聞こえるか、この鐘の音が()   作:首を出せ

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次回最終回です。


聞こえるか、この鐘の音が

 

 

 グレン・レーダス率いる2組が魔導兵団戦に於いてレオス・クライトス率いる4組を下したその日の夜。クラスメイト達が何故かそれぞれお金を持ち合ってミニ打ち上げが開始された。ちなみに内容の殆どが終始システィーナとサンをいじり倒すという内容であり、このようなことに耐性のないシスティーナは初めから最後まで顔どころか首まで真っ赤にして過ごした。ちなみにサンは溜息を吐きながら宣言通りクラスメイトの首を一人ずつ絞めて回っていた。最初の犠牲者は無駄に煽りまくったグレンである。はっきり言って地獄絵図である。しかし、それでもクラスメイトにとって後はグレンにとっても楽しいと言えるひと時だっただろう。特に、サンに関しては出典柄、避けられており本人の性格もあって今までクラスに馴染めていなかったのだから。真の意味でクラス全員と楽しんだ打ち上げだった。

 

「ん~……疲れた……」

「システィーナ、元気ない。……病気?」

「違うわ。さっきの打ち上げでね、色々疲れちゃって」

「システィ。質問攻めだったからね」

 

 すっかり日も落ちて街灯が街道を仄かに照らし始めた時間。同じフィーベル家に住んでいる3人は帰宅の途中である。尤も、システィーナは本人の言う通り質問攻めにされてとても疲れているようでその足に力が入っていなかった。それに対してリィエルは小さく首を傾げルミアは微笑ましそうに見ているだけだった。

 

「そもそもどうして助けてくれなかったのよ」

「別にそこまで嫌がってないんじゃないかなーって思って」

 

 先程の内容を思い出しているのか、小さく噴き出すルミア。システィーナはグレンと会ってから少しだけ意地悪になった気がする彼女を見て軽く唸っていた。どうやら打ち上げで行われたグレン考案王様ゲーム()が若干トラウマになったらしい。

 

「ただひたすらにシスティーナとサンが何かしてるゲームだった……」

「リィエルだってそれに加担したでしょ……」

「グレンがやれっていうから」

「あのダメ講師……!」

 

 システィーナは激怒した。必ずあの暴虐怠惰な講師からリィエルを守らねばと決意した。なんて、くだらないやり取りをしながらもそれは決して悪いものでなかった。システィーナの周りに居る友人たちは誰もが一癖も二癖も抱え込んでいる人物ばっかりだ。ルミア然りリィエル然りグレン然り、サンも同じである。彼女はそんな彼らが楽しそうに、普通の学生のようにしている姿を見ることが何時の間にか好きになっていた。

 

「いい?リィエル。グレン先生の言うことはそう簡単に聞いてはダメよ。じゃないと更にダメになっちゃうから」

「…?」

「システィ、今グレン先生と同じようなことやってることに気づいてる……?」

 

 ルミアのツッコミにシスティーナは視線をずらした。自覚はあるらしい。

 

 

 

 そんな、楽しい時間を過ごしていた彼女達ではあるが往々にしてそうした時間は長く続かないものである。

 家まで残り少しと言うところで彼女達の前に見覚えのある男が立ち塞がった。……そう、今日魔導兵団戦で戦った4組を指揮していた講師にしてシスティーナの婚約者であるレオス・クライトスである。彼は背筋が凍るような何処か狂気を孕んだ笑みを浮かべていた。

 

 その様子にシスティーナとルミアを守るようにしてリィエルが前に出る。何時でも魔術を使えるように気を巡らせて自身の友人を守ろうとしていた。システィーナも、唯見ているだけではない。頭の中ではいつでも術式が発動できるように思考を切り替えていた。

 

「こんばんはシスティーナ。いい夜ですね」

「こんばんはレオス。そうね、少し前まではいい夜だったわ」

 

 何食わぬ顔で挨拶を交わして来たレオスにシスティーナは少し辛辣に返す。流石にしつこいと考え始めていたのだろう。だが、そんなシスティーナの様子を見てもレオスは顔色一つ変えることはなかった。それどころか、その態度に笑みすら浮かべている。

