ゾイドバトルストーリー異伝 ―機獣達の挽歌―   作:あかいりゅうじ

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 本編『機獣達の挽歌』ストーリー、キャラに関する小話コーナーです。読み飛ばして頂いても、差支えはありません。
 第二回となる今回は、第一章『エウロペ』に関するコラムとなります。


回想碌:機獣達の挽歌 ―『エウロペ』編―

 ―第一章『エウロペ』―

 

 記念すべき第一章目。構想編で述べました通り、『挽歌』のメインコンセプトは公式で描かれなかった時系列・背景設定を拾ってミッシングリンク的な物語を作る、ということにあります。ゾイドファン、バトストファンの方には言及するまでもないでしょうが、第一章は公式ファンブック1の終了時から2開始時の間にある空白期間に焦点を当てました。すなわち、「西方大陸戦争第一次全面会戦に敗北したへリックが、ミューズ森林地帯でゲリラ戦を仕掛け、かろうじて戦線を維持している」というタイミング。アニメ『ZOIDS』直撃世代の筆者ですから、バトストの二次創作においてもライガー系・ウルフ系ゾイドを主役に添えたかった。公式で言及されているミューズの森のゲリラ戦の主力は高速戦闘隊であり、まさにライガー系ゾイドの活躍するうってつけの場であったわけです(余談ですが、この時期にゲリラのコマンドウルフが帝国側に大量に鹵獲され、ライトニングサイクス開発のために解析されたり、レッドコマンドとして帝国の機動陸軍にとりこまれている、とのことです)。

 物語としてはとりわけ工夫した点もない、「凡庸な新人士官が、初めての実戦に四苦八苦するも、なんやかんやあって仲間達に認められ、強敵を倒す」という物。この手の二次創作の常として、序盤は登場するキャラクターの紹介に大きく尺を割かなければならなくなるのですが、本作もその例にもれず、主に主人公ジェイと、彼を取り巻く同僚の人物描写に重きが置かれています。登場人物の大半がバトストには登場しないオリジナルキャラばかりなので、とにかくキャラの描き分けをしようと必死でした。また、『挽歌』の隠れたコンセプトとして、各章ごとにジェイから見てスポットライトの当たるメインキャラ、というのが設定されており、グロック少尉との関係性を取り上げたつもりです。実直でたたき上げのグロックと、迷いの捨てきれない新米士官のジェイ――物語全編を通しても完全に分かり合う事は出来なかったという設定のキャラではありますが、二人が共に戦い、互いに生き残れるようなきっかけとして、説得力がある展開になっていればいいな、と。

 

 

 ―登場キャラクター雑記・『エウロペ』―

 

 

 マクシミリオン・ペガサス

 ジェイ達とかかわるへリック共和国軍上層部の人間であり、面倒くさい指令をジェイ達に持ち込む、本作の狂言回し的な存在でもあります。『エウロペ』編以降も登場する準レギュラー的存在の彼ですが、同じ上官キャラのコンボイと性格的キャラ被りが著しかったために、いまいち没個性的な存在となってしまいました。一方で《ゾイドゴジュラス》に乗る上級士官というのは彼だけの持ち味で、戦闘シーンを盛り上げるのには一役買ってくれた気がします。最強ゾイド《ゴジュラス》の登場は戦場の劣性を傾けるのに十分な説得力があり、ぶっちゃけて言えば話をたたむのに便利だった……(笑)

 ちなみに、外観描写のほとんどない彼ですが、筆者の脳内ではアニメ無印に登場した脇役キャラ・フォード中佐のイメージで描かれています(言うまでもないとは思いますが、『(ジェノブレイカー)包囲網』で活躍したハルフォード中佐ではなく、無印少年編でちょっと出ただけなのに、ゲーム『ゾイドサーガ』シリーズでは何故かプレイアブルキャラとして自軍に入ってる、クルーガー大佐の副官の方です)。

 第四章開始時点でいつの間にか戦死したことになっているペガサス中佐ですが、実は本編中で明確に、彼の最後の戦いを描いています。文章中の視点人物が帝国側のキャラクターだったためにペガサスの存在について言及されていませんが、第三章終盤、レンツ・メルダースの《ジェノブレイカー零式》と激闘を繰り広げた《ゴジュラスMk‐Ⅱ》が、マクシミリオン・ペガサス中佐機でした。もしや、と気づいてくれた方、いるかな……。

