強さの次元が違うんだが、一体どうやって過ごそうか 作:黄金聖闘士
「お前らは武器だ。武器に意志なんかいらねえんだよ」
「そんな、私たちには意志も、心だってある」
「うるせえ知るかそんな事。なんか変な考えを起こされても迷惑だからな。魂に直接教えてやる」
「そんな、やめて!」
「魂の強制共鳴、発動!」
その言葉と共に、魂が塗りつぶされていくのを感じた。他の三人も、同じ目に合っているのが視界の端で確認できた。何でこんな目に合わなくちゃいけないんだろう。最初に魂を見た時から、こいつとは相いれることがないとずっと思っていた。こんな結末になるくらいなら、他の皆と一緒に逃げだしとけばよかった。
意志を消されてどのくらいが経っただろう。私達は、今でもあいつの良いように使われていた。そんな時、塗りつぶされていた魂に光が差した、
(あれ、おかしいな。何だろうこの光。金色で温かくて、優しい)
その光は、塗りつぶされていた魂を再び自由にしてくれた。その光は、一つの魂から放たれていた。その魂に手を伸ばす。その瞬間、意識が再び戻った。
「ん、ここは…」
目が覚めると、知らない部屋の中に並べられた布団に寝ていた。隣を見ると、他の三人も同じような状態だった。
「あいつの魂反応は、無いけど。なんだろう、この大きな魂の波長は」
すぐ隣の部屋だろうか。そこからあいつと比較にならないほど大きな魂の反応がしていた。興味に駆られて、布団から起き、隣の部屋の扉を開けて覗いてみた。
「うわぁーー」
思わず感嘆の声を上げてしまった。そこには一人の男がソファーで寝ていたのだが、余りにも美しかった。長い金色の髪に整った容姿。女である自分よりも綺麗であると、心から思った。
「ん!?何だ起きたのか」
小さかったが、私の声で起きてしまった。何故か目は開けていない。
「心配したんだぞ。あいつを倒した後に、全員倒れてるもんだからな。まあ無事に目が覚めて何よりだ」
「ま、待って今何ていったの。あいつを倒したって」
「ああ、魂の一片も残さずにな」
「じゃあ、私達はやっと自由になれる」
そう思うと、思わずへたり込んでしまった。あの地獄のような日々からやっと解放されたのだ。安心して、力が抜けてしまった。
「良かった、本当に良かった」
思わず涙が流れてくる。そんな様子に慌てたのか、此方に駆け寄ってきた。
「お、おい、どうしたんだ。俺なんかまずいことしちまったのか」
「ううん、そうじゃないの」
泣いているせいで、上手く言葉にできない。
「マカちゃん、どうしたの」
「おい!何マカを泣かせてるんだ。離れろ」
私が泣いているのに気が付いたのか、隣の部屋から三人が出てきた。この後、誤解を解くのに数十分を費やしてしまった。
「「「ごめんなさい」」」
「分かってくれたんなら、もういいよ」
私が三人に説明をして、ようやく誤解が解けた。今三人は、この人に向かって謝っている。
「まあ、勝手に連れてきちまったこっちにも問題はあるしな。だが、いきなり銃を突き付けられたのにはさすがに驚いた」
「「ううっ」」
リズちゃんはパティちゃんを構えてこちらの部屋に来た。いきなり銃を突きつけられていたのだが、目を開けていないのにどうして分かったんだろう。
「で、これからどうするんだお前ら。もう、あいつも居ないから自由ってことになるんだろうが、行く当てはあるのか」
「それは…」
はっきり言って、行く当てなんかない。あいつの武器として過ごしてきた私たちに、帰る場所など無いのだ。
「行く当てがないんなら、俺の家に来るか。師匠達が用意してくれた家なんだが、何か一人で住むには異様に広いんだよな」
「えっ、いいの」
「俺と一緒に居るのが嫌なら、師匠たちが居るギリシャに連絡を取って、そっちで住めるように取り計らってもらうが。ギリシャだと勝手が違うからな、住みにくいかもしれねえぞ」
「少し、話し合ってもいいかな」
「ああ、いいぞ」
私は、三人と集まって話し合った。
「なあ、どうするんだ。行く当てもないし、だからと言って知らない土地に行くのも気が引けるんだが」
「私は、あの人の家に住みたいかな。ここ日本みたいだし、故郷だから勝手も分かると思うの」
「うししし、私はお姉ちゃんと一緒ならどっちでもいいよ」
「おい、パティ。少しは考えろよ」
「私もこの家に住みたいな。私達を助けてくれた人なんだから、恩も返したいしね」
「まあ、前の職人みたいに悪い奴じゃなさそうだしな。私もそれでいいよ」
「ししし、私もお姉ちゃんと一緒だよ」
「決まりだね」
私が皆を代表して、前に立つ。
「決まりました。この家に四人とも住みたいです。よろしくお願いします」
「ああ、そうか分かったよ。俺は、銀河。星乃銀河だ」
「私はマカ、マカ・アルバーン、これから宜しくね」
「中務椿と言います」
「私はエリザベス・トンプソン、リズって呼んでくれ」
「私はパトリシア・トンプソン。パティって呼ばれてるよ」
「ちなみに私達は姉妹だぜ。私が姉で、パティが妹だ」
「何はともあれ、宜しくな四人とも」
こうして俺と彼女達との同居生活が始まった。