強さの次元が違うんだが、一体どうやって過ごそうか   作:黄金聖闘士

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カーン

「つまり、転入生が近々来る予定だから、その時に一緒に来てくれって事ですか」

 

「そういう事じゃ。すまんのう、こちらの都合に合わせてしもうて」

 

「いえ、良いんです。自分も中途半端な時期に来てしまったと思いますから」

 

 俺は、現在川神学園の学長、川神鉄心と話をしていた。入学の時期に関して、少しずれるという事であった。

 

「それとお主、目をずっと閉じておるが見えぬのか?」

 

 やはりこの目の事について触れられてきた。

 

「いえ、師匠からの命で日常生活を送る間は、目を閉じて過ごすように言われているもので。ああ、安心してください。目を閉じていますが、感覚でどこに何があるのかは分かりますから」

 

「そうなのか、随分変わった修行法じゃのう」

 

 鉄心は、訝しみながらもどうにか納得してくれた。

 

「それでは、また後日に」

 

 それと、この学園特有の決闘システムについての説明を受けた。あまり目立ちたくない俺は、決闘を無暗に申し込まれないために、一日数回までとしてくれるように掛け合った。鉄心は、俺の事をあまり強くないと思ったのか、すんなりとその事について了承してくれた。

 

「やっぱり、小宇宙を感じられる人は居ないんだな」

 

 鉄心の反応を見て、そう確信した。鉄心は、この世界でも指折りの強者である。その鉄心が感じられないのであれば、やはり小宇宙を感じられるものは居ないのだろう。

 

 説明を受けた後、俺は学園内の探索を開始した。事前に学長に許可は得ている。探索中に中庭を見ると、大勢の人だかりがあった。気になりその人だかりに近づいてみる。グラウンドでは、黒髪をポニーテールにした少女と同じく茶髪をポニーテールにした少女が戦っていた。

 

「なるほどな、これが決闘システムってやつか」

 

 傍から見る俺を、辺りにいる連中は不思議そうに見ている。確かに、帽子にマスクあと眼鏡と怪しさ満点な格好なのだが、これにも理由がある。勘弁してほしいものだ。

 

「次で決まるな」

 

 俺の予想通り、黒い髪の少女の方が突撃し勝負は決まった。あの年齢にしては、中々の物である。

 

「おっとまずい、つい見入ってしまった。早く帰らないとな」

 

 ギャラリーが歓声を上げている中、俺は誰にも気づかれないように間を縫って素早く動く。そして、一瞬のうちに校門の外まで出た。ピーチジュースを途中で二本買い、そのうちの一本を飲みながら歩を進める。そして、変態橋に差し掛かった。

 

「ん、何だありゃ?」

 橋の下では、一人の女性と複数の男たちが戦っていた。だがそれは戦いと呼べるようなものではなく、一方的な蹂躙であった。

 

「わずかだが女性の方からコスモを感じる。何て凶暴なコスモなんだ」

 

 その女性のコスモは、荒々しく凶悪で餓えた獣の様であった。

 

「あれ以上はまずいな、止めるか」

 

 俺は橋の下におり、その女性に話しかけた。

 

「おーい、もうやめておけ。それ以上はシャレにならないぞ」

 

「ん、誰だお前は。決闘中に余計な口を挟むな」

 

「ったく」

 

 俺は、満身創痍の男にさらに追撃を加えようとしている彼女の拳との間に割って入った。

 

「なっ、お前死ぬぞ」

 

 その女性は俺から気を感じ取ることが出来なかったのだろう。慌てた様子で拳を引こうとする。だが、拳は止まらず真っすぐに顔面に向かって飛んできた。

 

「燃えろコスモよ、カーン!」

 

 俺はその拳をバルゴの技、カーンによって防いだ。

 

「な、何。私の拳が当たらない」

 

「そのような薄っぺらの拳が、俺に効くとでも思っているのか」

 

 カーンにより攻撃を防ぎ、尚且つ相手を吹き飛ばした。

 

「もうこの辺りでやめておけ、死人が出る前にな」

 

 俺はさっき買った、ピーチジュースを取り出し、彼女にほうった。

 

「これでも飲んで、気を落ち着けろ。それじゃあな」

 

「待て、お前妙な技を使うがいいな、久しぶりに手ごたえのある相手だ。ここで私と決闘しろ」

 

「悪いが興味ない。さっさと帰りたいんだこっちは」

 

 いくら強いとはいえ、まるで狂犬のような彼女の相手をする気にはならなかった。

 

「それじゃあな」

 

「待て」

 

 俺は彼女の制止する声を聴かず、コスモを燃やし一瞬でその場から消えた。

 


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