『TDD-1建造』相良宗介、軍曹から提督へ   作:ローファイト

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誤字脱字報告本当にありがとうございます。非常に助かります。


第三話 艦娘とは

神通は宗介との話し合いが終わった後、あてがわれた部屋で、皆に現状を説明した。

清霜は既に寝てしまっているため、改めて明日説明するつもりでいた。

 

「取り合えず、皆無事でよかったです。清霜ちゃんは轟沈寸前でしたが何とか耐えて、ホッとしました。これもここの相良提督のお陰です」

神通は話し出す。

 

「あの援護砲撃が無かったら全滅していたね」

川内は改めて思い返しそう断言する。

 

「ここはメリダ島という島です。地図には名前も載っていない島です。現在、相良宗介さんがここの提督を務めておられますが、彼自身、提督の役割や艦娘についての知識は全くありません。

しかし、口調や時折見せる知識から、軍関係者だと推測しますが、日本軍でも、友軍でもないそうです」

神通はこの島と宗介について軽く、駆逐艦級の秋月、朝霜、早霜に説明する。

 

「えー、でもあの提督、日本語を流暢にしゃべっていたし、顔もそれっぽいし日本人なんだろ?にしても若そうだな」

朝霜は宗介の無表情な顔を思い出しながら、そう言った。

 

「しかし、限定的ですがしばらくの滞在許可は頂きました。この建物内は自由に行動してよいとの事です。ただ、外には出ない様に言われております。確かに私たちは相良提督からすれば、完全によそ者です。しかしながら、そんなよそ者の私たちを助けて頂いたうえ、入渠までさせて頂き、このような豪華な場所で寝泊まりさせていただき、彼個人はとても優しい方なのでしょう。あまり彼の事やこの島の事を詮索するのはよしましょう。」

 

「でも、神通、この照明ってやたら明るいし、蛍光灯じゃないみたい、冷蔵庫もこんなコンパクトで何やら、冷房も自然に効いているし、よくわからない機械が結構あるんだけど、やっぱ似たようなよその世界から来たってのは本当の事なのかな?」

川内は何気なしに部屋全体を見渡しそう言った。

清潔感溢れる洋室で、ベッドルームとリビングルームとで別れており高級ホテルの様相だ。

現在使えない、液晶テレビやブルーレイデッキ、各種リモコン、自動空調にLED照明まで備えている。一応元VIPルームの一室だけの事はある。

 

「姉さん!」

神通は川内を注意を込めて呼び。

他の子には相良の素性で、並行世界から来たことを混乱するから今は話さないでおこうとさっき二人で話していたばかりだったのだ。

 

「やばっ」

川内はハッとしたが後の祭りである。

 

「へ?相良提督は、別世界の人間なんですか?」

秋月はそれを聞いて、目を大きく見開き丸くしてその言葉を聞き返す。

 

神通は諦めた様な顔をし、答える。

「そう本人が言っているわ。島ごと転移したと、でも、私は彼は未来から転移したと思っているの、第2次世界大戦の事も知っている様だったし、深海棲艦や艦娘がいない未来の世界から……」

 

「という事は、この設備は未来の設備なんですね」

早霜は冷静に、部屋を見渡しながらそう言った。

 

「飽く迄も推測だけど……後何か困った事があれば、寮長に言ってくれと言っていたわ、あの入口に座っている妖精さんの事だと思うのだけど」

神通は早霜にそう答えながら、宗介が最後に言っていた事を皆に伝える。

 

「……神通姉、それはいいんだけどよー、……あの妖精さん…デカくね?」

皆思っていたが口にしていなかった事を朝霜が代弁した。

そう、彼女ら普段見ている妖精さんは精々大きくても手の平サイズ、または指位の大きさだ。

それに比べると40㎝もあるメリダ島の妖精は存在感がありすぎる。

 

「……普通にしゃべる」

早霜も頷きながら、さらに妖精についての疑問を口にする。

そう、ここの妖精は普通に会話をするのだ。早霜たちはさっき会議室前で通りかかった妖精に話しかけられたのだ。

彼女らが接している。小さな妖精さんはしゃべらない。手振り身振りやモールス信号などでコミュニケーションを取っているのだ。

 

「………」

皆改めて疑問に思い沈黙する。

 

 

「……取り合えず、しばらくは助かったって事で、この後の事はまた明日考えよう。今日は疲れたし」

そんな沈黙に耐えられなくなり、疑問をよそにして川内はそう締めくくる。

 

 

 

 

 

 

一方宗介は、基地の一室で、アルと妖精3人と話していた。

「大佐、彼女らは艦娘と名乗っていたが、軍艦の付喪神でいいのだな。しかも接していて普通の人間、少女と変わらない」

 

「そうだよ。彼女らは艦娘、軍艦の付喪神。でも、艤装を外したら普通の人間よりちょっと身体能力が高いだけになる」

大佐と呼ばれた妖精は、宗介と初めてコンタクトを取った妖精だ。現在いる妖精の取りまとめをしている。

 

