ゾイドバトルストーリー異伝 ―機獣達の挽歌―   作:あかいりゅうじ

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追補編:『回想録』
回想碌:機獣達の挽歌 ―構想編―


 ―はじめに―

 

 このコーナーは小説本文ではなく、既に終了しています本編『機獣達の挽歌』に関する作者自身の振り返り、小話・解説になります。ストーリーに深く関わる物ではありませんので、基本的に読み飛ばして頂いてもなんら問題の無い、所望作者の自己満足的な物となります。また、多分に主観的な解説を含みます事をご了承ください。

 第一回目は作品の執筆のきっかけとコンセプト、主要キャラクターに関する解説(という名の懺悔コーナー)となります。

 

 

 ―機獣達の挽歌、そのきっかけとコンセプト―

 

 『新ゾイドバトルストーリー』に関する二次創作は、遥か以前より構想がありました。というのも、公式ファンブックシリーズによって描かれたバトストはその世界観の壮大さ故、アーサー・ボーグマンやレイ・グレッグと言った特定人物の視点に絞られて物語が進んでいます。年表上の中でさらりと流された時期もあり、また作中で活躍する機体達はいずれも兵器で、けっしてワンオフの存在ではない。アーサーやレイ以外にもブレードライガーやライガーゼロを駆り、同じだけの活躍をしたパイロットが居たかもしれない。ゾイドバトルストーリーには、公式では描かれなかったであろうエピソードを内包してくれるであろう、いい意味での大らかさがありました。ゾイドバトルストーリーの展開以来、ずっと思い描いてきた惑星Ziの世界観、あったかも知れない戦いのイメージを編纂し、ゾイドファンの方々と共有できれば――そんな思いつきが、『機獣達の挽歌』始まりのきっかけです。

 バトルストーリーの二次創作を始めるに際して、

 

・公式ファンブックで言及された結末を改変したり、矛盾が発生するするような展開にはしない。

 

・ファンブックで提示されたエピソードの中で言及の少なかった時期を補完するような物語を構築する。

 

・上記2点を加味しつつ、バトストのキャラクター、エピソードとリンクした原作要素を取り入れる事。

 

 以上の三点をメインコンセプトに、プロットを構築することとしました。結果、小学館様より発刊された公式ファンブックシリーズ1~4の時系列にそれぞれ対応したエピソード『エウロペ』『テクノロジー』『暗黒の軍勢』『ニクスへの旅路』という4つの章が誕生し、を主人公となる一士官の視点でそれらを時系列順に追っていく、という現在の形が出来上がりました。

 

 

 

 ―キャラクター雑記・主要人物―

 

 ジェイ・ベック

 物語に際してまず必要となるのが、作品の視点人物となる主人公と考えます。4つのエピソードを通して、ガイロスとへリックの戦いを垣間見、そして成長していく人物――おのずとその人物像は決まってきて、実戦経験のほとんどない若い青年士官、という人物像が完成しました。ジェイは公式ファンブックで登場した歴代の主人公的存在と比べ、ゾイド乗りとしての腕前は無論、精神的にも未熟な人物として描いたつもりです。戦場の様々な事態に我々と同じ視点で驚き、悲しみ、そして怒る人物の方が、読み手的にも感情移入しやすく、また書きやすかった、というのが大きな理由ですが、4章に渡る長い物語の中で、そんな一般人視点の持ち主たる彼のメンタル面の変化を描くことができれば、ゾイド戦に特化しすぎない、ドラマパート面も補強した作品になるのでは、という思惑もありました。

 作中何度かジェイの髪型であるソフトモヒカンについて言及される場面があります。マイルドな性格のジェイですが、外観的には『若いアメリカ人のヤンキー兵士』染みたイメージを取り込みたい、という意図がありました。これは新バトストの主要人物であるロブ・ハーマン大尉のキャラデザを行った漫画家・上山道郎先生が、そのデザインに際しへリック共和国軍のイメージとして提示した『二次大戦中のアメリカ軍人』という形式を、私なりに拾いたかったからでもあります。

 名前の由来はギタリスト「ジェフ・ベック」から――ではなく、ギャグ漫画『ボボボーボ・ボーボボ』に出てくるタマネギみたいなキャラ『J』と、有名音楽漫画のタイトル『BECK』から。……どういう組み合わせだ(笑)

 

 

 エリサ・アノン

 物語の清涼剤的存在となる女性キャラもいなければ、という発想の元、ジェイとほぼ同期ということになる女性士官、エリサ・アノン少尉も設定しました。物語の都合上多くの場面で危機に直面し、その都度へこたれそうになる主人公が、一緒に居て居心地の良さを覚えるような人物。どんなものだろう? と考えた結果、エリサの大らかな性格もある種テンプレート的に決まりました。

 彼女を動かすに際してとにかく意識したのは、「出番を増やし過ぎない事」。ヒロイン的ポジションにいるエリサはその分動かしやすいキャラクターですが、彼女が過度に取り上げられることで原作『ゾイドバトルストーリー』の持つハードな世界観と、二次創作である『挽歌』との間に大きな剥離が生まれるのでは、という懸念があったからです。また個人的な意見として、いつも一緒にいるよりも、多くの苦難に苛まれる戦場の中で時たま会えるかわいい女性、という方が、ヒロインとしてありがたみがあると思うのですが、どうでしょうか……?

