テイルズオブゼスティリアクロスIF ~聖主の願い~   作:ソフトな何か

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前回いいところで終わっちゃいました!
気になります!気になります!!

あの爆発の後みんなはどうなっちゃったんでしょう。
スレイたちはエドナさんと会えたのでしょうか?

今回もみんなの活躍が気になります!


9.怖いもの

 エダです。

 

 えっと・・・。

 

 始めはちょっとした思いつきだったんです。切れないなら雷混ぜてみたら、いい感じに敵が感電して動かなくなったり、あわよくば倒せちゃったりしないかなぁって。

 でも、なんかですね。

 地面、無くなっちゃったんですよ。いや、無くなるというのは少し表現が違いますね。溶けた・・・と表現すればいいのでしょうか。

 

 えーっと・・・。

 

 それでですね。戦ってた敵さんですが、アルマジロってミクリオは言ってたんですけど、なんかこう、食卓の前とかそういうところに、絶対にお出しできない感じに真っ黒になって、なんかもう、いろいろ取れてて。ああ、これは誰が見てもだめだなぁって形をしているんですよね。

 

 えーーーっと・・・。

 

 さっきからですね。ボク・・・じゃない。わたし、すごく焦っていてですね。なぜなら、さっきの爆発からスレイたちの姿が見えなくてですね。ちょっと想像したんですよ。あれ?これもしかして、スレイたちもこのアルマジロっぽくなってませんか?って。真っ黒になっていろいろ飛び散ってませんか?って・・・。

 

 えーーーーーーーっと・・・。

 

 控えめに言って、マジヤバかった。

 

 ひとしきり独白を終えて辺りの惨状を見回す。

 これはもう大惨事である。

 これを別の何かで表現しようとしても、行き着く先はやっばり大惨事。

 

 呆然と立つエダの瞳からは、完全にハイライトが消えていた。

 

 群生していた草木はごうごうと音を立てて燃える。その辺りにゴロゴロしていた大きな岩なども、なぜか真っ赤に焼けて形を小さくしており、元の形が何であったのか既にわからない状態になっていた。

 爆発の中心点である敵が居た地点には、なぜか大きなクレーターができており、本来居たであろう敵の姿は、クレーター内の遠く離れた場所に真っ黒な炭のような状態で静かに鎮座している。

 

 「スレイぃぃ。ミクリオー。ロクロぉー・・・」

 

 無駄とわかりつつも足元の石や岩をどけていく。

 どうしよう。どうしよう。どうしよう。

 取り返しのつかないことをしてしまったかもしれない。

 もし見つけたとき、みんなが真っ黒焦げだったら。もし、バラバラになっていたら。

 みんなが見つかるのを願うと同時に、そんな姿を見たくないという思いも膨らんでいく。

 ぽろぽろと涙で視界が塞がれていくが、そんなことを気にしている余裕はない。

 

 作業を開始して数分。

 そんなエダの後方。のそりと動きだしたのは黒い物体。

 バラバラだった体は黒い霧のような穢れが生き物のように纏わりついて、次第にその体を復元していく。

 後ろ足が戻り、ひび割れた背中の皮膚が戻り、そして遂に元の姿を取り戻す。

 

 「ブオオオオオオオオ!!!」

 

 怒りの咆哮。

 

 「な、なに!?」

 

 不安と恐怖で憔悴したエダ。

 突然の咆哮にいつものように反応ができなかった。

 

 「うわあぁぁっ!!」

 

 既に目前まで迫っていた敵に成すすべもなく、尻餅をついて悲鳴を上げる。

 

 「・・・アベンジャーバイトォ!」

 

 突如聞こえた声が力を生み、激しい風が周囲を包む。

 エダは両腕で風から顔を庇いながら、突然出現した嵐に目を凝らす。

 

 圧縮された空気はいつの間にか目視できるほど固まり、高速で流れながらエダの目の前。敵に立ち塞がる形で、まるで巨大な獣の牙と顎のような形を形成する。

 

 「子供に手ぇだしてんじゃねぇ!」

 

 苛立ったような男の叫び声。

 その声に呼応するかのように、先ほどの敵の咆哮よりも大きく風が唸ると、突進して来た敵に上下から激しく襲いかかった。

 

 バチィィィィィィ!!

