城の重鎮にはかかわりたくなかったのだが…仕方あるまい。
やはり最新の蒸気機関は国の重鎮により一端の技師程度では見学の許可が取れないらしく技師長のゼボルト殿から国の発明のすべてを担うシド大公の耳に入ったらしく城の客室にて非公式の面談を行うことになってしまった。
面談は2日後、つまりリンドブルム滞在9日目にして国の御大将とかかわることになってしまい、ちなみに拒否権はと聞いてもあると思うかという城からの面談の日程を知らせに宿へときた下級兵士からの目線で黙らされたに等しい。
私が一体何をした!
と嘆いていても仕方ないので、国のお偉いさんにあう為にある程度見形を整えて2日後の会談に挑むことになった。
結果的に言うとそれほど怖い事にはならかったとだけ言っておこう。
城に着くや否や案内された先にオルベルタ様と技師長のゼボルト殿を伴った立派な白い髭が特徴的なシド大公殿下と話し合いとなった。
ビショップ家の調査員としての身分が保障されているので試作品の蒸気機関のエンジンだけの見学であれば可能だとシド大公殿下の寛大なる配慮で可能となったが、かのヒルデガルダ号1号機が作られる前に蒸気機関のエンジンを搭載した小型艇のテスト飛行の運転に付き合うことになってしまった。
まさか蒸気機関エンジンのテスト飛行に付き合わされるとは思ってもみなかった。
面談のさなか蒸気機関のエンジンの構造云々の質問をされたりもしたがトレノでの貴族の道楽に付き合わされて小型艇の運転をしたり(運転を振られたときは無茶ぶりもいいところだと思いもしたがプロの航海士が乗り方について教えてくれたし、乗った時の感覚的にはバイクと似ていた。)した程度だと正直に答えた。
内部構造については専門家でもない私にはさっぱりわからん事だ。
それを聞いて大公殿は深く考えを巡らせるかのように腕を組み厳しい面持ちとなったりもしたがその直後にちょっと思いついたとばかりの勢いで試作品の小型艇のテストパイロットに選ばれてしまうとは人生とはわからないものだ。
素人同然の私になぜとも思い無礼を承知で質問したのだが、シド大公曰く、いずれ飛空艇を市民の間にも浸透させてリンドブルムでの飛空艇技術を世界に広めたいがためにその広告塔ともなるちょうど良い最新鋭の小型艇のパイロットを探していたのだという。
つまりは蒸気機関の新型飛空艇の広告塔になる小型飛空艇を外国で乗りこなす人物が必要になってくるのだ。
しかし、軍の人員ともなる操縦士から常の外国への出張を余儀なくされるこの仕事に貴重な人材を割くことができずにいたためそのちょうど良い人材に私が選ばれたとのことだ。
棚から牡丹餅とはこのことか私は最新鋭の小型飛空艇操縦士として選ばれてしまったのである。
皆さんはどこに行きたいですか?
まぁ…今度行くところはもう決まってしまってるんですがね。