テイルズオブゼスティリアクロスIF ~聖主の願い~ 作:ソフトな何か
みんなもあのゴミを見るような目で罵られたいですよね!
答えは聞きません!
それでは今回もれっつごー!
今日も高い空には雲一つ無く、とてもいい天気。
冷たい風が頬を撫でていき、強い日差しに火照った体を瞬時に冷ましてくれる。
眼下に映る大きな雲を眺めながら、ちょうどよい岩場を見つけ、そこに少女は腰かけた。
「兄さんはどこかしら?」
領域を感じるのでそう遠くには行っていないと思うのだが、姿が見えないと不安になる。
そろそろ時間はお昼というところ。自分は天族なので食事をしなくてもいいのだが、この日課のために食べ続けなければいけない。
少女はポリポリとピーナッツを食べながら辺りを見回す。
そして視界の端に一瞬移った人影を見つけた。
「げ!」
また来た。ほんとうに暇なヤツね。
少女は一瞬嫌な顔をすると、手のひらに残ったピーナッツを全て口の中にポイポイと放り込んで、座ってた岩から飛び降りた。
崖の下をそっと覗く。
すると、長く伸ばした白髪に筋肉質な上半身裸の男が、ずんずんと鼻唄を歌いなが楽しそうに山を登ってきている姿を確認した。
あっ!きりもみしてる。
せっかく道っぽく整形した場所に落とし穴を設置していたのだが、早々に看破され軽々と飛び越えられてしまった。
くっ・・・。あのきりもみ本当に便利ね。
かつての仲間の若い風の天族がいれば、きっと、面白い事を言ってくれたかもしれないが、残念ながら彼はもうこの世には居ない。
憎々しげに登ってくる男を睨むと、男がふと上を向き、こちらと目が合った。
「死になさい」
なぜか殺意が芽生えたので、崖の先の地面を傘で軽く突く。すると、まるで強い衝撃でも受けたかのように巨大な破砕音と共に崖が崩れ、大きな岩を含んだ土砂となって男に向かって殺到する。
下で男が、うお!マジか!?などと言ってるが、わたしには聞こえない。えぇ、全然聞こえないわ。
先ほどよりも先の短くなった崖の端に行き、下を見る。
やはりというか、当たり前のように彼は生存しており、地形が変わった岩場をズボンのポケットに手を突っ込みながら、ぴょんぴょんと飛び跳ねている。
「まるでゴキブリね。ゴキブリのように潰されれば良かったのに」
あんまりな感想を残すと、少女は諦めたのか、自分も岩場を飛び移り、男の前へと姿を晒す。
「おー。お久しぶりじゃないエドナちゃーん。今回はちょおおおおっとだけ死ぬかと思ったぜぇ・・・」
男はいつものように笑顔で軽薄そうな挨拶をすると、よっと目の前の岩間を飛び越えた。
「それはとても惜しかったわね」
少女・・・エドナはこの男、ザビーダを知っている。
かつて一緒に戦った仲間であり、今では数少ない自分の兄の友人と呼べる風の天族。
一見ただの軽薄なチンピラにしか見えないが、彼の背中には想像も出来ないほどの重い過去がのしかかっている。
長く天族として生きていると少なからず重い過去を背負うことはあるが、そんな中でも常に明るく振る舞える彼の性格には呆れではなく素直に尊敬している。
でも、やっぱりウザイから死んでくれないかしら?
エドナが物騒な事を考えてると、ザビーダがいつにも増して、まじまじと自分を観察していた。
「なにを見てるのかしら?」
「あ?いや、お前さん。ずいぶん成長したなぁっとな。まぁ、まだライラに比べて胸のボリュームがちょーっと足りてないがな!」
言ってハハハッ!と笑っているザビーダにエドナは無言で傘の先を向ける。どうやら彼はとても死にたいらしい。
「ちょっと!ちょーっと待ってよエドナちゃーん。今日はいい情報持ってきたんだって!」
「何?くだらない話だったら、体に穴が空くわよ」
半眼のエドナにザビーダは両手を上げて待った待ったと言いながら、腰から下げたペンデュラムを視線で差した。
ペンデュラムを見ると、淡い緑色の燐光が灯っており、それは触れてもいないのに、先端の宝石がある一方向を向いていた。
「これが?」
結局わけがわからず、傘を彼の脇腹に突き立てる。
「ぐおっ!いててて!スマン!スマンかったから!傘の先はホントに怪我すっから!」
一旦傘を戻すと、半眼になり無言で早く言えと訴える。
ザビーダは脇腹を押さえ、反対の手で腰のペンデュラムを掴むと、それをぶらぶらと振って得意気に言った。
「スレイだよ!スレイが近くまできてる!」
「は?」
一体なんの冗談だろう。目の前の彼は何を言っているのだろう。
スレイが・・・帰ってきた?
あまりの衝撃に思考が停止してしまう。
それもそのはず、エドナは彼との最後の約束を信じて、100年という長い時間をずっと待ち続けていたのだ。
「ウソよ・・・」
「ホントだ。山のふもとまで来てる」
エドナは近くの崖から下を凝視する。
見えない。どこ?
ザビーダは救えないほどバカだが、くだらない嘘をつくような天族ではないことは知っている。
ドゴッ!
