テイルズオブゼスティリアクロスIF ~聖主の願い~ 作:ソフトな何か
彼は何を考えてるんでしょうか。
そんなことより、なんか男の子ばっかりなんでそろそろ女の子でてこないかなぁ。
ロクロウと名乗る憑魔。
先ほどから不穏な発言ばかり目立つが、その言動からは未だに本心が掴めない。
まだ自分たちと戦う気があるのか、それとも別の目的があるのか。
「俺の名前はスレイ。で、こっちがミクリオであっちがエダ」
マイペースに自己紹介を始めるスレイ。
しかし、マイペースな相手にマイペースを当てるのはどうなんだろう。
「そうか、いきなり襲い掛かったことには謝る。お主らを一目見た時から相当の腕の使い手と見えてな。こんな平和な世界だろ?体がうずいて仕方なかったんだ。許してくれ!」
ロクロウはそう言うとガバっと頭を下げた。
しかし、ミクリオは腑に落ちない。あれは手合わせとか生温いものではなかった。
明らかに命のやり取りだ。今思い出しても背筋が寒くなる。
「本当にこっちを殺す気だっただろう。あの殺気は本物だった」
「戦いに命を掛けず何が戦いか」
ロクロウは顔を上げると当たり前だという表情で言った。
「・・・」
やはりコイツは危険だ。
早く浄化をしなくてはいけない。
ミクリオは考えるが、先ほどから気になることを発している彼にいくつか質問がしたかった。
「この刀を知っているようなそぶりだったが、キミは何か知っているのかい?」
「そうだそうだ!その刀!俺もその刀が知りたかった。それは俺の兄シグレの持ち物だ。キララウス火山で俺が倒した後、何度か向かったんだが、ついに見つけることができなんだ。お主らはどうやってそれを見つけたのだ?」
ミクリオの質問にまくし立てると、ロクロウは瞳を輝かせた。
「いろいろと長くなるけど、大丈夫かな」
スレイとミクリオは、キララウス火山でこの刀を見つけたこと、地殻変動が起こってしまったのは、そこで災禍の顕主と戦ったことが原因であることを説明した。
「なんと!そうであったか。しかし良かった。完全に失ったと思ってガッカリしておってな!」
嬉しそうに話すロクロウだが、スレイもミクリオも複雑な表情をしていた。
「その・・・。すまない。そのような大事な刀だとは知らなかったんだ。本当は返してあげたいところなんだけど、今はこの子、エダの器として使っている。だからすぐに返すわけにはいかないんだ」
ミクリオが申し訳なさそうに言うと、ロクロウは豪快に笑って言った。
「いや、それは構わん。特に取り戻したいとも思ってはいないさ。ただ、兄の形見なのでな、所在がわかっただけでも良かった」
笑顔でうなずくロクロウにスレイとミクリオはほっと胸を撫で下ろした。
エダも緊張が解けたのか、いつの間にかミクリオの腕から抜け出し、ロクロウの事を観察している。
「ロクロウ。もう話は良いだろう。単刀直入に言う。キミを浄化したい」
「ほう、お主らそんなことができるのか?」
「オレ、一応導師なんだ」
スレイが頭を掻くと、ロクロウはなんと!と驚きの顔をしたが、どこか納得したように笑顔を見せた。
「やはりな。あれほどの強さだ。神依も纏っているようだったし、導師で相違あるまい」
ミクリオは心の中で驚嘆した。これまでの憑魔とは性質が違いすぎる。言葉も通じれば、知識も豊富。もしかすると、長い年月を生きた憑魔なのだろうか。だとすると聞きたいことが山ほどある。
ミクリオが考えこんでいると、ロクロウはさらに続けた。
「しかし、俺の知っている導師らとはずいぶん違うな。奴らはまず憑魔を見れば殺すし、浄化なんて持ちかけられのは初めてだ。それにそんな力はかつての導師は持っておらんかった。それに導師といえば大体が偏屈なルールに縛られて、人間の幸せや意志を蔑ろにするやつらばかりだったが・・・。この数百年の間に何があったのだ?」
「?」
この言葉に、スレイもミクリオも困惑した。導師が殺す?人の幸せや意思を蔑ろにする?
