『TDD-1建造』相良宗介、軍曹から提督へ   作:ローファイト

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第二話 この世界について

得体のしれない生体兵器らしき禍々しい存在と海上で高速機動での砲撃戦闘を繰り広げていた少女たち。

彼女らは圧倒的物量差に窮地に追い込まれていたが、宗介が搭乗するレーバテインの援護砲撃により、危機を脱し、メリダ島東部浜辺に寄港することになった。

 

 

宗介はレーバテインから降り、野戦服姿で彼女らを出迎える。明らかに負傷者がいたため、妖精達に、救護の受け入れ準備の手配を申しつけていた。

宗介の後方ジャングルでAIアルが操作するレーバテインが森の中に潜み、様子を伺っている。

彼女らを変に怖がらせないための配慮と、もし、害意があるものだった場合と、何者かに付けられていた場合を考えての待機だったのだが、宗介はレーバテインにECS(光学迷彩)を取り付ける事を今度妖精に頼んでみようと考える。

 

彼女らは戦闘海域から20分程でこちらに到着する。

 

「アル、やはりどう見ても少女だな、俺よりも年齢は皆低いように見える」

宗介は耳に直接取り付けている超小型無線機でアルに問いかける。砂浜まで来た彼女ら6人を見て、若干驚きながらアルにそう言った。

 

「はい、ですが、先ほどの戦闘は通常の人間では考えられない様な動き、戦闘力を擁していました。妖精たちの話から、彼女らが付喪神である可能性が高いと判断したします」

確かに彼女らは背中に背負っているバックパックの様な武装群以外は何も持っていないのだが、明らかに、人間の動きでは不可能なスピードと戦闘力を持っている様だった。

 

「アレか、過去の没した艦などが、付喪神として顕現するという奴だな……にしてもなぜ少女の姿なのだ?」

 

「わかりかねますが、船は昔から女方だという風習があります。……来ましたね」

アルが説明している途中だったが、彼女らは浜に上がって来るのが見えた。

 

 

「寄港のお許しを頂きましてありがとうございます。私は日本国横須賀鎮守府所属、トラック鎮守府駐留、第六偵察部隊、旗艦神通と申します」

宗介と年は同じか若干下の凛とした佇まいの白いハチマキが印象的な少女がお礼と自己紹介をしながら深く頭を下げた。

無線で宗介と通話した少女である。

 

「この島……メリダ島の責任者相良宗介。貴官らを歓迎する。早速だが負傷者の手当ての手配をしている。こちらの誘導に従ってほしい」

宗介も簡単な挨拶と負傷者の救護を優先させる。

彼女らは、神通と名乗る少女と同じくらいの年恰好の少女一人とそれより少し若い少女一人、そして、小学生高学年程度の姿がよく似た少女が三人、そのうちの一人が明らかに虫の息で、二人の少女が支えている。

 

「重ね重ねありがとうございます。なんとお礼を申したらよいのか」

 

「では、此方の車に乗ってくれ」

宗介は一般的な軍の大型4輪自動車に彼女らを促す。

 

宗介は負傷した少女を乗せるため手を貸そうとしたのだが

「清霜にさわるな!」

一人の少女が威嚇するような目を宗介に向ける。

 

「朝霜っ!」

神通と同じ年恰好の少女が宗介に威嚇した子を叱る。

 

「わかった。ゆっくり後ろに乗せてあげろ」

宗介は手を下げそう言って運転席に座る。

 

背中に背負った装備を荷台部分に乗せた後、運転席の宗介の横には神通そして、同じ年恰好の少女、川内、後部座席に彼女らより若干年若く見える秋月、荷台部分に負傷した清霜に足枕をしている早霜、そして、手を握る朝霜と小学生高学年に見える少女達だ。

 

「その、助けて頂いてありがとうございます……失礼ですが、あの、あなたは日本国の方ではないのですか?軍の方の様な言葉遣いもされていますし、軍の方ではないのですか?それにしても相当お若いようにお見受けいたしますが……」

 

「一応日本人らしいが、日本国の人間ではない。かと言って他国のスパイなどではない。身の潔白を明かすような物は一切ないが……逆に聞くが君たちは?俺より若いように見えるが」

 

