ターミネーター イースタン・フロント   作:花咲 狼

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過去を悔やんでも未来は切り開けない。後悔は更なる失敗を産むだけだ。だが、その失敗から何かを見いだせるとしたら・・・それは次の成功を産み落とす。


4話「審判の日」

〈2018年 月はもう覚えていない。 対馬市:厳原町〉

 

「ホント、あなたって名前通り1匹狼よね。神村 一狼くん。」

 

昼食であるパンを食べ終え、昼休みの間に弓道場で仮眠を取る。それが俺の昼休みの費やし方だ。

 

「ほっとけ。」

 

声で幼馴染みの倉坂 燐だと解ると、俺は顔の上に置いた腕を動かさずつっけんどんに応える。

 

「はい、これ。」

 

腹に少しながら重さを感じ、其処に目を向けると青色のバンダナで結ばれた弁当箱が乗せてあった。

 

「お前、これって。」

 

「自分の作るついでだから。」

 

いや、それ「別にアンタの為に作ってきたわけじゃないんだからね。」って感じの俗に言うツンデレが言う台詞を遠回しに言っただけだがな。と想いつつも礼を言って受け取る。

 

「それより、後輩との約束は大丈夫なのか。」

 

「ええ、今日の放課後から入部させるつもりよ。今度はちゃんと教えてあげてよね。」

 

後輩とは、今年転校して来たばかりの女子で燐が弓道部に勧誘したのだ。

 

「オイ、何で俺が教えること前提なんだよ。」

 

今にも重力に負けそうな体を起こし、怒ったようにそう言った。

 

「何でって、あなたが全国大会で2位だったじゃない。」

 

「好きで2位になった訳じゃない。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〈同所 4時間後〉

 

「今日から入部する ーーーー( 名前はもう覚えていない ) です。宜しくお願いします。」

 

結局こうなった。俺の前では1人の女子高生が律儀に頭を下げている。

 

「あぁ、君、弓道の経験は?」

 

『ヴゥゥゥゥ‼︎』

 

俺が少女に質問した直後、ノイズ混じりのサイレンが鳴り響く。それに追い打ちを掛ける様に携帯の通知が鳴った。

 

「これって・・・」

 

そこに表示されていたのは、テレビでしか見たことのない『Jアラート』の通知だった。それが、1部の地域だけでなく日本全域に渡って赤く染まっているのだ。

 

「どうしたの、一狼?」

 

さっきまで別の後輩を指導していた燐が俺に尋ねる。

 

「逃げるぞ。早くしろ!」

 

俺は燐の手を強引に引っ張り、女の子に声をかける。

 

「君も来い。早く!」

 

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〈3分後 校門前〉

 

俺は3人で校門まで走り、唐突に止まる。

 

「どうしたの?」

 

後ろからの問いかけを無視し、今から取るべき行動を考える。

 

「どこに行けばいい。」

 

「知らないわよそんな事。連れてきたのは一狼でしょ!?」

 

その答えに舌打ちで答え、近くにシェルターの代わりになる物がないか考える。

 

「一狼!」

 

「解ってる!!」

 

そう言った途端、俺達の目の前に1台のハマーが止り硝子窓を開く。

 

「乗れ!」

 

そこに居たのは1人の迷彩服を着た自衛官だった。

 

「叔父さん!?」

 

そう答えたのは後ろに居た燐だった。

 

「知り合いか?」

 

「ええ。」

 

俺達3人が少し戸惑いながら乗ると男は車を急発進させる。

 

「どうなってる!」

 

暫くして男に質問を投げかける。

 

「解らん。だが、全世界の核保有国が一斉に核を発射したらしい。」

 

「な!・・・」

 

もし、そうだとしたら大変な事になる。何故ならあと数分で世界が、少なくとも日本が壊滅するからだ。

 

「どうすれば着弾を阻止できる?」

 

「安心しろ。迎撃の準備は自衛隊がやってる。俺は偶々対馬に来てただけだからな。」

 

話の内容から、この男が自衛隊の関係者なのかが解る。

 

「あの、清水ヶ丘体育館前で降ろして貰って良いですか?」

 

「どうしてだ?」

 

運転席に居た男が尋ねる。

 

「家族で避難場所に決めて居るんです。」

 

「解った。燐!俺は直ぐに駐屯地に戻らなきゃいけない。解ったか?」

 

「え、えぇ・・・」

 

まだ今の状況が飲み込めないのか、燐の返事は戸惑ったものになっている。

 

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〈2分後 神村家:自宅〉

 

俺の家は父が広島出身で祖父を原爆で無くしたからか、家にシェルターを造っていた。シェルターと言っても厚さ2m前後のコンクリートで出来た核兵器には心許ないような物だが・・・

 

「これからどうするの?」

 

そう聞いていたのは、扉の近くの角に座り込んだ燐だった。

 

「どうもしない。安全が確保出来るまで此処に居る。」

 

「それって・・・いつまで?」

 

俺の答えにそう聞き返す。

 

「後、数分で核が落ちる。この対馬は余り狙われないだろう。それから48時間後に此処を出る。」

 

そう言うと、彼女は『そう・・・』とだけ言い残し、また暫くの静寂が流れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・ ・・・ ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴゴゴゴゴォォォォォォ

 

 

暫くして、地響きに似たような振動が伝わる。

 

「きゃぁ・・・」

 

小さな悲鳴が聞こえ、音源を見ると其処には当然の事だが彼女が居る。

俺は彼女に歩み寄ると隣に腰を下ろし、彼女の頭に腕を回した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間が経っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地響きが遠く感じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺と燐は互いの恐怖を分かち合うように眠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠くて近い爆音を子守歌にして・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴトン・・・・・・ガン!・・・・・・ギイィィィ!

 

あれからどれ位経ったか、金属音に目をしかめながら外から誰かが扉を開けた事に気付く。

 

「大丈夫か?」

 

そう聞いたのは、さっきまでハマーの運転をしていた男だった。

 

「核は?・・・・・・どうなった?」

 

「世界のあちこちが遣られた。日本も幾つかの都市もな。幸い、ここは無事だ。」

 

男は俺を立ち上がらせると、燐の肩を揺さぶった。

 

「食料とナイフを用意しろ。直ぐに出発だ。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

そうやって俺達は、後に『審判の日』と呼ばれる1日を生き延びた。




ターミネーター:イースタン・フロント どうだったでしょうか。
ペースを上げると言ったのに相変わらずですみません。
今回はWeb小説だからできる時間の経過を表す書き方を多用させて頂きました。少しでも読みやすくなっていれば幸いです。

PS
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