『TDD-1建造』相良宗介、軍曹から提督へ 作:ローファイト
誤字脱字報告ありがとうございます。
すみません。テッサまだ出ません。
タイトルも今(仮)となっていますが、なんとつければいいか悩んでいる次第です。
案としては、『相良提督TDD-1建造する』『相良宗介、軍曹から提督へ』とか……
神通達艦娘がメリダ島に寄港してから、10日経っていた。
その間、宗介は神通と毎日、日課のように話し合いの場を持ち、この世界について、提督の役割、艦娘についての知識を教えてもらっていた。
そのおかげもあり、大分と今後の方針とメリダ島の運営方法が見えてきたのだ。
そして、分かった事は、深海棲艦はメリダ島を攻撃対象にする可能性が高いという事だ。
既に太平洋は深海棲艦の支配下にあると想定している。となると、すでにここら一帯も深海棲艦の勢力圏内に入り、メリダ島は敵中のど真ん中にあると言っていいだろう。
深海棲艦がここを嗅ぎ付け、攻撃対象とするのは時間の問題だ。神通達を援護した段階で、新たな勢力と見なされている可能性が高いからだ。
敵にここが知られる前に、此方からも打って出られる体制を整える必要がある。何とかこのメリダ島を少なくとも鎮守府としての最低限の機能を付加させ、艦娘運営が出来る状態までに持って行かなければならない。
やはり、対深海棲艦としては、艦娘に頼るのが妥当だという結論を宗介とアルは出したのだ。
現在、ここに滞在している神通達も横須賀鎮守府に戻るにはこの付近の海を深海棲艦から解放しない事には、戻るに戻れないため、宗介たちに協力を惜しまない事を約束した。
しかしながら、それだけでは戦力は全く足りない。メリダ島鎮守府も独自に艦娘を顕現させ、装備開発をしなければならないだろう。
メリダ島独自の戦力は、レーバテイン一機だけである。確かに強力な機体ではあるが、所詮一機である。大群で押し寄せられた場合どうすることもできない。さらに、レーバテインは飽く迄も陸上機動兵器である。海上での行動は視野に入っていない。
しかも、神通の話によると、上位の深海棲艦特に鬼や姫などのネームが付けられている人型深海棲艦クラスはその一体で、戦艦級や正規空母級の艦娘が数人がかりでやっと倒せるのだと言う代物らしい。そんな化物に今、メリダ島が攻められたら一たまりも無いだろう。
メリダ島にある防衛システムの復旧も並行して急務である。
軍事レベル的にはメリダ島の設備はこの世界の何倍も先を行っているため、ある程度迎撃は可能だろうと予想する。
此方に来た当初は防衛システムは優先度は下位であったが、現在では最上位に持ってきている。
人手が足りない今、この防衛システムが復活すれば、アルだけで、メリダ島すべての防衛兵器が操作可能となる。
妖精から深海の悪鬼(深海棲艦)を倒す存在だと言われた宗介だが……今はそれどころではない。
取りあえずは自分達の身を守る事が先決だ。
その為には……
メリダ島に鎮守府機能を付加させ、艦娘運営による迎撃または周辺海域の敵勢力の駆逐
メリダ島の防衛の為、本来ある防衛システムの復旧
これが宗介とアルが現在勧めている緊急性が高い大きな事案である。
これに向け、各妖精たちは、艦娘顕現装置(建造)や装備品開発、艦娘に関係する施設の増設。そして、基地の修復と勤しんでいる。
神通達艦娘達が寄港してから、大きく変化したことがある。妖精の人数が150人と一気に3倍に膨れ上がった。例の妖精達が基地にあるゲート(光の柱)から続々と現れたのだ。
艦娘が来たことにより、宗介の知識が向上したためなのか、艦娘がここにいる事自体で、この鎮守府のキャパ(レベル)が上がったのかは理由は不明だが、現状において非常にありがたい事だった。
今まで進めていた。各種事案が作業量が単純に3倍のスピードで進められるからだ。
その間、艦娘達は……
神通は話し合いの為宗介と日がな一緒に居る事が多い。艦娘運営の方法や、世界情勢、敵勢力について、神通に色々とアドバイスや知識をもらっている。
