何気に進展があったりなかったり・・・・・・まぁ読んでからのお楽しみで。
11月11日。世間一般では「プリッキーの日」と称される1日だ。
プリッキーと言えば基本的にサラダ味のスティックの周りにチョコをコーティングした有名な菓子だが、なんでもリア充の間ではプリッキーゲームなるものが流行っているらしい。
知らない人の方が少ないとは思うが、プリッキーの両端から2人で食べ進め、恥ずかしくなって先に口を離した方が負け、というルールである。
まぁもっとも、彼女の居ない俺には無縁のものだと思っていたのだが・・・・・・。
「榊! プリッキーゲームしよー!!!」
神さま、ありがとうございます。天使が舞い降りました。
「待ちたまえ、八重」
俺が心の中で第九のメロディと共にガッツポーズをしていると、紅葉が鋭く横から割って入ってきた。いつになく真剣な眼差しをしている。
八重をソファに座らせ、その前に立った紅葉はつらつらと淀みなく語り出した。
「そもそもプリッキーゲームは恋人だとかそういう関係を持った相手とやるべきもので、容易に『家族として大好きだからやろー!』なんていうものではない。それにいいのかい? プリッキーゲームは両端から2人で食べるんだ。もちろん君が食べるプリッキーの量は2分の1、損をすることになる。それにそのプリッキーはこの前榊に週に一つの約束で買ってもらったプリッキーだろう。大事に食べなくていいのかい。私は昔からの所持金で事前にプリッキーを買ってあるし、その、榊と恋人になりたいって気持ちもあるし・・・・・・」
最後の方はよく聞き取れなかったが、何やら紅葉は俺と八重にプリッキーゲームをして欲しくないようだ。俺嫌われてるのかな?
それでも八重はめげずにやりたいの一点張り。でも多分そこに恋愛的感情はないのだろうな。辛い。
あまり大きな声で口論されると上で昼寝してる烏沙義を起こしてしまう。
「ん、ここは公平にじゃんけんで決めたらどうだ?」
「「榊は黙ってて!」」
え、俺やっぱ嫌われてる?
しかし結局はじゃんけんになったようで、ものすごい気迫で「さぁいしょはグーーーー!」と叫んでいた。烏沙義が起きるっつうの。
「紅葉、ドンマイ☆」
「あああああああああああ!」
パーを高々と掲げた八重がドヤ顔で紅葉を見下す。グーを床に叩きつけた紅葉は大人しくソファに腰をかけ、1人でポリポリとプリッキーを食べ始めた。
いそいそと俺の隣に腰をかけ、プリッキーを用意する八重。
心臓が暴れそうになるが、平常心をなんとか保つ。表情に出ないように気をつけながら、とにかく「いつもどおり」を演じる。このくらいで動じていては先に進めない気がするし。
流石八重というか、チョコの方を咥え、持ち手の部分を俺に向けてくる。うん、別にいいけどね。
気づかれないように小さく深呼吸して、俺も端を咥えた。
少し痛い紅葉の視線に耐えながらも地道に食べ進めていくと、不意に八重と目が合った。それまでお互い少し目線を下げていたのだが、それはもうばっちりと。
俺はもちろん平常心を保ち、笑顔を浮かべたのだが・・・・・・。
直後、八重はプリッキーを口でへし折って上へ駆け上がって行ってしまった。取り残された俺は流石に平常心を保てず、ぽかーん。
やっぱ俺嫌われてる?
なんか顔を隠してた気がするけど、なんだったんだろう。
渋い顔をしている紅葉に「八重どうしたんだろうな」と尋ねると、「さあね」と眉間に皺を寄せて、やはり上へ行ってしまった。
・・・・・・ほんと、俺嫌われてんのかな。
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