『TDD-1建造』相良宗介、軍曹から提督へ   作:ローファイト

12 / 20
感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。非常に助かります。

ついに……ついに来た!!
これが書きたくて書き出したのに何故か十二話もかかりました><


第十二話 TDD-1 トゥアハー・デ・ダナン抜錨

宗介は微弱信号をキャッチし、小島に取り残されていた艦娘の存在を確認。救出すべく向かったのだが、予想通り、敵の罠であった。

予想以上の物量で包囲網を築かれつつある中、レーバテインを囮とし、要救助者である摩耶と鳥海を載せたペイブ・メア輸送ヘリをこの海域から離脱させる算段をする。

 

レーバテインは南から迫る艦載機を十分に引き付けてから、島から北へ海上に飛び出す。

「アル行くぞ、精々踊るとするか」

 

「敵が驚くぐらい派手に行きましょう」

 

 

 

200機程の艦載機が追い付いてくる。

レーバテインはボクサー散弾砲を構え、アルが動かすサブアームは小型のガトリング砲を構える。

「行くぞ!」

 

「了解」

 

レーバテインは北に進路を取りながら、次々と、艦載機を落としていくが、しばらくすると南西からも艦載機が迫り、そして、東、北からも、無数の蟻が餌を見つけ、たかるかのように……レーバテインに集まってくる。

 

それでもレーバテインは艦載機の爆雷や魚雷を避けながら、次々と撃墜していく。

 

「提督悪い知らせです」

 

「なんだ?」

 

「敵に完全に囲まれました。編成は空母を主体とする機動部隊の様です。目的は艦載機による攻撃により、我々の疲弊を待つ作戦だと思われます。向こうは補給艦まで用意しているようです」

 

「問題ない」

 

「まだ、あります。敵包囲網、数は228隻……さらに、別に潜水級までいるようです。我々を足元から崩しにかかりました」

 

「問題ない」

 

「何隻だろうが、我々のやる事は一緒です。しかし、要救助者を乗せたぺイブ・メアの脱出ルートが確保出来るまで……ですね」

 

「肯定だ。アル、分かって来たじゃないか……」

 

「何を今さら、もう組んでどのくらい経つと思っているのですか?今はあえてそう呼びましょう『軍曹』口調が昔に戻ってますよ」

 

「肯定だ。やはり、俺にはこれが一番しっくりくる様だ」

 

「口調ですか?それとも最前線で戦う事ですか?提督など柄でもないことこの上ないですね相良軍曹」

 

「両方だ!お前がやれといったのではないか………下の潜水級は任せた」

 

「了解、上空に強力な艦載機がきます、なんて禍々しい姿なんでしょう。上は任せました」

 

「了解だ!」

 

ピンチな状態だが、この二人は軽口を叩きながら、的確に艦載機、さらに迫る魚雷と潜水級を処理していった。

 

 

 

 

 

 

 

同時刻メリダ島鎮守府発令所では……

通信兵の妖精が報告する。

「相良提督は現地にて、鳥海、摩耶、要救助者を確保。但し摩耶は重傷、自力での行動は出来ないとの事」

 

「鳥海さんともう一人は摩耶さんだったんですね」

神通は妖精の報告を聞いていた。

 

「敵艦影複数確認……しかし、現状では、先制離脱可能だということです」

 

「やはり、相良提督の見立て通りでしたね。伏兵がいたようです」

神通は先制離脱可能と知り、ホッとする。

 

 

 

しかし……次に来た報告は

「現地小島から確認し西、北東に大規模艦隊が出現、現地小島を中心に包囲網を築きつつあるということです」

 

「………大規模!」

 

「敵空母機動艦隊の大編成を確認、正規空母だけでも、36隻確認。内空母棲鬼6確認、軽空母、54、空母合計90隻、戦艦級12 重巡級12、軽巡級42、駆逐級42、補給級24隻、姫、鬼内4隻、全部で確認228隻、機動部隊を編制しております」

 

「………て、提督は!」

 

「相良提督はレーバテインで囮を敢行、ペイブ・メア輸送ヘリと要救助者の離脱を図るとの事、さらに援軍無用と、メリダ島防衛を厳守せよとの事です」

 

「ああ!何てこと!姉さん……どうしたら……このままだと提督が……」

神通は宗介が自ら危険に飛び込む真似をしていることを知り、また、敵の数が尋常でない事に動揺していた。

 

 

「神通落ち着いて、相良提督が援軍無用って言っているのだから何とか切り抜けてくるわ……こちらもきな臭いわよ。メリダ島周囲200㎞に敵艦隊が集まりだしている。提督が帰ってくるところを守らないと……」

川内は神通を落ち着かせようとさせる。

 

「………はい」

 

通信兵がさらにメリダ島周囲に展開する敵情報を報告する。

「敵はメリダ島周囲を200㎞付近囲む様相 こちらは戦艦級30、重巡級30、雷巡級30、軽巡級30、駆逐級30、空母級12、軽空母級24、うち姫・鬼級8隻確認。186隻打撃部隊を編成しております。

 

 

「姉さん……こ……これは、トラック泊地を襲撃した敵の超大規模編成と同じ……」

 

