月曜から金曜日までの更新が厳しくなりそうです。
それでも完結まで立ち止まりませんとも!
旅立ち前の一波乱は冒険者にはよくあることかな?
トレノを出る出発の前夜にとても困ったことが起きた。
南ゲートを越えるために発行されるゲートパスが何者かに盗まれてしまったのだ。
侵入された部屋には荒らされた形跡などほとんどなく、ゲートパスを入れていた革製のカード入れをしまっていた鍵付きの机の引き出し、其処のみが丁寧に壊されることなく開錠されているだけの明らかに盗みに慣れたプロの犯行だ。
ただ単に物取り目的に私の住んでいる居住棟に忍び込み金目のものを粗方盗むのではなく明確に狙ってゲートパスを盗んでいったことに嫌な予感を覚えるが取り返さないわけにはいかない。
あれはトット教授が私の身分証明と多数の国を長期間滞在移動する調査員としての大事な特別製の許可証でもあるのだ。
幸いにも手渡された直後の名前を書き入れていない白紙の状態であったなら悪用されたかもしれないが既に名前を記入済みの代物を明確に盗んでいったのは私本人に用件がある可能性が大きい。
おそらくゲートパスを盗っていった盗人はトレノの闇市に逃げ込んだかもしれない盗品や犯罪者がこの町で最後に行きつくのはそこしかないし、盗みを依頼した人物が背後にいたとしても同じことだろう。
犯罪者との取引場所なら怪しまれずに集まれる場所はこのトレノでは決まった場所でしかない。
夜の街の怪しい取引現場は街を巡回する兵に粗方知られているのだから。
トレノの街の闇市は明確な場所が決まっていない。
毎回開催される場所は人知れず関係者のみにわかる形でしか伝わらないし、法によって取り締まるべきものの温床ともいわれる場は関係者の口を重くする。
そうして私が闇市に訪れることができるのも商船の護衛仕事という偽情報に騙された酒場で飲んだくれていた酔っ払い水夫達経由で手に入れた情報があったからこその結果だった。
そうトレノの闇市は多数の商船が街の下にある水路に集まることで開催される巨大な水上マーケットだ。
船ごとに乗っているものも様々だ。非合法薬品や毒、きらびやかな盗品の
下水道を伝って徒歩で来るものや小型船で乗り付けるものいる、変なもので比較的大きな商船の空樽に隠れてくる変わり者もいたりする。
それぞれルートごとに身分もまるわかりだったりするが素性を詮索するのは自身の首を絞めかねないので用注意だ。
私が目指すのは廃材取引現場、ゲートパスなんて足の付きやすい代物はそこでしか扱えやしないし、犯罪者が入り浸るのもそこしかない。
「コソ泥のマスゥが大金を手に入れて…」
「あのヤロゥがうまくヤリがったな!」
「この馬鹿!声がデカいッ!」
道すがらのコソコソとあちこちで集まる深くローブやマントを着た顔を隠した者たちが噂するコソ泥のマスゥなる人物、おそらくは彼がゲートパスを盗っていった者だろう。
大金を手に入れた後の彼の足跡が気になるが(口封じに依頼した人物に始末されるような寝覚めが悪くなる展開はなかったようで安心した)私の目的はゲートパスだ。
首尾よく金銭の取引で応じる人物が依頼者であってほしいがという祈る気持ちとともに廃材取引の現場に到着した。
「こちらまでご足労いただき感謝します」
盗品の販売が主な場所で横合いから話しかけてきたのは2メートル近い体格の焔色というべき髪色の巨漢を伴った白い口髭が生えたフード付きの短い外套を着こんだかすれ声の顔は見えないが初老の男性と思える人物が話しかけてきた。
「貴方様が求めているものはこちらで保管しております」
「話し合いの場所を移しましょうか」
「ここではどこでだれが聞き耳をたたているかわかりませんから」
どうやら今は厄ネタの依頼人についていくしかないようだ。
ここにきて読んでくださる皆様に感謝を!
………いやまだ終わりませんよ?
ちゃんと続きますから!