 

 圧縮された空気に敵が触れた瞬間、先ほど復元したばかりの体に無数の切り傷を刻まれる。

 風の牙に無惨にも補食された敵は、空中に持ち上げられ、そして大きく体を振り回された。

 体の傷を癒そうと、黒い穢れが集まってくるが、激しい風に阻まれ、集まっては散らされるを繰り返していた。

 

 「エドナ。取り敢えず足止めだ」

 

 「はいはい・・・」

 

 何度目かの男の声。ようやく気付いたが、自分の背後から声が聞こえていた。

 そしてその男の声に続くように、気だるそうな女の声が続いた。

 

 「いんぶれー・・・」

 

 まだ空中に浮かんだままの敵がキラキラと輝く宝石のようなものに徐々に体を覆われる。

 そしてその輝きが全身を覆った瞬間に女は叫ぶ。

 

 「・・・すとっぷ!」

 

 女が叫ぶと、宝石のようなもの動きが止まり、そして高い空から勢いよく地面に突き刺さる。

 地面に突き刺さったそれは標本のように微動だにせず、その場に静かに鎮座した。

 

 「ふぅ・・・。どうするよこれ?」

 

 「仕方ないから捨てましょう」

 

 「えぇ・・・。まぁ、言うと思ったけどさぁ。もうちょっとやり方あるんじゃねーの?」

 

 

 男が困り顔で言うと女は呆れたように嘆息し、仕方ないわね。と言って背後の大きな岩に歩み寄った。

 

 「起きなさい。いつまで寝てるつもり?」

 

 なぜか大きな岩を突然げしげしと蹴り始める女。エダは突然の行動に頭に疑問符を浮かべる。

 男はやれやれといった風に両手を肩の高さまで持ち上げ、首を横に振っていた。

 

 「まぁ、そこのあんたも見てなって」

 

 エダは男に言われた通りその場で彼女を見続ける。

 女は蹴ることに疲れたのか、今度は手に持っていた傘で岩を突き始める。

 周りにゴッゴッっと乾いた音が響き渡るが特に何も変化はない。

 

 とうとう苛立ってきたのか、その音はどんどん大きくなり、そして遂に彼女はキレた。

 

 「いい加減に起きなさい!あいつを殺すしかなくなるわよ!」

 

 その言葉が何を意味するのか、エダは全く理解出来なかったが、その言葉がスイッチとなったように、辺りを青白い光が照らし始めた。その光はさっきから女が蹴ったり突いたりしていた大きな岩。もっと言えばその岩の下から青白い炎が漏れてているのがわかる。

 

 先ほどエダが撒き散らした破壊の代償として燻っていた赤い炎の色は次第に青い光に飲まれていき、そして遂に周囲全てを青い世界に変化させる。

 

 エダはこの青い光。この炎の正体を知っていた。

 

 "浄化の炎"

 

 聖剣を抜くことができる唯一の人間のみが放つことの出来る炎。

 そしてその聖剣を抜いた人物。

 エダはその人物が誰か知っている。

 

 「スレイ!」

 

 「待ちな!おい。そろそろだ!」

 

 男の声に振り向くと、宝石のようなものにヒビが入り始め、小刻みに振動していた。

 

 エダは驚き足が止まるが男に声をかけられた主である女は全く意に介さない。

 女にはきっと聞こえているはず。なのにその声を敢えて無視しているように見えた。

 

 「ブオオオオオオ!!」

 

 先ほどよりも大きな咆哮。

 黒い穢れが瞬時に先ほどの傷を修復を始めるが、それすらも待ちきれないと、終わる前に敵は走り出す。

 

 目標は自分に背を向けている女。

 

 ズドドドドドドド!

 

 「くそっ!」

 

 男が慌てながらチェーンのような武器を敵に向かって放つ。

 しかし、背中の硬い皮膚に刺さりはしたものの、動きを止める程の威力は無かった。

 

 危ない!