川内は、駆逐艦の子たちの面倒を見ながら、自主訓練を行っていた。
秋月は、戦闘用の服が修復できなくなった清霜のために、VIP用の宿泊施設にあった服などを元にサイズや見た目を可愛らしく修繕し各種用途の服を既に何着か繕っていた。
また、この宿泊施設の厨房で何やら色々と下準備をしている。
どうやら、秋月は裁縫や料理が得意なようだ。
清霜には宗介が初任務だと言って、生き延びてこの島のどこかに逃げた家畜を捕獲することを命じた。名目は、食料確保、家畜繁殖を行うために生きたまま捕らえろとの事だ。
宗介は、サイレンサー付きのスナイパーライフルと、短銃と麻酔弾を渡し、宗介直伝の罠の有用性を教えていた。見た目は小学生高学年程度だが、そこは艦娘、艤装なしでも、そこらへんの大人よりも身体能力は高いため、ライフルもやすやすと持ち上げる事が出来る。
宗介は清霜が今後艦娘として、生きることが出来ない可能性を考慮し、艤装が使えなくなった彼女に直接自分の手での銃の扱いと動く標的への射撃訓練、そして、フィールドワークにより自身の各種身体能力の確認をさせ、彼女自身生きていくための力を付けさせようとしたのだ。また、気晴らしにも丁度良いと考えた。いくら豪華施設といえども引きこもってばかりでは陰鬱な気分になろう。さらに、今後は清霜にはつらい別れなどもある。
朝霜と早霜はそれに付き合う形で一緒に行動する。
但し、ジャングルで行う様に言われている。上空からの偵察に備えてだ。
現在、艦娘達は、外出許可が出るようになっていた。
神通には、基地内への入場許可を出している。
艦娘運営のために、基地の設備改修なども行うため、神通からの意見は重要なのだ。
他の艦娘には今の所、基地内への入場は出来ないが、上空から見えない場所での外への移動は許可している。
基地や宿泊施設から離れている訓練場への出入りも許可が出ている。川内は主にここで射撃や基礎訓練に勤しんでいる。海に出られないため、出来る事は限られているのだが……
そして、この日夜、宿泊施設での夕食を宗介と艦娘たちは一緒に取っていた。
神通と秋月が基地で採れた野菜と備蓄の食料でカレーを作ったのだ。
宗介は相変わらずの無表情で食べていたが、どこかうれしそうな雰囲気を醸し出していた。
「うむ、……これはうまいな」
宗介は、感慨深そうにそう言う。
その宗介を神通は嬉しそうに見ていた。
「お口に合いましたか?」
「まとものな食事をとるのは久々だな……感謝する」
宗介はそう言いながら、少し昔の事を思い出していた。
あの眩しく、楽しい日々を過ごした陣代高校に通学していた頃、当時は恋人ではなく護衛対象であった千鳥かなめに、よく食事を作ってもらっていたのだ。その中でも宗介はカレーが気に入っていた。それまで幼い時から戦士として育った宗介は、食事などエネルギーを摂取するもためだけのものだったが、食べる喜びをこの時に始めて知ったのだ。
「うめーー!!やっぱ、食事はこうでなくっちゃな!相良提督のとこの色んなレトルトとかもいいけど、直で作ってもらうのは違うよな!何、愛情ってのがはいってるぜ!」
朝霜はガツガツとカレーを口に掻き込みながらそんな事を言った。
「………おいしい」
「うん、おいしいね」
早霜と清霜もそれに続く。
「……愛情だなんて」
神通はなぜか顔を赤らめる。
「………」
川内はそんな神通を黙って見ていた。
「清霜、ミッションの遂行状態はどうだ?」
宗介は話題を変え家畜の確保の進行状況を清霜に聞く。
「うん!お姉ちゃん達に手伝ってもらってるけど、今日は豚さん3匹、ニワトリさん4羽捕まえたよ!」
清霜はニコニコ顔で答える。
「ライフルの扱いは?」
「大分慣れてきた」
「そうか……清霜の艤装についてだが、もしかしたら、新調できるかもしれん。現在妖精たちがいろいろと試している」
「本当!!」
清霜は急に立ち上り嬉しそうに宗介に対し前のめりになる。
「という事は、あたい達のも、パワーアップ出来たりするのか!?」
朝霜も立ち上がり、宗介に聞く。
