ターミネーター イースタン・フロント   作:花咲 狼

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第1章 「“未来”への選択肢」
1話「旅支度」


〈2020年7月6日07:00 日本:長崎県対馬市〉

 

「《私はジョン・コナー。これを聞いている君は、抵抗軍の一員だ。》」

 

 ラジオから流れるそれを聞きながら、俺は89式自動小銃を持ち上げる。

 

「ウルフ、出発だ。」

 

 ドアの外から俺のコードネームを呼ぶ声が聞こえた。

 俺の名前は神村 一狼(かみむら いちろう)今年で20歳になる抵抗軍の兵士であり、抵抗軍日本支部九州地方長崎県対馬方面隊の隊員だ。

 

「了解・・・今行く。」

 

 そう言うと、机の上に置いてあるM45A1/Sをホルスターにしまうと、部屋を出る。

 

※ーーー※

〈5分後 指令室〉

 

指令室に行くと、そこには2人の女性と1人の巨漢が立っていた。

 

「おはよう、一狼。よく眠れた?」

 

そう声を掛けてきたのは1人の女性だった。

名前は倉坂 燐(くらさか りん)。チームではボスやヴァルキリー等、その他の通り名がある。

 

「死なない程度には。」

 

冗談で言ったつもりが彼女は心配したようだ。部下には見せない不安の顔が垣間見えたので肩を竦めて話を逸らす。

 

「そいつは?」

 

そう言って彼女の後ろに隠れる様にして立っている女性・・・いや、女の子を顎で指す。

 

「新しいバディよ。あなたと一緒だった『ピリオド』は上対馬の偵察に派遣し、彼女をバディとします。」

 

『ピリオド』とは、隣に立っている巨漢の引き入るチームだ。

 

「待て、ガキのお守りなんて御免だぞ。」

 

「あなたと歳は1歳しか変わらないわ。」

 

「それでも19歳だろ。俺みたいに廃れた人間じゃない。」

 

「あなたも気に入ると思うわ。この子は負傷したピリオド07を発見して応急処置、T600を1機破壊してるわ。」

 

「・・・!?」

 

俺は絶句して、目の前の少女を一瞥した。一方、少女は燐の後ろからは出て俺に警戒した視線を送っている。

 

「どうするの?」

 

「あ〜わかったわかった!」

 

そう言って文字どうり天を仰ぐ様にして天井を見上げる。

 

「厳原町の交流センターに行く。保存食が要るだろう?あそこならヤツらが多い。」

 

「ちょっと、それで死んだらどうするの!」

 

「死んだらそれで終わりだ。その後も使えないと言うことだから仕方ないだろう。」

 

俺はこの少女を試したいのではなく、単に厄介払いでそう言った。

 

「でも・・・」「私!」

 

燐が口を開と同時に透き通る様な声が部屋に響いた。

 

「私、やります。ウルフさんの言うことも一理有りますから。」

 

まさかの答えに部屋中が静寂に包まれガラス越しに外にいる曇った声と足音だけが響いた。

 

※ーーー※

〈07:10 武器庫〉

 

「オッサン、9ミリあるか?」

 

俺はこちらに背を向け銃を整備している白髪混じりの老人にそう言った。

 

「珍しいな9ミリなんて豆鉄砲をお前さんが使うなんて。」

 

「俺じゃない。コイツだ。」

 

そう言って背後に立つ彼女を顎で指す。

 

「あぁ、そう言うことか・・・」

 

そう言うと老人は慌てて武器庫の方に行った。

ガタン、ゴトンと慌ただしい音が暫く続くなか大きな音が苦手なのか彼女は肩を何度か跳躍させている。

 

「来い!」

 

暫く物音が続いた後に武器庫の方から老人の声が聞こえる。

武器庫に向かうと作業台の上に有りっ丈の9ミリの武器が山ほど置いてあった。

 

 

9ミリつったら普通、陸自の9ミリ拳銃だろ。つかどっから集めたんだよコイツ・・・

 

 

そう思っていると早速、老人(これからは武器商人と記載)が銃の紹介をしていた。

 

「コイツァ有名なベレッタM92Fだ。ヤクザ絡みの商売仲間からもらった。ちょいと重いから気を付けな。」

 

そんなことを言いながら銃を持たせる。案の定、彼女の腕は銃の重さが掛かると少し下に下がる。

 

「そんなもの持たせてどうするんだ。そいつを貸せ。」

 

そう言って顎で指したのはグロック19だった。

 

「ほら、射撃場で撃ってきな。」

 

射撃場に移動した俺達はさっきの銃と予備弾倉を2個持って持ち方を教えていた。

 

「良いか?まず、銃を構えてみろ。」

 

そう言うと彼女は弾倉を抜いた銃を構えた。

その手は素人同然で手が銃のグリップを横から覆う様に握っていた。

 

「ちょっと良いか?」

 

俺はそう言うと、彼女の後ろに周り右手に自分の手を添える。

 

「使わない時以外はトリガーから指を離せ、誤射を起こすぞ。」

 

そう言ってトリガーに掛けた指を人差し指で2回叩いた。

 

「グリップは奥まで握りこんで、リアサイトからフロントサイト、手首、腕に直線になるように持て。左手は右手の指の付け根から右手を覆うようにして持つんだ。」

 

彼女の呑み込みは早く、俺が言ったらそれを忠実に再現していた。

 

「それと、銃を構えるときは両目とも開けておけ。周囲の索敵が疎かになる。」

 

そう言って自分の左目を指す。

 

「銃貸せ。」

 

そう言って彼女から銃を借りると3つあるマガジンのうち1つを挿入し、スライドを引く。

 

「撃ってみろ。胸に2発、頭に1発だ。」

 

グリップを彼女の方に向け銃を渡す。

さっき言ったように構えた彼女は、重心を後ろに保っていた。

 

「反動を抑える為に前傾姿勢になれ。」

 

俺は横に掛けてあるイヤーマフをとり彼女の耳にイヤーマフを被せる。

彼女は背後から被せられた事に驚いたのか一度こちらを振り向くが、俺が目線で「やってみろ」と合図すると頷いてマンターゲットに向き直り前傾姿勢になると、トリガーに指を掛けた。

 

 

射撃場に3発の銃声が響いた。




主人公の経歴や武器紹介はまた別の機会にするのでお楽しみに!!

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