 

 エダは異国刀を手に走るがとても間に合わない。慌てて天響術の体勢に入るがもう敵は女の目と鼻の先。

 間に合わない。

 

 「ハクディム=ユーバ!」

 

 突如聞こえたスレイの声にエダは大きく目を見開く。

 

 「っ!?」

 

 辺りを見ると、先ほどの女の姿は見えず、代わりに先ほどまで青い炎を吹き出していた巨大な岩が砕かれ、その中から金色の光を放ちながら真っ白な衣装を身にまとったスレイが現れた。

 いつもの茶色い髪の毛は今は金色に輝き、両腕の横で宙に浮く巨大なガンドレットにエダは目を奪われる。

 

 敵は突然のスレイの登場に警戒し、その場で大きくたたらを踏む。

 スレイはそれを一瞥すると振り返ってエダに向けて言った。

 

 「おまたせ。もう大丈夫だ」

 

 「スレイぃぃ・・・」

 

 スレイの声に、その場にペタンと座り込む。

 よかった。本当によかった。

 エダは頭の中で想像していたスレイの丸焼き姿を頭から吹き飛ばす。

 

 「はぁぁぁ!流動の大地!」

 

 敵に向き直ったスレイは、構えもとらずにその大きな拳を持ち上げると、勢いをつけて地面を穿った。

 ズシン!と大地が軋みを上げた直後。大地が大きく揺さぶられ、間近でそれを食らった敵は、たまらず足をもつれさせ、その場に釘付けとなる。

 

 「霊命の脈動!」

 

 スレイは大地が揺れる中、それを何事も無いように一歩前に進み出ると、更に大きな掛け声と共に大地を穿つ。

 

 ズドド!

 

 先ほどと同じ大地の軋み。しかし今度は敵の足元の地面が盛り上がる。

 未だに揺れで動けない敵はそれを避けることが出来ず、そして勢いよく生えてきた石柱に勢いよく腹に一撃を食らって、大きく宙を舞う。

 

 「いくよ」

 

 スレイは宙に浮いた敵目掛けて跳躍すると、その腕についた大きなガンドレットで敵を握るように力強く空中で掴む。

 

 「デッドキャプチャー!!」

 

 掛け声と共に大きく振りかぶり、地面に向かって勢いよく投擲。

 敵はその力と投げられた速度に、成すすべもなく地面に叩きつけられて大きなクレーターを作る。

 

 土煙が流れた後のその場所には、ピクリとも動かずに横たわる敵の姿が浮かび上がった。 

 スレイは上空から敵が沈黙したのを見ると、エダの横に静かに降り立つ。

 

 「エダ。大丈夫?ごめんな。怖くしちゃって」

 

 スレイはまだ涙を溜めているエダの頭を撫でようと手を伸ばすが、今の自分の手の大きさに気付き、一度止まって神依を解くと改めてエダの頭を撫でた。エダはそれを疲れた笑顔で受け入れる。

 スレイはエダの体を見たが、幸いエダの体には目立った怪我などは見られず、スレイは安堵のため息をついた。

 

 「おーい。スレぇイ!」

 

 向こうからスレイの名前を呼びながら大きく手を振る男。スレイは声のほうに目を向けると嬉しそうに大きく手を降る。

 いつの間にかスレイの少し後ろに先ほどの女の人も背中を向けて立っていた。

 

 「エドナ。ザビーダ。久しぶり!」

 

 「おうよ。お前さんぜんぜん変わんねぇなぁ。安心したぜ」

 

 「まぁ、寝てただけでしょうしね。そんなに変わるとも思えないわ」

 

 ザビーダと呼ばれたが大笑いし、エドナと呼ばれた女が、顔だけこちらに向けて少しだけ微笑んだ。

 

 「そっちの子の事は後で聞くわ。まずやることをやりなさい」

 

 エドナの言葉にスレイは頷く。

 

 「うん。浄化を始めよう。二人ともお願い」

 

 今度はスレイの言葉に二人が頷くと、エドナはスレイの横に立ち、ザビーダは、エダを庇うように目の前に立った。ザビーダは先ほどのチェーンのような武器を。エドナは傘を構えて、来るであろう穢れに備えた。

 

