テイルズオブゼスティリアクロスIF ~聖主の願い~ 作:ソフトな何か
テイルズといえばスキッド!
新しい地域に行くと発生するあれです!
まじめな話もあれば、楽しい会話もあっていいですよね。
そんなスキッドを意識して、ノリのまま書いてみました。
もうちょっとキャラが増えたら特徴的なスキッドにも挑戦してみたいですね!
スレイとミクリオの再開。
ミクリオの提案でイズチに戻ると、イズチの村人のテンションは一瞬で最高潮に達した。
「スレイ!おかえり!」
「よかった。生きてたのね」
「今日は祭りだ!うおおおおおお!」
「ミクリオよかったね!最愛の人が帰ってきて!」
涙ぐむ天族の中にはスレミクやらミクスレやら、やや不穏なセリフも飛び交っていたが、村の家族として二人を暖かく迎えてくれた。
とても嬉しいことなのだが、二人の顔は浮かない。
それもそのはず、二人には課題が残されているのだ。
その課題となっているのがそう。ヘルダルフの存在。
ヘルダルフをここまで連れて来たはいいが、どのように村人に説明するかである。
村人や自分達にとって、ヘルダルフはジイジの仇である。
とてもじゃないが、ジイジが亡くなったことを知らせに来たことがあるミクリオは、この少年がヘルダルフの生まれ変わりであることを伝えるのは気が引けていた。
正直なところ、村に寄ることすらしたくなかったのだが、既に領域で察知されている以上、村に寄らないわけにもいかず、また、ヘルダルフの方も産まれたばかりの長旅でだいぶ消耗していたため、長く休ませる必要があると判断し、仕方なく村に寄ることとなったのだ。
スレイはミクリオの居る居ないに関係なく、元々イズチに寄る予定だったようだが、自分が居なかったらどうやって村人に説明するつもりだったのだろうか、能天気に彼の正体を暴露してしまいそうな親友にミクリオは目眩を覚えた。
「おや?ボウズはどうしたんだい?」
「あら、かわいい。どこの子なの?いくつ?」
始まってしまった。もう後戻りはできない。
目敏くヘルダルフを見つけた村人達から口々に質問が飛ぶ。
ヘルダルフどころかスレイの怯えようを見ると、最悪の場合は神依を纏って逃げ出すことも視野に入れるべきだろう。
しかし、仮に神依化したとしてもこの人数の天族から、ヘルダルフを守りながら逃げ切れるのだろうか・・・。
あらゆる最悪を想定し、必死に思案するが結論として、このノリに合わせるしかないな。との答えにしか辿り着かなかった。
胸中で頭を抱えたい気分だが、もうここは自分が乗り越えるしかないだろう。スレイやヘルダルフではいつボロがでてもおかしくはない。
「みんなすまない。スレイと連れの子は長旅で疲れているんだ。僕から説明するから二人には先にスレイの家で休んでもらってもいいかな?」
「ああ、そりゃ構わねぇよ。スレイの家はキレイにしてあるから、ゆっくり休むといい」
ミクリオはスレイに目を向けると、任せろと言うように頷いた。
「すまん。ミクリオ」
小さくミクリオだけに聞こえる声で言うと、スレイは急ぎ足でヘルダルフと共にスレイの家に向かった。
「まぁ、こんなとこで立ち話もなんだから村長の家にでもいこう」
村人に進められるまま、ミクリオはかつてのジイジの家へ向かった。
ジイジの家・・・。
ジイジことゼンライ亡き後、そこには誰も住んでおらず、村の寄り合い所的な役割を果たす場所となっていた。
家の奥、囲炉裏のある部屋では既にお祭り騒ぎが始まっていた。ミクリオはジイジがよく座っていた場所を見つけるとそこに座った。
「あれ、ミクリオだけか?スレイは?」
「すまない。長旅だったようで疲れているみたいなんだ。先に休んでもらったよ」
先に始めていた人たちに簡単な説明をすると、そのまま話しの輪に加わった。
「しっかし、あの可愛い子供はなんだ?髪の色はミクリオにそっくりだし」
「でも、目の色がどっちにも似てないのよねぇ」
「なのにミクリオには懐かないでスレイにべったりだしぃ」
「で、ミクリオ。お母さんになった気分はいかが?」
みんな思い思いの質問をミクリオに投げかける。
長く生きているイズチの天族達は、特に暇をもて余しており、とにかくイベントごとが大好きなのだ。
一瞬たじろいだミクリオだが、コホンと咳払いをして姿勢を正す。
すると村人たちも真似をするように静かに姿勢を正して視線をミクリオに向けた。
「まず、驚かないで聞いて欲しい。あの子は・・・」
「・・・」
ゴクリと生唾を飲む音が聞こえる。
言える。今のこの状況ならギリギリ言える。がんばれ自分!
心の中で必死に自分を鼓舞する。
充分に間を開けて、そしてなるべく真面目な顔を作り上げてから少し恥ずかしげに目を伏せると、ポツリと呟いた。
「僕と・・・。スレイの子供なんだ」
ワァァァァァァァァァァァァァア!!!
瞬間。爆発しそうな程の歓声が上がる。
予想していたとは言え、みなの歓声に耳を痛めながら、それでも表情を崩さない。ミクリオはこの100年の間にポーカーフェイスを覚えていたのだ。
「え、え、なんで!?すごーい!」
「ミクリオ。オレ信じてたよ。お前はスレイと幸せになるって!」
「キャー!告白は?告白ってしたの?どっちから?」
「ミクスレキタ」
「スレミクよ!」
「さすが性別ミクリオ。興味深い」
もちろんこんなのは場を濁すための嘘だ。しかし、テンションの振り切れた村人たちは、天族と人間との間で子供が出来ないという、基本的なルールまで愛の前では些細なことと切り捨て、半狂乱で騒ぎまくるのである。
(スレイ。ごめん。でも僕は乗り切ったよ。)
大騒ぎする村人達を横目に心の中で小さく嘆息する。
あぁ。もう休みたい。
ミクリオの精神は既に限界を迎えていた。
そんな瞳から光の消えたミクリオに誰一人気づく者はおらず、狂喜渦巻く大宴会は朝まで続くのであった・・・。
翌日。
村を歩くスレイに、村人達から口々に祝福の言葉を投げ掛けられ、スレイが苦笑いという特技を覚えることになるが、それはまた別の話である。
ごめん。ミクリオ。
今回の見切り発車の犠牲はキミだったね。
前回のあとがきで目的がどうとか言ってましたが、そんなことより目からハイライトを失ったミクリオを見て!
どうしても書きたかったから後悔はしていない。
でもこれはさすがにごめんなさい。