「……そうなんですか、いえ、詮索するような真似をしてすみません。助けて頂いたのに…………その…私たちは『艦娘』です。ご存じないのでしょうか?」

神通は謝りながら下向き、躊躇するように自分たちの存在の名称を話す。

宗介はその単語を知らない。しかしこう話していると普通の少女のように見える彼女らは、アルの予想通り妖精が言う付喪神として、深海の悪鬼と戦う存在なのかもしれないという思いに至っていた。

 

 

「ふむ、艦娘?……取り合えず着いた」

宗介は入口が半地下になっている外来VIP用の施設の前に車を止める。

メリダ島の設備は監視衛星からも、見つからない様に地上の設備はほぼ無い。すべて地下にあるのだ。この施設は基地からも離れており、メリダ島最終決戦でも殆どダメージが無かった施設である。

 

 

「提督~、入渠の準備は済んだ」

すると40㎝程の妖精が2~3人入口で待っていた。

 

「入渠とはなんだ?医療設備ではないのか?」

宗介は治療の準備をするように言いつけていたのだが……

 

「うん、その子たちは専用のお風呂で直す」

 

「え!?入渠施設があるのですか!!ああ、なんて事でしょう、これでこの子も助かります」

神通は妖精達の話を聞いて、手を合わせ神にお祈りをするポーズを取っていた。

車に乗っていた艦娘達は顔が明るくなる。

 

「話が見えん。俺にも分かるように説明してくれ」

宗介は一人だけ会話に付いていけない様だった。

 

「提督、その子たちは付喪神だから、専用のお風呂で傷が治るの、だから、ここの施設に大浴場を作ったの」

 

「うむ、解せないが、君たちはその入渠施設の大浴場とやらでケガが治るんだな?この重傷の子もか?」

宗介は妖精の話を聞き、首を傾げながら神通に聞き直す。

 

「そうです!……という事はまごう事無きあなたは提督なのですね!!……すみませんが早速私共も、入渠施設を利用させてもらってよろしいでしょうか」

 

「了承する。着替えや部屋は適当に使ってくれ、妖精たちが綺麗にしてくれているはずだ」

宗介はそう言って施設に入るように言い、後は妖精達に任せた。

 

 

 

宗介は彼女らが入渠施設、いや風呂に入っている間、この宿泊施設の会議室で待つことにする。その間、妖精から色々と聞くのだが、イマイチ要領が得ない。

 

「アル、この世界は元いた世界とは随分仕組みが違うようだな」

宗介は耳の小型通信機でアルと会話をしていた。

 

「軍曹……いえ、相良提督も、もう少し頭を柔らかくした方がいいのでは」

 

「ほっとけ」

 

「彼女らが背負っていた装備だが……何か分かったか?」

車の荷台に乗せていた彼女らの装備を駐車場施設に置き、簡単に調査をしていた。

 

「はい、艦砲や電探などの装備が満載された、一種の武装ユニットです。コンパクトでありながら、高威力を発揮するようです。妖精達にも調べてもらいましたが……第2次世界大戦時の軍艦装備を模しているようです」

 

「ふむ、彼女らは自らを艦娘と名乗ったが、彼女らは第2次世界大戦の日本の軍艦だったという事か?」

宗介は淡々とアルと会話を進めていく。普通驚くところなのだろうが、既に妖精などという存在が現実として存在し、しかも寝屋を共にしている状況だ。今さらその程度で驚きはしないのだ。

 

「はい、神通、清霜、朝霜と名乗っておりましたが、全て、WW2で稼働し沈んだ艦船の名と符合します」

 

「神通とか言ったか?彼女が入渠施設がある事で、俺が提督だと言った。それは何故か?分からない事だらけだな」

 

「彼女らに直接聞く方が早いですね」

 

「だな」

 

 

 

 

彼女らが大浴場(入渠施設)に入ってから2時間後。

 

少女ら5人が会議室に入って来た。

彼方此方と傷だらけだった体は綺麗になり、着ていた服も新品同様になっていた。

彼女ら専用の戦闘服は、彼女ら同様、入渠施設の洗濯桶に漬けておくだけで直るらしい。

清霜と呼ばれる少女は深手のため、もう少し時間がかかる。

 

宗介は、便利なものだなと思う。普通の人間が彼女らと同様のケガを直すのに1週間程度かかるだろう。2時間程度でこのようには直らない。

 

改めてお互い挨拶と自己紹介をかわす。

「このメリダ島の責任者相良宗介だ。改めて貴官達を歓迎する」

 

