ターミネーター イースタン・フロント   作:花咲 狼

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今回は結構長くなりました。すみません。

それではどうぞ!


2話「銃と少女と殺戮マシーン」

〈07:30 対馬市上坂〉

 

上坂に巨大な砲台跡がある。対馬支部はその砲台跡を掘り進め、基地にしたのだ。

 

「あの・・・」

 

透き通るような声が後ろから聞こえる。声の主は言うまでもなく少女の声だった。

 

星沢 未来(ほしざわ みく)

 

「⁇」

 

続けざまに言われた事を余り理解できなかった。

 

「私の・・・名前です。」

 

「そうか」

 

俺はそう一言で返すと地上に続く扉を開ける。

 

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〈08:00 対馬市厳原町:交流センター〉

 

機械軍は周りの海をハイドロボットやクラーケンで包囲しハンターキラーで空域を支配した。T-シリーズはトランスポートに乗せてやって来た。自衛隊は行動をとる間に鎮圧され残された民間人は武器を手に取って戦うか、何処かに隠れて身の安全を守った。

 

「ウルフさんはどっちなんですか?隠れる方か、戦う方か。」

 

俺はこの戦争で未来が隠れている間に起こった事を話しながら保存食(缶詰)を調達していた。

 

「両方だ。戦えない者は匿い、志願した者と戦う。」

 

「・・・」

 

今まで話していた2人の間に沈黙が続く。

 

「愛し、愛される者となれ。そして、愛する者を守れる者となれ」

 

沈黙を破ったのは俺だった。

 

「俺の親父の言葉だ。」

 

「お父さん・・・」

 

「死んでるよ。2年前にな。」

 

その言葉を聞くとショックを受けた様な顔をして俯いた。

 

「すみません。」

 

「別に気にしていない。それより、手を動かせ。」

 

俺がそう言うと忘れていたと言うように目の前にある缶詰をリュックに詰め込み始める。

 

 

カラン

 

 

「!・・・伏せろ!」

 

突然の命令に戸惑っている未来の頭を抑え、俺自身はしゃがんだ状態になると俺は89式を構え目を凝らして暗い店内の通路を警戒した。

 

「ウルフさん?」

 

店内にミリタリーブーツで歩いている様な足音が響く。

 

「人の食料を物色するとは良い度胸じゃねぇか。」

 

そこに居たのはM4A1を持った抵抗軍の男が立っていた。

 

「冗談言うなよ、ジョーカー。」

 

男は鼻で笑うと、持っていたM4A1を肩に担ぐ。

 

「元気そうじゃないかウルフ、とっくにくたばってるかと思った。」

 

「そっちこそ、此処の機械は破壊したのか?」

 

「ああ、此処はグリーン・ゾーンだから安心しろ。」

 

「分かった。」

 

「食料なら持って行け。俺のチームは10人で消費量が追いついてないからな。」

 

ジョーカーはそんな事を言うと、こっちに直方体の物体を投げてきた。それを、暗い中凝視すると側面に "C4" の文字が見える。

 

「指向性粘着型爆薬か。」

 

「持ってけ。この前の貸しだ。」

 

ジョーカーがそう言いながら顎でC4を指すと俺は無言で頷く。

 

「それと・・・」

 

言葉の途中でジョーカーが会話を止める。理由は直ぐに分かった。

Tー600の重く、錆びた金属が駆動する音が聞こえたからだ。

 

「サーマル」

 

サーマル・ゴーグルを使う合図がジョーカーから聞こえる。バックパックの左ポケットから左目用のサーマルゴーグルを取り出して頭に被る。

 

「行くぞ。」

 

後ろに居る未来に小声で伝え、前に進む。声はイントーマイク(骨伝導マイク)で拾われている為、聞き逃すことは無い。

 

「赤外線ストロボの味方識別を確認しろ。」

 

無線からジョーカーの声が聞こえる。軍人にしては丁寧なアメリカンイングリッシュに感心を覚える。

 

「良好だ。」

 

ジョーカーの指示に一言で返す。

 

「ウルフさん・・・」

 

後ろから、無線を通さずに聞こえたその声に振り向くと、未来がサーマル・ゴーグルを左手に持ったままでしゃがんでいる。

 

「これ、どうやって付けるんですか?」

 

「貸せ。」

 

そう言って未来からゴーグルを取ると、彼女のヘルメットに付ける。

 

「後で付け方教えてやる。行くぞ。

遅れたら置いて行くからな。」

 

そう言って気を取り直してジョーカーの部隊の後を追った。

 

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〈5分後 同所〉

 

「止まれ。12時の方向50メートル先。」

 

小隊の先人を切るポイントマンが敵の位置を皆に伝えた。彼が述べた方向にはレーザーポインターにも似た赤色の点が2つ、宙に浮いていた。それがTー600の放つ眼光だということは考えるまでもなかった。

