テンプレ転生!~転生したのは、色々とおかしいダンまちの世界~   作:ねむねむお布団

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「……………………あれ?────三日で書き終わっ、た?」



と、投稿間隔が三ヶ月の後四ヶ月を越えようとした辺り。私が「さっ、書きますかぁ」と書き始めて三日。何故か、一万字行かないくらいで今回の話が書き終わりました。
…………いや、おかしくないか?前回に私は苦悩をしまくったと言うのに、何故今回はこんなに早く……?
そして作風が毎回変わる気がするのは何故……描写が無駄に多いのは変わんないですけど。

普段より明らかに早く、初期の頃の勢いで書けた事に驚きを隠し切れないです。多分ヒロアカ全巻買ったからですね!わーい!御礼にヒロアカの二次創作書かなきゃ!

ヒロアカのせいなのか、今回はシリアスっぽくなってます。何故だろう、感情的な話な気がする……何故なんでしょう。
ともかく、今回の話をどうぞ!


オリ主が居ない時のシーンは何故かシリアス成分マシマシになるのは何でかなってお話。

 少女、ベル・クラネルが助けようとしていた恋人のユキハと合流し、助けを求められたフィン・ディムナがその彼に迷惑を掛けていたアイズ・ヴァレンシュタインにお仕置きを繰り出す、少し前。

 

 助けを求めて全力疾走するベルが「ミノタウロスを倒せる強者」を見つけたのは、丁度その怪物(ミノタウロス)が貫かれた光景を目にしたからだ。

 「誰か、ユキハを助けられる人を、あの化け物を倒せる存在を」。それを求め、視線を目まぐるしく回しながら風よりも早く走るベル。そのベルの視線が止まったのは、漸く見つけた人……それも集団で行動するパーティーと思われる彼女達だった。

 「ようやく見つけた」。そう思いながら、その集団に近づこうと走る方向を定めると同時、ベルは彼女達が何かと相対しているのに気付いた。

 

「(────ミノ、タウロス)」

 

 思わず、脚が止まってしまった。

 思い出される恐怖が、足を止めてしまった事により胸の内から蘇る。必死に「ユキハを助ける」と言う想い、「早く強者を探す」と言う焦燥感によって塗り潰されていた恐怖が、ミノタウロスに与えられ刻み込まれた恐怖が蘇った。

 舌の根が渇き、呼吸が落ち着かなくなり、身体の芯が冷える。「助けなければ」「求めなければ」「走らなければ」、そう考えても、まるで金縛りのように身体が動かなくなった。

 

 彼女の心には、命の危機による恐怖(トラウマ)が刻み込まれていた。ユキハが居て、抱えてくれたからこそ命があるが、きっと彼が居なければ今頃身体はあの蹄に踏み潰され壊されている。

 咆哮が脳裏に蘇る。あの身体が竦み、硬直し、崩れそうになった叫びを。……最初は逃げられた。けれど脚は縺れ、ユキハに抱えられた。そして追い付かれた。

 

 そして、ユキハはあの恐怖(ミノタウロス)に立ち向かった。僕は逃げた。

 

 今頃、彼は僕が助けを呼んでくる時間を稼ぐ為に戦っている。今頃、彼はもしかしたら善戦しているのかもしれない。今頃、彼は苦戦しているのかもしれない。

 ────今頃、彼は死んでいるのかもしれない。

 今、彼はどうなっているのか。それを考え、違う恐怖が生まれた。刻み込まれたモノではなく、自分の心から生まれた恐れ。

 

 彼が死んでしまうかもしれない。

 死んでいるかもしれない。

 消えるかもしれない。

 居なくなってしまうかもしれない。目の前から。僕の前から。世界から。僕の世界から。僕から。ずっと。これから。永遠に会えなくなる。逢えなくなる話せなくなる笑えなくなる触れられなくなる愛せなくなる愛されなくなるずっとずっとずっと消える消える消える死ぬ死ぬ死ぬ死んでしまうユキハが目の前から消える嫌だ怖いそんなのは嫌だ寂しい悲しい苦しい嫌だ嫌だ嫌だ────嫌だ。

 

 身体が、震えた。

 

 彼が消えてしまう。それを考えただけで、悲しさで、寂しさで、苦しさで、恐怖で。自分が震えるのを、ベルは感じた。

 そしてそれを考えて、思った。確かに、怪物(ミノタウロス)は怖い。足が竦み、心が挫け、涙が零れそうになる。

 ……だが。

 …………だがしかし。

 

