ターミネーター イースタン・フロント   作:花咲 狼

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ちょっと短めです。
大会やら胃腸炎やらで悶えて居りましたww


7話「陥落」

〈神村 一狼〉

ピリオド07の射殺後、防衛ラインは不穏な空気が漂っていた。

 

〈ウルフ、あなたどう言うつもり。〉

 

無線から聞こえたのは、さっきとは打って変わってとても怒っている彼女の声だった。

 

「彼は未来が助ける前、行方不明だった。その時に奴らに頭を弄られたんだろうな。」

 

〈だからって殺す事ないじゃない!〉

 

怒鳴り声が高性能無線機によって減衰され俺の耳元に届く。

 

「俺だって殺したくはない。ここのいる人間と奴を天秤にかけて判断しただけだ。」

 

〈あなたね!!〉

 

「それともアレか?叔父を殺してノコノコ帰ってきたやつに自分で復讐したかったのか?・・・それなら悪かった。」

 

燐と俺の声は無意識のうちに大きくなり、隊員の顔が一気に張り詰める。

 

〈・・・〉「・・・」

 

暫くの沈黙が続く。

 

〈まあまあ、お二人さん!夫婦喧嘩は程々にしようぜ!〉

 

沈黙を破ったのはジョーカーだった。彼の空気の読めなさはここでも同じらしい。

 

〈あなたなんか地獄に堕ちればいいんだわ!〉

 

それは彼女から聞いたことのない。嘘の欠片もない言葉だった。

そして同時に俺の心に深い傷跡を残す。

 

「ハンターキラーだ!」

 

見張りの1人がそう叫ぶ。

 

「総員第1種戦闘配置!」〈総員第1種戦闘配置。〉

 

俺と燐がほぼ同時に指示を出す。

 

〈ウルフ、そちらから指示を出さないで下さい。戦線が混乱します。〉

 

「ッチ・・・了解した。」

 

俺は検問の右側にあるブローニングM2の元に走り出す。

ハンターキラーの弱点はエンジンと機体の接合部にある装甲が薄い部分だ。レバーを引き次弾を装填する。真ん中にあるトリガーを押すとけたたましい音を立てて弾丸を飛ばす。弾はそのままハンターキラーに飛んで行くが、殆どが硬い装甲に弾かれる。

 

「っクソ!」

 

悪態を吐く俺に気付いた。ヤツの熱探知カメラと目が合う。

突如、ハンターキラーの右エンジンが火を噴いた。グレネードランチャーを撃ち込んだ奴が居たらしい。

 

「ヒャッハー!」

 

撃った張本人が雄叫びを上げる。だが、制御を失ったハンターキラーは俺の方に墜落する。間一髪で躱すが窪地のようになった所に落下し背中を強打した。

 

「痛ってェ...」

 

唸った俺は窪地から起き上がると、老人のように腰を摩った。辺りを見渡すと、圧倒的な戦力差でこちらが押されていた。

 

「全員、一旦下がるぞ!」

 

〈ちょっと!〉

 

無線から燐の声が聞こえた。

 

「五月蝿い!全滅しても良いのか!!」

 

俺はそう言って足元の死体のM240Bを拾い上げる。

 

「下がれ!」

 

後ろ歩きで後退しながら、逃げる仲間を援護する。

 

「ウルフ!お前も来い!!」

 

後ろで隊員が援護射撃を続ける。基地の入り口まで走り後ろを振り返ると、また援護射撃を続ける。

 

〈まだ非戦闘員の避難が完了していません。基地内で食い止めて下さい。〉

 

無線で燐から指示が飛ぶ。

 

「了解した。」

 

無線に短く答えた俺は基地の入り口に入り、壁に着いた液晶画面で隔壁を閉鎖する。

 

「全員、備えろ!すぐに来るぞ!」

 

静かになった基地の通路に金属同士が擦れる音がして、扉の隙間から光沢した手が出てくる。

 

「まだ撃つな!」

 

その手が基地の扉を無理やりこじ開け嫌な音を発する。

T-800がその姿を露わにした。

 

「撃て!」

 

たった一本の大きな通路に弾丸が飛び交い、時たま蛍光弾が光の尾を引いて扉の元にいる金属の塊に衝突し火花を散らす。

 

「C4起爆。急げ!」

 

隣に居る隊員が起爆装置のレバーを2回押して起爆する。基地の通路が激しい音と共に崩落し、奴等の姿を隠す。

 

「こちらウルフ、非戦闘員の避難はまだか?」

 

俺は首に手を当てて燐に連絡を取る。

 

〈まだ避難中です。あと10分程持ち堪えて下さい。〉

 

燐がそう言った次の瞬間、崩落した壁で地響きが鳴った。

 

「悪い情報だ。そこまで保たない。」

 

俺はそう言いながら、ハンドサインで撤退の指示を出す。

 

「C4はまだあるか?」

 

「バックに入ってる。」

 

俺の問いに1人の隊員が持っていたバックを指差す。通路の端にあったボストンバックを拾って非難する。

走りながら無線を燐とのプライベートチャンネルに切り替える。

 

「ヴァルキリー。こちらウルフ。」

 

〈こちらヴァルキリー、どうしました?〉

 

当然のように俺に向けられるのは冷たい声だった。

 

「隊員を避難させる。」

 

〈防衛ラインを無くす事は出来ません。持ち堪えて下さい。〉

 

「だからこそだ!」

 

〈?〉

 

俺は通路で立ち止まると、逃げる隊員の背中を見ながらボストンバックを下ろす。

 

「悪かった。」

 

〈ウルフ?何をするつもり!?〉

 

「愛してる。」

 

そう言った時、背後から爆発音がして敵が出てくる。反射的に近くの遮蔽物に隠れると、C4を拾い敵に投げ付ける。

 

〈一狼!!〉

 

基地内に爆発音が響いた。




次回
「Heartbreak」

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