 名前の由来は……『遊☆戯☆王』シリーズの登場人物、ペガサス・J・クロフォードの米アニメ版での名前が、マクシミリオン・ペガサス……だったはず(笑)

 

 

 シニアン・レイン

 「そんなキャラ出てたっけ?」という方もいるでしょう。『グラム駐屯地制圧作戦』で《ステルスバイパー》の指揮官として登場した、女性キャラクターです。チョイ役中のチョイ役なんですが、なんで彼女がこの雑記に登場するのかと言うと……実は彼女『ゾイドバトルカードゲーム』のパイロットキャラクターが初出の、れっきとした公式バトストキャラであります。もちろん、愛機は《ステルスバイパー》。

 作中で言及された中尉という階級は、作者独自の設定です。人物設定も一切不明、本作でも会話数は少なめです。なので、とりあえず指揮官らしい冷静沈着な風を装いました。

 

 

 ―登場ゾイド雑記・『エウロペ』編―

 

 

 《シールドライガー》

 ご存知、へリック共和国の主力戦闘ゾイドにして、平成ゾイダーとしては、『元祖主役ライガー系ゾイド』でもあります。本作でも主人公ジェイ・ベックの初代愛機として登場した機体ですが、バトストという世界観設定に合わせて、機体はあくまで量産機、ジェイ以外にも同型機の乗り手が一話の時点で二人もいるという展開に。おかげで戦闘シーンをかき分けるのにかなり手こずりました。一応、主人公の特別感を出すための悪あがきとして、ジェイ以外の機体はいずれも森林地帯での戦闘を主眼に置いた迷彩塗装、共和国正式採用カラーのままで戦うのはジェイだけ、としています。ちなみにジェイ機の仇名となっている『ブルー・ブリッツ』は、コトブキヤさんより発売されたHMM版の設定より拝借しました。『蒼き疾風』とかの方が西方大陸戦争時の異名としては正しいのでしょうが。

 

 《コマンドウルフ》

 旧バトストから変わらぬ《シールドライガー》の相棒ポジション……なのですが、本作では共和国側の苦戦を演出する都合上、どうしてもヤラレ役としての側面が強くなってしまいました。構想段階ではジェイの相棒ポジションとして設定されていたツヴァインの愛機でもありますが、彼自身筆者の力量不足もあって、活躍してくれなかったし……。

 様々なバリエーションのある《コマンドウルフ》ですが、筆者は白いノーマルタイプにアタックユニットを装備した《コマンドウルフAU》と、特に著名な改造機でしょう、『アーバイン仕様』がお気に入りです。

 

 《セイバータイガー》

 『機獣達の挽歌』では原作バトストで描かれた対戦カードを極力避けよう、とも思っていたのですが、同時に出来る限り忠実にバトストの世界観を表現したいという思いもありました。悩んだのですが、自分流に「ライガーVSタイガー」の戦いを描く事で、『挽歌』がバトストのミッシングリンクたり得るかを読者様に判断していただけるのではないか、と考えた結果、第一章のラスボスは《セイバータイガー》部隊、という展開に落ち着きました。

 主人公ジェイと死闘を繰り広げる『ビームランチャー』装備の機体は、『アサルトユニット』装備の《グレートサーベル》の影に隠れていまいち存在感の無い、《セイバータイガーMk‐Ⅱ》仕様をイメージしています。帝国軍高速戦闘隊のエースパイロットを指す『タイガーライダー』の元ネタは、これもHMM版設定から。コトブキヤ版設定によると、シューベル・ラング少佐なる人物がこの称号を持つとされ、本作でも後の第三章で登場するジェイ達の宿敵、シルヴィア・ラケーテ少尉は『タイガーライダー』である、としています。もっとも、彼女の愛機は《ライトニングサイクス》で、既にタイガー乗りではないのですが……。

 

 

 

 次回の回想録は第二章『テクノロジー』の解説となります。興味をお持ちいただけた方、引き続きお付き合い下さいませ。


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