 ユキハを失ってしまう事の方が、もっと怖い。

 

 拳を握る。息を整える。膝を曲げる。前を向く。

 そうだ、確かに僕はミノタウロスが怖い。けれどそれより、ユキハが居なくなってしまう事の方がもっと怖い。

 今ここで、ミノタウロスに怯えていたらユキハは助けられない。腕を振るわなければ道は開けない、脚を動かさなければ前へは進めない、心が挫けていたら何も出来ない。今、この恐怖(ミノタウロス)に勝たなければ────更に深い、恐怖(ユキハの死)が待っている。

 そんなのは認められない。

 

 今僕は、何をしている?……ただミノタウロスを見ただけだろう、相対しただけだろう。

 今僕は、何故止まっている?……ただミノタウロスを見ただけだろう、戦ってすらいない。

 今僕は、何故走らない?……ただミノタウロスを見ただけだろ、吠えられもしていない。

 今僕は、何故動かない?────ただ、ミノタウロスを見ただけだろ!まだ、何もしていない!何も出来ちゃいない!

 

 息を吸い込み、グッと、心の恐怖を殺す。

 

「何をしてるんだ、僕は。まだ、走っただけじゃないか」

 

 目の前に光は、助けられる者は居るだろ。直ぐ近くに化け物が居るからって、脚を止めていい理由にはならない。

 目の前に可能性は、助けてくれる強者が居るかもしれないだろ。怖いからって、立ち止まっていい訳が無い。

 目の前に人は、求めていたものが在るだろ!いつまでも止まってるんじゃない、さっさと走り出せ!

 

「走れ……!走れ、ベル・クラネルッ!」

 

 奮い、走る。止まっていても、何もなる訳が無い。じゃあ走るしかない。いつまでも、止まるな。走れ。

 

 恐怖を殺し、彼女……ベル・クラネルは走った。目的はただ一つ、助けたい人(ユキハ)を助ける為に。目の前の、希望(恐怖)に向かって。

 

 

 

 ……走ったその時、確かに彼女は見た。希望()恐怖(ミノタウロス)を貫き、確かに求めたモノが居る事を。

 

 ♀↗▒↗♀

 

『ヴ、ヴォ────』

 

 ミノタウロスが、灰になる。

 それを見届け、自身の獲物である《フォルティア・スピア》に付着した血を振り払い……彼女は一息吐き、背負う。

 どうにか間に合ったかな、と思いながらその小人族(パルゥム)の女性……槍使いは自身が守った初級冒険者の面々へ視線を向ける。自身がギリギリでやってきて、その上彼女等にとって歯が立たない存在を倒したのを見て……とても安堵したような笑みを浮かべ、安心し過ぎたのかその場にペタリと座り込んでしまった。

 

「あ、ありがとうございました……!」

 

「し、死ぬかと思ったぁ……っ!」

 

「本当にありがとうございました!もう、なんていえばいいか……」

 

 ワンパーティー、恐らくは同じファミリアのメンバーだろうか。Lv.2にも満たないであろう初級冒険者達が安堵の笑顔と共に礼を言ってくるのに対し、「いや、気にしなくていいよ」と槍使いは返した。

 「元はと言えば、此方が原因」……と喉まで出掛かって、しかし不要な言葉だろうと飲み込む。代わりに、「無事そうで良かったよ」と労いの言葉を送る。フッと笑みもついでに向ければ、その初級冒険者達は「はい!」と元気に返事をした後、再度礼の言葉を言ってきた。

 そうして何度も礼を口にし、是非何かお礼を……と食い気味に言ってくる彼女達に「いや、言葉だけで十分さ」と返しながら、槍使い……ロキ・ファミリア所属、団長のフィン・ディムナは心の中で溜息を吐いた。

 

 五階層でミノタウロスが現れると言う異常事態(イレギュラー)……その原因であるロキ・ファミリアの団長は、ギルドへの報告や他の面子が妙な事をしてないか等と懸念事項が多い事に胃が痛むのを感じる。

 ロキ・ファミリアが遠征から地上へと戻る際、途中で遭遇(エンカウント)したミノタウロスの群れが何故か逃走し上の階層に上る、と言う謎の行動を起こした。その行動に対し、他の冒険者への影響を考えフィン等の足の速いメンバーがその逃走したミノタウロスを追い掛け、挙句には五階層にまでやって来てしまった現状に「何なんだこれは」とフィンは内心で呟く。