どちらもスレイとミクリオが思い描いていた導師とは真逆だ。
こちらの空気を察したのか、ロクロウは笑みを見せると、まぁいいさと言葉を止めた。
「キミが何を言っているかはわからないけど、俺はできればみんな。人間も、天族もそれに憑魔になってしまった人々も、みんな救いたい」
スレイはロクロウの目を見て言った。
これはスレイの本心。そして目指すもの。
スレイはこれまでも何度も相手の命のやりとりを行わなければならない場面に遭遇してきたが、その全てを友や仲間たちと一緒に乗り越えてきた。
スレイの言葉の迫力に、今度はロクロウが困惑した顔になる。
「しかし、浄化するのは良いが、どうやって浄化する?ひとつ心当たりがないことも無いが、それでも昔の俺は浄化できなかったぞ?」
「俺がやるよ」
スレイは腰に下げた祭礼用の剣を抜き、そこに浄化の炎を灯した
剣に灯される青白い炎。ゆらゆらと揺れるその炎を見て、ロクロウの目が驚きのあまり見開かれた。
「おぬし!その力は、ライフィ・・・マオテラスの力かっ!」
「えっと、詳しいことはわからないけど、たぶんそうなのかな?」
スレイも詳しいことはわからない。この力はライラから預かっているものであるが、ライラからは誓約のため、詳しいことを聞きだせていないのだ。
しかし、ライラの言動からマオテラスと関連するものであろうことはわかっているため、スレイはロクロウの言葉を認める形となった。
「そうか、いや、いい。やってみせてくれ。正直なところ穢れが濃くなりすぎてな、街に入って心水を買いにいこうものなら片っ端から人間が穢れていくもので。どうにも困っておったのだ・・・」
物騒なことを言い始めるロクロウ。しかし、ならばなおさら彼を浄化せねばいけない。
スレイとミクリオは顔をお互いの顔を見て頷き合う。
「スレイ」
「うん。ロクロウ。早速だけど始めるよ」
スレイは祭礼剣を地面に突き立てて、剣に青白い炎を纏わせる。
その間ロクロウは微動だにせず、胡坐を掻いた格好でスレイから吹き荒れる炎を凝視していた。
「ミクリオ、そっちに行ったのはお願い。あと、エダを守って」
「ああ、任されたよ」
ミクリオも構え直し、溢れ来るであろう穢れに備える。
「はぁ!!!!!」
スレイが気合を込めると、その瞬間、青白い炎は格段に大きさを増し、その炎は一瞬でロクロウの全身を覆った。
「くっ!」
溢れ出る穢れがドラゴンと同じかそれ以上に流れてくる。
スレイは一瞬怯んだが、強く足を踏ん張ってそれを耐える。
「スレイ!無理はするな!」
「そうだ、一回で全部とはいかんくてもいい。出来るとこまででやめておけ」
自分は逃げる気は無い。とロクロウが暗に伝える。
「ぐぅおおおおおおおおおあああああ!」
しかし、スレイはやめない。
10分、15分、20分。
どれだけの時間が経ったのだろうか。しかしそれは突然終わりを迎える。
突如青白い炎の勢いが弱まったかと思うと、スレイの体が大きく左側に崩れた。
「スレイ!」
ミクリオは駆け出すと、スレイの肩を抱いた。
「ごめん・・・。だいぶ、払えたと思うけ、ど、ぜんぶ・・・無理・・・」
言葉を言い終わる前にスレイの意識が無くなった。
力を使い切ったのだろう。まだ浄化の途中だが、これが今のスレイの限界。
ミクリオはスレイが穢れに飲まれなかったことに安堵した。
やはりこれほどの穢れを浄化するためには仲間が必要だった。
わかりきってはいたことだが、やはりこれ程の穢れを導師一人での力で浄化することはできなかった。
だが、このように安全に浄化を試せる機会はいままで無かった。
そういう意味ではここで今のスレイの実力を測ることが出来たのは大きな収穫だと思う。
あとどの程度の人数が必要になるかもこれで知ることができるかもしれない。
「ロクロウは?」
ミクリオがロクロウを見ると、ロクロウは、おお!と声を上ながら自分の体の動きを確かめていた。
「これはいいぞ。邪魔なぶんの穢れが全部消えた。これくらいなら町に入っても大丈夫だろう」
その言葉を聞いてミクリオは困ったように笑う。
「喜んでくれてなによりだけど、本当はキミを人間に戻してあげたかったんだ」
「いや、いい。これでベストだ。だいたい俺は1000年以上生きているし。もし完全に浄化されれば、人間の身ではそれに耐えられず、その瞬間に死んでいただろうからな」
さらっと驚愕することを言って、腕を組ながら何かを考える仕草をしている。
「まぁ、このあとの戦いには支障が出るかもしれんが・・・。なんとかなるさ」
このあとの戦い?
不穏な発言に眉を潜める。そういえば、なぜロクロウはこんな場所にいるのだろう。
これ程の強い穢れと力を持ちながら、前回の自分達の旅では全く話すら聞かなかった。
もし仮に彼の介入があったとしたら、ヘルダルフよりも彼を討伐に向かう流れにさえなったかもしれない。
だとすると、彼は身を隠していた?どうして?
それに、なぜ今になって姿を現した?
「ロクロウ。キミはこれから何処にいくんだい?」
「そういえば話してなかったな。知っておるのなら場所を教えて欲しいのだが・・・霊峰レイフォルクという場所に行きたいのだ」
霊峰レイフォルク!?