「艤装とは背中などに背負っている装備群か、それが安全装置の役割をしているわけだ。彼女らは食事も普通に取るし、笑う。何せ意思を持っている。自分の妹を触られそうになるだけで、怒るぐらいに。あの戦闘の基本スペックは普段生活する上では障害でしかならない。そうせざるを得ないのだろう」

宗介は艦娘を見てきて思った感想と大佐の言葉を加味して答える。

 

「中尉、その艤装なのだが、どのようなスペックだ?」

宗介に中尉と呼ばれた、頭に鉢巻をした妖精は、この基地において主に兵器軍の整備や管理を取りまとめている。

 

「スペック~?ああ、川内型の二人は、14㎝砲を模したもので~、実際にもその位の威力はあるかも~、あと秋月は防空を意識した装備だね。なんか、独立した意思を持つユニットが付いていたよ。

そのユニットに聞いてみたら~、長10㎝砲ちゃんと呼ばれているらしい」

中尉は間延びした口調で説明する。

要するに、旧日本帝国軍の軍艦と同じ威力の装備があのコンパクトなサイズに凝縮されているという事だ。長10㎝砲については……今は置いておこう。

 

「それは凄まじいな、修理整備は可能か?」

宗介は素直に感心した。艦娘のあの砲は通常の大型のライフルの口径とサイズがほとんど変わらないのに軍艦並みの攻撃力が内包されている事になるからだ。

 

「大丈夫~、でも清霜のは無理~、完全に壊れてるし、もう気が抜けちゃってる~」

中尉はそう答えた。

 

「ふむ、という事は彼女は艦娘としては、機能しないという事か………新しく艤装だけ作る事は出来るのか?」

気とは何かと疑問に思ったが話を進めるために今は無視をする。

 

「うーん?どうだろう~基本的には~彼女が軍艦だった頃の装備しか付けれないはずだから~無理だろうね~」

 

「そうか……では大尉、設備の復旧はどうだ?」

 

「順調です。50%は行っていると思います。それと、艦娘を顕現させるラボと艦娘専用の装備品類を開発するラボを作りたいのですが」

この基地の復旧を取りまとめている大尉と呼ばれる妖精は何故か眼鏡をかけている。

 

「艦娘を…可能なのか?……では大尉進めてくれ」

宗介は深海棲艦と戦わないといけない可能性がある現在において、少しでも味方が欲しい状態である。

今日初めて、あの不気味な生体兵器の様な連中を見て、改めてそう思う。

 

「わかった!」

 

「それと、設備についてはファームユニットの復旧を最優先にしてくれ、艦娘は人と同じで飯を食う。

今までは俺だけだから備蓄で済んだが、そうはいかん状況だ。今後艦娘が増える可能性がある。よろしく頼む」

宗介は基地にある農業生産用の全自動ラボの復旧を最優先させる。メリダ島では元々食料確保のために家畜もいたのだが、大半はあの戦闘で死んだ。農業生産用ラボ、ファームユニットがあれば、野菜などが生産可能なのだ。

 

「わかった!」

 

 

「アル、この島周囲に敵の気配は?」

最後にアルに警備状況を聞く宗介。

 

「ありません。各種望遠カメラを各所に取り付けましたが、反応なしです……相良提督…提督らしくなってきましたね」

現状報告をしながらアルは宗介にこう問うてきた。

 

「お前がやれと言ったのではないのか?」

 

「そうでした」

 

長年の相棒AIで有るはずのアルとの会話は実にスムーズで、しかもユーモアも多分に含まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、

 

 

宗介は艦娘とコミュニケーションをとるために、朝食を一緒にしようと、朝早くから宿泊施設に出向いたのだが……

 

「うわーーーん」

少女の泣き声が聞こえてきた。

 

神通が慌てふためきながら廊下を小走りで走っていた所に声を掛ける。

「何事だ?」

 

「相良提督おはようございます。その、あの……」

どうやら神通は混乱している様だ。

 

「落ち着け」

 

「……清霜が目を覚ましたのですが、その服が1日たっても修復できなかったのです」

 

「?」

 

「あ、すみません。私たち艦娘はあの標準戦闘服は艤装と連動しているのです。それが修復できないという事は艤装も装着できなくなり……艦娘としてはその………機能できず、処分されることに」

神通は俯き加減に苦しそうにそう言った。

昨日、妖精の兵器担当中尉との会話を宗介は思い出す。清霜の艤装は修理が不可能だという事はその装着させるための戦闘服も修繕が不可能だという事だ。

 

「!?……処分だと、君らは人ではないか、それを処分などと……」

しかし、宗介は処分という言葉に憤りを感じる。戦闘が出来なくなったとしても無垢な少女が処分される道理が無いのだ。

 