 五十一階層で遭遇した謎の芋虫型モンスターと言い、今日は厄日かな?と苦笑いしながら、初級冒険者達の礼を適当に聞き流す。会話の裏では、これからどうするかを思考する。

 

「しかも、ロキ・ファミリアの【勇者(ブレイバー)】……フィンさんに助けて貰えるなんて……!」

 

「もう、感激です!お礼を……!」

 

「お茶でも、どうでしょうか!?」

 

「……お礼もお茶も、遠慮しておこうかな」

 

 メンバーは各々ミノタウロスを殲滅しているだろうし、後は狩り漏らしが無いかが不安だな……それとアイズ。やっぱりアイズ。……他のファミリアの男に迷惑掛けてないかな……いや、そもそも珍しいからそんな事態はまず無い、と信じたいなぁ……。

 

 ロキ・ファミリア筆頭の苦労人、フィンはロキ・ファミリア筆頭の問題児であるアイズに「次はどんなお仕置きがいいかなぁ」と既に罰の内容を考えていた。何をするか、と思考から仕置きの内容の思考へとなってしまっている辺り、アイズの問題児具合がよく分かる。

 因みに毎度するお仕置きの幕開けの一発は、ヘッドロックである。巷ではしょっちゅうアイズにヘッドロック(お仕置き)をするのを見る人々により、それに関する非公式の二つ名がオラリオに出回っている。例として、【剣姫殺し(ヘッドロッカー)】や【絞落小人(ストラングル・ヘッド)】などである。

 

「(……って、違う。取り敢えずアイズの事はいいんだ)」

 

 考え事をする際、真っ先に問題児の事について思考してしまう癖が付いた胃痛持ち(フィン)。一先ず問題児についての思考は止め、まだミノタウロスが居る可能性を脳裏に閃かせる。そう、確かに今はミノタウロスの殲滅中。であれば、此処にいつまでも留まっている訳にはいかないだろう。

 会話しながら、それでいて恐ろしい思考速度で考え事を終了させたフィン。まずするべき事は、「他の場所にミノタウロスが居ないか探し、見つけ次第処理する事」であると再認識した彼女は、この初級冒険者達の誘い文句を断ちこの場を離れよう、とその思考通りに行動に移す。

 ニコリ、とフィンは改めて微笑みを顔に張り付ける。

 

「すまない。他の場所にミノタウロスがまだ残っているかもしれないんだ、先を急がせて貰うよ」

 

「えっ、そんな」

 

「まだお礼をっ」

 

「待って下さいよっ」

 

 冒険者達が言ってしまうフィンに慌てて口を開く中、フィンは既に彼女達から背を向けていた。「要件は伝え、更には火急の用でもあるこれを担っている自分を強くは引き留められないだろう」と、昔から色々と誘い文句を受けて来た経験豊富な四十代小人族(パルゥム)はそう考えながら、走る準備をする。

 さて、では行こうかな……と、脚に力を込めた瞬間。

 

「────待って下さい!」

 

 背後から、強く呼び止められた。それを無視して飛び出そうか、と考えたがその声音は先程の集団の誰のものでも無い事に気付いた。つまりは、助けた初級冒険者達とは違う誰かが自分を呼び止めた事になる。

 であれば、違う誰かが自分に用があるのか。ならばその声に応える必要がある。脚に込めていた力を抜き、クルリと身体を反転させてそちらを向き……フィンは、少しばかり驚いた。

 確かに、先程の集団の人間とは違う人だった。だが、フィンが驚いたのはその様子……ボロボロな戦闘衣(バトルクロス)を纏っている事と、今にも泣きそうな表情を目にして面食らってしまった。

 

「お願いです……!助けてッ、助けて下さいッ!!」

 

 切実な願いをフィンに吐き出したその少女は、本来はとても可愛らしい女の子なのだろうとフィンは感じた。

 その白髪はふわりと揺れ、くりくりとした瞳は赤い。顔立ちも整っていて、総評するなら兎のような可愛らしい女の子だ。きっと笑えば愛嬌があり、癒しを齎す善い少女なのだろう。フィンは、その様子を除いた彼女をまず認識した。

 

 しかし、と。「これは酷い」、とフィンは眉根を寄せた。

 

 泣いている。その表情は可愛らしい笑顔では無く、必死に助けを求める悲壮な表所に彩られていた。

 纏う戦闘衣(バトルクロス)は、恐ろしくボロボロだ。傍から見て苛烈な戦闘を潜り抜けて来たのが容易に分かる。その手に持つナイフもそうだ。ボロボロで、既に刃物として扱えない程に脆く崩れかけている。