 

「おや、随分と嫌われたものです。これでも私達は婚約者同士だというのに」

「……?好かれる要素、あった?」

「………それはちょっと答えられないかな……」

 

 純粋さゆえの暴力がルミアを襲う。流石の彼女もこれには対応できなかったようだ。そのようなやり取りの最中でも状況は進んでいく。レオスは今までと違い、システィーナの様子すらもどうでもいいような態度で言葉を紡いでいく。どんな理由があったにせよ、明らかにシスティーナを欲しがっていた彼とは何処か別人のように彼女は感じた。

 

「婚約の話はもう済んだでしょう?私は貴方と一緒になる気はないの」

「………ふぅ。そうですか……。これだけは使いたくなかった手段なんですが――――」

 

 いい予感のしない言葉にリィエルがすぐさま魔術を発動させて彼女の体躯ほどある大剣を地面から錬金する。ここ最近、普通の学生として生活している所為で忘れそうになるが彼女は立派な帝国宮廷魔導士団の一員。そこらの魔術師には後れを取ることはない。しかし―――

 

「――!?」

 

 ―――リィエルが自身の持つ野性的な勘で持っていた大剣を盾にする。その直後、リィエルの身体に大きな衝撃が走った。防御するだけでは勢いを抑えることができなかった彼女はそのまま横に吹き飛ぶが、そこは戦闘に慣れているだけあり直に態勢を立て直し、地面へと着地。先程自分を吹き飛ばしたソレを大剣で薙ぎ払った後ルミア達の前に再び戻った。

 

「システィーナ、ルミア。下がって。コイツ、強い」

「えぇ、強いですよ。私のタルパは」

「タルパ……!?」

 

 タルパとは錬金術の中でも奥義と言われるほどの魔術であり、その効果を簡単に言ってしまうと自身の妄想を具現化できるというものである。もちろんそれを行うには必要な道具と、自身が廃人になるリスクを背負うことになるが、リスクに見合う分だけの力は十分に兼ね備えていた。

 そして、タルパが使えるということはレオスもまたかなりの使い手だということである。いくらシスティーナがグレンから戦いを教わったからと言って相手にするには荷が重すぎる。むしろリィエルも彼女達を守りながらの戦闘は不可能だろう。

 

「さて、システィーナ。残念なことに選択肢はありません。ここで私のものになるか……もしくは適度に痛めつけられた後に私の物となるか……それだけの違いです」

「………」

「それに、そこにいるリィエル・レイフォードとルミア・ティンジェルでしたっけ?彼女達の正体が他の人達に知られたらいったいどうなるでしょうねぇ……」

「――――!」

 

 絶対に折れないと決意をしていたシスティーナであったが、レオスが言い放った言葉に思わず顔を上げて彼を見返してしまう。

 ルミアとリィエル。二人はもちろんシスティーナにとって大事な存在だ。しかし彼女達は先程も言ったように生まれに一癖抱えているのである。その正体が他の者達に知られれば今のような穏やかな生活はできないかもしれない。過去にそういう経験があるにも関わらず今の生活まで失わなければならない。そのことにシスティーナが耐えれるわけもなかった。

 

「……分かったわ」

「物分かりのいいシスティーナは好きですよ」

「システィーナ!?」

「システィ!?」

 

 これに納得できないのは当然餌に使われてた二人だ。システィーナが彼女達を思うのと同じく彼女達もシスティーナのことを想っている。だからこそ、自分達が原因でしたくもない結婚をしようとする彼女を止めようとするも、それはレオスが生み出したタルパに阻まれることになった。

 

「邪魔しないでいただきたい。今はシスティーナに免じて見逃します。しかし……あまり余計な手出しはしないでくださいね?」

「……っ」

「…………」

 

 レオスは一先ず三人の前からいなくなった。しかし、それでも先程までの楽しげな雰囲気はもうどこにもなかったのだった。

 

 

 

 

 

✖✖✖✖

 

 

 

 

 どうもサン・オールドマンです。突然ですが聞いてくれ。昨日システィの婚約者をボコボコにしたと思ったら何故かシスティとレオスの結婚式が一週間後という知らせを聞くことになった。な、何を言っているのかわからねぇと思うが(ry

 

 まぁ、ふざけるのはそこまでにして真面目にどうしてそうなったか考えてみよう。とりあえず考えられる可能性としては。嫌がるそぶりも含めて全てそういうプレイだったということと、無理矢理結婚させられそうになっているのどちらかだと思っている。前者の可能性?前世での出来事が原因ですが、何か?