「 私は日本国横須賀鎮守府所属、トラック鎮守府駐留、川内型軽巡洋艦2番艦、神通です」

 

「同じく、川内型軽巡洋艦1番艦、川内よ」

 

「秋月型駆逐艦1番艦、秋月です」

 

「夕雲型駆逐艦16番艦、朝霜だ。さっきは怒鳴って悪かったな」

 

「同じく、夕雲型駆逐艦17番艦、早霜です。今、まだ入渠施設に残っているのは、19番艦、清霜

、妹を助けてもらってありがとう」

 

 

「改めて、お礼申し上げます。相良提督」

神通は頭を下げこう言った。

 

 

「いやいい、ところで、君たちは本当に、過去の軍艦の付喪神なのか?」

宗介は確認のため、聞きにくい事もズバリ聞く。

 

「はい……思いや思念が形になったものだそうです。それが私たち艦娘なんです」

神通はそう答える。

 

「ところで、何故俺の事を提督と?」

神通が宗介に提督と言った理由を聞く。

 

そして、神通は語りだす。

「利用可能な入渠施設、そして妖精さん達が活発に活動し続けています。これは私たち艦娘を指揮できる貴重な能力を有している証拠です。そしてここは多分、鎮守府です。相良提督はどこの国にも属していないとおっしゃってますが、まぎれもなく、一個勢力となりえる存在なのです」

 

「うむ」

宗介は色々と新しい事実が出てきそうなため話を打ち切り、彼女らに食事の提案をする。

朝霜が話の途中で「腹減った」と小声で漏らしていたのだ。

どうやら、人間と同じものを食べるとの事だ。

食事と言っても宗介たちが出せるのは、料理ではなく、保存食とレトルト食品なのだが。

 

宗介はその間席を外しアルに一応、彼女らのこれまでの話を吟味し安全かどうかの確認をし、此方の状況を話すことにした。

 

改めて、年長者だろう神通と川内と話し合いの場を設け、他の艦娘達にはこの施設の部屋をあてがい、施設からの外出は禁止と条件はつけるが、施設内は自由に動いてもいいように言う。 一応監視カメラでの監視はアルの方で行ってはいる状況だ。

 

 

そして、宗介、神通、川内は会議室で話し合いを始めた。

アルはこの会議の場を監視カメラ及び盗聴で確認をしている。

 

神通、川内は軍規に関わること以外はほぼ話してくれた。

宗介が、ここに似たよその世界から来たことには、驚きの顔をしていたが、まれに、提督の能力を有する者に、過去や別世界の記憶を持った人間が現れるそうなのだが、丸々、転移したケースは聞いたことが無いそうだ。

 

 

大まかに話す。

現在この世界では深海棲艦と呼ばれる悪鬼が世界中の海域からどこともなく現れ、ほぼ、全世界の海域が支配されているとの事だ。

悪鬼共の目的は分からないが、人間の国、街を焼き払い。壊滅した国は幾つもあるらしいのだ。

 

日本は第2次世界大戦で敗北後、アメリカの管理下で国の運営を余儀なくされていたが、1950年頃それが一変した。

深海棲艦が世界中の海域に現れ出したからだ。

 

最初に確認されたのが、第2次世界大戦後、大凡1950年までにアメリカが頻繁に核実験を行っていたビキニ環礁地帯だった。ここでは多くの艦船が実験のために沈んだ場所でもある。

 

最初はアメリカも抵抗していたのだが、悪鬼共はほぼ人サイズでありながら、機動力も高くとてつもない威力の攻撃を繰り出し、アメリカの太平洋艦隊はほぼ壊滅状態に陥った。

さらに、アメリカ本土周辺にも、深海棲艦が現れ、アメリカは太平洋から撤退を余儀なくされた。

 

そして、世界各国に深海棲艦が現れ、街を焼き、国を崩壊させ、無線妨害を行い各国の孤立を促す。

特に悪鬼共が狙っていたのは、核施設だと言われている。

アメリカが最も力を入れていた事業であった。アメリカの経済はガタガタになる。

 

そんな中、特殊な能力を持つ人間と妖精が現れ。そして、悪鬼共に抵抗できる唯一の手段、艦娘が登場したのだ。それによって、海域を盛り返した国もあった。それが現在の日本国である。