 その身に少なくない傷を受け、自身とモンスターの血に塗れ、見る限り身体的にも精神的にも少なくないダメージを受けている。それでも、挫けず此処に来た少女。

 

 ……たった、一目見ただけ。

 

 しかしフィンは、その少女を一目見ただけで「勇気ある者」として評価し、認識した。

 

「何があったんだい」

 

 フィンは笑みをかき消し、問いながらポーションを少女に振り掛ける。少なくない傷を受けていたそれを取り敢えず治し、その赤い瞳を見つめながら問いに対する答えを待つ。

 少女、白髪赤目の彼女はポーションを突然掛けられた事に一瞬驚きながら、その瞳に逸る気持ちを隠し切れないまま質問に答える。荒い息を正す事も無く、汗を拭う事も無く、勢いのままに。

 

「ユキハが……ッ、仲間が今、ミノタウロスと戦ってるんです!僕は助けを呼べって言われて、それで────ッ」

 

 答えは直ぐに返って来た。

 涙を潤ませ、胸の内の感情そのままの勢いで。汗を垂らし、逸る気持ちの状態そのままの勢いで。息を荒げ、自身の望むものを伝えようと直後に。

 その答え、彼女の望む者を理解した【勇者(ブレイバー)】は、迷い無く応えた。

 

「────分かった。助けよう」

 

 理解、決断、即答。説明途中の彼女の言葉を遮り、フィンは彼女の肩に手を置き言った。

 

 【勇者(ブレイバー)】だからこそ解る。

 

 一目見て理解出来る程のその早く助けたいと言う想い。自身の無力さを嘆く瞳。諦めず助けをこうして見つけ出した勇気が。────求められたのならば、それらに応えるのが(ボク)だ。

 【勇者(ブレイバー)】ならば、この目の前の強い意志に応えなければならない。その向けられ請われ求められ願われた、勇気ある人に。フィン自身、瞳に光を灯らせる。

 ロキ・ファミリア団長【勇者(ブレイバー)】の名を冠する小人族(パルゥム)、フィン・ディムナは助けると決めた。言葉はそれ以上要らず、ただ、後は導くのを望む。

 そうすれば、(ボク)が助ける。

 

「案内は頼むよ」

 

「────!はい!こっちです!」

 

 その言葉を交わすと同時、二人は駆け出した。フィンは少女の後を追い、その前を行く少女は助けを引き連れユキハの元へ疾走する。早く、速く、疾く。

 初級冒険者達を背に、少女がやってきた方向へと真っ直ぐに。彼女の道案内の元、助けを求める存在の元へ走る。気持ちに呼応してか、更に加速して行く少女。その光景に瞠目し……、不意に笑ってしまう。

 

「(此処まで必死になって走れる相手なんて、もしかして恋人か何かかな?)」

 

 無粋な詮索かな、と内心微笑む。まあこんな男性の数が少ない世界で、恋人って言ったら大抵女性だから……この子は同性愛者なのかな。

 …………同性愛者なのか。

 それはまあ、純朴そうで純粋そうで無邪気そうな見た目なのに……だったら余計に異性とのアレコレに憧れるんじゃ………ああ、その相手に誑かされたのか。なんだかチョロそうだし、納得だ。きっと酒を飲まされて、そのまま襲われちゃったんだろう。

 それにしては、随分と好かれているけど。……いや、もしかしてこの子が相手にアタックした可能性も……?

 …………最近の子はすごいなあ。

 

 ────Lv.6、フィン・ディムナ。四十代、なんだか婚期が気になって来たお年頃。どうやら目の前の少女の色恋沙汰にも興味津々のようである。

 そんな無粋な思考をしていた婚期遅れ小人族(パルゥム)……もとい、フィンに、前方を走る少女から「あのっ」と声が飛んで来る。一瞬思考を読まれ叱咤が飛んで来る?と身を固めたが、違う内容の言葉が飛んできた。

 

「Lv.1で、ミノタウロス相手に一分以上の戦闘は、可能ですかっ?」

 

 走りながら、息を所々切らしながら飛んできた質問。それは恐らく、今助けに行っている仲間の状況なのだろう。客観的に、それをどう思うか気になったのか……少女はフィンに見解を求めた。

 ……数秒、フィンはどう返答するべきか考え、

 