「くっ……合計414隻…………やばいってもんじゃない」

 

神通達がトラック泊地から逃れ、メリダ島にたどり着くまえの話だ。

太平洋南部の敵深海棲艦の反抗作戦を阻止するため、日本軍は、トラック泊地に日本に所属する艦娘の3分の1にあたる66隻を派遣し、防衛網を築こうとしたのだが、トラック泊地が防衛網を築く前に、この超大規模編成がトラック泊地に波状攻撃を掛けてきたのだ。

実に6倍差の戦力の差で押し切られ、トラック泊地は自爆へと追いやられたのだ。

その後、深海棲艦は414隻の超大規模編成を分散させ、日本の南海域の拠点を一気に叩き、日本近郊まで迫ったのだ。

 

「…………」

神通は無言で発令所を出て行こうとする。

 

「神通あんた、まさか考え無しにまた一人で出撃するつもりじゃないよね」

川内は、神通の腕を掴む。

 

「……私の新艤装なら!!何とかなるかもしれない!!このままだと、ここが…みんなが……相良提督が!!」

神通は涙ぐみながらそう叫ぶ。

 

 

 

突如として発令所のスピーカーから澄み切った落ち着いた女性の声が響く。

 

「……司令官代行、どこに行かれるのですか?」

発令所の大画面が急に切り替わり人影を映しだす。

 

神通と川内はそれに気づき画面のその人物を見るが、誰だかわからない。

 

その女性は金属で出来た椅子に両足を右向きにそろえ座り、落ち着いた雰囲気を漂わしていた。

カーキ色のミスリル女性将校用の制服を着こなし、金属で出来た手すりに、両腕を乗せ、大きな目は強い意思に満ち、そしてアッシュブロンドの髪を後ろで束ね大きく三つ編みは右肩から前に垂らし藍色のリボンで結んでいる。

 

「え?………テッサ?……テッサなの?」

川内はその女性がテッサ(ダナン)だと気が付くのに数秒を要した。

余りにも雰囲気が違うからだ。

 

テッサは軽く頷き

「……私が出撃します。司令官代行、許可を……」

神通に向かって出撃許可を求める。

 

「テ…テッサさん……何を……艤装もなしに危険です!それにそこは何処ですか?」

神通も川内同様、テッサの豹変ぶりに驚きながらも、テッサの発言に注意をする。

 

「ダーナの内部です。私の艤装です……出撃の許可を……」

 

「艤装が完成したの?でも内部って?」

川内はテッサの発言に混乱する。

 

「テッサさん、訓練もなしに、実戦など……轟沈されに行くようなものです!こちらに(発令所)戻って来てください」

 

「訓練?実戦?……私とダーナは、数々の実践を経験してきました。今さら訓練など不要……私とダーナなら……この島を包囲している敵をすべて駆逐し、提督の援助に向かえましょう」

テッサはそう断言した。その目は強い意志を宿し、自信に満ちていた。

 

「テッサ!!何言ってるの……たった一隻で何が出来るの、しかも奇襲専門の潜水艦で!!やめなさい!!」

川内は無謀にもたった一隻で出撃しようとするテッサを止めるために、あえて厳しく叱責する。

 

しかし……テッサの目をじっと見た神通は……

「分かりました……許可します……但し、危険と思ったら直ちに引き返してください。少しでも被弾した場合もおなじです。これが条件です」

 

「神通!!何言ってるの!!やめさせて!!」

 

「司令官代行、許可に感謝します」

テッサはそう言って、座ったままお辞儀をし通信を切断した。

 

「姉さん……テッサさんの豹変もそうなのですが……あの目は……間違いなく歴戦の艦長の目です。危なくなったら戻ってきてもらうだけです。それに、アルさんと相良提督が言ってたではありませんか、一隻で戦場を一変させる程の強力な潜水艦だと……」

 

「わかったわ……危なくなったら、首根っこひっ捕まえてでも、戻させるんだから」

川内はテッサの事が心配なのだ。だからああいう物言いをしたのだ。

 

 

 

 

メリダ島地下潜水艦ドックでは……全長218mに及ぶ巨大な潜水艦が占拠していた。

 

その潜水艦の薄暗い発令所内で一人の少女は金属で出来た椅子に座り、前方の大きなディスプレイを見据える。

「ダーナ、出撃許可が下りました。さあ、行きましょうか」

 

「イエス・マム」

発令所内のスピーカーから無機質な女性の声が響く。

そう、テッサいやTDD-1艦娘のトゥアハー・デ・ダナンの艤装であるダーナが答えたのだ。

この巨大な潜水艦こそがテッサの艤装ダーナ、そして姿、形至る所まで、全てあのTDD-1トゥアハー・デ・ダナンと同じサイズに同じデザインとなっている。

 

そして、カーキ色の女性将校用の制服を纏い落ち着い雰囲気で指示を出すダナン(テッサ)の姿、常に戦場に勝利し続けた歴戦の勇士テレサ・テスタロッサ大佐の、これこそが真の姿なのだ。

 

「TDD-1、トゥアハー・デ・ダナン抜錨します」

 

「イエス・マム」

 

そして、その巨大な躯体は海の中へと消えていく……





敵多すぎたかな><

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。