お泊まり会を書きたいがために後半の流れを予定と変更したため遅れました。すいません(´・ω・`)
補習という地獄から帰還した俺はソファで仰向けになって死んでいた。
俺自身補習を受ける必要は無いのだが、補習を受けるクラスメイトが多いせいで全員補習となったのだ。ちくせう。
「榊様ぁー!」
心身ともに疲れ果てている俺の腹に勢いよくダイブしてきたのは元気いっぱい烏沙義ちゃん。
今日はまた一段と暑いのにこれでもかと言うくらいテンションが高い。幼女強し。
腹の上に乗った烏沙義は、えへへ〜と微笑みながら甘えてくる。甘えん坊なのは幼女らしくて大いに結構。
ちなみに、現在の烏沙義の服装はクリーム色でノースリーブの、裾がフリルになっているワンピース。それと白と黄色のストライプ柄ニーソだ。
「榊様!お姉ちゃんがアイス食べたいって言ってました!」
「この前食ったから却下、って言っとけ……」
疲れたこともあり、深い溜息をつきながら頭を撫でてそう言うと、元気よく「はい!」と返事して二階へと駆け上がっていった。
ほんと元気だな……と感心していると、隣から残念そうな声が聞こえた。
「烏沙義…私には声掛けてくれなかった……」
「そんなんでしょげるなよ、紅葉」
「むぅ……」
小説から顔を上げて頬を膨らませる紅葉。本を読んでいたから声をかけなかったのだろう。烏沙義の気遣いだ。
まぁただ単純に用がなかった、とかも有り得るけどな。
ふくれっ面の紅葉の頭に頑張って腕を伸ばし、軽く撫でてやる。癖っ毛の八重と違って、紅葉の髪はストレートでさらさらだ。
真っ赤になった顔を隠すように再び小説に顔を向けたので、悪戯心が芽生えてパッと手を離した。
その瞬間紅葉は「え?」という残念そうな表情を俺に向けたあと、我に帰ったように視線をずらした。
撫でて欲しいなら素直に言えばいいのに。
「言いたいことがあるならどうぞ?」
からかうように呼びかけると、本に顔を埋めて小声で
「……もっと、撫でてくれ」
と呟いた。普段は大人びてるくせにこういう時は純情で照れ屋なのが紅葉だ。
最近は八重は撫でても照れなくなってきたな。烏沙義は早々に耐性をつけて撫でられると周囲に音符を散らすようになった。
昼飯は紅葉に用意してもらったし、俺は買い食いで済ませた。あとは掃除と夕食作りに洗濯……はぁ。
「榊、掃除は私が済ませておくよ」
なんともありがたい紅葉の申し出、お言葉に甘えて夕食のメニューを考えながら俺はそっと瞼を閉じた。
「榊? 掃除終わったよ……って」
私が家中の掃除を済ませて居間に戻ってくると、榊は気持ちよさそうに寝息を立てていた。
きっと補習とやらでかなり疲れたんだな。それにしても、残念だ……。割と早く片付いたから誉めてもらおうとしたのに。
八重も烏沙義も上で寝てたから、たまには甘えられると思ったのに。榊が八重を好きなのは重々も承知だ。それでも、”家族として”なら甘えても罰は当たらないだろう。そこに下心がないかと言われれば言い返せないが……。
わざわざ起こすのは悪いし、仕方ないので私はソファの傍らに座り込む。そして、榊の脇腹辺り、少し空いているスペースに顔を埋めた。
榊の体温が、匂いがすぐ傍に在る。小さく聞こえてくる鼓動と寝息。榊をこんなに近くに感じていることが幸せで堪らない。
「……私も、私だってもっと褒めて欲しいし甘えたい」
だけど勇気が出ない。他者に好意を抱いている人に自分の好意を押し付けるのは迷惑だろう。八重だって、榊のことが好きに違いない。
八重の前で榊に甘えることはできない。
網戸から吹き込んだ風が私たちをそっと撫でる。それが心地良くてつい私まで瞼が重くなってしまった。
愛しい人の温もりを間近に感じながら、私は意識を手放した。
おやすみ、榊。
目を瞑った私は、榊の顔が赤くなっていることに気が付けなかった。
いつの間にか八重と烏沙義まで添い寝してるじゃねえか。
目が覚めると時刻は六時半、そろそろ夕食を作らねば。
寝る直前に紅葉が来て寝始めたのは知っていたが……寝てる間に二人も来ていたのか。
寝息を立てて、起きそうにない三人を眺めていると自然と口角が上がってしまう。
さて皆起こして夕食の手伝いしてもらうか。
「ほーれ、三人とも起きろー!」
それぞれの頭を揺さぶるように撫でて起こそうとするが、八重だけは頑なに起きなかった。烏沙義はちゃんと起きたのに、お姉ちゃんが聞いて呆れるぞ。可愛いからいいけど。
食卓を烏沙義と一緒に整えてくれている紅葉が八重をちらりと見遣って、深いため息をついた。
「いっそこのまま寝かしといたら?居間に放置しとけばこの子も喜ぶだろうし」
呆れながらそう言う紅葉。と、烏沙義が「だめです!」と突然大きな声を上げた。
「意地悪はダメです!寝るのは誰かと一緒じゃないと寂しいです!」
烏沙義は我が家に来て以来、紅葉と同じ部屋で寝ている。ベッドは一つだが、紅葉は細いし、烏沙義もちっこいから問題ないようだ。
ぷっくり頬を膨らませた烏沙義に頭を下げつつも反論する紅葉は、
「じゃあ烏沙義が一緒に寝てあげなよ」
と口にしたが、「居間は広いから二人は寂しい」という理由で却下された。夕飯の麻婆豆腐作りながらその会話を聞いていたが、随分と可愛らしい口論である。
調理が終わり、鍋を食卓に置いた瞬間、烏沙義が自信ありげに提案した。
「居間でお泊まり会すればいいと思います!」
「さんせー!」
飛び起きた八重に俺と紅葉はそれぞれ一発頭を叩く。
悪びれる様子もなく至福の笑みを浮かべた八重を席につかせ、手を合わせて夕食を食べ始める。
自然と会話が始まるが、お泊まり会は決行のようだ。
……布団運んだりするの面倒臭いけど、烏沙義も八重も乗り気だから仕方ないか。
紅葉は口数が少なく赤面しているがどうしたのだろう。
ま、ともかく今夜は夜更かしすることになりそうだ。
美っ少女とっ♪おっ泊まっり会♪
さっかきっくん♪くったっばれ♪