園子の夢~
イネスからの帰り道。四人の仲間はいつもの談笑に興じていた。
「それにしても、英雄王さんがそのっちの家に住んでいるとはね。心配だわ。」
「王たるこの我が他者の手を借りるなどあり得ん。むしろこの我が住まうことを光栄に思うがいい。」
「はっは〜。ありがたきしあわせ〜?」
「英雄王さん、変に威張らない!そして、そのっちはそれに乗らない!」
「あと、何でクエスチョン的な感じで答えたんだ?」
「えへへ〜。何でだろうね〜。」
三人は冗談も交えながら笑顔を絶やさなかった。
「いやー、やっぱ毎日がこれくらい楽しいと良いんだけどな。」
「これからもそうなるわよ、銀。」
「うん!そうだね〜。」
「ほぅ。このような余興まだが続くというのか。良いぞ。この我が飽きぬ限り、我の前でその滑稽さを見せるがいい。」
「何が滑稽よ。あなただって一緒にやっているじゃない。あなたこそ滑稽なのではないかしら。」
「馬鹿が。この我など、何も滑稽ではないわ!余興を行うのは道化の務め。それを笑い飛ばすのが王の務めだ。王たるこの我が滑稽などあり得ぬわ!」
「本当にそうかしら。あなたの主張に全く証拠がないわ!」
須美とギルガメッシュはまた喧嘩を始める。須美は根拠の薄い所、矛盾が生じている主張を的確に攻めていく。対してギルガメッシュは自身の経験、自信、カリスマを以て須美に対抗している。
一見すれば、かたや真実を伝えているつもりがそれを否定されて嘘を主張されイラつき、かたや根拠も何もない下手をすればただの子供の駄々にしか見えない主張をされ是正しようと躍起になる。
しかし現実は僅かに異なる。ギルガメッシュは己に反抗する現代の人間などいないだろうとたかをくぐっていた分、須美の性格は新鮮なものだった。
対して須美は遥か昔の王が何を思い、何を知り、何を考えていたかを知るいい機会となり、自信の経験を大きく跳ね上げる興味のあるものだった。
故にその争いにいがみ合いはない。何故ならそれが自身の損にはならないとお互いが知っているからだ。
「はぁ、まあいいわ。それが英雄王さんの主張なら。」
「ああ、我も疲れた。貴様を諭すのにこれ程の心労を煩わねばならんとはな。だが、我が余興に参加していたのは事実だ。我が参加してこその醍醐味もあった故にな。」
言葉通り、ギルガメッシュは数多くの“余興”に参加していた。
ファションショー、イネスでの散策を始めとする、水泳、ゲームセンター、カフェ、うどん屋、クリスマスプレゼントの購入などなど様々なイベントに一緒になって楽しんだ。
水泳では圧倒的を差を付けて圧勝した上に「なんだお前ら。この我はナメクジの歩きの程でしか進んでおらんぞ。お前らはナメクジより遅いのか?ハッハッハッ!」と言い、
カフェでは客として四六時中居座り、困らせるだけのために園子を驚かせ、須美に早口で大量の注文をし、銀には「お持ち帰りはお前だ!」と言って須美を怒らせていた。それでもギルガメッシュは三人のリアクションの愉悦のあまり大爆笑をし続けていた。
このようにしてかの英雄王は自身の愉悦を満たしていったのだ。
そして、
毎日聞いてきた昔ながらの音楽が聞こえる。夕日も沈み始める。別れの時がやってきた。
「おっと、私だけ違う道か。」
須美、園子、そしてギルガメッシュが銀と異なる道を進む。銀だけが別方向に家があるのだ。
そして間を開けて言う。
「それじゃ、またね。」
銀は背中を向けて去っていく。
須美は不安になっていく。もう会えないのでは、という直感がよぎる。
そこからは泥沼となる。
不安は際限なく広がっていき、ここで引き止めねばと腕を伸ばそうとするが、
「何を言うかと思えば、そのようなことか。よもやこの程度で帰すと思うか?今日はお前の寝泊まりする場所で宴会を開くぞ!」
英雄王が銀を引き留める。その目は確かにこの場を見ていたが、同時に虹の先を見ていたかのようだった。
「おお〜いいね〜。なら私はお菓子を買ってくる〜。ワッシーはどうする?」
「えっ?わ、わたしは、カードゲームとか持っていこうかしら。」
「ちょっ、待てよ。何で話を勝手に進めてるんだよ。」
「ほぅ、ならばこのまま何もせず帰るというのか!」
「いや、別にそういう意味じゃなくてさ。」
「ならば結構。園子、須美。お前らは己の役目を果たしてこい!」
「了解!」
「了解〜。」
英雄王の号令に須美と園子は慌てることなくすんなりと応答したのだ。
二人が自身の役目を果たしている最中、ギルガメッシュは銀と一足早く、家に向かったのだ。
「はぁ、またやらかしたの。英雄王さん。」
「でも、すごく綺麗だね〜、ワッシー。」
須美と園子が帰ってみれば、銀は外でぶらぶらしていた。
「銀、どうしたの?」
「ギルっちが外で待ってろだってさ。合図をするまで誰も入れるな、だって。」
「なんだか、嫌な予感がするわね。」