「ちょ!?」
天響術を使用し、足元の岩を跳ね上げる。
巻き込まれたザビーダから抗議のような悲鳴が上がるが無視。
ジークフリートの弾丸のように勢いよく空に飛び出した二人は、遥か遠く、霊峰への入り口に彼とその仲間の姿を見つける。
「スレイ!」
「こらこらこらこら、余所見はいかんでしょ・・・。よっと!」
目の前に迫る岩肌に激突しそうになった瞬間。ザビーダはエドナを抱えて、風の天響術を岩肌にぶつけた。
反動で速度を相殺し地面になんとか着地する。
とりあえず抱き抱える形のままでは都合が大変よろしくないため、ザビーダはエドナを地面に下ろす。
いつもならここで、なに触ってんのよ!と、傘が突き立てられるところなのだが・・・。
エドナはただ放心したように、大きな目を見開きその場に立ち尽くしていた。
「・・・」
エドナ。地を司る天族。
"腰まで伸ばした"長い髪は彼女の待ち続けた長い時間と、その間に過ごした成長を象徴するものだった。
エドナは今でも鮮明に思い出せる。
彼と旅をしたのはほんの一年足らず、100年という時間と比べると、本当に些細に感じるほどの時間。
それでも、彼を待ち続けるには理由があった。
スレイ。かつての導師だった旅の仲間。
エドナがこれまでずっと離れなかった、このレイフォルクから外の世界に連れ出した最初の人間。
そして、誰もが殺そうとした、自分の兄を唯一救おうと戦い血を流し、模索し、そしてついにその方法にまでに辿り着いた人間。
彼ほど自分の兄を救おうとしてくれた人はいなかった。
彼ほど兄のために行動を起こしてくれる人はいなかった。
彼ほど他人の為に悲しむ人を見たことがなかった。
だから信じた。だから待った。
100年という長い歳月を、常に辛い現実を突き付けるこの場所で過ごすことができた。兄を守ることができた。
「うっ・・・ひっ・・ぅ・・・」
エドナの細い肩が小刻みに揺れる。
見開いたままの大きな瞳からは大粒の涙が溢れて止まらない。
泣いたのはいつ以来だろう。
嬉しさと安堵と新な希望。この涙はきっとそんなに悪いものじゃない。
ザビーダは何も言わずにエドナの頭に手を置くと、そのサラサラな髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜた。
・・・。
「みくりおー。なんかいるー」
「ああ、あれはアルマジロといってね。とても丸まるのが上手な生き物なんだ」
端から見れば仲の良い家族のピクニックの風景に見えなくもない。
ただ、場所がただの山で、子供が指差す先にいるのが、憑魔ではなくかわいい動物だったらの話だ。
「来るよ!ミクリオ!」
「ああ!エダ前に出るんだ。ボクらが援護する!」
「うん!」
各々の武器を構えて敵と対峙する。
敵は都合のいいことに1体だけ。しかも自分たちが戦ったことのある相手。エダの戦闘訓練には持ってこいの状況だ。
「エダ。相手の動きをよく見るんだ」
「わかった!」
散開。
敵を取り囲むようにそれぞれが配置につく。スレイとミクリオが敵の背後。エダは敵の前面に一番近くで腰だめに構える。
その横ではロクロウが、二本の短刀を構え、敵を睨み付ける。
「俺が仕掛ける。エダは向かって来た敵を仕留めろ!」
ロクロウは言うと、二本の短刀を敵に向かって投擲。
「ブオオオオオ!」
二本の短刀は敵の背中、固い皮膚に覆われた部分に深々と突き刺さる。
怒りの鳴き声を上げた敵は、物凄い勢いでロクロウに向かって突進の態勢をとる。
「エダ、行け!」
敵がロクロウに向かって突進を開始したのと同時に、ロクロウの声に合わせてエダも走り出す。
「はあああああっ!」
敵の真横から、気合いと共に一閃。
ギィン!
「んなっ!?」
恐ろしい程のスピードで抜き放たれたそれを、敵の固い皮膚はいとも簡単に弾いた。
それに気づいたロクロウは瞬時に回避から迎撃の態勢をとるが、エダの変化に気づき、その場でエダを凝視した。
刀を弾かれたエダは驚きで体が一瞬硬直。しかし、次の瞬間エダの刀に紫電が巻き起こった。
「雷!神!剣!」
弾かれたままの態勢で右半身が一歩後ろに下がった状態。それを無理やり左足に体重を乗せ、その勢いのまま敵に突きを放つ。
ドン!バヂバヂバヂ!
無理な態勢で放ったせいか、今度も刀は敵の皮膚を貫通できない。しかしその刀身が敵に触れた瞬間、まるで落雷でも起こったかのような爆発音の後、恐ろしい威力の紫電が敵を包む。
「うわ!?」「なんかヤバ!」「なんと!」
エダを除く三人は、それぞれ驚きの声を発すると、大きく後ろに飛び退く。
紫の雷はどんどんと圧を増し、ついには目も開けられない程の強い光となって周囲を包んだ。
ええ!?ここで終わり!?
気になりますー!
エドナさんとザビーダさんの登場ですね。
エドナちゃんは長い年月を得てエドナさんになりました!
ミクリオもなんか成長してたけど、ミクリオはミクリオでしたね!(何
それでは今回も読んでいただいてありがとうございました。
次回もよろしくお願いしまーす!