これから自分達が向かう場所をなぜこの男が知っている?
それにあそこは山があるだけで何もない、いや、あるにはあるが、しかし・・・。
「知っておるようだな!なら教えてくれ、友に会いにいくんだ」
「友?エドナの知り合いなのか?」
「おお、エドナの知り合いだったか、しかし俺が会いにいくのはその兄のアイゼンの方なんだ」
言いながら先ほど捨てた小太刀を拾い、ホコリを払ったあと懐に入れる。
「俺の目的は、アイゼンを殺しにいくことだ」
「なっ!?」
さっきからなんなんだこの男は、優しそうな雰囲気を終始放っているくせに、言うことが突拍子もない。
やはり敵なのか?ミクリオは警戒を高めて、いつでも武器を出せるように準備する。
「まぁ、そう早とちりするな。スレイとやらも起きてしまうぞ」
ミクリオは自分の膝を枕にして眠っているスレイの顔をみる。エダも先程から自分に寄りかかって眠っているようだ。
だが、今の彼であれば自分だけでも倒せるかもしれない。
殺せばスレイは悲しむだろうが、今ここで奴を倒さなければ、エドナにまで被害が及ぶ可能性もある。
「アイゼンを殺すな。と言えばキミは止めてくれるのかい?」
ミクリオの言葉にふむ。とロクロウは思案する。
「それはできない。約束だからな。ドラゴンになってしまったら自分を殺して欲しいと、奴には言われている」
「じゃあ、もしも元の姿に戻せるとしたら?」
「そりゃあ、もう殺す理由はなくなるな!」
よかった。と思う。
やはり話が通じない相手ではないようだ。
ミクリオは息を吐き出してロクロウに言った。
「僕たちの目的は、エドナの兄、アイゼンを浄化して元に戻すことだ」
「ほぅ・・・。できるか?そこの導師で」
「やってみせるさ。と、いいたいところだけど、すぐには無理そうかな。でも、絶対やってみせる。僕たちだけでだめなら、もっと仲間を増やして、絶対に成し遂げる。これまでだってやってこれたんだ。今回だってできるさ。」
ミクリオは今の自分の思いを口にする。
なんて大層な思いなのだろう。確証なんてない。でも、スレイやみんなとなら絶対にできる。
それは思いでも願いでもなく。誓いであり目標だった。
ミクリオを見つめるロクロウの目が優しげに細まる。
「そうか、ならばそれを見届けてからでも遅くはないかもしれんな」
「!? じゃあ!」
「しばらく待つさ。ここまで、奴を倒すために数百年は修行した。あと数年や数十年なんて誤差だろ?」
よかった。わかってもらえた。
やはり見た目よりも善性な考えの持ち主のようで、こちらの意思や心を尊重してくれる相手のようだ。
ほっとするのも束の間。ロクロウから放たれた次の言葉に、ミクリオは自分の浅はかさに打ちのめされることとなる。
「じゃあこれから、よろしく!ミクリオ」
「は?」
放心したように気の抜けた声を上げるミクリオに、ロクロウは面白いものを見たというように笑いながら告げる。
「だから、見届けると言っただろう?旅は道連れ、世は情けだ。それにお前らにはシグレの太刀を見つけて貰った恩、それから穢れを払ってもらった恩もあるしな。借りたものは必ず返す。それが俺の家、ランゲツ家の家訓なんだ」
「え・・・ええええーーーー!!!?」
ミクリオの叫びにエダとスレイが飛び起きる。
二人とも何が起きたのかわからず、目を白黒させている。
新たな旅立ち、その開始早々。まさか災渦の顕主が仲間になるなど、誰が予想できよう。
スレイ一行は新たな仲間を加えて、霊峰レイフォルクを目指して動きだした。
最近暑いですね。
みなさんは体調崩されたりしていませんか?
夏はいっぱい水分をとって、涼しい部屋で小説でも読むのがおすすめですっ!
今回はロクロウさんが仲間になりましたね。
ロクロウが災渦の顕主設定は完全に捏造ですが、まぁ1000年以上戦い続けて生きてたら、ヘルダルフなんて遥かに越える強さになってそうだなぁと思って、即戦力キャラ設定にしました。
前回ちょっと気になった方もいたかもですが、ランゲツ流の型とか、絶対新しく開眼してそうだなぁと思ったので、ゲームでは九の型までですが、この世界ではもうちょっと先まである設定です。
ステータス的な物も考えてはいるですが、それはそのうちもうちょっと仲間が増えて、需要がありそうなら公開していこうかなと思っています。
それでは次回はやっとレイフォルクに行くみたいですね。もうすぐ、この男だらけのパーティーに一輪の花がっ!!
では次回もよろしければお付き合いいただけますようお願いしますー。