自身の楽しみのためなら何でもするギルガメッシュ。それを無監督で放置すれば何が起きるかわかったものではない。
「これでどうやってう、うるくという国は繁栄したのかしら。」
神秘の濃い遥か昔の神代の時代、ウルクは存在していた。神々が未だに圧倒的権力を持ち、人間を抑圧していた時代。それでもウルクの人々は目覚ましい発展を遂げていたのだ。その先導者がかの英雄王だと言うが。
「ふむ、どうやら揃っているようだな。この我が直にプロデュースした新たなる模様替え、その目に焼き付けるがいい。」
英雄王は家の扉をいきなりを開け、来訪を許可した。三人は中に入ろうとしたが、扉の目の前で異変に気づく。
アーチャーの能力だろうか、見える景色はあまりなく、かろうじて下駄箱の床が見えるのみ。恐れながらもこのような状況下で三人の勇者は一歩、中に踏み込んだ。
「わぁ~。」
「はぁ、またやったのね。」
「な、なんだこれ?私の家が園子のみたいになってるぞ!」
須美はあきれながらも笑顔をこぼし、園子は純粋に感動し、銀はその変化に驚愕をあらわにしている。
そこには、金、ダイヤ、プラチナ、ラピス、ルビー、サファイア、そして数多のシルバーがそこにはあった。
しかしその光の調和は前回、園子の家の時と違い、花園のような色鮮やかさはない。
しかし、そこには数多のシルバーが生み出す一点の曇りもない純粋な白、まさしく曲がることのない極限の光がそこにあった。
その光はあまりに眩しく、味気のないものだが、目を背けたいとは不思議と思わず、むしろ見続けてみたいと思うものであった。
光は三人の少女が行く道のりをあらわしているようで、その先にある「希望」を体現しているようでもあった。
「なに、これからビックイベントを行うのだ。これ程の仕込みは当然であろう。」
英雄王は口元に笑みを浮かべ、ビックイベント、お泊り会の始まりを宣言したのだ。
なお、この準備において実質的準備を担ったのは銀の家族であった。どのような手段かはわからないが、英雄王が銀の両親を説得し、協力させたという。また、銀の父親はギルガメッシュに連れ出され、飲み屋に連れて行かれたという。ギルガメッシュは店の酒はほとんど飲まず、自身の蔵から取り出した美酒を楽しんだようだが、その際の問答によって銀の父親の寿命は30年縮んだと思わせたという。
だが、それでも十分に楽しいイベントとなったのは間違いない。
最後の休暇はここで終わる。
「...」
須美は黙々と黒板を消す。本来黒板係は園子の仕事だが、きれい好きの須美は黒板が「まだ足りない」と叫んでいるように感じた。
教室の扉が開く。須美はかなり早くに学校に来ており、まだ誰も来る時間ではなく、誰が来たのかと振り向けば。
「ここが勇者さんの教室ですか。思った以上に狭いですね。あとこの壁の色は塗った...いやもとの材質がそういう色をしているんですね。」
立っていたのは神樹館の制服を着用し、ランドセルを背負った少年。ここまでならただの同級生なのかもしれないが、着込み方が他のそれと一線を画し圧倒的経験を物語っている。そしてなによりその少年は金髪であった。
「お姉さん。という呼び方は同級生だからちがうか。須美さん、おはようございます。」
「あなたは...だれかしら?」
「忘れたんですか?僕はあらゆる英雄の頂点に位置する英雄王ギルガメッシュですよ。」
「えっ.........ええええええ!!!」
曰く、若返りの薬があるらしく、それによって歳を須美たちと同じぐらいにしたらしい。なお、精神も若返るらしく、肉体よりさらに幼い年齢になっているらしい。
だが、その日は波乱の幕開けであった。
とりあえず、安芸先生は転校生ということにし仮の書類を作ることによって矛盾をなくす。勇者の存在とは違い、
幸い、神樹館は大赦と密接に繋がっているため書類は容易の準備ができ、一人の少年の新たな学校生活は幸先のいいスタートをきったのだ。
子供ギルガメッシュ改め、子ギルは様々なことに首をつっこんでいった。
新一年生に紙芝居をするために、自身の蔵から園子が夢に見た国防仮面の装備によく似た宝具を貸し出し、
須美と一緒に遠足の現地偵察に向かい、模写や散策を行ったり、
そして当然のように三人の少女と一人の子供は毎日を過ごしたのだ。
それは耀く日常の断片。
されど、変化はいつか訪れる。
子ギルがでてしまった。
わすゆが小学生がメインの登場人物である以上、回避不可能な現象。
どうなるのか?どうもならないのか?
超特急で投稿をしなければいけないので、ここで。
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最後に
この小説を読んでくださってありがとうございます。できればこの小説があなたの糧になればと思います。
ではまた次。
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