 名前の由来はアニソンシンガー『ELISA』さんと、ゲーム『GOD EATER』シリーズの登場人物・台場カノンから。特に後者は、エリサの人物像にも多大な影響を与えており、モチーフといってもいいかもしれません。さすがに、戦闘中に豹変したりはしませんが(笑)

 

 スターク・コンボイ

 ジェイが配属された部隊の隊長で、ベテランのゾイド乗り。主人公ジェイがまだ戦いなれていない序盤の戦闘において、どうしても苦戦する場面が多くなってしまう彼の代わり、彼が爽快感のある戦い方を披露してもらう意図がありました。一方でこの手の年長キャラにはありがちな、『主人公が成長することでその実力を乗り越えられ、戦闘の主役から外れる』運命を背負ったキャラクターでもあります(そこまで極端な描写ではありませんでしたが、アニメ無印のアーバインや、ジェネシスのセイジュウロウも、こうした煽りを食う場面があったように思います)。

 ジェイの視点から見たコンボイは頼りになる一方で、上官故の距離の遠さも目立つ人物として描く予定でした。ただ、彼との人間関係を描く前に、あれよあれよとストーリーが進んでしまい、そこまで掘り下げられる前に退場することになってしまったという……描写の上では、かなり後悔が残っているキャラクターです。

 名前はガンダムシリーズに出てくるモビルスーツ『スターク・ジェガン』と、トランスフォーマーシリーズのキャラクター『コンボイ』から来ています。正に名は体を表す、めちゃくちゃ指揮官ぽい単語の組み合わせですね……・ 

 

 グロック・ソードソール

 ある種、主人公ジェイと対になるキャラクター。たたき上げのゾイド乗りで、混沌とした戦場にも一切の迷いを持ち込まない気質の人物ですから、良くも悪くもジェイやエリサの迷いを理解できない人物でもあります。一章の困難を乗り越え、ジェイと一応の和解をした後もそれは変わらず、ある種『戦場という極限状態に適応したキャラ』の象徴でもありました。物語の中盤でジェイと決別し、本編とかかわらぬ場面で命を落としてしまう彼ですが、一方で『閃光師団(レイフォース)』に参加して暗黒大陸で戦い、散った、という経歴は、本作のオリジナルキャラクターの中でただ一人「歴史の表舞台に立つ資格があったキャラクター」とも考えています。ジェイとグロックの長所を足し合わせれば、公式ファンブックで描かれた英雄と肩を並べ、戦える人物になるかもしれません。

 グロックは子供の頃に読んだ『デルトラ・クエスト』の登場人物から、ソードソールはキャラの性格を一目で表しつつ、語感重視で勢いのままつけています。

 

 

 ツヴァイン

 傭兵、という経歴からも分かるとおり、『機獣達の挽歌』の作風と私の人物描写能力に合わせて、アニメ『ZOIDS』のアーバインをオマージュしたキャラクターが、このツヴァインです。ただ、実際に薦めていく過程で皮肉屋な一面ばかりが取り上げられるようになり、いまいちジェイが頼りにするパートナーキャラクターとしては成長できなかったように思います。第二章『テクノロジー』で、いい感じに二人の距離感を縮めたつもりだったのですが、続く第三部が起承転結で言う所の「転」、ただひたすらに物語が揺れ動くところであり、ツヴァイン一人の力で改善できるような窮地を差し込むような予知が無かった、というのが失敗の要因でしょう。

 三部でフェードアウトした彼ですが、実は第四部『二クスへの旅路』で再登場する構想もありました。ジェイが頼るべき仲間が誰もいなくなった、というのを強調するために、お流れになってしまいましたが、彼とジェイが再び共闘するエピソードも機会があれば描いてみたい、という気持ちがあります。

 

 

 

 回想録①はここまでとなります。次回からは各章に沿って、ストーリー・ゲストキャラ・登場ゾイド等について回想していく予定ですので、興味をお持ちいただけたら、引き続きお付き合い下さい。

 


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