 二人の準備ができたことを確認すると、スレイは腰の祭礼剣を抜き放ち、その剣に青白い炎を灯す。

 また辺りが青白い炎に照らされる。

 

 いつの間にか日が落ち始めた山の中腹に清浄な気配が生まれる。

 エダはその炎とスレイを見ているとなぜだか泣きそうになる。

 なんでだろう。

 ふとした疑問だったが、何かとても大事な気がする。

 でも、どうしても思い出せない。確か産まれた時にも似たようなことを考えていた気がした。

 

 うん。わかんないや・・・。

 

 少し寂しい気持ちになったが、大事なことであればいずれ思い出すだろうと、今は一旦頭の隅に追いやり、スレイの姿を見つめ続けた。 

 

 ボゥ・・・。

 

 スレイは数度剣を振るう。

 縦に、横に、斜めに。

 その度に炎は大きさを増し、そして周囲の穢れを焼いていく。

 いつの間にか炎は辺りの穢れだけでなく、先ほどまで戦っていた敵も燃やしつくし、気がつけば既に穢れの気配が消え去っていた。 

 

 「よっし。こんなもんかな?」

 

 スレイが言い、炎を消して剣を鞘に納める。

 途端に周囲に夜の帳が下りて、少しだけ肌寒さを感じた。

 

 スレイは座ったままのエダに近づき、そっと手を伸ばす。

 

 「さぁ、立てる?」

 

 「うん・・・」

 

 笑顔で手を差し出しながら、優しい声音でエダに囁く。

 

 スレイは考えていた。

 今回の戦い。嫌な物を沢山見せてしまう戦いだった。

 きっと今後もこんなことがあるだろうから、経験することは自体は悪いことだとは思わない。

 でも、早速一人で危険に晒させてしまったことは不可抗力だとしても反省しなくてはいけない。

 

 握ったエダの手の冷たさと、今も止まらない体の震えに少しだけ後悔の念が生まれる。

 確かに色々と不幸な事は起こった。しかし予想できないものではなかったはずだ。

 だから・・・。

 

 やっぱり反省しないとな。

 

 スレイはエダの顔を覗く。

 もう限界だったのだろう。その瞳にいつもの元気が無くなっており、若干フラつくのか、もう片方の手でスレイの腰辺りの服を掴んで必死に立っていた。

 

 「エダもういいよ。おやすみ」

 

 言うとスレイはエダを軽々と抱き上げて、そして優しく頭を撫でた。

 すると、数秒足らずで小さな寝息が首筋に当たるのを感じる。相当疲れていたのだろう。

 

 スレイは苦笑しながら振り向くと、背後の二人、エドナとザビーダに声をかける。

 

 「・・・ほんとは少し休憩しながら話したいとこだけど・・・。そうも言ってられないかな?」

 

 「まぁ、あれだけ派手に暴れたんだもの。気がつかれないわけないわね」

 

 「あぁー。マジかー。もう勘弁してくれよぉ」

 

 エドナが今日何度目かのため息をつき、ザビーダも何度目かの愚痴を零す。

 

 

 全員気づいていた。先ほど浄化が終わった直後から、誰かの領域内に居たことを。

 そしてこの禍々しい領域をかつて感じたことがあったことを。

 

 「来る!」

 

 ズダンっ!!!

 

 スレイの声と共に、大きく地面を揺らして着地した巨大な生物。

 

 "ドラゴン"

 

 穢れた天族の成の果て。

 恐怖と畏怖と、そして悲しみの象徴。

 

 しかし、ただのドラゴンでは無い。この真っ黒で巨大なドラゴンに全員見覚えがある。

 

 「グゥルルル・・・」

 

 「兄さん・・・」

 

 エドナが無表情のままポツリと呟く。

 突如目の前に現れた巨大なドラゴンに、今ここにいる全員が動けないでいた。

 

 




お兄ちゃん(ドラゴン)来ちゃいました!

イケメン枠ですね。尊い。
この人こんなに長いことドラゴンやっててまだ記憶とか残ってるのでしょうか。

さて、もうそろそろベルセリア勢が増える予感!

次回もわくわくですね!

それでは次回もわたしと一緒に応援してください!
ではではー!

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