「私たちは人ではなく所詮兵器です。使えない兵器は処分されます」

神通は宗介を見上げ今にも泣きそうな顔でそう言う。

昔の宗介ならば、そう判断した可能性が高い。しかし、AIであるアルと長年相棒として戦場を駆け回るようになり、その考え方は変わり、今は断言できる。

 

「意思を持った者は兵器だろうが何であろうが人と同じだ。ここでは処分などという決定はない」

 

「……相良提督はお優しいのですね。しかし、本国ではそう判断されるでしょう」

神通は悲しそうにほほ笑む。

 

「……では、こうしよう、清霜は戦死扱いにし、当方で預かる」

 

「それは……」

 

「清霜の意思もあるだろうが、君たちが黙っていてくれれば、清霜は生き永らえる。そして何よりも俺たちの人手不足が解消される」

宗介は最後の一言を入れる事により、これは此方にも利がある取引だという事を暗に言い、神通の心の負担を軽くしたのだ。

 

「わかりました。……提督のご厚意に甘えさせてください。清霜は私が説得します」

神通は先ほどまで沈んでいた心を奮い立たせるように力強く言った。

 

「ふむ、俺も行こう」

 

 

そして、清霜達がいる部屋に入る。

清霜は早霜の膝に縋りつき泣きじゃくっていた。秋月もそんな清霜の背中を撫でていた。

朝霜はその様子を悔しそうに見つめている。

川内は、沈痛な面持ちでその様子を見ているだけしかできなかった様だ。

 

「神通姉……と相良提督!!……それ以上近づくな!!清霜は処分させねーー!!」

朝霜は宗介に食って掛かる。

 

「朝霜ちゃん、相良提督は処分なんかしないわ」

 

「俺には処分する権限がないからな……君らは日本国所属であって、俺にとっては他国の話だ」

 

「何だって!!」

朝霜はさらに宗介に詰め寄る。

 

「清霜は日本国に戻れば処分される対象になるそうだな、艦娘としての機能を失ったからな……しかしあいにく俺は、艦娘ではなく人手が欲しい。この島には、人間は俺一人だ。妖精は多数いるがな、俺の相棒も正確には人間ではない」

 

宗介はそう言って詰め寄る朝霜を優しく、頭を撫でてから、泣きじゃくる清霜に近づいて行き。

 

「清霜、君さえ良ければ、当方は君を受け入れる準備がある。艦娘としてではない。人手としてだ。もしかしたら、艤装は何とか出来るかもしれんが今はなんとも言えん。うちの優秀なスタッフに頼んで見るが、いずれにしろ此方の人員になってもらわなければそれも出来んらしい」

宗介は言い方は無骨だが、優しく清霜に声を掛けた。

 

泣きじゃくっていた清霜は宗介の顔を不思議そうに見て……

「本当?」

 

「ああ、しかしその為に、君ら姉妹は離れ離れになる。それは了承してくれ」

 

 

清霜は朝霜、早霜、そして次に、秋月、川内、神通の顔を見る。

皆はその視線に頷く。

 

そして、清霜は宗介に問いかける。

「私、生きられるの?でも……艦娘じゃなくなっちゃってもいいの?」

 

「ああ、当方は人手が欲しいからな」

 

「私、人じゃなくて艦娘だよ?」

 

「意思があれば人だ。……アル!!」

宗介は清霜を説得しつつアルを大声で呼ぶ。

 

部屋のオーディオスピーカーから無機質な男性の声が響く。

「大声出さなくても聞こえてますよ提督……初めまして、相良提督のサポートを行っているAIのアルです。以後お見知りおきを……」

 

「え?どこから声が」

「なんだ?」

それぞれその声に混乱する。

 

「アルはAI、人工的な知能を持った機械だ。本体は別の所にあるが実際には体が無いに等しい。この基地内の全サポートを行っている。まあ、今に至っては奴の方がここの主らしい。さらに俺の長年の相棒だ」

 

「俺は奴を人として認めている。そんな奴に比べれば清霜は明らかに人間だ」

 

「……うん、ありがとう相良提督、それとアルさん」

清霜は涙を手で拭きながら宗介とアルにそう答える。

 

「また、早とちりしちまった。相良提督、悪かった。清霜の事よろしく頼む」

朝霜はそう言って、宗介に頭を下げた。

早霜も無言で頭を下げる。

秋月はその展開について行けずポカンと口を開けままだった。

 

「相良提督、清霜の事よろしくお願いします」

神通も頭を下げる。

 

「ああ、しかし、艤装の新調する案は一応、検討もしておく。人手だけでなく戦力も欲しいところだからな」

 

「あ!その時は戦艦にして!!」

清霜は元気になったようだ。

 

 

「相良提督……機械の人って何?」

川内はアルにまだ驚いている様だ。

 

「そのうち本体に会わせる。取りあえず朝食だ。その後は、また話を聞きたい、分からない事だらけだ」

 

 

 




まだ、テッサでない><

次は建造にこぎつけます。

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