 なんだよ……痴漢かと思ったらそういうプレイでしたって………せめて昼間の電車の中でそういうことするのはやめて欲しい。

 

 閑話休題。

 

 何はともあれ結論を下すには情報が圧倒的に足りなさすぎる。そもそも次の日に掌を返すっていうのがもう既に怪しいんだよね。それともう一つ、ルミアとリィエルがグレン先生に何かを報告していたこともある。

 ……んー。前世の知識を総動員してメタ読みするなら、システィを脅して無理矢理自分の物にってところか。で、あの二人はその場面かに居合わせてこのことをグレン先生に相談しに言った……相談の内容としては、リィエルの生まれた経緯後は()()()()()()かな。全部確証はないけど多分あってると思う。あっはっは、これじゃあまるでシスティは物語に出てくるヒロインみたいなー。

 

「ねぇ、一体どうしたのシスティーナ!?まさか本当にレオス先生と結婚するんですの!?」

「う、うん。ごめんね。皆頑張ってくれたのに」

「それは別にいいけど……サン君のことはいいの?」

「良いも何も、私とサンは初めから付き合ってなんてないわよ……」

 

 ここで、教室の前の方をご覧ください。結婚の決まったシスティが苦笑を浮かべながらもクラスメイトからの受け答えを行っています。

 なんということでしょう。そこに昨日まで浮かべていた笑顔はありません。お手本のような辛そうな顔を浮かべています。

 

「すぅー………」

「オールドマン」

「……どうしたのギイブル?」

 

 唐突に話しかけて来たギイブル。それに伴って俺はシスティから視線を外してギイブルの方へ向く。彼の表情は珍しくこちらを心配したものであり、ひと時も離すことがない教科書も閉じて机の上に置いていた。

 

「……いや、思ったよりも重症じゃなさそうだなと思ってな」

「そう?」

「あぁ。色々引きずっているかとも思ったが、正直薄情と思うくらい何時ものと変わっていないように思える」

「正面から言うね」

 

 まぁ、薄情なのは割と否定しないけどね。元が日本人。事なかれ主義、空気の権化、自身の意見を出すのが大苦手民だからね。他者から見れば薄情にも見えるだろう。ギイブルの言葉を粛々と受け入れるが、その後に放ってきた言葉に俺は驚いた。

 

「しかし、お前がいつもと変わらないなら。大丈夫だろう」

「え?」

「何とかする、そういう顔をしてるってことだ。それに、ルミアとリィエルもグレン先生に相談しに行ったみたいだからな」

 

 それだけ言うと彼は去っていった。もしかして彼は彼なりに慰めてくれようとしたのだろうか。だとするなら不器用と言うレベルじゃない。もはや何が言いたいのかわからないレベル、やはり彼は俺と同レベルのボッチだな。 

 けれども、”何とかする”ねぇ。今の俺はどうやらこの状況を何とかしたいと思っているらしい。その本意は残念ながらわからないけれども、ギイブルの言っていることは正解だった。何とかしたいとは思う。………まぁ、それも結局は彼女次第なんだけどね。とにかく話だけは聞いてみよう。

 ……此処まで言っておいてなんだけど、今ここでシスティに話があるって言った場合。今度は俺がフラれているにも関わらず諦めきれないダメ男のポジションに収まるのではないかとふと思ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 と言うわけで呼び出しました。

 

 

 

 

 

 

「な、なに……?」

「一つ直接聞いておきたいことがあって」

 

 向こうは一向に視線を合わせようとはしないが、別にそれもよし。やるべきことはもう大体決まってるし。

 