アメリカが事実上日本から手を引き、独立国として発展していったそうだ。艦娘に関する一大軍事プロジェクトを立ち上げ、この10年で各国の応援要請に答える事ができるまで盛り返して来ていたのだ。

 

その最南端基地がインドネシアの北部トラック泊地鎮守府だったのだが、深海棲艦の一斉攻撃により、壊滅状態となった。最後にトラック鎮守府の提督が艦娘達ヘ本国撤退命令を出す。そして基地は自爆したのだ。そして散り散りになった艦娘達は、一路本国に戻らんとしたが、激しい追撃にあい途中で轟沈させられた艦娘もいたそうだ。

神通たちは偵察任務により、出ていた際の出来事で、泊地付近に戻った際には、既に撤退命令が下され、基地は燃え、仲間もやられていたそうだ。

神通達は命からがら本国に撤退していったのだが、何度も敵の追撃をかわしながら、ようやくこの近辺にまで撤退したのだが、そこで敵に大群に襲われていたところを宗介が救援したとの事だった。

 

途中で拾った無線回線ではフィリピンから台湾に向けての日本の基地もほぼ壊滅状態になっていたそうだ。それでこのルートを通って来たのだ。

この状況だと、硫黄島から小笠原諸島に掛けても、深海棲艦の支配下に既に入っているだろう。

 

 

現在は西暦1965年

1950年までの歴史はほぼ宗介が知っている知識と同じであった。

道理で、人工衛星も長距離通信やレーザー通信もできないはずだった。

どうやら、軍事レベルも1950年代に止まっていそうだ。

ほぼ、艦娘に依存している状態なのだ。

 

また、神通達が襲っていた奇怪な生体兵器は深海棲艦でも、下っ端らしく、強力な深海棲艦程、人型、女性の姿を模しているそうだ。

 

そして、2時間もの話合いの最後の方では

「相良提督、この島からの砲撃で、ト級やらハ級の深海棲艦をあっという間に倒していたけど、10キロ以上離れているのにあの精密射撃どうやった?でも、島に来たら、砲台とかないし、戦艦級の艦娘がいるわけでもなさそうだし、そもそも提督って艦娘知らなかったでしょ」

川内はそんな質問をしてきた。

 

「あれは相棒からの精密砲撃だ」

 

「提督の相棒って何?人間じゃないの?」

 

「姉さん!あまり詮索してはいけません。軍事機密は何処にでもあるものです。提督は日本国の人ではないのですから……すみません、相良提督、姉が無礼な事を聞きまして……」

神通は川内を叱りつけ、宗介に謝る。

 

「あっ、つい日本語が通じるし、見た目私と変わんないから、すみませんでした。相良提督」

川内はそう言って宗介に謝った。

 

 

「では、周囲状況が分かるまで、ここに滞在をして行くといい。此処の施設は自由に使ってもらっていい。但し、外出は許可できない。理由は二つ、君たちの素性は信じるに値するが、完全には信用は出来かねる。それと、不意に外に出ると、敵の偵察などにばれる恐れがある。すまないが従ってくれ。だが、なるべく君らの要求は聞くつもりだ。困った事があったらここに居る寮長に知らせてくれ。そのかわり、此方も分からないことだらけだ、色々教えてもらうと助かる」

宗介はそう言って今日の話し合いを終わりを告げる。

寮長とは個々の施設の管理を任せた妖精の事だ。

 

「了解しました。ご好意に感謝します」

「ありがとうございました」

神通と川内はそう言って深くお辞儀をし会議室を後しようと扉を引くと、朝霜と早霜、秋月が扉から崩れる様に顔を出す。

 

「あんたら、聞いてたの?」

 

「てへへっ、川内姉!すげーんだぜここ!ベットフカフカだし、水もうまいし、部屋に冷蔵庫ついてるんだぜ!!」

「清霜も、治ったみたいなんだけど、もう寝たから報告しに」

「あの~、こんなにおいしいお菓子をもらってもいいのでしょうか?」

朝霜、早霜、秋月はそんな事を言っていた。

 

「あなた達、もう部屋に戻りますよ」

神通は皆にそう言った。

 

 

 

その様子を見て宗介は思う。

艦娘といっても、日本の普通の子供たちとそうかわらないじゃないかと……

 

 




まだ、テッサ出ません><

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