もらったモノをどうするかはもらった本人が決めるべきだ。くれた相手は別として。
赤い枝分かれした石はキラキラと光る宝石特有の透き通る輝きとは違い植物が石化したかのような印象があった。
白い炎を纏った蜥蜴は顔を上げた時にはすでにおらず、もらってしまった石だけがあの蜥蜴がいたということを証明した。(その日から暖炉を注意深く観察しているが今になっても蜥蜴のような生き物は見つけていない)
さてその件の石だが、直接持ち歩こうにも枝分かれした繊細な部分がかけてしまいそうなことが問題なのであった。
見ている分には見事な枝ぶりの赤い石はとても値が張りそうだしできる事なら欠けることなく保存したいものだがそうもいかない。
石をくれた件の蜥蜴がもし私の知るあの召喚獣だったりしたら、この石は召喚のための交信に必要な重要な道具ということになる。
欠けることなく見事な枝ぶりを保ったまま装飾品《アクセサリー》へと変える技術を生憎ながら私は持っていないのだ。
だが、私と違い知り合いに頼む分には別であった。
トット家の居住棟から出てビショップ家が営む合成屋の店員君のもとを訪れるまでは正直冷や汗ものであった。(スリに前のようにカモにされたら一発で盗られること間違いなしだ。)
慌てた様子の私に店員君は虚を突かれたかのような表情であったが客として訪れた私の手元を見ると納得したかのようにうなずいた。
色々ともらった石について話し合った結果、石の種類は珊瑚であったこと、本来それほど高い価値を持つ石ではないが深い紅色と傷一つついていない見事な枝ぶりが価値を高めていること、これを加工するなら多少は削る必要があることが分かった。
なるべく傷つけることなく装飾品《アクセサリー》に変えたいということを伝えたのだがペンダントやネックレス、指輪などにすると削る事になるといわれたせいで躊躇が生まれたがその時一つひらめいたことがあった。
簪としてなら削らなくてもよいのではないかと。
すぐに簪のデザインを近場のテーブルにあった注文用紙の裏に書いてどういった物か伝えるとできるよと快い返事が来たが、その場合は頭部装備扱いの品物になるし魔法防御はともかく物理防御は期待できないとも言われた。
おそらく簪を装備できるのは私のような髪の長い人だけになるとも言われた。
終盤髪を切る彼女のことや元から短い髪のお嬢さんのことを考えたが、私は故郷に帰ることだけに集中したいので基本かかわることをしないし、何より彼女たちが覚える召喚獣の中に蜥蜴君の名はなかったはずなので今度はためらいなく注文した。
番外編は明日投稿します。
お楽しみに!