「……普通は、不可能。生きてはいられないだろうね」

 

「っ……」

 

 素直に答えた。

 

 事実、普通であれば不可能だ。前提として、レベルの差と言うのは明確に線引きされる実力、その格差の事だ。Lv.1であれば、常識としてLv.2にカテゴライズされるミノタウロスを相手に戦闘が成り立つ筈が無い。

 其処に在るのは対等な戦いでは無く、蹂躪。格上が格下を嬲り殺す、あまりにも惨い戦いとは言えない酷い光景だ。

 であれば。それに当て嵌まるそのLv.1の仲間とLv.2のミノタウロスが相対し、一分以上も時間が経過している現在でも生存している可能性は。

 

「予め言っておこう。その仲間がミノタウロスと戦闘して、今も尚生きていると言う可能性は、限りなく低い」

 

「……それは」

 

「君としては生きている事を祈りたいんだろうけど、普通であれば生きる事は出来ないね。一応、心構えはしておくといい」

 

「…………」

 

 フィンが事実を告げると、一瞬、少女が走る速度が落ちた。

 

 ……それを尻目に、フィンは続けて言葉を少女に重ねる。確かにフィン自身その願いのままに、仲間の事を助けてあげたいとは思っている。それは本当だ。

 しかし、その状況でその仲間が生きていると言う確証が無いのもまた事実。彼女もそれはきっと分かっていて、しかし諦めきれずその生存を願っているからこそ、その事実からは目を逸らしていたのだろう。

 それが、当然だ。嫌な事からは目を背けていたいのが、人間なのだから。希望ばかり見ていると、突然それが絶望に裏返った瞬間の衝撃は恐ろしく強くなる。であるなら、辛い事だが改めて彼女には意識して貰わなければならない。

 

 嫌な役回りだと思いながら、フィンは自分から進んで口にする。死の可能性と言う、目を背けたくなる絶望を、少女に突き付ける。

 

「運が良ければ、誰かに助けて貰っているかもしれない。何かがあって、まだ生きているかもしれない。でも、それは所詮希望的観測に過ぎない」

 

「……」

 

「いいかい、分かっている事だろうけど僕(ボク)は言うよ。その仲間が死んでいる可能性は十二分にある。だから、現場に到着して其処に何か(・・)があっても────」

 

「…………」

 

「────それは仕方が無い事だと、受け入れてくれ」

 

 もしかしたら、言う必要は無かったかもしれない。けれど、(ボク)はそれを口にした。

 

 ……口にした言葉は戻って来ない。返って来るのは、言葉を向けた相手からの返事だけだ。こう言った状況において、絶望的な事実を認識しようとしない人をフィンは何度も見てきた。同じファミリアの人間でも、違うファミリアの人間でも、知り合いでも、赤の他人でも。

 何回も回数を重ねる内、こうして前置きをしていた方が一番その人への衝撃が少なかったり、その選択の方が一番良いとフィンは知った。

 そして経験から、次に返ってくるのは……感情的な言葉だろう。「うるさい」「知ってる」「黙れ」と言う荒々しい言葉が飛んできた時もあるし、「大丈夫大丈夫」「平気だよ」「生きてるに決まってる」などと言った諦観に満ちた言葉が返って来た事もある。人によって違うが、その時には心の本音が返ってくる点は共通していた。

 

「(まあ、今回もそうかな。勇気ある、ってのは認めてたけど)」

 

 果たして返って来たのは、諦観か、憤怒か、悲哀か、それとも────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「分かってます!」

 

 ────と、フィンの予想に反して。

 

「普通であれば、確かに死んでいると考えているかもしれないです!」

 

 少女の声は走りながらであったからこそ絶え絶えで荒かったが、穏やかだった。

 

「でも!ユキハなら大丈夫ですッ!」

 

 その声音に乗っているのは、確かな信頼。

 

「確かにあっさり、死んでるかもしれないです!それは怖くて、泣きそうなくらい、嫌な事です!」

 

 少女の胸に在る、確かな本音。

 

「でも、今考えて思い出したんです!ユキハは、僕が悲しむ事を絶対にしないって!」

 

 不安を、その仲間が確かに積み重ねて来た過去が。今の少女が向ける深い信頼で塗り潰していた。

 

「嫌な事なんて何一つしなくて、ちょっと怒っちゃっても許してくれて、いけない事をしちゃった僕から離れないでいてくれた!」

 

 僅かに振り返り、フィンに向けたその笑みは……何より、自身に満ち溢れていて。

 