 

「〈各人、2人1組で散開してアンブッシュ。〉」

 

「《了解》」

 

ジョーカーの命令に全員がそう返答して3方向に別れる。俺は未来を誘導し靴売り場に隠れた。

 

「〈敵の武器はM134とM203だ。〉」

 

「〈了解。地雷を合図に攻撃しろ。〉」

 

どうやら予め地雷を設置していたようだ。

 

「〈各人、戦闘準備。〉」

 

突然の爆発音が館内に響き渡る。

 

「〈GO!〉」

 

ジョーカーの声を皮切りに館内に銃声が木霊した。

 

「〈Yeah !!!!〉」

 

「〈Fackin scrap !!!!〉」

 

「〈Mother facker !!!!〉」

 

ジョーカー以外の口から汚い言葉が飛び交う中、未来は俺の服の裾を掴み、瞼を硬く閉ざしていた。

 

「〈Cease fire !〉」

 

ジョーカーの命令1つで銃声が一気に止む。そこで、俺はあることに気付いた。1階の売り場から2階のゲームセンターまで吹き抜けに成っている天井に人影と赤い光る点が2つある事に・・・

 

「コンタクト!真上だ!!」

 

俺がそう叫ぶと全員が一斉に上を向き、敵に気付いて一斉に打ち始める。

2階に居たそいつは、落下防止用の塀を飛び越えると1階の床に罅を作って着地した。さっきまで銃を撃っていたものの顔は青ざめて居た。何故ならそいつはTー800だったからだ。

 

「撃て!撃て!撃て!」

 

ジョーカーが焦り、その言葉にその感情が伝わったのか陣形が狂い始めたのが一目見て分かった。

 

「未来、逃げろ!」

 

俺はというと、戦闘経験が殆ど無い彼女を此処から逃がそうとそう言っていた。

 

「え!?・・・でも・・・」

 

「良いから行け!!」

 

そう言って彼女の背中を押して促しながら、89式を "タンパツ" にして構える。そして、他の者に襲いかかろうとしているソイツに3発打ち込んだ。

 

「こっちだ!!」

 

そう言うとソイツは俺の方に歩を進めて来る。他の奴等もそれに習い銃をフルオートで撃ちながら近付く。

 

「オイ!近すぎだ!!」

 

ジョーカーの命令も虚しく、近付いたジョーカー以外の全員が地獄を見る・・・いや、体験する事になった。

一番近かった1人が首を掴まれ折られると、隣にいた奴の顔に投げ飛ばしソイツの首も80キロ近い体が顔に吹っ飛んできて折れる。後ろに居た奴は蹴りを喰らい内臓がグチャグチャだろう。横に居た奴は銃を奪われ顔面を地面に叩き付けられた。奪った銃で2人を殺し、残り2人の内一番近い奴のプレートキャリアを掴むと其処から手榴弾を取り、もう1人の方に蹴飛ばして其処に手榴弾を転がす。

この一連の動作を終え、次は俺の方に向かって来る。手を伸ばした。

だが、俺の目の前まで来たその手が吹っ飛ぶ。その瞬間、腹に響く爆音が聞こえた。

 

 

50口径!?

 

 

ふと、脳裏にそれが浮かんだ。

腕が吹っ飛んだ反対側を見ると其処にはBarrett M95を匍匐体制で構えた未来が居た。

 

「もう一度撃て!」

 

T-800に銃弾を浴びせながらそう叫ぶ。

 

「〈撃てません。〉」

 

どうやら、次弾装填の方法が分からないようだった。

 

「手元にあるボルトを上に上げて目一杯引くんだ。」

 

そうしている間にも、T-800は未来に向けて歩を進める。

 

「チッ!!」

 

俺はそうやって舌打ちをすると、セレクターを "レンシャ" にすると、T-800を追いながら全弾使い切る。

 

「〈ウルフ!離れろ!!〉」

 

ジョーカーの声で我に返り、間合いが近いことに気付くが間に合わず振り返って首を掴まれる。直ぐにサイドアームのM45A1に持ち替えると、赤い左目に向けて3発撃ち込む。

被弾を避ける為にT-800は俺を軽々と投げ飛ばし、柱にぶつけた。

 

「待て!」

 

頭を打ち、朦朧とした意識の中で俺は未来が襲われる姿をただ観ているしかなかった。

 

「嫌!来ないで!!」

 

少女の叫び声が聞こえた後、T-800の胸部に穴が空く。続けて爆発音。ソイツを押しのけ、未来が近付いてくる。

 

「ウルフさん!ウルフさん!!」

 

彼女が生きていると分かってか、安堵と共に俺の意識はそこで途絶えた。




少しずつペースを上げていきたい所です。これからもどうぞ宜しくお願いします。

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