮守府とのリンクが切れ、しばらくすると徐々に艦娘としての能力が低下していきます。ならば相良提督の元、深海棲艦と戦っていく道が最善であると愚考いたします。また、提督は私たち艦娘を理解していただける方と信じております」

 

「ふむ、日本国から鞍替えすることになる。いわば亡命とさほどかわらん。裏切り者の扱いをされかねん。若しくは国家反逆罪になる可能性もあるぞ」

 

「心配ご無用です。既に日本の鎮守府とのリンクが切れ、時が立てば轟沈扱いにされているでしょう。是非に麾下に加えて下さい。お願いいたします」

そう言って再び神通以下艦娘達は宗介に頭を下げた。

 

「……分かった。正直言ってその申し出は助かる。当方は戦力はほぼ昨日見たアルが搭載されているロボットのレーバテインのみだ。今後日本国に接触があった場合、向こうと交渉し希望者は日本国に戻すようにする」

 

「お気遣いありがとうございます」

 

「ただし、神通……昨日のようなことは二度とやめてくれ、方針としては全員で生き残る……1パーセントでも全員が生き残れる可能性があれば、それを全員で考え、可能性を上げ実行する。

誰かを犠牲にするような作戦は立てない」

宗介はそう宣言した。

これは昔、ハンカ自治州で自分自身がかなめに言われた事でもあった。「みんなで生きて帰ろう」

宗介は今まで、数々の犠牲者の上に生きている事を実感している。

その間にも大事な仲間も何度も失ってきたのだ。全員で生き残れる事の難しさも十分知っている。しかし、自分が上に立つならば、あえて最上の理想論であるこの事を掲げたかったのだ。

 

神通は宗介の宣言を聞いて思う。

この人の為だったら自分は滅んでもいいと、もし彼に何かあれば自分が盾になればいいと……

「了解いたしました」

 

そして、全員が宗介に敬礼をする。

 

こうして、神通、川内、朝霜、早霜、秋月も相良提督、宗介の麾下に入ったのだ。

 

 

 

 

宗介は午後から、艦娘達全員を基地に呼び、洞窟となっている広々とした空間の艦船発着所に案内する。

現在、急ピッチで艦娘の発着施設を妖精たちが建設していた。

 

そこで宗介は艦娘達に取り合えずの任務を言い渡す。

「まずはここをメリダ島基地をメリダ島鎮守府と改める。貴官らにはまず、この基地設備について知ってもらい、学んでくれ。神通は艤装を新調するまで艦娘としては動けないため、俺に付き添って鎮守府で言うところの秘書艦の役割をしてもらう。それと並行して、新調する艤装の調整と訓練だ」

 

「はい、承りました」

 

「川内、それと、朝霜、早霜、秋月には今後、兵装を新調しようと計画している。それぞれの個性や出力などを後で、開発室で教えてくれ、それと皆にはアルから今後使用する兵器についてのレクチャーを毎日アルから学んでくれ、今、清霜が受けているプログラムなのだが、兵器の扱い、考え方が今までと異なるからだ」

 

「分かったわ」

「よっしゃーー!!」

「了解」

「分かりました」

 

「川内は、副長として、これまで通り、朝霜、早霜、清霜、秋月の面倒を見てやってくれ、それと今までの様な水雷戦隊とは異なるため、それは留意してくれ、それ以外にも細々とやってもらう事があるがそれは個別にだ」

 

「分かったわ」

 

「朝霜、早霜、清霜、秋月はそれ以外には、家畜の確保と、現在復旧した農業プラントの生産補助を言い渡す。まあ、交代制で行ってくれ、休暇も必要だ。……それと宿泊施設についてはあそこは艦娘用の寮とする。入渠施設や食堂もあり丁度いい、但し、妖精は食事がつくれないらしいから、食事については今まで通り当番制で作ってくれ」

 

艦娘達は宿泊施設がそのまま使用できることにホッとする。

 

 

その後は、宗介は艦娘達に基地についてとこの島の概要を説明し、各施設をアルと共に案内し今日の予定を消化していった。

 

そして、秘書艦となった神通の最初の仕事は、宗介に広々とした司令官室を作る事とその横にちゃんとした個人スペースとなる個室を作る事の進言から始まった。

神通は妖精に渡されたミスリルの女性尉官が着用する濃紺のスーツと白のブラウスを渡され、濃紺のスカートに上は白のブラウスといういで立ちになっている。

 

宗介が今まで寝泊まりしていた部屋は、ミスリル時代に使用していた狭い個室だった。SRT要員であった宗介は、一応基地でも個室を与えられていたが何せ狭いのだ。

さらに、提督としての仕事は歩きながらアルと相談、指示を出し合い、ほぼすべて口頭ですませてきており、各種許可サインやら細かい予算編成やらは今まで何もしてこなかったため、書類として残っていないのだ。ただアルがすべて記憶しているため、データとしてアルがすべて管理はしていたので問題は無かったのだが……。宗介はこの世界に来て司令官としての書類仕事を今までしたことが無い上に、そのような仕事をする部屋にも入る必要性を感じていなかった。そんな現状に神通は宗介に体裁だけでも整える様に進言したのだ。細かな仕事は秘書艦である自分が行うため、宗介には今まで通りで良いと……。そして元司令官室であったミスリル西太平洋戦隊の司令官テレサ・テスタロッサ大佐の部屋を使う様にと進言したが、なぜか宗介は入る事を躊躇を覚え、頑なに拒否したため、新たに司令官室をつくる事にしたのだ。

神通は妖精に基地内にある個人スペースやらはすべて現在ほぼすべて空いている状態なため、そこに広々とした司令官室を。その隣に宗介個人スペース専用に広めの風呂やらトイレそして、広めのリビングルームとキッチンに寝室、プライベートルームまで完備を作るようにお願いしたのだ。