「清霜ちゃん、朝霜ちゃん、今は食事中ですよ」
神通はそんな二人に軽く注意をする。
「それは今は検討中だ。ようやく艦娘用装備開発ラボが出来上がった……清霜、試験のためにも、明日基地のラボに神通と一緒に来てくれ」
「はい」
「うん!!」
「えーーあたい達は?」
朝霜は口を尖らせる。
「今は我慢してくれ」
「ちぇ」
その晩
神通と川内にあてがわれた部屋。
現在4人からのファミリー向けの部屋には駆逐艦たちが過ごしている。最初は全員同じ部屋で過ごしていたが、安全だと確信し、神通と川内は隣の2人部屋を使用していた。
「神通」
「何、姉さん?」
「あの人、仏頂面で不愛想、出会ってからずっと笑ったところも見たことないし……愛想笑い一つしない。ホント、感情なんてあるのかしらって思っちゃうわよ」
川内は真面目な顔をして神通に宗介を指しているだろう事をワザとこんな言い方をした。
「そ…そんな事はないわ、相良提督は表に出さないだけで、その雰囲気で分かるわ」
何故か神通は慌てた様に言った。
「私、相良提督って言ってないんだけど………でもね。彼はぶっきら棒な言い方だけど、私たち艦娘に対しても心から人として扱ってくれるし、何より誠実だよ」
そんな神通の様子に川内はクスっと笑った後、宗介をこう評した。
「……姉さん」
「神通は相良提督の事どう思う?」
「不器用だけど、優しい方」
神通は宗介の顔を思い出しながらそう言った。
「惚れた?」
「ねね、ね、姉さん!?」
神通は恥じらう乙女の様な真っ赤な顔をしていた。
「ごめん、ごめん、今の神通みてるとさ、エースとして常に凛として深海棲艦相手に立ち回っていた神通は本当の顔じゃないんだなって思ってさ……、相良提督と話している神通は嬉しそうで自然に笑顔がでるし………」
「………」
神通は下を向き茹蛸の様に顔を真っ赤にしている。どうやら、川内が言った惚れたというのはまんざらでもない様子だ。毎日宗介と接しているうちに、どうやらそういう事になってしまった様だ。
「だからさ、今までの神通は私たちや日本の為に無理してたんじゃないかなって……私たち艦娘は人の思いで顕現した存在だけど、たまには自分の為に動いてもいいんじゃない?神通は今まで十分頑張って来たよ……そのだから、相良提督の下で……」
川内は宗介の下に付くことを言っているのだ。
「いいえ、姉さんそれは出来ません。私たち艦娘は、日本の人の大きな思いで生まれてきました」
神通は悲しそうな顔をしながら川内の意見を否定する。
「神通は分かっていたよね。トラック泊地鎮守府が崩壊した時に、私たちと鎮守府とを結ぶつながりも消えた事に、たぶん。それは日本も把握しているはず。私たちは本国では轟沈扱いかもしれない。このまま戻れるかどうか分からない横須賀鎮守府に縛られるよりも、ここで心機一転した方がいいんじゃない?相良提督もどうやら、深海棲艦に立ち向かう様だし、私たちの最終目的は深海棲艦から人を守る。それと、深海棲艦の壊滅、この二つなんだから……それと、相良提督も日本人だし、深海棲艦を倒せば、日本の人の思いも成し遂げられる」
川内はこの2、3日思い悩んでいた。楽しそうに宗介と話す神通の顔、今までの神通の顔、さらに、今の状況。とてもじゃないが5人で横浜まで戻る事は出来ないだろう事。
そして宗介の人となりが好ましい人であること……妖精が宗介に付き従って活発に活動している事からも、信じられる人間であることは間違いないと判断できるからだ。
「……姉さん、もうちょっと考えさせて…」
「わかった。でも、あまり時間があるとは思えない。深海棲艦の奴ら、ここら一帯に私たちが隠れている事を大凡分かっているハズだしね」
宗介の援護で深海棲艦は撃退したが、壊滅させてはいない。
この辺りにいる事はあちらも把握しているはずなのだ。
「私たちを助けてしまったために……この島が……相良提督が狙われる……」
神通は沈痛な面持ちで小さな声でそう口にした。
宗介、まずは神通さんフラグが立ちました。