「聞きたいことって……」

「決まってるでしょ、クライトス先生との結婚」

 

 話を出した瞬間、更に視線を外す……どころか俯いてしまうシスティ。様子から見てどう考えても気が変わってやっぱり結婚するールートではないよなぁ。

 

「別に、サンには関係ないでしょ」

「全く以ってその通りだけどさ。……クラスの皆心配してたよ?」

「………皆には悪いことしたと思ってる。……だけどね、サン。私は気づいたの。ほ、ほらっ……、魔導考古学って、レオスの言っていた通り現実味がないじゃない。だ、だから……っ!その道を諦めるいいきっかけかなぁって……!」

「せめて嘘つくならもう少しマシな嘘言って欲しいんだけどなぁ……」

 

 そこまで見え見えの嘘を吐かれると誤解することも困難だわ。

 

「………嘘じゃ、ないわよ」

「はいはい。とりあえずこれで涙拭いて」

 

 余りに無茶な嘘を継続させるシスティに呆れながらハンカチを取り出して彼女に渡す。素直に受け取った彼女はおとなしく涙をハンカチで拭きとり、その後にレオス・クライトスと結婚する経緯を説明してくれた。完全に俺の予想が当たってて如何にレオス・クライトスが典型的な悪役なのかが分かるな。

 

「と言うかそもそも両親いないのに式挙げられるの?」

「レオスが全て手配するそうよ」

「わお……」

 

 随分と気合が入っているじゃないか。

 

「だから私にはもう、これしか……!」

 

 うーん。システィの性格を調べたのかと思うしかないとても効果的な手段だ。……さて、こんなことがあのレオス・クライトスにできるかだろうか。調べて行動を起こすにしても聊か早すぎる。式場の準備も全て手配しているというのであれば尚更の事。

 

「……システィ。もう一つ聞いていい?」

「何?」

「システィは、どうしたい?このままクライトス先生と結婚したい?」

 

 あえて分かりきったことを聞いてみる。もちろん意地悪で言っているわけではない。彼女の意思で彼女の口からしっかりと聞いておきたいというだけである。自分の本心を他人に話すだけでも心は軽くなるし。尚且つそれが俺の()()()()()ことになる

 

「え、でも……私には……」

「はーい難しいことは考えない。できる出来ないじゃなくて、自分がどうしたいのかを言ってくれればいいだけ。……これ以上面倒くさいこと言うと電気マッサージの刑を……」

「あー!もう、分かった!私は結婚したくない!魔導考古学だって諦めたわけじゃないし、そもそも私のことを物か何かと思っている人と結婚なんてしたいわけないじゃない。この馬鹿ー!」

 

 肩で息をしながら言い切ったシスティを見て申し訳ないが俺は腹を抱えて笑ってしまった。やっぱり彼女はこちらの方が合っている。色々考え込んで沈んだ表情を浮かべているのは似合わない。

 グレン先生と言い合って、ギイブルと言い合って、ルミアと話していて、リィエルの面倒を見ている―――そういう姿の方が何倍もいい。

 

「笑ったわね……!サンが言えって言ったんでしょうがっ!」

「すまない……笑ってしまってほんとうにすまない……」

「反省しているならそのにやけた顔をどうにかしなさいよ……!」

 

 取り敢えず、今は逃走することにした。このまま捕まると空の旅に向かう羽目になりそうだからね。仕方ないね。

 

「システィの考えは分かった。………後は任せて」

「――――この空気でそういうこと言うな。ばか」

 

 

 

✖✖✖✖

 

 

 

 

 結婚式当日。

 システィーナは純白のドレスに身を包んで準備を整えていた。これから彼女はレオスと望まない結婚をすることになる。教会には先程からずっと鐘が鳴り響き、式を挙げる二人を祝福しているようだった。

 

 花嫁側の控室に両親の代わりとして控えているルミアとリィエルはドレス姿で出て来たシスティーナに対してとても申し訳なさそうにしている。それもそうだろう。彼女達は己こそが結婚の原因であると気づいているのだ。喜ぶことなんてできるはずもなかった。それに気づいたシスティーナは苦笑すると元気づけるように言葉を紡ぐ。