宗介は最初は拒否したが、神通が粘りづよく宗介を説き伏せたのだ。

 

そして、妖精達は司令官室及び宗介の個人スペースを最新設備投入してわずか一日で建設してしまったのである。

 

 

 

 

 

 

そして翌日、ついに120時間を経て、メリダ島鎮守府初の艦娘が誕生せんとしていた。

 

宗介と神通、川内は艦娘顕現(建造)施設でその誕生を待つ。

朝霜などは、立ち会いたいと言っていたが、……失敗の可能性も大いにあるため、駆逐艦たちには今回、遠慮してもらっている。

 

 

 

 

「提督、そろそろだよ」

中尉と呼ばれる妖精が顕現装置の操作を行うPC前にちょこんと座り、宗介に知らせる。

 

直径5mある円形台の顕現装置は淡い光に包まれ中心部分が見えない状況になっていた。装置の上部に掲げてある電光掲示板の時間が0になった途端、顕現装置はプラズマが発生し激しくスパークし光がその場を包み込む。

 

「くっ」

宗介は思わず目を塞ぐ。

 

そして、光が収まると、顕現装置は白い煙を上げ、まだ所々静電気の様なものがパチパチとスパークする中、顕現装置の円形台の上には人ではなく、医療検査機器の様な人が入れるくらいの大きな白いカプセルが現れた。

 

「な?」

宗介は一瞬失敗かと頭をよぎったが……

カプセル上部が駆動音と共に横開きに開き、人影が出てきたのだ。

 

 

その人影を見た宗介は…………最大限の驚愕の表情を浮かべ

 

「たたたたたたたたたたたた、大佐殿!?」

焦りやら驚きやらのないまぜた様な大きな声でその人影に声を掛けた。

 

 

人影はカプセルから出て、装置の円形台の上に立ち、宗介を見てニコッと微笑む。

 

「違いますよ~、TDD-1トゥアハー・デ・ダナン、艤装名はダーナ。提督は~、テッサって呼んでくださいね♡」

 

アッシュブランドの髪を後ろで濃紺のリボンで括り、大きな三つ編みにしている。肌の色は雪の様に白く、大きくつぶらな愛らしい目に、髪の色と同じ長いまつ毛と瞳、鼻筋が通り、可愛らしい唇がその下にちょこんとついている。そして、綺麗な人差し指を上立て、首を傾げながら微笑む姿。

絵にかいたような絶世の美少女がそこに立っていた。

 

艦娘を顕現させたはずなのに、宗介は自分がよく知っている人物が目の前に現れ、余りの驚きで開いた口が閉じないでいた。

 

「どうやら成功の様ですが、どうなさいましたか?」

そんな宗介の様子にスーツ姿の神通は心配そうに声を掛ける。

 

「うーん、この子潜水艦だね。でも明らかにヨーロッパ人だよね。しかもなんで120時間もかかったんだろう?」

川内は顕現した艦娘を見てそう答えた。

 

そう、彼女は昭和の時代の紺色のスクール水着を着用していたのだ。

しかも、ご丁寧に胸の下あたりから大きな白い布が縫い付けてあり、ひらがなで『てっさ』と大きくマジックで書かれているのである。

スクール水着は日本の潜水艦の艦娘の戦闘服なのだ。しかし彼女はどう見ても日本人には見えない。

 

 

口を大きく開けたまま固まっている宗介に、その少女は正面まで来て、目をウルウルさせながら上目使いで心配そうに見上げる。

「どうしたんですか?相良さん……いえ、提督」

 

宗介は顔一杯に玉のような汗を掻き、滝の様に流す。

「あわわ……失礼しました!!マム!!」

慌てて叫んで真正面を見据え敬礼した。

 

「違いますよ~、テッサって呼んでくれないと嫌です~」

そう言ってその少女は宗介の敬礼をしていない方の腕を取り自分の体を密着させる。

少女の体形は小柄だが、女性らしいボディーラインをしており、胸もそこそこあるようだ。

 

その様子を見て、神通は、

「トゥアハー・デ・ダナンさん?それともテッサさんとお呼びすれば?とりあえず相良提督から離れて下さい!!」

珍しく少し声が上ずってその少女を注意する。

 

 

「いやです~~、あなたに言われる筋合いはありません~」

その少女は宗介の腕を取ったまま、頬を可愛らしく膨らませ、神通にそう言った。

 

「離れて下さい!」

神通は語気を強くする。

 

 

そんなやり取りを宗介の目の前で行われていたが、

(なぜ彼女が?メリダ島最終決戦時に戦隊を率いて撤退したはずなのに……しかもスクール水着、何故いつも俺を困らせる?いやなんであの時からずっと困っていた?なぜ今も困っているのだ?もう解決したはずでは?どうすれば?いや、しかし)

宗介は疑問と混乱とが頭をグルグルと廻り、とうとうオーバーヒートをおこす。

 

宗介は顔を真っ青にして、顔面中汗が流れ、その場で倒れてしまった。

この世界に来て、気を張っていたのも確かだが……それ以上に女性関係にトコトン疎い宗介のキャパは、これ系には耐性が全くなく、過去のトラウマも呼び起こし、早くも心が考える事を拒否してしまった様だ。

 

「提督さん~大丈夫ですか?相良さ~~ん!!」

 

「相良提督!!相良提督!!しっかりしてください!!姉さん提督をベッドに!!衛生兵!!」




ようやくテッサ登場です!!

でも、早くも波乱の予感。
大丈夫か宗介!!耐えろ宗介!!

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