「だから、信じてる!ユキハは死なないで、きっとまた僕の前から消えないでいてくれるって!」

 

 信頼、好意、期待、信用、愛好────その笑みに満ち溢れる希望が、確かに存在するであろう絶望を打ち消していた。

 

「────」

 

 絶句、後に破顔。

 フィンは今まで一度も無かった返答に、思わず頬を吊り上げた。成程、確かに感情的な答えだ。前例は無かったが。成程、成程。

 ……面白い。久し振りに、腹を抱えて笑える程面白いと感じたかもしれない。

 フィンは更に、笑みを深くした。既に前を向いた少女の背を見て、僅かに笑い声を零し。

 

「すまなかった、全て杞憂だったようだ。君には、そう言うのは要らなかったようだね」

 

「?……そう言う、の?」

 

「いや、分からないならいいよ」

 

 フィンはその後ろから、少女の隣へ並び出て並走に切り替えた。突然隣へやって来たフィンに驚きながら、再び前を向く。その疾走は、胸の内に湧いている感情を糧にしているかのように、更に加速している。

 前を見据え、ひたすら走っている。白髪赤目の、仲間に絶大な信頼を向けている少女。勇気ある、久し振りに面白いと思えた少女。

 ……改宗(コンバーション)、勧めようかな。

 

 懸念事項を頭の中から放り出し、冗談交じりな思考をしながらフィンは「フッ」と笑い声を漏らした。

 

「いやあ、其処まで信頼される仲間も凄いけど、君も君だよねえ。何だい、恋人かい?」

 

「ふぇっ!?えっ、いっ、あっ…………ッ、…………はいぃ…………」

 

「(かわいい)」

 

 

 

 

 ……そうして、少し後。

 少女────ベル・クラネルは助けたいと必死に走っていた相手……ユキハ・スノウリィと無事に合流する事が出来た。フィン自身はその感動的な合流に内心ニコニコしていたのだが、当のユキハ君に迷惑を掛けていた問題児(アイズ)お仕置き(ヘッドロック)するのに忙しかったので、合流直後に「おめでとう」「良かったね」と言葉を掛ける事が叶わなかった。

 だが。

 そんなヘッドロックを掛けているロキ・ファミリア団長と、ベルに猛烈に抱き締められチュッチュされているヘスティア・ファミリア副団長が言葉を交わし、苦労人同士意気投合する未来に辿り着くのは……。

 

「痛い痛いフィン本当に痛いあっあっあ」

 

「何人様の恋人に手を出してるのかなアイズゥ!」

 

「えっ」「えっ」

 

「えっ?」

 

 

「ユキハアアアアア!!良かったよおおおおお!!」

 

「あ、ああ。すまなかった、いや本当に……ベル、待ってくれ、力強くないか?」

 

「ううぐぅう……っ!生きてて、生きててくれてありがとおおおおお!!」

 

「まあ、死なないって言ったろ?俺は約束は守る男だからな。……で、なあ、腕締まってすっげえ痛いんだががが」

 

 …………もうちょっと、先のお話。

 

 

 ♀♡♡♡♂




三ヶ月の間は、アニメと漫画とゲーム、あとリアルで色々とぉ、やりましたねぇ……。語る事が多過ぎる。
最近はFGOの夏イベに没頭中ですね。……鬼畜過ぎません?アレ。

それでいつものガチャ報告なんですが……皆さん、皆さんは福袋は何が当たりましたか?そして、水着ガチャはコンプ出来ましたか?私は以下の通り、

「ナポレオン(福袋)、青王、水着ジャンヌ、水着イバラギン、水着牛若丸」

とこんな感じでした!来ましたよ初星五アーチャー!もう嬉しいのなんの!水着ガチャは十連目でジャンヌが来たので驚きました……っ!

あと面白かったのを纏めると、アニメでは「月曜日のたわわ」とか「すのはら荘の管理人さん」。ゲームでは「シャニマス」ですかね。
もう、シャニマスのキャラは皆可愛すぎますよ……ボイス入った瞬間心臓が何度止まった事か……それとシャニマスのキャラは同人誌向けだなぁ、と思ってしまった私を誰か罰して下さい。

次回は早いか遅いか分かりませんが、どうかお待ち下さい!多分次回は主人公出ます!それではっ、ありがとうごさいました!



PS
言い忘れてました。あとFGOガチャで、「沖田総司・オルタ」当たってました。やったね!

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