 

「そんな顔しなくても大丈夫よ。それにルミアもリィエルもグレン先生に相談してくれたんでしょ?なら大丈夫よ。あの人やる時はやる人だもの、ね?」

「うん。ありがとシスティ」

「……システィーナ。あんまり、悲しそうじゃない」

 

 リィエルが尋ねる。望まぬ結婚をさせられそうな雰囲気にはまるで見えない。むしろ結婚式を楽しみにしているのではないかと思う程、彼女の雰囲気が明るかったからだ。それに対してシスティーナは少しだけ頬を染めて笑うと、リィエルの頭を撫でた。話を逸らしたことは明白だったが、そこは空気の読める女の子ルミア。無暗に突っ込むことはしなかった。

 

 

 

 そしてついに式が始まった。

 結婚式の様子は実に異常だった。参列者の中に新郎新婦両名の親族はおらず、システィーナの参列者はクラスメイトのみ。一方レオスの参列者については誰一人として出席しておらず、ウェンディが違和感を訴えた。

 

 何処か不気味な雰囲気を纏いながら、鐘の音が響き渡る教会で式は進行していく。

 

被告人()、レオス・クライトス。システィーナ・フィーベルを妻とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も、健やかなる時も共に歩み、脅迫することなく、強要することもなく、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い妻を想い、妻のみに添うことを誓うか?」

 

 そこで式場に居た生徒たちは違和感を覚える。なんというか神父の言葉がおかしいと思ったのだ。余計な一言が追加されたような、新郎のことをとんでもない言葉で表現したようなそんな雰囲気を感じ取った。それだけではない。先程まで聞いていた鐘の音が、何やら彼らに寒気を訴えさせる音色に替わっていた。……そう、実際に目の前で体験している者達は既にこれが何だか分かっている。だからこそ、皆一様に恐怖を覚えながらも表情に暗さを残すことはなかった。

 

「誓います」

 

 レオスが誓うと口にする。

 本来であればここから新婦に同じようなことを問いかけるのだが、この結婚式に置いてはそうはならなかった。神父は依然として新郎であるレオスに視線を向けたままである。

 

『その言葉に嘘偽りはないな」

「えぇ、もちろんです」

 

 笑顔で答えるレオス。

 それに対して、神父が行った行動は誓いの言葉の再開――――ではない。その身体から黒い煙と紫電を纏うことだった。

 

『聞こえるか、あの鐘の音が」

 

 紫電を纏った神父にレオスは思わず距離をとる。その際、当然と言わんばかりにシスティーナを置き去りにした。だが、その神父が彼女に襲い掛かることはない。生徒にも襲い掛かることはない。何故ならば、この中で神父だったモノに指し示されたものはただ一人。それは既に決まっているのだから。

 

「……お前は……」

 

 レオスが小さく呟く。

 それに反応したのか、神父は自身にかけていた魔術を解いた。そこに現れたのは、システィーナの参列席に座っている学生たちと同じ制服に身を纏っているごく普通の少年だった。けれども、外見は普通でも纏っている雰囲気は普通ではない。そして、何よりもレオスが驚いたのが、その少年の瞳が茶色と赤のオッドアイだったことだ。レオスは焦る。こんな状況を彼は予想していなかったからだ。

 

『他人の皮を被り、己の為したことの罪すらも放棄する愚か者。その所業、既に正道には往けず、堕落の一途を辿ることだろう」

 

 冷や汗が流れる。最早レオスは自身の外見を保っている余裕などなかった。目の前のあれは、レオスの皮を被っている状態で勝てるような相手ではない。自身の全力を以て相手にしなければならない存在であると。

 

 そして更にレオスは気づく。

 先程から鳴り響いている鐘の音がいつの間にか外部からではなく自身の内側に刻まれるように鳴らされていることを。

 

「お前はっ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

()が何者であろうとも、どうでもいい。要求することはただ一つ。ジャティス・ロウファン(レオス・クライトス)よ――――首を出せ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




グレン「……俺は?」
多分出番あるよ。え、原作?知りませんね(クビヲダセ

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